楽器探しのアシスト・メディア デジマート・マガジン

  • 連載
  • 週刊ギブソン Weekly Gibson〜第2回

歴史的1本を丸ごと再現! Collector's Choiceの魅力に迫る!

Gibson / Collector's Choice Series

  • 文:井戸沼尚也

ギブソン・ブランドのトピックを毎週お届けする連載企画“週刊ギブソン”。第2回となる今週は、2010年のリリース以降、ギブソン・ファンの熱い視線を集めるコレクターズ・チョイス・シリーズを紹介します。最新作#28(1958 Les Paul #8-6787 aka“STP‘Burst”)のことなど、今週も情報満載でお届けします!

このエントリーをはてなブックマークに追加

コレクターズ・チョイスとは?

 コレクターズ・チョイスは、ヒストリック・コレクションの延長線上にあるギブソン・エレクトリック・ギターのトップ・ライン・シリーズ。1950〜60年代のビンテージ・ギブソンは、製造年による仕様の違いや、同一年の製造であっても過渡期による仕様の違い、そしてどの楽器にも言えますが、個体差があります。膨大な量のビンテージ・ギブソンを分析し、その平均的な仕様を再現したものがヒストリック・コレクションです。それに対して、コレクターが秘蔵する素晴らしい木目を持つギターや、有名ミュージシャンが使用したギターなど、歴史上重要な意味を持つ1本を、サウンドはもちろん、ネック・プロファイルなどのプレイアビリティ、傷、修理や改造の跡、退色の具合などの外観も含め、特定の個体を完全に再現したものがコレクターズ・チョイスということになります。

コレクターズ・チョイスの特徴

 コレクターズ・チョイスは現在(5月下旬)までに17機種が発表されています。記念すべき第1弾は、2010年に発表された、ゲイリー・ムーアがピーター・グリーンから譲り受けて数々の名演を残したのち、現在はコレクターのメルヴィン・フランクスが所有している有名な1959年製レス・ポールを再現したものです。

デジマートでこの商品を探す

#1 1959 Les Paul Standard

 フロント・ピックアップが通常とは逆方向にマウントされている点や、独特の色合い、傷の入り方などが完璧に再現されており、世界のレス・ポール・ファンの間では“まさにDream Guitarだ”と話題になりました。

デジマートでこの商品を探す

#2 1959 Les Paul "Goldie"

 第2弾は、レス・ポール好き必携書『Beauty Of The Burst』でも紹介されている、シリアル・ナンバー9-0629の個体を再現したもの。ボディ・トップのリボン・カールと呼ばれる太めのうねる木目や、“Goldie”という通称の由来となる黄金色にまで退色した独特のサンバーストの色合いが再現されています。以降、1〜28まで、必ずしも順番に沿う形ではない計17機種が発表されています。

 コレクターズ・チョイスは、個体の再現という特性上、生産前の個体の解析が非常に重要になるとのこと。3Dスキャナーを使ってボディ・トップやネックのカーブが数値化され、さらに1台につき数百枚の写真を撮り、キャビティ内部の状態までチェックしたうえで生産されます。使用される木材は、ヒストリック・コレクション同様、ギブソンが保有する最高のマテリアルです。

 サウンドについても、オリジナルのピックアップやポット等の値を計測し、そのサウンド特性に合わせてアルニコ3マグネットを使用したカスタムバッカーや、カスタムバッカーの出力を弱めたカスタムバッカーS(コイルターン数を減らして出力を抑えたモデル)などの特製ピックアップを組み合わせ、その個体のサウンドを再現しています。

コレクターズ・チョイスのサウンド

 筆者はこれまでに3本のコレクターズ・チョイスを試奏しました。いずれも素晴らしいレス・ポール・サウンドでしたが、それぞれ異なる傾向を持っていました。

デジマートでこの商品を探す

#6 1959 Les Paul

#6は、フロントにカスタムバッカー、リアにはカスタムバッカーSを搭載し、リアはまるで“パワフルなシングルコイル”のようなサウンドを響かせていたことを覚えています。ピッキングに対する反応の良さも特筆すべき点です。

デジマートでこの商品を探す

#11 1959 Les Paul “Rosie”

 #11は、フロント/リアともにカスタムバッカーを搭載。フロントでも甘くなり過ぎずに明瞭な高域成分を持ち、リアは粘り気のあるアタックが心地よい、素晴らしいギターでした。イメージする“良いレス・ポール”そのままという感じです。

デジマートでこの商品を探す

#10 Tom Scholz 1968 Les Paul

#10は、トム・ショルツの1968年製の改造レス・ポールを再現したもので、フロントにP-90、リアにはディマジオのスーパーディストーションを搭載しています。当然上記の2種とは異なるタイプですが、非常にパワフルで、“ボストン・サウンド”を再現するにはこれしかないと思えるギターに仕上がっています。

