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  • “高音質”で音楽を聴く楽しみを!ハイレゾ入門〜第1回

レコーディング・クオリティーに近い音質が身近になるハイレゾ音源とは?

  • 文:菊池真平

はじめまして。ハイレゾにまつわる連載を担当しますフリーライターの菊池真平と申します。普段はヴィンテージ・ギター、真空管アンプ、レコードと、とてもロー・ファイなものに触れている私が、この連載を担当して良いものか悩みましたが、皆様と一緒に楽しむつもりで、流行の兆しを見せる“ハイレゾ音源”の魅力をお伝えしたいと思います。ミュージシャンにとっては、表現したい音楽に近づく音質をダイレクトに届けられ、リスナーは手軽にそのサウンドを楽しめる可能性を秘めた“ハイレゾ音源”を、ぜひ体験したくなるきっかけになれば嬉しいです。

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高音質な音楽配信が流行の兆し!

 “iPod”に代表される携帯プレーヤーの流行で、CDから音楽ファイルをPCに取り込みMP3などのファイルに変換し、たくさんの音楽を手軽に持ち運んで聴ける便利な時代になりました。またインターネットを介して、曲単位で簡単に音楽を買うこともできます。しかしこれまで、そのような音楽配信は、MP3やAACといったファイル形式での販売が主体でした。このようなファイル形式は、音質が劣化することには多少目をつぶり、元々の音源を圧縮することでデータの容量を軽くする事を目的としています。故に、音楽の臨場感や各楽器の繊細な音が損なわれしまうことにも繋がり、本来アーティストが表現したい音楽が、うまく伝わらないという自体も招いてしまいます。

 現在では、そのことに気付いているリスナーも多く、より高音質な音源への需要が高まっています。アメリカでは、改めてレコードの需要が高まっているのもそのひとつと言えます。ただしレコードは、再生するためのターンテーブル、フォノイコライザーなどの機器が必要になるため、なかなかその環境を整えることができません。また手軽に外に持ち出して聴くことも難しいでしょう。

 そこで、注目が集まっているのが、より高音質なデジタル音楽ファイルの“ハイレゾ”音源です。現在では、ハイレゾ音源をPCや携帯プレーヤーでも簡単に再生できる機器がたくさん登場しています。また大手メジャー・レコード会社も参入し始めているため、音源のタイトル数も飛躍的に増え、配信などで簡単に入手することもでき、オーディオ・マニアだけでなく、一般リスナーにも流行しつつあります。

 まさに、1982年に登場し音楽リスニングを変化させたCDに変わって、次世代スタンダードに成りうる可能性を秘めた新しい音楽ソフトと言えるでしょう。元々のファイル自体が、レコーディングのマスターに近いクオリティーなので、演奏をするアーティストの表現がより伝わりやすくなり、リスナーも高音質で音楽を楽しめるため、双方にメリットのある理想に近い音源と言えるでしょう。

ハイレゾとは?

 ハイレゾとは、『High Resolution(ハイレゾリューション)』のことで、直訳すると高解像度という意味になります。よって、“ハイレゾ音源”もしくは“ハイレゾ・オーディオ”は、解像度の高い音源ファイルのことを言います。

 一般的なCDはその規格上、16ビット/44.1kHzという量子化ビット数/サンプリング周波数の音楽ファイルに限定されます。ハイレゾ音源は、このどちらかの数値が、より大きな音楽ファイルのことを指します。

 では、この数値が大きくなると何が違うのでしょうか?簡単に言えば、この両方の数値が大きい程、よりデータ自体の情報量が多くなり、例えば歌や楽器の細やかな表情、音の奥行き、空気感といったものが、理論上では緻密に再現されるようになります。つまり、生の音楽のディティールをCD以上に繊細に表現できるようになり、高音質な音楽を聴くことができるのです。

CDとハイレゾ音源のデータ容量比較

 現在のレコーディングはデジタル・レコーディングが一般的で、24ビット/48kHz〜192kHzといったクオリティーで録音することが主流となっています。デジマートに掲載されている宅録用の求めやすい価格のオーディオ・インターフェイスも、同様のクオリティーに対応している時代です。レコーディングした音源は、CDにする際に16ビット/44.1kHzのデータにダウン・サンプリングされ販売されます。もちろんプロによるCD用のマスタリングが施されるため、最大限レコーディング時の臨場感あるサウンドに近づけるように努力し販売されますが、データの量自体が元よりも小さくなるため、若干の音質の劣化は否めません。ハイレゾ音源は、24ビット/44.1kHz〜192kHzといった音源のままで販売できるため、そういった音質の劣化を最小限に抑え、レコーディング時の臨場感そのままに、音楽を楽しむことができるのです。例えば、倍音豊かなヴィンテージ・ギターの音質の魅力を、できる限りリスナーに伝え、さらにリスナーも楽しむことができるのが、ハイレゾ音源の魅力とも言えるのです。

レコーディングからハイレゾ音源の配信まで

ハイレゾ音源を買おう!

