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  • Dr.Dの機材ラビリンス 第12回

直列の導体たち〜ギター・アンプ用スピーカー・ケーブル

スピーカー・ケーブル

  • 文:今井靖

ギターとアンプをつなぐケーブルにはこだわりがある、というギター弾きは少なくないだろう。エフェクター間のパッチ・ケーブルまで含め、ギターからの信号にロスが無いよう、また好みの音色に近づくよう、さまざまなブランドの製品や長さにトライしているはずだ。しかしアンプとスピーカーをつなぐ“スピーカー・ケーブル”を、同じような感覚で捉えているギター弾きは少ないのではないだろうか。パワー・アンプ後の大容量の電気信号を一気に流す線材なだけにおおざっぱな印象を持たれやすいが、たくさん電気が流れる場所というのは、それだけたくさんの情報もそこを通っているということでもある。ただの通電ケーブルと侮っていてはいけない。むしろ、その先では補正の許されない場所に配置されたケーブルだからこそ、音質に決定的な効果をもたらす可能性があると知るべきである。

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プロローグ

 音を伝える、という作業は実に無慈悲なものである。

 それが、少なくとも隅々まで神経が通っている自らの肉体で完結せず、外部機関での変化や増幅を必須条件としているシステムに至ってはなおさらである。直列に配置された伝達手段は、常にパーツの最小単位で駆動を保証しなければならず、途中の何か一つが欠けても、それは新たな音としてどこに届くわけもなくただ沈黙を貫くのみである。

 電気式楽器というものの多くがそうである中で、エレキギターというジャンルもまた例外ではない。それは、まるでギャンブルの日々である。
 エレキギターやアンプのオーナーは、一晩寝た次の日に、「昨日と同じ音が出るのか?」という不安と常に闘っている。当然だ。トラブルは、必ず起こるし、それはこちらの都合を決して考えてはくれない。マーフィーの法則も裸足で逃げ出すほど、まるで謀ったように最も都合の悪いタイミングでそいつは訪れる。一ヵ所の半田のはがれ、たった一つのコンデンサーの消耗、ケーブル内の一本の線材の断線が、音を伝えるという行程において致命傷となり得る。エレキギターで音を出すという行為は、それほどまでに危ない綱渡りの連続によって成立しているのであり、自らの手には及ばない、効果もよく知らない無数の部品やパーツを無条件に信頼する事と引き換えに支えられているのである。それは、どんな優れた指先を持つ名手の演奏も例外ではない。しかし、そこにどれほどの不条理があったとしても、そんなものは、“ギタリストの強欲”に比べれば全く些細なペナルティでしかない。業界を席巻するその“逆説的皮肉”だけが真実を暴き出していることに、いったいどれほどの皆さんが気付いているだろうか?

 ギタリストという種類の人間は、多かれ少なかれ、「エレキギターで音が出る事は無数の奇跡の連続である」事を本能的に悟っている人種なのだ。それにも関わらず、そこに、さらに『音質』という他のベクトルからやってきた成分にも比重を与えようとするのが彼らである。当然のように、本人には本格的な電気的知識も無ければ、ハード的なものを製造する能力があるわけでもない。それでも彼らは、ギターやアンプをただの電気が流れるだけの奇跡の箱で終わらせておく事を許さないのだ。

 その無慈悲、わがままを越えた非情さといったらどうだ。まるで暴君である。しかも、結果的に「良い音」が出たら、まるで全てが自分の手柄であるかのように自慢気である。だがそれは、見方を変えれば、そんな彼らの能天気ともいえる飽くなき音への純粋な追求が、今日のハードの信頼性や音質向上に役に立っていると言えなくもないから、この業界は面白い。

 どうやら、エレキギターの音は、ただ無慈悲なだけの発声器官である事を通り越し、奇跡の先にあるものを「楽しむ」時代に突入しつつあるようだ。その時代にあって、ギタリストそのものの資質として、まだその“単位”こそ大まかではあるが、彼らなりの目に見える範囲で“音質的責任”を自ら負担しようという傾向が生まれつつある事も確かなようである。

 その最も大きな潮流こそ、大きなハードを繋ぐ『線』へのこだわりではないだろうか。現代に、これだけ多くのギター用シールドや電源ケーブル、そしてハードの内部配線やスピーカー・ケーブルが存在するに至った要因は、ギタリスト自らがその音質と性能を、まるでアンプやギター本体とほぼ対等な伝達のマテリアルとしてプロデュースする義務を感じているからに他ならない。かつて無知なままやたらめったらに課していたハードによる音質の無慈悲が、今や、自らの負担となって降り注ぐ倒錯にはただ笑うしかない。これを皮肉と言わず何と呼べば良いだろうか。

 もはや、ギタリストはプレイの事だけ、テックはギターやアンプ、スピーカー・キャビネットの修理や運搬の事だけ考えていれば良いという時代ではなくなったという事だ。ハードとハードの間にあるあらゆる『線』について、ギタリスト自らが過去に与えた可能性に照らしながら音が伝わる情報を隅々まで精査し、その音質的課題に直接関わっていくしかなくなっていったのである。

 どうしてそうなったか? 答えは簡単である。彼らは気付いてしまったのだ。ギターの中のシグナル、アンプの中の熱、ケーブルの中の通電……これらは等しく皆、自らのプレイを伝えるという概念において結ばれた、欠く事のできないたった一本の道程であること、そして、ギタリスト本人もまたその“直列”の奇跡における最初の「伝える意志」という名の『導体』そのものであった事に。

 だから、今日もギタリストは隣を繋ぐ『線』を気にしている。まるで、人と人が手を取り合うような無上の安心を求めて。

商品の選定・紹介にあたって

 今回は、電気信号が音に変わる直前の大容量シグナルを司る、『ギター・アンプ用スピーカー・ケーブル』について調査した。あくまでもセパレートのギター・アンプで使用する事を前提に、例によってデジマートの在庫を中心にモニター・ラインナップを選出してある。コンダクター(導材)や、CANARE、BELDENといった供給線そのもののコンポーネント・ブランド比較ではなく、加工不要で使用できる状態で発売されている市販完成品(プラグやハンダ付けも含んだ製品)の中から優先的にレポートをしていった。条件としては、バナナやスピコン・タイプのプラグを持つ製品はなるべく避け、基本はフォン-フォンのプラグ構成とし、ケーブルの長さも1mもしくは3フィート程度になるべく揃えた。ハード面、音質面において筆者個人が特に気になったものについては(結果的に半分以上の製品がそうなのだが)、キャビネットの内部配線材としての適性判断や、プラグ交換による比較的単純な性能向上への踏み込んだ考察も積極的に行っているが、そちらはあくまで当方の所持機材内での趣味的考察と思っていただければ幸いである。

※注:(*)マークがモデル名の後につくものは、レビューをしながらもこのコンテンツの公開時にデジマートに在庫が無くなってしまった商品だ。データ・ベースとして利用する方のためにそのままリスト上に残しておくので、後日、気になった時にリンクをクリックしてもらえば、もしかしたら出品されている可能性もある。興味を持たれた方はこまめにチェックしてみよう!

