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  • 週刊ギブソン Weekly Gibson〜第16回

噂の小型フルアコ、ギブソンES-390を徹底チェック!

Gibson Memphis / ES-390

  • 文:井戸沼尚也
  • 映像編集:雨宮透貴

今週は魅力的なシンボディ・フルアコースティック・ギター、ES-390を紹介します。ソリッド・ギター並みのボディ・サイズと、フルアコらしい軽量さで、とり回しの良さは抜群! おまけにサウンドはES-330直系の“深みがあって、キレもある”サウンドときた。要注目です!

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ES-330直系のフルアコ/P-90仕様

 ギブソンと言えば箱、箱と言えばギブソン。そんな図式がギター・ファンには定着しているはずです。ギブソンはもともとマンドリンやアコースティック・ギターの製作からスタートした会社ですから、箱モノの“鳴り”に関しては一家言あるメーカーです。さらにエレクトリック・ギターの製造に関しても、ソリッド・ギターやセミアコースティック・ギターを製作するはるか以前から、多くのエレクトリック・アーチトップの名器を世に送り出してきた実績があります。こうしたギブソンの箱モノの歴史に、新たな1ページが加えられました。今回、発表されたES-390は、これまで週刊ギブソンで数多く紹介してきたような過去の名器のリイシューではなく、まったく新しいコンセプトを持つ小型フルアコ・ギターです。ただし、それを説明する前に、ES-335とES-330という名器中の名器について説明しておきましょう。

 ES-335は言わずと知れたセミアコの代名詞。ボディ内部にセンターブロックを持ち、ソリッドと箱モノの良いところを併せ持つ名器です。一方のES-330は、ボディ内部にセンターブロックを持たないフルアコースティック構造。知名度こそES-335に一歩譲りますが、そのサウンドの素晴らしさは、方向性こそ違えども劣るものではありません。フルアコらしい豊かな鳴りと、P-90の特性からくる歯切れの良さ、そして独特の粘りという相反するサウンド特性を持つ名器なのです。古くはグラント・グリーン、近年では斉藤和義の愛器として知られていますね。

 ちなみに、よくES-330をスペック上から“ギブソン版のカジノ”と誤解している人がいますが、ES-330は1959年、カジノは1961年にリリースされていますので、カジノを“エピフォン版のES-330”と言うのが正解です。このES-330の直系と言えるのが、今回リリースされたES-390です。フルアコ仕様、P-90搭載という点は、まさにES-330譲り。ES-330との大きな違いは、そのボディ・サイズ。ES-390のそれは、近年のギブソン箱モノの新しい流れであるES-339やCS-336と同じ小型のボディ・サイズです。ソリッド・ギター並みの大きさのボディは、ES-335やES-330はどうも大き過ぎるという平均的な日本人にとって、とても扱いやすいサイズになっています。

それでは、噂のES-390のサウンドを動画でチェックしていきましょう。

使用アンプ:フェンダー 68 Custom Deluxe Reverb
使用シールド:ギブソン18' Purple Gibson Instrument Cable

太く深い単音、軽やかな和音

 ES-390のサウンドの特徴は、まずはなんといってもクリーン・トーンの深みにあります。フロント・ピックアップを選んだ時には、ジャズやブルースに最適な、太く、甘く、深いトーン。太めの弦を張れば、グラント・グリーンのようなプレイに最適です。次に、ピックアップをセンターにします。するとフロントの時のゴン太トーンから一転して、軽めのチャンキーなサウンドに変化します。コードの一音一音がプリッとして、和音全体が重くなりません。例えば、歌モノのバック等でストラトでは軽過ぎるというような場合、これ以上ないほどハマることでしょう。セレクターはセンターのまま、フロント・リアの両ボリュームを調整すると、トーン・ニュアンスがカラフルに変化します。動画を観ていただければわかるとおり、同じカッティングでも様々な表情をつけることが可能です。

 演奏性について特筆すべきは、とり回しが本当に楽な点。非常に軽量で、弾いていて疲れません。ネックのグリップについては、ビンテージのES-330には年代によって様々な癖があり、60年代後半などは細過ぎて弾きにくいという人も少なからずいるようですが、本器のグリップは癖がなく、万人に好まれるタイプです。

 話をサウンドに戻して、今度は歪みをチェックします。これが驚くほど良いトーンでした。もちろんソリッドとは違うアコースティック感があり、セミアコの335よりはもっと“無理して歪んでいる”感じがするのですが、そこがなんとも言えず良い味になっています。P-90らしいネチっとしたアタックと、フルアコらしいアタック後の軽やかな余韻が最高です。また、ビンテージのES-330ではリア・ピックアップの音が極端に弱い個体を散見しますが、本器はそれは感じさせず、フロント、リアともに使える音でした。

 弾きやすく、扱いやすく、クリーンも歪みもいける素晴らしい1本。サンバーストのカラーリングが、新品でありながらビンテージ感のある深い色味であるのもグッド・ポイント。ES-390、箱モノ好きなら絶対要チェックの1本です。


※週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは毎週金曜日に更新します。次回は9月5日を予定。

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製品情報

Gibson Memphis / ES-390

価格:¥318,000 (税別)

【スペック】
●ボディ:3プライ・メイプル/バスウッド/メイプル●ネック:マホガニー●指板:ローズウッド●フレット:22●ピックアップ:MHS P-90×2●コントロール:ボリューム×2、トーン×2、3ウェイ・ピックアップ・セレクター●カラー:ビンテージ・ダーク・サンバースト
【問い合わせ】
ギブソン・ジャパン http://www.gibson.com/
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