 ハイレゾ音源は、基本的に配信サイトからダウンロードという方法で買うのが一般的です。ファイル形式は各サイトで統一されていませんが、おおむねWAV、FLACが主流となっています。WAVは、Windowsで一般的なファイル形式(Macでも再生可能)で、圧縮されない音声データのフォーマット形式。FLAC(Macでも再生ソフトによっては再生可能)は、可逆圧縮と呼ばれるファイル形式でデータを圧縮して保存でき、さらに音質の劣化もないと言われ、現在は多くのハイレゾ配信サイトで使われています。

 最後に、ALACでの販売もごく一部で行われています。ALACは、“アップル・ロスレス”と呼ばれるアップル独自の可逆圧縮ファイルで、音質の劣化がなくデータを圧縮して保存できる方式です。このファイルは再生ソフトによっては、Windowsでも再生できます。どのファイル形式も、音質を劣化させずに音楽を楽しむことができますが、WAVファイルのみアルバム・ジャケット等の画像を埋め込むことができません。

ハイレゾ音源が購入できる主な国内サイト

mora(http://mora.jp/
ソニーが手掛ける国内最大級の音楽配信サイトです。ローリングストーンズなどのロック・レジェンドから邦楽まで、メジャー・シーンで活躍するアーティスト、名盤をハイレゾ音源で提供しています。ファイル形式は、FLACです。

e-onkyo(http://www.e-onkyo.com/music/
ジャズやクラシックをはじめ、ロック、ポップス、アニソンなど幅広い高音質な音源を提供するオンキヨーの配信サイト。早い時期からハイレゾ配信を手掛け、その経験も豊富です。ファイル形式は、WAV、FLACなどに対応しています。

OTOTOY(http://ototoy.jp/top/
主に邦楽シーンのアーティストを中心に、メジャー/インディーズを問わず、幅広く個性溢れる音楽を配信する音楽サイトです。ここでしか買えない曲も多数あります。ファイル形式は、WAV、FLAC、ALACなどで販売しています。

ハイレゾ音源を聴くためには?

 ハイレゾ音源はダウンロード後、そのままPCで聴くことができるものもあります。しかし、何も準備せずにパソコンやiPodなどでそのまま再生すると、ビット/サンプリング・レートが自動的にダウンされてしまうため、ハイレゾ音源の持つ高音質をそのまま引き出すことができません。

 ハイ・ビット/ハイ・サンプリングのハイレゾ音源をビット/サンプリング・レートを下げずに再生するには、PCと高性能なD/Aコンバーターを備えた機器を購入する必要があります。“高性能”と書くと、もの凄く高い機器の購入を想像される読者の方もいると思われますが、1万円程度から買えるD/Aコンバーターもラインナップしています。またオーディオ・インターフェイスを持っていれば、それを活用することもできます。近年販売されているD/Aコンバーターは、USB接続のものが多く、“USB DAC”と呼ばれています。よってPCでハイレゾ音源を聴く場合には、PCとUSB DACをUSBケーブルで接続し、USB DACからRCAケーブルなどでプリメイン・アンプに接続することで、スピーカーやヘッドフォンでそのサウンドを聴くことができます。また中には、USB DACの機能を内蔵した、プリメイン/ヘッドフォン・アンプも販売されています。

【再生方法1】PC+USB DAC/オーディオ・インターフェース

デジマートでUSB DACを探す

デジマートでオーディオ・インターフェース(USB)を探す

デジマートでオーディオ・インターフェース(Thunderbolt)を探す

 それとは別に、ネットワーク・オーディオと呼ばれるハイレゾ音源を直接再生できる機器も登場しています。これは本体に内蔵されたハードディスク、もしくはネットワーク上で使える“NAS”と呼ばれるハードディスクに楽曲を入れ、そこから直接音源を再生できるオーディオ装置です。このネットワーク・オーディオについては、今後採り上げていきたいと思います。またこれと同様の機能を備えた、AVアンプも昨今では登場しています。

【再生方法2】ネットワーク・オーディオ・システム

 さらに最近では、ソニーのウォークマン(ZX1、Fシリーズ)を始めとしたハイレゾ再生対応携帯プレーヤーも、直接ハイレゾ音源の再生ができるようになっています。iPadでもハイレゾ再生が可能ですが、これにはちょっとした工夫が必要になるので、また別の機会にお話したいと思います。

【再生方法3】ハイレゾ音源に対応した携帯プレイヤー

 他にも、USB DACを内蔵したスピーカー(クリプトンKS-3HQMなど)など幅広い製品がハイレゾ音源に対応しています。今後も幅広くハイレゾ音源再生機器が登場するのは間違いなく、様々なリスニング環境に対応したシステムを組むことが可能です。もう壮大なオーディオ・システムを組まなくとも、高音質な音楽再生ができる時代が来ています。もちろん楽器と同様に、高価なオーディオ機器には、それ相応の魅力があるものもあります。

 まずは、手軽に揃えられるハイレゾ音源対応システムを準備して、高音質な“音楽”に触れてもらえれば幸いです。聴き慣れていた音源から、新たな発見があることもあり、音楽を聴くことがまた楽しくなるはずです。

 次回は、PCでハイレゾ音源を楽しむための方法を詳しく解説していきます。おすすめのUSB DACもいくつか紹介したいと思いますので、お楽しみに!

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プロフィール

菊池真平(きくち・しんぺい)
音楽雑誌「Player」、オーディオ誌を発行するステレオサウンド社で「Beat Sound」、「Digi Fi」の編集に携わった後に独立。現在はフリーランスで、ヴィンテージ・ギター関連書籍/ギターに関する雑誌等に、編集/ライターとして携わる。国内外のミュージシャンへのインタビュー等も多数行っている。

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