海外ブランド編


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01 SOLID CABLES [Eleph/GT]

 近年、その音質と信頼性のバランスで新興勢力のプロ・ギタリスト達の間で注目を集める、米国はオレゴン州ポートランドのブランドSOLID CABLES。創始者のニエル・マクゴーギー自身もステージ・プレイヤーだった事もあり、本人が経験上必要と感じた“音質と耐久性の両方を兼ね備えたケーブル”を製造することへの情熱は伊達じゃない。“Eleph”はブランドの中でも上位ラインのスピーカー・ケーブルで、編み込みのグラスファイバー・ジャケットの触り心地が、いかにも高級ケーブルを思わせる作りだ。ハウジング部の皮膜もかなり余剰感があり、プラグ自体を覆うようにシールドされている事によって、捻れや振動防止にも高い意識を払って作られている事が伺える。手に取るとずっしりとした厚みを感じるものの、線材そのものは非常に柔らかく、取り回しはかなり容易。この柔軟さは、アンプ内部、特にジャンパー線等のクオリティにも気を使うユーザーには朗報だろう。音は、かなりハイ側の分離感が強く、解像度の高い部類に属する。ややハイファイながら、わざとらしいコンプ感もなく、モダンな抜けの良い現代風のハイ・パワーなアンプとよくマッチする音質だ。歪みの質も細かく表現でき、音量が小さくてもピッキングのメリハリがはっきり出てくる。かなり全体的な水準の高いケーブルだが、アルニコ系のユニットとは組み合わせにコツがいると感じた。ビンテージ系のこなれたスピーカーだと、モダンでストレートすぎるこのケーブルの突出音がややうるさく感じてしまう人もいるだろう。そこへ来ると標準仕様の“GT”は、“Eleph”ほどのハイファイ感はなく、フラット寄りに仕上げられていてスピーカーを選ばない印象だ。バリッとしていて、しっかり太い音が出る。ハイ・ミッドの抜け感も安定していて実に清々しいパワーが感じられる。大げさなふれこみや大物ミュージシャンによる実績ではなく、実質本意のバランスで出口の音質に一段階グレードアップを図りたいギタリストならば、値段的にも躊躇する事なく手に取れるレベルにバランスされている点も見逃せない。
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02 Vovox [sonorus drive Speaker Cable]

 2002年創業のVovox AG社は、その製品の全てをスイスのルツェルン州エピコンの自社工場で一貫して生産する徹底ぶりで、ヨーロッパを中心に支持を集めている新興のハンドメイド・ケーブル・メーカーだ。「理想の導体」と言われながら、振動に弱く、また柔軟性にも欠ける事から、ギター環境などでは取り回しの難しさ故に転用しにくかった“ソリッド・コア(複数のワイヤーを撚り合わせたいわゆる撚り線ではなく、基本的に単線の導体による芯径を持つもの)”を積極的に採用する業界注目の新基準を実用化している事でも知られている。同社の“sonorus drive”シリーズのスピーカー・ケーブルは、本来、折れ曲げられたりねじられたりという事に耐久力の無いソリッド・コア採用品としては、驚くべき柔軟性を与えられた画期的ともいえる製品である。もちろん、撚り線の製品に比べれば硬さは感じるが、それでも、その曲がり具合は充分に実用範囲と言えよう。音質的にもソリッド・コアの恩恵は顕著で、全体域にわたってかなりブライトな上、生々しいまでにピュアなサウンドを提供してくれる。弾くごとにピークの移動が感じられるほどデリケートな音質なので、フラットな出音のイメージを追い求める人には、一瞬、「あれ?」という気にさせられる事もあるだろう。しかし、それこそが、撚り線ケーブルのもつ従来基準とされていたダイナミクスによって頭打ちになっていた、ギター信号本来のむき出しの音質、そしてレスポンスなのである。ケーブル自体の音の重心はロー・ミッド寄りの作りなのだが、倍音成分の出方が強いため、実際にはハイも濃く聴こえる。アタックも派手だ。この製品は出音がデリケートなので、スピーカー・ユニットとの相性を考慮しながら慎重に使い分けるのが本筋なのだろうが、意外にも流行りの“Vintage 30”のような高域を強調するスピーカーとの相性は抜群で、特に、12インチ以上の口径のあるスピーカーでは、ユニットの石に関係なく、試したほとんど全ての機種でエッジの立った良質な切れ味が生まれる結果となった。手元で音粒を揃えられるテクニックを持つほどのギタリストならば、十二分にこのケーブルのポテンシャルを使いこなす事ができるだろう。また、マイク/ラインのようなグラウンド専用のコンダクター・シールド構造を採用していることで、かなりノイズ面にも強いと感じた。ごまかしのきかない高度な表現力を有したこういった音質こそ、新世代の基準になってくるものなのかもしれない。
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03 Monster Cable [STUDIO PRO 2000-S]

 ギター・ケーブル界に高級志向とプロフェッショナル品質による差別化を定着させた、シールド・メーカーの老舗Monster Cable社。スピーカー・ケーブルがまだただの電源ケーブルを流用していた時代から、線材を通る際の周波数による音の速度の違いに目をつけ、それぞれの周波数帯に最適な太さ、長さの芯線を割り当てる事によって到達速度を一定化する「マルチゲージ・ワイヤー・ネットワーク」を実践化した事でも知られる。“STUDIO PRO 2000”シリーズはその最高峰のギター用ケーブル・ラインナップの一つで、通常のギター・シールドよりも、むしろ大容量の電力を供給するスピーカー・ケーブルの方がその本領を発揮しているとして、プロのレコーディング現場では高い評価を得ている定番の品となっている。とにかく音のまとまり感が抜きん出ており、塊になってぶっ飛んでくる。迫力という点ではやはり別格のスピーカー・ケーブルだ。地に足のついたパワーと前方に迫る音の量感を余す所なく伝えながら、高音も中音も低音も一気に壁のようにせり出してくる量感は他には無い重厚さである。解像度だけは、ハイファイな最近のケーブルに比べるとやや劣るものの、高域は余計なチリチリする感じもなく、常にどこか懐の深さを感じさせる音圧がそれを補ってなお有り余るロックなテイストを加味する。音質自体もロー・エンド以外はかなりフラットに近く、使う楽器に関わらず余計なピークを生まないのでかなり順応性の高いケーブルと言える。ただ、あまり小出力のアンプ……例えば5Wや1Wといった……で使用すると高域が溶けて丸くなりすぎるきらいがある。このケーブル本来の張りのある音で使いたいのならば、40W以上のアンプを大音量で鳴らせる環境を用意したい。アタックは全体的にまろやかだが、低域には常にごんごんと唸るような独特の揺れ返しがあるので、重量がなく、インシュレーターの貧弱なキャビでの使用は差し控えた方が無難だろう。標準で24kゴールドのコネクターを装備しているのは、歪みを生む接点をいかに減らすかを意識した老舗ならではの配慮と言える。手軽にプロのレコーディング・スペックを実現したいユーザーには是非試して欲しい安定の品質だ。
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04 George L's [Speaker Cable]

