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  • ビンテージ・エフェクター・ファイル Vol.5

とにかく歪む! 抜群の人気を誇った70年代のジャパニーズ・ファズ/ブースター

Roland / AF-100 BeeBaa

  • 文:西岡利浩
  • 写真・動画撮影:雨宮透貴

長い年月を生き残り、現在でも多大な支持を集める“ビンテージ・エフェクター”。そのサウンドや特色を試奏動画と共に掘り下げていくのがこのコーナーだ。連載第5回目は、本稿初登場の日本製エフェクター、2種類のファズ・サウンドとトレブル・ブースターの複合機能で多大な人気を集めたRoland AF-100 BeeBaaを紹介してみよう。

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Brand History 〜About Roland

 ご存知、日本が誇る世界的電子楽器メーカー「ローランド株式会社」。自らが立ち上げたエース電子工業を退職した梯郁太郎氏が、1972年(昭和47年)に大阪市は住之江区に設立しました。梯郁太郎氏は、その前身となるエース電子工業で、「ACE TONE」ブランドの電子オルガンやアンプなどの楽器を製造・販売していました。1963年にはギター・アンプの製造販売を開始、後に「FUZZ MASTER」というエフェクターも販売する事となります。ビートルズや日本のGSブームの流れに乗り、国内での知名度が高まりました。

 今回ご紹介する国産ファズの名機「Roland AF-100 BeeBaa」は、「FUZZ MASTER」を進化させ、よりモダン化したモデルと考える事もできるでしょう。少し話はそれますが、この「BeeBaa」が製造されていた頃、同社からは同じテイストの筐体のファズ/ディストーション「Funny Cat」というカワイイ子猫ちゃんも製造されていました。こちらも面白い逸品なので、いずれご紹介する機会を持ちたいと思います。ROLANDブランドのエフェクターはこれらの他に、単機能のモデルもいくつかリリースされていて、コンプレッサーやフェイザー、ペダル・ワウなどがありました。

Roland AF-100 BeeBaa 0:03〜1:32 FUZZ TONE 1/図太い歪み音 1:32〜FUZZ TONE 2/低域と高域に特徴のある歪み音 3:38〜ブースター

AF-100 BeeBaa〜その成り立ち

 「BeeBaa」は、1970年代の中期から生産が開始されました。まだ、オーバードライブやディストーション的な歪みが無い時代。当然ながら、抜群の人気を誇りました。やはり当時の日本のギタリストも、刺激的なROCKには歪みサウンドが必要だったんですね。

 「BeeBaa」の存在はご存知の方も多いと思いますが、手に取った事のない方にはどういう機能なのかわからないと思いますので、ご紹介します。「BeeBaa」はファズ単体機と認識されている方が多いかもしれませんが、実は複合エフェクターです。慣れてしまえば、とても使い勝手の良い設計になっています。第一の機能はファズです。それともう1つ、トレブル・ブースターという機能があります。名称からすれば、高域だけをブーストするの?って感じですが、現在で言うところのクリーン・ブースターとお考え頂ければわかりやすいでしょう。更に親切なことに、ファズのサウンド・キャラクターが2種類選択できます。そのサウンドに関しては後ほどご説明します。

 ところで、この「BeeBaa」という固体名称の由来はご存知でしょうか?ビーバーと聞くと、強い歯で木を切り出し、巣を作り上げる動物を想像しがちですが、まったく関係ありません。動画のサウンドをお聴き頂くと納得ですが、スイッチを踏んだ途端に"ビーッ"とか"バーッ"って音がしますよね。実はこの音のイメージから命名されたのでありました。さすが、笑いの聖地・大阪のメーカー……ユニークな発想ですね!?

