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  • 横山健のリクエストで実現したロック・テイストたっぷりのES-355限定モデル

Gibson Memphis / ES-355 Bigsby VOS 2015 Olive Drab Green

Gibson Memphis / ES-355 Bigsby VOS 2015 Olive Drab

  • 試奏・解説・文:村田善行 写真・動画撮影:伊藤大輔
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 アーミー調のグリーン・フィニッシュが格好良いこのモデルは、ギブソン・メンフィス・ブランドのES-355 Bigsby VOS Olive Drab Green(以下355 VOS/ODG)という限定モデルだ。一見するとES-335の様に見えるが、実際には細部にこだわりがちりばめられている。

 ちなみに、ギブソン・メンフィス・ブランドについて触れておくと、現行のギブソン製品は、ナッシュビル(レギュラー・ラインとカスタム・ショップを製作)、モンタナ(アコースティック・ライン全般を製作)、そしてメンフィス(ESシリーズを製作)と、部門ごとに生産拠点を持っている。2000年にESシリーズの生産拠点として発足したギブソン・メンフィス・ファクトリーは、カスタム・ショップの傘下を経て、現在では独立した部門となる。

 そのメンフィス・ブランドより発売された、サウンドガーデン/オーディスレイヴのフロントマンであるクリス・コーネルのシグネチャーES-335がこのギターのベースとなる。クリスのES-335はローズ指板、ドット・ポジションの一般的な335スペックにビグスビーを搭載し、さらにJason Lollerのフィルタートロン・タイプのピックアップを搭載したモデルであったが、この355 VOS/ODGはエボニー指板、ブロック・ポジションマーク、ギブソン57クラシック・ピックアップ、そしてヘッドストックにまで配されたバインディングという、ESシリーズの「トップ・オブ・ライン」に恥じないゴージャスな仕様を持っている。

 ちなみに、このギターが誕生した背景にはとても面白い逸話がある。日本のハードコア/パンク・ロック界においてその存在を忘れてはならないギタリスト、横山健氏は皆さんご存知だろう。ちなみに、まさかとは思うが、ハイスタを知らない人はいないだろう。もし知らなければ大至急音源を手に入れてライブに足を運んで欲しい。このギターはその横山氏のオファーにより製作が決定し、全世界で発売となったモデルで、ギター小僧(あえてそう呼ばせて頂く)の横山氏のアツい想いが形となっている。詳しくは氏のブログ(横山健の別に危なくないコラム)にその経緯が紹介されているので是非ご一読頂きたい。

 改めてこの355 VOS/ODGの細部をチェックしてみると、なるほどこだわりはルックスだけに留まらない。ボディはメイプル/ポプラ/メイプルの3プライ構造で、355ならではの7プライ・バインディングが施されている。中空構造のボディ内と、グルーでしっかりと固定されたセット・ネックによる生鳴りは新品でありながら、独特のVOS(ビンテージ・オールド・ストック)仕上げにより、直に鳴り出しそうな雰囲気を持っている。現に、試奏を始めた時と終了時では明らかに鳴り感が変わっていた。エボニーのように見える指板は実はリッチライトという合成素材。なるほど、エボニーに近い締まりがあり、跳ねるようなアタックとロング・サステインが感じられる。エボニーに比べるとアタック音の「音楽的なフィーリング」は全く同じとは言えないが、トーンのニュアンスとテイストはかなり近く、実際に説明されなければわからないレベルにある。

 さらにエレクトリック部分にもこだわりがある。まずはボリュームとトーン・ポット。抵抗値の500kは共通だが、ボリューム・ポットがリニア(B)カーブなのに対し、トーン・ポットはオーディオ(A)カーブを採用している。これはコントロールの操作感に関わるポイントで、Bカーブのボリュームはフル(10)〜半分(5)くらいまでは可変が緩く、後半になって効果がわかりやすく変化する。対してAカーブは、フルからゼロ位置まで、均一に変化していく違いがある(もちろんフルテン時とゼロ時はどちらも変わらない)。このあたりはプレイアビリティを重視してチョイスされており、アンプ直結でクランチ・サウンドを作る場合や、トーンを絞ってリード・トーンを作り上げる際に最適な仕様と言える。

 さらにコンデンサーにもこだわりの仕様が見られる。リア・ピックアップには一般的な.022mfのコンデンサーが使用されているが、フロント・ピックアップに使われているのは.015mfのコンデンサーだ。これにより、フロント・ピックアップのトーンを絞った際に、音がこもりすぎないようにアレンジされている。このあたりの気の利いた仕様を見ても、このギターがヒストリカルなギブソン・ギターではなく、現在進行形ミュージシャン向けのスペックを持ったギターだと言う事が理解できる。

 セミアコ・タイプのギターをお探しの皆さんはもちろん、セミアコでロック的なアプローチをしたい! とお考えの皆さんはぜひ、一度チェックして欲しいギターだ。

※使用アンプ:Fender '68 Custom Deluxe Reverb

ゴージャスなスプリット・ダイヤモンド・インレイ、fホールがあしらわれたトラスロッド・カバーが印象的なヘッドストック。

ペグはミルク・ボトル・グローバー・ロトマチックを採用。若干のエイジド加工も施されている。

ピックアップは前後に57クラシックをマウント。

ピックガードは4プライのロング・タイプが採用されている。7プライのバインディングからベースが355であることがわかる。

コントロールはバリトン・スイッチが省かれたシンプルな2ボリューム、2トーン。ボリュームとトーンでコンデンサーのカーブを変えるなど実戦的な仕様となっている。

モデル名にもうたわれているビグスビーのトレモロ・ユニット、B-7を搭載。ルックス、サウンド両面の大きなアクセントにもなっている。

Gibson Memphis / ES-355 Bigsby VOS 2015 Olive Drab Green

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製品情報

Gibson Memphis / ES-355 Bigsby VOS 2015 Olive Drab Green

価格:¥554,000 (税別)

【スペック】
■ボディ:メイプル/ポプラ/メイプル・3プライ(トップ&バック) ■ネック:マホガニー ■指板:リッチライト ■フレット:22 ■スケール:24 3/4インチ ■ピックアップ:57クラシック × 2 ■コントロール:ボリューム × 2、トーン × 2、3ウェイ・ピックアップ・セレクター ■ブリッジ&テイルピース:ABR with ビグスビーB7 ■ペグ:ミルク・ボトル・グローバー・ロトマチック ■カラー:オリーブ・ドラブ・グリーン
【問い合わせ】
ギブソン・ジャパン http://www.gibson.com/
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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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