 ソルダーフリー・ケーブルの本家George L’s。なんと、同社が提供する純正スピーカー・ケーブルも、専用のプラグを使用することで半田不要で組み上げる事ができるから驚きだ。ギター・シールドならばいざ知らず、大電力の流れるスピーカー・ケーブルではほとんど類を見ない仕様だ。しかし、その恩恵は大きく、最近流行りのペダル・ボード内に置けるミニ・パワー・アンプへの配線や、キャビ内部の断線トラブルへの対応など、現場でのテックへの負担はそれだけでかなり軽減されることだろう。ステージ・テクニシャン系の用途でなくとも、適当な長さを買っておいて、ステージの機材配置などに応じて半田を用いず自由にスピーカー・ケーブルの長さを変えられるのは魅力に違いない。音質は同社のギター・シールドと同じで高域がよく抜ける感じのナチュラルなサウンドだが、少しミドル目に重心が寄った“ビンテージ・レッド”の音質に近い気がする。逆に低音はタイトで引き締め感があるが、出音の色彩ははっきりとしており、強くピッキングすればしっかりと低音もついてくる。よほどの高出力、ハイ・ゲインな音でない限り、まっとうな音像を高速で届けてくれる使い勝手に優れた万能音質と言える。ケーブルの皮膜は硬めで曲げにくいが、そこはソルダーレス・ケーブルの特性として長さをいくらでも後から修正できる事もあり、線材自体が軽めな事を活かしてコンボ・アンプの内部配線のグレードアップにもオススメできる。無半田での使用には専用の純正“S-PLUG”が必要だが、半田付けをするならばのSwitchcraft製の“280”や“226”も普通に使えるので、圧着接続などをプラグ内に組み込みたい自作派ユーザーはそちらを利用する手もある。
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05 DF Leads [Speaker Cable]

 Neutrik社製の“Silent Plug”採用によるミュート機能(スイッチ・ジャック)により、アンプの電源を入れたままギターを抜き差しできるシールドとしておなじみの英国DF Leadsからも、高品質なスピーカー・ケーブルが提供されている。線材はドイツのCORDIALブランドを採用し、イタリアのオーディオ機器メーカーPROELとも技術協力する一大ヨーロッパ統合ブランドの名に相応しいオール・ハンドメイド仕様。銘だけを聞くと有名なブランドを安易に寄せ集めただけにも聞こえるが、それがそのままに留まらない高品位なバランスのもとで組み上げられていることは、出音を聴けば明らかだ。実に美しい高域の再生能を有しており、静謐で濁りがなく、それでいて立体的なメリハリをきちんと持っている。きらびやかな襞が分厚く広がっていく感じは新品の弦に張り替えた時の様だと評される通りで、透過度の高い音質なのにも関わらず全くハイがキンキンしないのも良い。小音量でもどこかの帯域にヨレてしまう事もなく、常に出音の中心を正確に捉える感じだ。ピークが割れ気味になりがちなシングル、特にリア側を多用するプレイヤーにオススメだ。また、ソリッドステートのパワー・アンプでも、出音がこのケーブル一本で驚くべきふくよかさを持つようになった事にも言及しておこう。有機的に、そして、音楽的に……出音のニュアンスを細部までコントロールしたい本物の上級者が求める最上の音が詰まったケーブルだ。ビンテージのキャビネットを、ヨーロッパ仕様の230Vヘッドのフルテンで鳴らしたい時、音質、安全性でともに高い水準の信頼性を得られる数少ないスピーカー・ケーブルの一つである事だけは断言できる。
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06 Electro-Harmonix [CSI HID 12/CSI 18]

 Big Muffをはじめとした奇抜なエフェクター・ラインナップでマニアのハートをがっちりと掴む老舗ブランドのエレハモが展開する、USAラインのスピーカー・ケーブル・シリーズ。圧倒的なコストパフォーマンスだけが売りの安ケーブルに見られがちだが、思いのほか音のバランスに優れたケーブルという印象を受けた。低域が少しダブつくが、ハイもミッドも素直に音が伸びてくるし、どの弦で弾いても極端に音量が下がったり、もたつく印象も無かった。さすがに高級ケーブル並みのクリアなレンジ感こそ持ち合わせないものの、200〜250Hzあたりに密度の濃い部分があり、きちんとギターの美味しい部分を掬い上げてくれるので、弾いていて楽に感じるのも好材料だ。ただし、作りは価格相応に脆弱なので、ハードな使用には全く向いていない。ジャックはSwitchcraft製を基本的に採用しているので抜き差し自体に不安は無いが、ハウジング開口部のシールドが甘く、わずかな振動でもノイズの発生源となりそうだ。スピーカー・ケーブルとしては、少し動かしただけでスキマができるこの部分の補強は必須と思えた。また、線材を覆うコーティングにも想定される捻れや折れに対応できるほどの強度はなさそうだ。実際に、指で折って圧迫するだけで雑音が混入するので、スタジオの分厚い扉に挟んでの使用や、重量物を置いての音出しは避けた方が良いだろう。音質や強度から考えても、25W程度までの容量のスピーカー間でのジャンパー線あたりならば良好なパフォーマンスを発揮するに違いない。ちなみに、上位機種の“CSI HID 12”のプラグを、ゴム・ブッシュのついたAmphenol“ACPM-GN”に付け替えただけで、格段にノイズの少ない明瞭なサウンドに生まれ変わった事だけは付け加えておこう。コンダクターの質自体は悪くないのに、パーツの選択で損をしているケーブルのようだ。実におしい。
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07 Planet Waves [PW-S]