Roland AF-100 BeeBaa

Roland AF-100 BeeBaa

AF-100 BeeBaa〜そのメカニズム

 「BeeBaa」が発表された当時は、海外製のアタッチメント(エフェクター)達も、現在と比べ比較的大型のものが主流でした。その影響かどうかは断定できませんが、この「BeeBaa」も大型の部類に属します。しかし、先に触れた複数機能の切り替えと、現場でのアクションを考えると機械式フット・スイッチの踏みやすさや、靴が引っ掛かってツマミを誤動作させてしまうという問題もなく、非常に理に叶ったサイズと傾斜を持ち合わせたデザインになっています。電池の交換の手軽さも考慮されていて、ドライバーが不要の設計です。筐体の両サイドに配置している銀ネジを緩めるだけで、筐体がオープンする仕組みです。ただ、配線材があるため、開け閉めする際はケースの重さで断線しないように注意しましょう。

 ケース内部を見ると、パーツ群は非常にゆったりと配置されています。筐体のサイズから考えると、もちろん基板面積も大きく取れるのですが、恐らく、トラブルが起きた時の修理のしやすさも考えられていたのだろうと思います。気になる使用部品ですが、汎用性も加味されているのでしょうか、特に特殊な部品は使用されていません。ただただ、回路の設計であのサウンドを構築して行ったのだと思われます。歴史的・世界的に有名なFUZZ FACEやBIG MUFFとは異なる独特かつ刺激的なサウンド・デザインです。まさに“JAPAN FUZZ”の礎と呼んでも過言ではないでしょう。

Roland AF-100 BeeBaa

Roland AF-100 BeeBaa

Roland AF-100 BeeBaa

AF-100 BeeBaa〜サウンド・インプレッション

 まず、ファズのサウンドですが、とにかく歪む!歪む! エフェクト時の波形がOD系やDS系とは異なるので、ギターの原音に忠実という感じではなく、ひたすら音色を変化させます。簡単に2種類のファズ音を説明すると、1つは図太い歪み。もう1つはトーンを絞るとドンシャリ、トーンを開けるとそれこそビービーという高域に特徴のある歪みです。前者はBIG MUFF系列で後者はFUZZ FACE系列と考えるとわかりやすいかもしれません。ただし、一貫して「BeeBaa」のサウンド、ニュアンスは維持されています。ファズという言葉は"毛羽立つ"という意味ですが、ジリジリ毛羽立つどころか、図太いモードではもはや歪みの壁です。ファズに馴染みの少ない若い世代のプレイヤーにとっては非常に新鮮に感じるでしょう。

 替わってブースターのサウンドですが、先にも書いたように、クリーン・ブースターと考えて問題無いでしょう。ADJツマミをMAXにすればクランチ程度の歪みが出せます。ところが、発売当時のバンドマン達は現在と違い、あまり恵まれた音響環境で演奏出来なかった事もあり、このブースターにマイクを接続してボーカルを際立たせるという荒業を駆使していた人も少なくありませんでした。また、当時の使い方としてはベンチャーズ系のプレイヤーがここぞという場面でギターの音量だけを上げるという使い方もしていました。アンプが歪んでいないという前提でですが。もちろん現代の様に、歪んだアンプに接続してブーストする使い方も出来ます。

 コントロールは、FUZZ部分の「SUSTAIN」「TONE」「VOLUME」、BOOSTER部の「ADJ」の計4つ、スイッチはエフェクトのオン/オフ(EFFECT/NORMAL)、「FUZZ」と「TREBLE BOOSTER」の切り替え、FUZZの「TONE SELECT」の3つを装備しています。各コントロールとサウンドの変化ですが、現代のエフェクターと違い、出来るだけ1つのエフェクターで多くのプレイヤーに満足を与えるという使命に基く設計だったのでしょう。1つのツマミが持っている可変幅が非常に広い点が素晴らしいです。まさに動かした分だけ音がついて来るという感じです。トータル的な感想ですが、時代が一回りした現在だからこそ非常に戦力になるエフェクターだと思います。アンプを歪ませずに「BeeBaa」を駆使すれば、新しいギター・サウンドとして注目を浴びるといっても過言ではありません。いつかどこかで出会ったら、是非直接お試しください。

試奏に関して

 サウンドの特色を分かりやすくお伝えするため、ハムバッキング・ピックアップのギターと、真空管アンプの代表的なモデルを使用した。

・ギター:レス・ポール・タイプ
・アンプ:マーシャルJCM2000

動画ではマーシャルをクリーンにセッティングし、試奏を行なった。

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Roland / AF-100 BeeBaa

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