製造中止後もベーシストの間で根強い人気のある、アーミー・グリーンのロシア製ビッグマフを基に、機能をベースに特化したのが先行機種のBass Big Muff Piだった。本機はそれをさらにコンパクト化した製品である。ドライ音（原音）を加えるミニ・スイッチの“ベース・ブースト”ポジションが省略されているが、先行機種との機能面での違いはこれだけで、実質的には同等と考えてよいだろう。むしろ、ミニ・スイッチの切り替え方向が前後ではなく左右になり、エフェクトをオン／オフする時につま先でこのスイッチを切り替えてしまう心配が無くなったので、結果的には歓迎すべき仕様変更と言えるかもしれない。

　本機を使いこなすには、ティルト・タイプ（反時計方向に回すとハイ・カット＆ロー・ブースト、時計方向に回すとハイ・ブースト＆ロー・カット）のやや特殊なトーンの設定とサスティーン（歪みの深さ）の設定、それにドライ音のオン／オフという、3つの要素のバランスを把握することが肝心だ。また、ドライ音はピック弾きやツー・フィンガー、スラップといった奏法によって変わる。これらの関係を理解すれば、深くてトレブリーな歪みにドライ音を加えて太さを出したり、ドライ音をカットした浅目でダークな歪みを作ったりと、これ1台で多彩な“使える”サウンド創りが可能になる。

Electro-Harmonix / Nano Bass Big Muff Pi