 ギター・ストラップのメーカーとして出発し、今やD’Addario傘下の様々なアクセサリーを手がけるPlanet Waves社。そのスピーカー・ケーブル部門の中核とも言うべきCustom Series Speaker Cable “PW-S”こそ、その社風そのものとも言える、耐久性とデザイン性、そして創造性を最大限に体現している製品と言っても過言ではない。ハード面においてもその特徴は際立っており、コンプレッション・スプリングを採用したプラグは抜けにくく、ぴっちりとキャビネットとのスキマを固め、ステージ間の長い引き回しで踏まれたり引っ掛けられたりしてもびくともしない頑強さを誇示する。さらに、低コストながらゴールドのプラグ・ヘッドを持ち、そのハウジング接合部が一体化した形状も振動対策としては充分な強度がありそうだ。柔軟性と伝達性能、そして剛性を両立するケーブルとしては実用面で十分な合格点といえるだろう。肝心の出音はと言えば、ナチュラルだがややハイ側の減衰が速いという第一印象だった。しかし、小音量でもアタックにはしっかりとパンチがあり、ローも充分に筋肉質なので、ユニットの容量に左右されず突っ込みの効いたラウドなサウンドが期待できる。分解能も同価格帯の中では一段上のクオリティなので、SuhrやCAEなどコンプ感の少ないハイファイなヘッドでは上手い具合に硬質な音域を押さえたまま情報量の多さだけを心地よく感じ取る事ができた。あえて気になった点を一つ上げるならば、特定の条件下で1、2弦の再生能にややクセがあることが判明したくらいか。これはかなり大音量にならないとわからない違いだが、クリーンがある一定の音量を超えると不要なドライブ要素が増して音質が硬くなり、やや音量が下がったように聴こえてしまう……というもの。数本試しても全て同じだったので、これはこのケーブル特有の癖のようだ。まあ、100Wクラスのアンプをフルアップに近い音量で出さないとこの現象は起きないので一般の利用者はそれほど気にする必要は無いかもしれないが、一応は頭に入れておくべきだろう。それ以外は、多くの項目において平均点を上回る優良ケーブルである事には変わりはない。
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08 Colossal [Colossus Speaker Cable] *

 ここ数年、L.A系のギター・テックの間で急速にシェアを伸ばしている、圧倒的にプロ仕様のハンドメイド・ケーブル・ブランドColossal Cable Company。ハイエンド・アンプでおなじみのBogner社で、4年以上もの間、同社のキャビとアンプの間のワイヤリングを一手に担っていたというColossal創始者のブライアン・メンデスへの業界からの信頼は厚い。拠点はテキサス州オースティン。持ってすぐにわかる、高級ケーブル特有のあのミッシリとした重厚感。細かい目の詰まった編み込みで仕上げられたケーブルの表皮は硬過ぎず柔らか過ぎず、全方向に対して実に良いしなりを持つ。さらに、線径15mmという大人の指ほどもある極太ケーブルとの接合部には、Amphenol製のプラグをすっぽり覆う分厚い絶縁体により静電気対策もしっかりと施されている。半田は、加工は難しいが大容量でも変質しにくい銀モノを選択。これだけ揃って音が良くないはずがない。一発弦を弾けば、ノーモーションからでも、ドン、と下っ腹に来るスゴイ圧をスピーカーが吐き出すのがわかる。とにかく音のまとまり感とスピードがハンパじゃない。音の真ん中にはっきりと引き締まった低域が集中しているのは、クライオ処理された線の中央をしっかりと低音が通ってきている証拠だ。それが他の帯域を磁力のように惹き付けて極上の粘りとしなやかさを生む源となっている。ただ聴覚的に速い、音がデカイ、というだけのケーブルでは断じてなく、しっかりと音楽的な要素の充足を目的に作られた、これこそ本物のスピーカー・ケーブルだ。ハイエンド・ケーブル特有の高域がカリカリした感じも全くなく、ピークが耳に痛くならない程度にうまく丸くなっているのもかなり高度なチューニングと言えよう。ビンテージだろうが、モダンだろうが、さらにユニットがどうとかの差など関係なく、スピーカーに最大限の仕事をさせたいのならば、このケーブルにしかできないことが確かにある……そういったアイテムだ。
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09 ORANGE [CA-JJ-STSP-OR]

 英国アンプの老舗ORANGEが贈る、コンシュマー向けスピーカー・ケーブル。Neutrik製のゴールド・プラグを使用している点はポイントが高く、高域に特徴のあるあのORANGEアンプの音の出方に、このプラグの相性が良くマッチするであろう事は一目見ただけで予想がつく。線材はモダンなものから比べるとやや細めで、スリーブの編み込みも緩く、すこし頼りないくらいグニャグニャな印象だ。実際に、地面を引きずってみると雑音が入るレベルなので、この点はマイナス。音はミドルが厚めで、20世紀半ばの古き良き時代を彷彿とさせる出音だ。だが、まとまり感もちゃんとあり、ハイファイ感が無いというだけで実用には十分堪え得る音質だった。特に、ミュートしたときの「カチャッ」という音の出方は個人的には凄く好みだ。そして、やはりこれは何といっても、ORANGEのアンプとキャビの間で使うのが最高の活用法であることは言うまでもなかろう。多くの高価なスピーカー・ケーブルよりも、ORANGEのヘッドのぐっと毛羽立つようなピークを引き立たせながら、抜けの良い音にバランスする事がこのケーブルならできるのである。同社のキャビ特有のゴロゴロする感じの鳴りも、このスピーカー・ケーブルを通せば、底支えするウッディな質感に変わる。そして、オレンジの色に塗られたケーブルは、何といってもアンプの美観を損なう事が無い。つくづく、スピーカー・ケーブルというものは、容姿を含めたアンプとキャビ双方との相性により、その専門の適性に大きな位相のズレが生ずるジャンルである事を思い知らされる。老舗だからという事ではないだろうが、ORANGEの音はやはりORANGEが一番熟知している、ということか。
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10 LAVA CABLE [The Inspiration Hybrid Speaker Cable] *

