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  • “高音質”で音楽を聴く楽しみを!ハイレゾ入門〜第15回

iPhone/Androidスマホでハイレゾ音源を楽しんじゃおう!

  • 文:菊池 真平

昨年から今年にかけて、一般的なニュースなどでも“ハイレゾ”が話題として採り上げられることが多くなってきたように感じています。ですが、CDなどのように広いリスナーが聴いているかと言えば、まだそのような状況には至っていません。現在はスマホなどに入れたmp3/AAC音源をイヤフォンやヘッドフォンで聴いている方が多いと思います。では、スマホを使ってハイレゾを再生することはできないのでしょうか。もしスマホでハイレゾ音源を聴くことができれば、もっと手軽にハイレゾ・リスニングを始められるはずです。そこで今回は、スマホを使ってのハイレゾ再生を簡潔にご紹介したいと思います。

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スマホでハイレゾ音源を正しく再生するには?

 現在発売されているスマホは、搭載されているOSによって大きく2つに分けられると思います。Googleによって生み出された“Android”が搭載された機種(※Android携帯/例えばSony Xepriaなど)と、Appleによって提供されている“iOS”で動くiPhoneです。Androidが搭載されたスマホは様々なメーカーから、それぞれの個性を反映した機種が発売されています。対して、iOSはApple製品のみになります。

 それでは、AndroidとiOSが搭載されたスマホでハイレゾ音源を再生できるのかというと、再生するだけであれば多くの機種で可能な場合が多いと思います(※機種やファイルの種類によっては、基本のアプリで再生できないファイルもあります)。しかし、これだけではハイレゾ音源の魅力であるハイ・ビット/ハイ・サンプリングでの再生が出来ていません。なぜならば、スマホに内蔵されているD/Aコンバーターがハイレゾのスペックに対応していないからです。ですが近年、ハイレゾを推進するSonyが販売するXperia Z3のように、最初からハイレゾ再生可能(ステレオ・ミニジャックは24bit/96kHz、USB経由は24bit/192kHz)な機種も登場しています。こういった機種を購入すれば、ハイレゾ音源をスマホに入れるだけで手軽に高音質な音楽再生を楽しむことができます。しかし、iPhoneを含めた多くの機種は、本体のみで24bit/192kHzのようなハイレゾ音源をそのままD/A変換することができません。では、そのような機種でハイレゾ音源を正しく再生するには、どのようにすれば良いでしょうか?

単体でのハイレゾ音源再生には対応していないiPhone6。次の6sでハイレゾ対応になるか注目。

単体でのハイレゾ再生が可能なSony Xperia Z3。Android携帯ではハイレゾ対応機も発売されつつある。

スマホでハイレゾを聴くための準備とは?

 スマホでハイレゾ再生を楽しむには、まず搭載されているOSのバージョンを確認しなければなりません。一般的に言われているのは、Androidが4以上、iOSは7.0以上となります(これ以前のバージョンで再生できるケースもあります)。
 次に必要になるのが、ハイレゾ再生に対応したアプリです。元々入っているアプリでも再生可能な場合がありますが、ダウン・サンプリングされてしまったり、再生できるファイルが限定されることもあります。少しだけ費用はかかりますが、ハイレゾ音源に対応したアプリをダウンロードして使うことをお薦めします。
 最後に必要なアイテムが、PCでのハイレゾ再生と同じように外部のD/Aコンバーター(DAC)になります。これに関しては、スマホに向けた小型/軽量のモデルも発売されているので、重たいDACで再生を強いられることはありません。ここまで書くとなかなか敷居が高そうですが、一度聴けるようになれば、あとは好きな音源を追加していくだけで、ハイレゾ音源を楽しむことができます(※1)。もちろんDACの性能によって再生できるファイルが異なりますので、その辺りは自分が再生したい音源や使用する環境などによって、購入するDACを選ぶのが望ましいでしょう。

※1 スマホの性能によっては、正しく再生されないファイルもあります。

スマホでハイレゾ再生する際にお薦めのアプリ!