 上記試奏動画については、3機種を同日/同条件で試奏したわけではありませんが、それぞれのサウンドの傾向はもちろん、素晴らしいボディの色味など、コレクターズ・チョイスの魅力を確認できるはずです。ぜひご覧になってください。

話題の近作、ギブソンCEOが所有する特別な1本を再現した#12

デジマートでこの商品を探す

#12 1957 Goldtop

 今年になって発表され、大きな話題となった#12 1957 Goldtop 7-3939は、Gibson Brands 会長兼CEO、ヘンリー・ジャスキヴィッツ氏所有の非常に状態の良い'57年製ゴールドトップを再現したモデルです。

 50'sラウンドの模範的なネック・グリップや、後年のモデルよりもヘッドの低めの位置に記されたGibsonロゴなどが特徴的で、ピックアップはフロント/リアともに、アウトプットが低めのカスタムバッカーSを搭載しています。シングルコイルとハムバッカーの中間のような出力のピックアップで、優れた高域特性と、ピッキングに対する反応の良さが特徴です。

 ジェニュイン・マホガニーの1ピース・ボディ・バック、2ピースのプレイン・メイプル・トップ、1ピース・ジェニュイン・マホガニー・ネック、ソリッド・ローズウッドの指板など、同シリーズすべてに言えますが、厳選材が惜しげもなく奢られ、前述のピックアップとマッチして、本器のビンテージ・トーンを生み出しています。

 本器は限定300本。コレクターズ・チョイス・シリーズにおけるゴールドトップは、現在のところ本器だけです。ゴールドトップ・ファンには、見逃せない1本と言えるでしょう。

最新モデル#28はロニー・モントローズ愛用の 1958 Les Paul!

デジマートでこの商品を探す

1958 Les Paul aka“STP‘Burst”

 コレクターズ・チョイスの最新モデル#28は、ロニー・モントローズが愛用していた1958年製のレス・ポールを再現したモデルになります。

 ロニー・モントローズといえば'70年代からレス・ポールの使い手として高名で、ゲイリー・ムーアの「パリの散歩道」以上にレス・ポールを泣かせまくった名演「Town without Pity」が看板でしょう(レス・ポール・ファンは必聴)。残念ながら2012年に鬼籍に入りましたが、世界中に多くのファンを得た名プレイヤーでした。そのロニー・モントローズが、自身の名を冠したバンド、モントローズの1stアルバム『Montrose』(邦題『ハード・ショック!』/1973年作品)のレコーディングで使用したレス・ポールを、現在の所有者であるドイツのコレクターの了承の下に解析し、再現したものが本器です。

 “STPバースト”と呼ばれるこの個体特有の退色具合や、ボディ・バックの塗装の剥がれ具合などがつぶさに再現されています。ボディ・バックの塗装の剥がれがエッジ付近に見られることから、かなりストラップを長くしていたことがわかり、これを見るだけでレス・ポールを低く構えたロニー・モントローズの雄姿が目に浮かぶようです。

 ロニー・モントローズの音源やライブ映像を確認する限り、オリジナルのサウンドは非常にパワフル、かつ濃密なミドルを持つ個体なのでしっかりそれが再現されているでしょう。こちらにもジェニュイン・マホガニーの1ピース・ボディ・バック、2ピースのフィギュアード・メイプル・トップ、1ピース・ジェニュイン・マホガニー・ネック、ソリッド・ローズウッドの指板など厳選材が採用されています。

 本器も限定300本。記念ピックや、このギターの歴史に関わる近年の所有者やロニーの元妻といった関係者のインタビュー映像を収めたUSBが付属しており、ロニー・ファンにはたまらない1本になっています。日本上陸を心して待ちましょう。

コレクターズ・チョイスの未来

 コレクターズ・チョイスはこれまで、50年代のレス・ポールを中心に構成されてきました。ただし、あくまでも歴史上重要なアイコンとなる1本を再現するというコンセプトのシリーズであり、50〜60年代のレス・ポールに限定したシリーズではないはずです。今後は、例えば、もう少し近年のモデル、レス・ポール以外のモデル、使用された期間は短くても有名な楽曲の演奏に使用されたギターなど、様々なモデルが登場する可能性が期待できます。ますます楽しみな、今後のコレクターズ・チョイス。週刊ギブソンでは、引き続きコレクターズ・チョイスの情報を追いかけていきますので、お楽しみに!

※週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは毎週金曜日に更新します。次回は5月30日を予定。

このエントリーをはてなブックマークに追加

製品情報

製品レビューREVIEW

製品ニュースPROUCTS