 ノースカロライナ州フェイエットビルのカスタム・ケーブル・メーカー。ギター業界では、ソルダーレス(ソルダーフリー=無半田)・シールド・メーカーの第二世代として近年頭角を現してきた事でも知られているはずだ。“The Inspiration Hybrid Speaker Cable”は高級オーディオ・ケーブルのVan Den Hul社がオリジナル・ケーブルを提供した最高級品(通常のギター・シールド分野でも、Lavaの最高級品としてVan Den Hul仕様のケーブルがある)。結晶構造を排除するアモルファス合金を用いる「Fusion Technology」と呼ばれる独自技術により、一切の耳障りなピークと余計な歪み要素を徹底的に排除する、というふれこみの製品がこれだ。また、同時に、凄まじいS/N比を実現するともある。実際に繋いで見ると…なるほど、これもかなり独特ながら高品位な質感を備えている事に気付かされる。まず、ケーブルを通ってくる音の種類が圧倒的に多い。同じ石のスピーカーを二段階ぐらい上質なものに変えるほど情報量に違いがある。今まで3chで聴いていたものが急に9chぐらいになった印象だ。普段聴こえない音まではっきり聴こえるので、あまりの生々しさに自分のプレイが下手になったかと錯覚してしまうほどだ。大電力の流れるスピーカー・ケーブルでここまでの分解能を持つものはほとんど無い。ハイファイ過ぎて無機質…というのとも少し違う、何というか、「モニター気質」とも言うべき無慈悲な再生能を持つ製品なのだ。よって、ライブ感のある音の源となる上手い「溶け感」とも呼ぶべき一体感や圧力には乏しく、一般的な迫力という点においてはやはり物足りなく感じてしまう人もいるかもしれない。音自体も硬質なので長く聴いていると疲れてしまう可能性もある。ただし、Mesa/Boogie系のコンボでBlack Shadow系の内部配線に組み込んでやると、上手くバランスがとれて、ブギーらしい泥臭さを残しつつ力強く抜けるミドルを持つ個体へと生まれ変わった。よく抜けてくるVintage 30の様なユニットよりも、むしろもっとオールレンジ系のスピーカーの再生能を向上させる意味合いで使うと、相性の良いケーブルなのかもしれない。
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11 Spectraflex [HyperFLEX Quad] *

 Spectraflexは、フロリダ州はデ・フューニアク・スプリングスに拠点を置くカスタム・ケーブル・メーカーである。日本での知名度こそまだまだだが、米国ではスタジオにも常設される定番のケーブル・ブランドの一つだ。“HyperFLEX Quad”スピーカー・ケーブルは、その名の通り広い帯域をカバーする4本の導体を撚り合わせた二種類のコンダクターで構成されており、オールレンジ感を意識したクリアな出音を特徴にしている。触ってみると芯が硬く、直角に折り曲げるとややノイズが混じるので、耐久性はそれほどでもなさそうだ。ただ、比較的曲がり初めの柔軟性は高いので、通常の取り回しをする分には非常に楽なケーブルだろう。出力に関係なく、ハイ・パワーでもロー・パワーでもまんべんなく堅実に音を出す印象だ。モダン寄りでややドンシャリ気味に聴こえなくもないが、ピークは整っており、低域に漂うわずかなコンプ感も心地よく、出口のバランスがとれていて歪み出しもスムーズだ。ゴンゴンとローが唸るタイプ以外では、まずは無難な音を期待できる良質なケーブルと言って良い。多数のジャンルをカバーしなければならないスタジオで重宝されるのも頷ける。スピーカー・ケーブルとしては数の少ないライト・アングル(L字)のプラグを持ったラインナップを標準で揃えているあたりも、スペースに限りのある自宅スタジオなどでは重宝しそうだ。アンプ付属の仮ケーブルから初めてステップ・アップする登竜門的スピーカー・ケーブルとしても最適だろう。
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12 ALLPARTS [BELDEN STUDIO 814/9497/8470]

 ギター・パーツの代理店として世界有数の規模を誇るALLPARTSが提供する、Switchcraft製プラグとKESTER44半田を使用した組み上げスタイルのBELDENスピーカー・ケーブル。要するに自作に近い仕様だが、半田付け一つの工夫で音に影響が出かねないケーブル製作において、専門のプロの手が組み上げに関わっているという安心感は絶大だ。レコーディング用ハイエンド・シリーズの“800”スタジオ・ラインは、BELDENの中でも高域のレンジを確保したグレードの高い仕様で、レコーディング向きの静謐さを誇る高級線材だ。ポリマーの皮膜は程よい弾力があり、折れや挟みに強い耐性を持っている。まさに現場で鍛えられたケーブルと言える。“9497”は通称ウミヘビと呼ばれる大定番のスピーカー・ケーブルだ。修理された古いコンボ・アンプなどは内部配線をアップ・グレードする際にこいつを装着させられている事も多く、見た事のある人も多いだろう。現代のケーブルから比べれば低域が貧弱と言われてもやむを得ない所だが、その迫力ある熱くファットなミドルのピークに往年のノスタルジーを感じるファンも多く、未だにニーズは絶えない。そして、もはや業界標準となったと言って良い、高い信頼性とモダンな音質を兼ね備えた“8470”。同系統の“8460”と似た様な特性を持っているが、低域の解像度とスピード感はこちらが断然上だろう。歪みにも強く、現代の自作派にとっては音質の基準となるスピーカー・ケーブルだ。いずれも大ケーブル・メーカーBELDENを象徴する特徴的なマテリアルなだけに、半田付けに自信の無い人は、まずこちらの製品を弾き比べてその特性を知ってもらうのが良いだろう。
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国内ブランド編


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13 Ex-pro [SPX]

 音質を左右する導通デバイスに並々ならぬ情熱を傾けるEx-proが提示するのは、極太の安心感に支えられた汎用スピーカー・ケーブル“SPX”シリーズだ。線径の違う三種類の導体をただ組み合わせるだけでなく、低い音がより線材の中心を通るように、線径の太いφ0.9のコアを中心に置き、そこから順に、放射状に細い径のものを寄り合わせた新たな集合導体で取り囲むように配置していくという特徴的なオリジナル・コンダクターを使用。さらに、輻射ノイズ対策としてシース(外皮)内全てをカーボンで覆ってしまう徹底ぶり。静電気の起きやすいナイロン・ジャケットは避け、PVC(ポリ塩化ビニール)の外皮を採用している点も、通電時の接触ノイズの仕組みを良く理解しているが故の万全の作りと言えるだろう。往々にしてノイズにばかり気を取られたケーブルというものは音質の面で音楽性を欠いていたりするものだが、この“SPX”に限っては、そんな心配はただの取り越し苦労だったと知るだろう。あらゆる面で、実に表現力豊かで滑らかな出音を有したケーブルである。まず、繋ぎ替えただけで、アンプが物理的に近くに移動したと錯覚するほどの太い響きが、スピーカーを押し上げるように音の裏側から迫ってくるようになる。アタックは野性味を残しつつ、とろりとしたまどろみの中にぎらついた刃のきらめきを隠すイメージ。低音もことのほかストレートで、前にも横にもまんべんなく広がるものの、どんな大音量にしても決してダブつく事が無い。使い始めにはややハイ寄りの再生がうるさく感じるかもしれないが、耳が慣れてきさえすれば、その倍音再生の性能の高さに驚かされる事は必定だ。強く弾けばはじけるように四方に拡散し、弱く弾けば足下にたまるようにゆっくりと沈殿していく音が出る。手元のニュアンスだけでコロコロと表情も変わるその出音はまるで生き物のようだ。楽器そのものというよりも、プレイヤーの意図を率直に伝えられる希有なスピーカー・ケーブルの一つとして、現代のハイファイ寄りな市場に一石を投じている。
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14 CUSTOM AUDIO JAPAN [P Speaker Cable]