 ここでは、スマホでハイレゾを再生する際にお薦めのアプリを2つ紹介したいと思います。どちらも機能性に優れ、使い勝手も良いのでぜひダウンロードして試してみて下さい。

ONKYO HF Player

ONKYO HF Player(※画像はAndroid版)

【ダウンロードURL】
■Android版(無料/※HF Player Unlockerは¥1,000)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.onkyo.jp.musicplayer&hl=ja

■iOS版(無料/※HDプレーヤーパックは¥1,200)
https://itunes.apple.com/jp/app/onkyo-hf-player/id704139896?mt=8

 ハイレゾ音源配信サイト『e-onkyo』も主催する、オンキヨーが手掛けるミュージック・アプリが「HF Player」です。老舗のオーディオ・ブランドとしての蓄積もあり、再生音にも優れています。MP3やAAC、WAV/AIFF(〜48kHz)などを再生できる無料版でも楽しめますが、ハイレゾ音源を再生するには、Androidは「HF Player Unlocker」を¥1,000(Google Play)で、iOSは「HDプレーヤーパック」を¥1,200(App Store)で購入する必要があります。このアプリを購入することで、24bit/192kHzのWAVファイルや、FLAC、DSDなどをスマホでも再生できるようになります。また、こだわりのイコライジング機能なども使え、好みの音質に調整することも可能です。さらにハイレゾの再生だけではなく、既存のファイルを高音質で再生する技術も備わっています。まだハイレゾの再生環境が整っていなくても楽しめるアプリと言えそうです。

radius Ne Player

radius Ne Player(※画像はiOS版)

【ダウンロードURL】
■Android版(¥1,800)
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.radius.neplayer_ver2&hl=ja

■iOS版(¥1,800)
https://itunes.apple.com/jp/app/radius-ne-player/id970389374?mt=8

 スマホ用の周辺機器やデジタル・オーディオ機器などを手掛ける、ラディウスが開発したのが、ミュージック・アプリ「Ne Player」です。このアプリは無料版がなく、Android/iOS版共に¥1,800とやや高額ですが、スマホでのハイレゾ再生をわかりやすく手軽に楽しめるように工夫されています。再生できるファイルは、Android版がWAV(〜24bit/〜192kHz)やFLAC(〜24bit/〜192kHz)などに対し、iOS版はDSD(2.8、5.6、11.2MHz)、ALAC(〜32bit/〜192kHz)、WAV(〜32bit/384kHz)、FLAC(〜32bit/384kHz)といったファイルまで対応しています。iOS版は、現在発売されているハイレゾ音源のほとんどを再生できると言えそうです。このアプリは、ハイレゾ音源とDACへ出力されているサンプリングレートを視覚的に見ることができ、これによって正しく再生されているかをチェックすることもできます。
 ファイルの管理機能も便利で、種類やビット/サンプリングレートの違ったファイルを混在させても、並び替えなどで素早く探し出すことが可能です。また、iOS版のみの機能ですが、ハイレゾ音源ではないファイルもアップ・サンプリングして出力することもできます。価格はやや高めですが、使いやすさやiOS版の再生ファイルの幅広さは魅力的だと思います。

スマホで手軽にハイレゾ再生できるポータブルDAC

 スマホでハイレゾ音源を再生できるミュージック・アプリを入れても、ほとんどの機種では外部DACを使わないと、ハイレゾの魅力を十分に味わえる再生ができません。ここでは、簡単に接続でき、軽量で持ち運びも便利なポータブルDACをご紹介したいと思います。

radius AL-LCH21

radius AL-LCH21 / 市場実勢価格:14,000円前後[メーカー製品ページ

e☆イヤホンで購入

 前述のミュージック・アプリ「Ne Player」を手掛けたラディウスから登場したのが、小型のDAC内蔵ポータブルアンプAL-LCH21です。これはAppleのLightningコネクタ専用となるので、iPhoneでは5以上で使うことができます。この製品をLightningコネクタに挿すだけで、16bit/96kHzまでの音源を楽しむことができます。残念ながら24bitには対応していないため、例えば24bit/192kHzなどの音源は、16bit/96kHzの音源として再生されます。またDSDには対応していません。ですが、かなりコンパクトかつ軽量のため、持ち歩きの際には非常に便利です。ハイレゾ音源は楽しみたいけど、重たいDACを持ち運びたくないというユーザーにはぴったりの製品です。ヘッドフォン・アンプを内蔵しているため、通常の音源であってもスマホ単体で聴くよりも高音質が望めます。さらにバッテリーは接続機器から給電されるため不要な点も魅力です。

radius RK-LCH61

radius RK-LCH61 / 市場実勢価格:21,000円前後[メーカー製品ページ

e☆イヤホンで購入

 こちらはラディウスがAndroid向けに発売するポータブルDACになります。iOS用とほぼ同仕様ですが、こちらは24bit/96kHzまでのD/Aが可能です。使い方は、USB AUDIO出力対応機種のmicro USB端子に挿すだけです。iOS用よりもやや大きいですが、軽量で持ち運びも便利です。もちろんヘッドフォン・アンプも内蔵し、ラディウスが提供するアプリ「Ne Player」と組み合わせることで、手軽にハイレゾ再生を楽しむことができます。

