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- 2024/03/22
Montreux Custom Shop by Chocolate Electronics / Killer Boost
トレブル・ブースターと言えば、ブルース・ブレイカーズの名盤“BEANOアルバム”時代のエリック・クラプトン、ヤードバース時代のジミー・ペイジ、ジェフ・ベックといった御三家はもちろん、ブライアン・メイやリッチー・ブラックモア、トニー・アイオミといったレジェンド達が愛用した事で有名なユニットだ。彼らの愛用したユニットは、現代の様なストンプ・ボックス型だけでなく、アンプの上に据え置いて使用するスタイルもあった。60〜70年代のマーシャルやVOXなどのチューブ・アンプには、まだ「オーバードライブ」モードなどは存在していない。もちろん、音量を上げていけばチューブ・アンプならではのコンプレッション感やドライブ感は得られるが、いわゆる「歪み」まではいかない程度。ギタリストが好む「クランチ・サウンド程度の歪み」と言えば納得いただけるかも知れない。ロック誕生からしばらくは、その「クランチ・ドライブ」で歪み量自体は十分だったが、その後「ハード・ロック」という音楽ジャンルが登場。クランチを上回る歪みが望まれてくると、楽器メーカー各社やローカル楽器店はミュージシャンの要望に応えるべく、増幅ユニットを作り出す。それがトレブル・ブースターとして商品化されていった。
このMontreux Custom Shop by Chocolate Electronics / Killer Boostは、その時代のレジェンドが愛用したトレブル・ブースターをベースにしながら、より使いやすくチューニングを施したシンプルなブースト・ペダルだ。昨今の一般的なクリーン・ブースター等と比べると、驚くほどゲインが「がっぽり」稼げる事に驚かれるかもしれない。もしかしたら、トランジスタやデジタル・アンプには全く不必要なペダルかも知れない。……しかしこれが本来の「トレブル・ブースター」のあるべき姿なのだ。
基本的にはシングル・チャンネルやマスター・ボリューム無しアンプとの組み合わせでサウンド・メイクを行うと、ハイ・ミッドの「ミンミン」とした帯域を中心にブーストしてくれるこのペダルのキャラクターがよくわかる。この音が「上手い」というか「古い」というか……とにかく「良い感じ」の音なのだ。60年代のオリジナル・トレブル・ブースター(最も有名なものはDALLASのRANGEMASTERだろう)はゲルマニウム・トランジスタを使用していたが、本機はあえてシリコン・トランジスタを採用している。これは音色としての「ゲルマの良さ」は理解した上で、ゲルマならではの「動作の不安定さ/マッチングの難しさ」を排除するためだ。シリコン・トランジスタはゲルマニウム・トランジスタに比べ、締まりのある音色だが、ミッドのテイストはかなりゲルマに近い。強いて言えばゲルマの方が「倍音が派手」でシリコンは「音の押し出しが強い」という感じだろうか。動画では、あえてアンプのクリーン・チャンネルにクランチ・ペダルを使用し、そのペダルをKiller Boostでブーストしてみた。アンプ・ライクなペダルであれば、この様な使用法もOKだ。
楽器側のコントロールに素直に反応し、フル・アップ時には十分なドライブが得られ、ギターのボリュームを絞ればクリーンまで対応出来るペダル。さらにノイズ・レベルも低く、トーンだけでなくエフェクトとしての完成度も高い。個人的にはダウン・チューニングやStoner Rockに是非とも取り入れて頂きたいペダル。この音は使える。
※使用アンプ:VHT / PITTBULL FIFTY/TWELVE COMBO(C-5034-L)
※使用ギター:Crews Maniac Sound / OSA-60 / VEGAS V2. / OST-69
価格:オープン
村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。