 世紀末のL.Aでギター・システムというジャンルの体系化を成し遂げたボブ・ブラッドショウ(CAE)のノウハウを引き継ぐ、オカダ・インターナショナルのスピーカー・ケーブル。思いのほか細い線材とビニール皮膜に脆弱さを心配せずにはいられないが、そこは数々の巨大システムを組み上げてきたプロフェッショナル集団が手がけるオリジナル製品だけあって、その心配は不要であった。プラグ開口部の処理や半田の的確さはさすがの丁寧さで、導通部のグラウンド対策もしっかりされていた。シースの薄さに関わらず、打ち付けてもノイズはほとんど入らず、折れや曲げにもかなり頑強だった。ケーブル自体が軽いので、プラグへの付加も減り、それだけで耐久性も上がっているようだ。音質はと言えば、やはりあの「ストーン(石)」と言われるハイファイな音色のバッファと相性が良いようで、ハイ・ミッドより上の帯域の再生能に特に優れている印象だ。全体的に整ったバランスだが、フラットというほどではなく、ギターのオイシイ帯域をよく押さえている、という表現が的確だろう。強いアタックには丸みが発生し、逆に弱いアタックには硬質な芯が芽生える……ギターの突出した耳障りな帯域に補正がかかる感じを人為的ととらえる人もいるかと思うが、慣れてくるとこれはこれでなかなか美しい音だと言えると思う。少なくとも、ピッキングをはじめとした手元の感覚がしっかりしていない人にはなかなか使いこなせないケーブルだろう。
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15 Providence [SP601/SP602]

 国内のプロ・ギタリストのシステムを数多く手がけるとともに、ハイエンドなデバイスを数多くリリースしてきた総合ブランドProvidenceから、二種類の高品質なスピーカー・ケーブルを紹介する。“601”はフラットで抜けの良い音を追求したケーブルで、タイトでクールな音色はレコーディング向き。線体は古河電工の4芯(Twisted Quad PC-OCC)というかなり上質な仕様を持つ。一方、“602”はレンジ感があり、表現力が豊かなライブ・パフォーマンス向きという棲み分けになっている。こちらは2芯(Twisted OFC)。両方ともプラグはProvidenceオリジナルのフォン・タイプ“NSP-15”を使用している。「一体型」と謳うプラグなだけあって、かなり複雑な接続で、頑強に固定されているので興味本位で分解する事は避けた方が良いだろう。値段こそ“601”の方が高価だが、最低限のクオリティを保証された二種類のケーブルを、用途は気にせず気に入った方を使うつもりで選ぶのが正しい。実際、自身の機材との相性では“602”の方が理想的なレンジ感が得られ、音も遠くへ飛ぶような気がした。ただ、スピーカーがアルニコ・ユニットの場合は、力強いミドルの盛り上がりを受け止めるのにやはり“601”の深みのある平衡さというのは武器になると感じた。エフェクターを多用した音色の場合は、歪み、空間系とも迷わず“602”にした方が音が派手になり、人間味のある抑揚が得やすい。こうした対比のあるケーブル特性を高い水準で比較できるのは嬉しい限りだ。
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16 REQST [Z-SPC01Y J-PP]

 現代のアウト・デバイス・シーン最大の都市伝説、「レゾナンス・チップ」で有名なREQSTから、前モデル“Z-SPC01”スピーカー・ケーブルの後継として、2009年以降の新拠点である軽井沢工房産“Z-SPC01Y”が登場して久しい。スピーカー・ケーブルという分野は、元来その高密度な自重と大容量の通電により、あらゆる揺れに通じる動きに弱いという特性を持つ事から、「振動」に関する研究に余念のないこのメーカー独特の着眼点が生きる製品だと言えよう。本来はオーディオのマスタリング・モニター用として開発されたこのケーブルだが、都内の楽器店の中にはその幅広い再生能に目をつけ、プラグを組み込んだギター・アンプ対応の製品版としてライセンス販売を行っている店も出てきている。なるほど、鳴らしてみると初めてわかるが、これは確かに一般的なオーディオ・ケーブルではなかなか見られない高域に特化したバランス性質を持つケーブルだとわかる。ツイーター再生域に近いギター用スピーカーでは、オールレンジを素直に通しすぎるケーブルだと低音が割れてしまって使い物にならない事がよくある。そこへ来ると、この“Z-SPC01Y”はギター・スピーカーにとって入力したい帯域に適性がマッチしているように感じる。かなり細かいピッキング・ニュアンスにもダイレクトに反応するし、高い音になればなるほど瑞々しい色っぽさが音に宿ってくる。しかも、低域が処理しきれずゴワゴワする事も無い。総じて、自然な音域感を余裕を持って提供してくれる、そんなケーブルだった。試しに自宅のモニター・スピーカーに繋いでみたが、S/N比が高く、低域もきちんと出るクリアで上質なケーブルという印象だった。構造からだけでは読み解けない謎の部分も多いが、用途に応じ、入力された強調帯域のみに反応するスイート・スポット的なものがナチュラルに可変する……そんな特性を持ち合わせた全く新しい概念のケーブルなのかもしれない。
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17 Free The Tone [CS-8037]