Deff Sound DDA-LA20RC

Deff DDA-LA20RC / 直販価格:15,800円[メーカー製品ページ

e☆イヤホンで購入

 スマホ用のハイセンスなケースなどを展開するDeffが手掛け話題となったのが、ハイレゾ対応のDACを内蔵したポータブル・ヘッドフォン・アンプです。デザイン性にも優れたアルミニウム合金製のボディは美しく、カラーもシルバー、ブラック、ホワイトの3色があり、スマホと組み合わせるとまるで純正のリモコンのようにも感じられます。このモデルは、Android/iOSどちらにも使え、付属のケーブルを挿すだけで24bit/96kHzまでのファイルを楽しむことができますが、Androidは4以上でUSBオーディオ・ドライバが有効化されていないと使えません。またiOSも7以上でLightningコネクタを装備した機種のみ(※Lightning I/O搭載のiPod nano, iPod miniには非対応)の動作となります。ですが比較的新しいスマホを使っている方でしたら、ほとんどの方が使えるはずです。本体はスマホから供給される電源で動くため、電源などは必要ありません。またヘッドフォン・アンプも内蔵しているので、手軽に高音質が得られますね。本体は約24gととても軽量で、通勤/通学のお共にもお薦めです。

スマホで24bit/192kHzやDSDファイルを再生するには?

 上記で紹介した外部DACは手軽ですが、24bit/192kHzのハイレゾ・ファイルやDSDファイルの再生には対応していません。なぜならAndroidに付いているmicro USB端子やiPhoneのLightning端子に直に接続するタイプのDACは、それらのデータを正しく受け取ることができません。では、どのようにすればスマホで24bit/192kHzやDSDファイルを再生することができるのでしょうか? これには少しだけテクニックが必要です。

USB OTG(On-The-Go)ケーブル

 まずAndroidですが、これを外部の様々なDACに接続するためには、本体に取り付けられたmicro USB端子に接続できるUSB OTG(On-The-Go)ケーブルが必要になります。このケーブルを介し、さらにUSBケーブルを使って外部のDACと接続することで、そのままのスペックでD/Aできるようになります(※Androidのバージョンは4.1以上が望ましく、さらに再生アプリは必須)。ただし、接続するDACや使用するアプリ、またスマホの機種によっては、正しく再生ができなかったり、ボリュームが無効化されるなどの不具合が起きることも稀にあります。また、外部DACが、聴きたいファイルのスペックに対応していることも必要になります。

USB OTGケーブル

Lightning - USBカメラアダプタ

 対してiOSは「Lightning - USBカメラアダプタ」(※Apple iPad Camera Connection Kitでも可能です)を使い、さらにUSBケーブルを使って、外部DACと接続することで幅広いファイルを再生できるようになります(※再生するミュージック・アプリは必須)。ただしiOSのバージョンは7以上となります。また接続する外部DACによっては、正しく動作しない機種もあるので注意が必要です。
 ちなみに前回のコラムで紹介した、小型のDAC/ヘッドフォン・アンプHERUS RSL-HERSやiFI-Audio nano iDSDは、ハイレゾ再生が楽しめました。Lightning - USBカメラアダプタは、税抜きの定価が¥3,500程度なので、外部DACを持っている方はぜひ試してみて下さい。

Lightning - USBカメラアダプタ

 最後に、この接続は各メーカーが公式にサポートしている方法ではないため、あくまで個人で楽しむ前提で試してみて下さい。うまくハイレゾ再生ができずに、各メーカーに問い合わせても対応してもらうことができません。


 スマホを使ったハイレゾ再生は、充実したミュージック・アプリなどの登場によってだいぶ敷居が下がったと思いますが、いかがでしたでしょうか? 近い将来、スマホの進化に伴って、ハイレゾをスマホだけで再生できるのが一般化されるかもしれません。そうすれば、一気にハイレゾ音源がスタンダードになりえるかもしれないですね。スマホをプレーヤーにすれば、少ない投資でもハイレゾを楽しむことができます。ぜひチャレンジして、満足度の高いリスニング環境を目指してみてください。好みのサウンドは、高いリラックス効果も生みますよ。では、また次回!

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プロフィール

菊池 真平(きくち・しんぺい)
音楽雑誌「Player」、オーディオ誌を発行するステレオサウンド社で「Beat Sound」、「Digi Fi」の編集に携わった後に独立。現在はフリーランスで、ヴィンテージ・ギター関連書籍/ギターに関する雑誌等に、編集/ライターとして携わる。国内外のミュージシャンへのインタビュー等も多数行っている。

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