 OFC(無酸素銅)を導体に採用した、Free The Toneの新スピーカー・ケーブル。ギター・テックとして国内で数多の実績を持ち、ケーブル・ワイヤリングの達人と言われる林幸宏氏が考案した実用本意なケーブルで、ピンポイントにギター・アンプの一番欲しい音を素直にプッシュしてくれる。しかも、加工臭さは一切無く、極自然なテイストを維持したままなのが素晴らしい。林氏のエンジニアとしての師はあのギター・システムの開祖的存在のピート・コーニッシュという事もあり、アナログ信号の扱い方を知り尽くしたその熟練から編み出された音のバランスは、まさに、「楽器アンプ専用」という完璧な特性を生み出しているように思える。ブライトに音を歪ませたい所も、そして、逆に枯れ感を強調したいダークな鳴りも、このケーブル一つで全て余す事無く伝える事ができるといった印象を持った。また、かなり際立った音の速さがあり、特に低域のもたつきは皆無だ。シースもかなり柔らかで、ワイヤリングにはストレスが一切無い上、プラグを通じたグラウンド処理も完璧。ことモダンな音質にかけては、上から下まで弱点の一切無いケーブルとして今後国内の現場でも第一線の信用度を得る事を予感させる、優れた技術者の経験則が生んだ高水準な英知の結晶と言っても言い過ぎではないだろう。ただ一つ言う事があるとすれば、このケーブルがあまりにも電気的特性の導通に優れていることで、アンプに投入される素電源の質(特にグラウンド特性により発声するノイズ)が音質にそのまま反映されてしまう、という点についてだ。これも、通電性の効率が高いが故についてまわる悲劇なのだが、このケーブルを最大限使いこなしたい人は、アンプにもより良い電源環境を与えるために気を配る必要があるだろう。
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18 RAP [Speaker Cable Belden]

 秋葉原の販売代理店RAP CORPORATION。高価で手に入りにくいGeorge L’sのサードパーティー製プラグでおなじみのブランドと言った方がわかりやすいだろう。こちらはBELDEN社製の“814”“9718”“9497”といったメジャーなケーブルにSwitchcraft製プラグを合わせた、組み上げ完成製品。定番のBELDEN音質をお手軽にシステムに導入したいならば、先に上げたALLPARTSやこのRAP社のように他社製ケーブルを組んで売っているものを利用すると良い。RAPにはALLPARTSではあまり見かけない2芯平衡の“9718”も扱っているので、元の音の高域がややルーズで、そこから全体的に張りのある出音を狙っていきたい人には重宝する事だろう。このケーブルは、特にテレキャスやストラトのキンキンする出音を大音量時に中和させたい人にはもってこいなので、この価格ならば試す価値は充分にあるはずだ。最近では都内の楽器屋でも、そのコストパフォーマンスの高さから導入する店も増えており、新たな層へのBELDENケーブル自体の普及にも一役買っているようだ。
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19 Montreux [Premium Cables Arena for Speaker]

 あのビートルズなどでも有名なロンドンの名物スタジオ“アビーロード”にもケーブルを提供しているヴァン・ダム社(Van Damme U.K.)と協賛し、開発したオリジナル・ケーブル。スピーカー・ケーブルとしては方向性を持たされた珍しいスタイルを採用しており、シグナルの導通を最大限に発揮するように銀メッキ無酸素銅の導体を採用したりと、レトロなアナログ・ケーブルの特性を色濃く持っている。真鍮から削り出した1ピース構造のオリジナル・プラグは、実に強度が高く、スキマが無い。ケーブルの太さと開口部もぴったりで、振動対策も完璧。これほど質の高いオリジナル・パーツ群で組まれながらも、この価格帯に納めた企業努力は特筆に値するだろう。肝心の音だが、予想に反して、見た目よりも遥かにモダンな音質だった。低→高→中低→中という、かなり独特な立ち上がり方をするが、気持ちよくミドルの圧が乗ってくる感じは癖になる。サステインにも独特の飽和感があり、実に色彩豊かな表現力を持つケーブルだ。最大の特徴は、太い弦に行くほど音がダークになり、それと同時に芯が乾いてくる点だ。これをプラスの要素と捉えるかはプレイヤー個人の音楽性に委ねられるが、少なくとも既存のものとは違う、全く新しいケーブルの特性として新たな領域に踏み出す可能性を秘めているという事だけは伝えておこう。
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20 KC [KSP]

 変換プラグをはじめとしたケーブル系アクセサリーを豊富に扱うキューリツ・コーポレーションのスピーカー・ケーブル。フォン-フォンは“PP”。ただの安価なコンシュマー向けスピーカー・ケーブルかと思いきや、意外にもフラットな音の出方をするのに驚かされた。分離感よりもまとまり感が強く押し出された音色が特徴で、大音量下でのピークはどの帯域もやや頭打ち感がある。よく言えば静粛にコンプがかかっているようにも聴こえるし、悪く言えば帯域をカットする事でフラットな属性に無理矢理頭を揃えようとしているようにも感じられる。音量自体はやや物足りない感じがあるので、フィルター効果の方が強いのかもしれない。ただ、このケーブル自体の特性はもっと重心が下にあるように思えるので、オーディオ用線材の流用として考えるとつじつまが合う。実際には、ギター用でもサブ・ウーファーに近いスピーカーでは、瑞々しい張りが溢れたので、ケーブルの質自体は悪くないはずだ。個人的にはFender系アンプのローを補うエクステンション・キャビ用等に使う事をお勧めしたい。
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21 BJ ELECTRIC [SPC-1/SPC-M] *

 神奈川は鎌倉湘南に拠点を置く、オリジナル音響機器メーカー。主力商品であるオーディオ汎用のスピーカー・ケーブルは、ギターにも相性の良いハイの濃い温かくナチュラルな音質として昨今注目を集めている。ハイエンドな国産「FURUKAWA PC-OCC」導体の4芯構造を持つ“SPC-1”は、実にフラットな帯域を持っており、どんな弾き方をしても音が大きく、くっきりとした色彩を持っているのが特徴。一方の2芯“SPC-M”は取り回しに優れ、パンチのある出音を武器にした特性を持っている。いずれもレンジが広く、どの帯域も隅々まで音が届く感じが華やかで良い。レスポンスも驚くほど速く、ギター・アンプとのインピーダンス・マッチングも十分に考慮されているようだ。その最大の驚きは、これほど優れた音質を持っているにも関わらず、線径が“SPC-1”では8mm、“SPC-M”に至っては4mmしか無い事である。構造的に近いProvidence製のものと比べてもこのスケールは驚異的だ。惜しむらくは、それほど特徴のある製品にも関わらず、現行のスピーカー・ケーブルに関してはプラグ込みの完成品を取り扱う店は極わずかで、ほぼ店経由の受注生産となるため、入手するのにひと手間かかってしまう点だ。また、線径の細さから、自分で加工するのにもやや精度の高い作業が必須となる。ただ、そうであっても手に入れて使うだけの価値は十分にあるので、国産ケーブルの底力を存分に味わいたいギタリスト諸兄は、滅多に出ないこの逸品についてデジマートでのチェックを欠かさないようにしたいところだ。
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22 W&S CRYO [BELDEN 8470 SP/9497 SP]

 ワタナベ楽器のオリジナル・ブランドW&S CRYO。定番のベルデン・ケーブルに、近年エフェクター・ケースや接触パーツなどにも頻繁に用いられるようになった低温加工「クライオ処理」を施し、音質の向上を図った製品だ。線材自体に関して言えばクライオ処理で音質が向上するかは未だ迷信の域を出ないところがあるが、ことケーブル全体となると、同処理の優位点である外皮を含む樹脂部分ごと処理できる点や、半田による加工後にも同処理を行える事から、やや事情が違ってくる。個人的に、処理済みのものとそうでないものを並べて弾いてみた(きちんと録音をしたものをブラインドで聴き比べた)結果、根本的な音質にはさほど違いは見られなかったものの、ノイズまわりの影響に関しては明らかに効果が出ているように感じたのは確かだ。少なくともグラウンド特性には何らかの影響が出ているようだった。結果、低域の音像がクリアになってよく聴こえるようになり、アタックも余計な雑味に濁される事無くすっきりとした印象を見せるようになった。トータルで見れば、ノイズが減ってピュアな音の成分が聴こえるようになった事で、音質全体の向上に繋がったと言ってもこれはあながち間違いではあるまい。慣れ親しんだBELDENケーブルに、本来持ち合わせているはずのピュアな音像を引き出すための処理……方法論は抜きにして、このケーブルに関して言えば、諸処の効果は確実にあった、という事だけはここに申し述べておこう。
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23 Usaginoyubisaki [SP-1]

 吉祥寺ナンバーワン・ギターズのオリジナル商品。古河、日立などの国産CVケーブルとSwitchcraft“184L”のプラグを組み合わせた仕様で、堅実、堅牢を地で行く仕様が嬉しい。端子との接合部を適正なカシメにより圧着させ接触抵抗の低減をはかるなど、なかなか丁寧な仕事だ。出音にあまり癖は無く、ピッキングの強弱に関係なくロー・ミッドに重心のある迫力のサウンドが得られたことには好感が持てる。高域にはややピーク成分にムラがあるが、これはこれで元気な音にも聴こえるので、厳密なレコーディングでもない限り気にはならないだろう。面白いと思ったのは、このケーブルのゴールド・プラグ仕様のモデル。この場合、形はSwitchcraft製のものに似せてあるが、プラグの製造元は日本製で、はっきり言ってかなり音の明瞭さが違う。ゴールド・プラグの方が面白いほどに音がクリーンなのだ。これを上質だと感じるか迫力が無いと感じるかは微妙なラインではあるが、プラグ一つでこれほど効果の違いがはっきりするケーブルもまた珍しい。我々がギター・アンプから出していると思っているあのワイルドな歪みを思い浮かべる時、通るデバイスによっては、その接合部で生まれる歪み成分が出口の音色を大きく左右してしまっているのだ、ということに今更ながら気付かされる結果となった。せっかくこういった特異なケーブルもある事なので、単純に歪みが中心の音作りだからシルバー、クリーンだからゴールド、といった程度の意識ではなく、もっと根本的なトータル音像の中で、積極的にこの音の違いを音作りに役立てていくようにしたいものである。
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エピローグ

 新年あけましておめでとうございます。  

 いきなり年の初めからニッチな括り……『ギター・アンプ用スピーカー・ケーブル』特集、いかがだっただろうか?

 シールドや電気ケーブルの情報は氾濫しているものの、オーディオ関連以外で、スピーカー・ケーブルばかりをこんなに比較した企画はあまり例がないのではなかろうか? アンプという分野において、元々スピーカー・ケーブルというものは電源ケーブルと全く同じ素材で代用されてきた歴史もあり、長くそれ単体の音質について注目されなかった経緯がある。確かに、大容量の電気信号を一気に流す構造なだけにおおざっぱな印象を与えがちだが、たくさん電気が流れる場所というのは、それだけたくさんの情報もそこを通っているということでもある。少なくとも、ハイ・インピーダンスで外部ノイズに影響されまくりのギター信号を流すシールドに対して過剰なまでに繊細な注意を払うよりも、より出口に近い、しかも完成された大量の電気情報が導通するスピーカー・ケーブルに音質的意義を求める事の方が理にかなっているようにも思えてくる。

 今回、実際にスピーカー・ケーブルを比較してみてわかったのは、このジャンルにはまだまだ繊細な音質コントロールの素養が隠れていた、という点だ。ただの通電ケーブルと侮っていてはいけない。むしろ、その先では補正の許されない場所に配置された線だからこそ、音質に決定的な効果をもたらす可能性があると知るべきである。

 現行のケーブルの基本は、加工のしやすさや部品の調達の安定化から今のようなプラグ+コンダクターという形式に一応は収まってきてはいるが、他のジャンルの最新技術では、アナログ信号をさらに効率的に流すために電気処理をする「アクティブ・ケーブル」も実用化され、新たな潮流を生もうとしている。更に身近なものとしてはオプティカル・ケーブルなどの光信号の伝達手段の進化が目覚ましく、将来は、ギターの音も、電気と熱だけでなく、光導体を主流にスピーカー(もしくは全く新しい再生ユニット)を駆動するような技術が生み出されてもおかしくない。想像が飛躍し過ぎているとも言われそうだが、よく考えてみよう。エフェクターなどのディスクリート回路に今では当たり前のように使われているLEDクリップ、あれも発光ダイオードが一般化してくる80年代までは、誰もその技術など知りもしなかったのだ。そう考えると、デジタル技術を除いても、今あるエレキギターの音を生んでいる常識などいつ覆ってもおかしくないのだ。

 まだ、旧時代の技術が堂々と通用する最後のアナログ導通ジャンル、スピーカー・ケーブルの世界。ハマっておくなら今しかない、そんな気がする。

 それでは、今年も変わらぬ独自視点でお届けする『Dr.Dの機材ラビリンス』を、どうぞ宜しくお願いいたします。

 次回は2月4日(水)公開。お楽しみに。

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製品情報

スピーカー・ケーブル

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プロフィール

今井 靖(いまい・やすし)
フリーライター。数々のスタジオや楽器店での勤務を経て、フロリダへ単身レコーディング・エンジニア修行を敢行。帰国後、ギター・システムの製作請負やスタジオ・プランナーとして従事する一方、自ら立ち上げた海外向けインディーズ・レーベルの代表に就任。上京後は、現場で培った楽器、機材全般の知識を生かして、プロ音楽ライターとして独立。徹底した現場主義、実践主義に基づいて書かれる文章の説得力は高い評価を受けている。

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