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ビグスビーを取り付けるとギターの音はどう変わるのか?

ビグスビー実験

  • 文:井戸沼 尚也(室長)
  • SGギター提供:G-CLUB TOKYO

今回は、“ビグスビーを取り付けるとギターの音はどう変わるのか?”という実験です。ビグスビー付きのギターを弾いたことがある人は多いと思いますが、同じ個体の取り付け前と取り付け後できちんと比較してみたという人は、あまり多くないのでは? というわけで、実験してみました。

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【実験テーマ】ビグスビーを取り付けるとギターの音はどう変わるのか

■ビグスビーにまつわる噂
取り付けると音がブライトになる

 これは、ビグスビー好きの間ではよく言われていることのようですね。例えば、週刊ギブソン第53回にご登場いただいたSHAKALABBITSのTAKE-Cさんも、インタビュー中で「ビグスビーが付いていると、音がよりはっきりするというか、ブライトになります」と述べています。私自身は、例えばビグスビーが付いているSGと付いていないSGなどいろいろと弾いて試した経験はあるのですが、違うギターのビグある/なしで試しても、それがビグスビーによるものなのか、個体差によるものなのかが、ちょっとわかりにくいなぁと思っていました。

 それともうひとつ疑問があって、例えば以前行なった地下実験室第13回『レス・ポールの音は重量によって変わるのか?』では、個体差はあるものの、重量が軽くなるほどトレブリーになる印象を受けました。でもビグスビーを付けると重くなるのにトレブリーになるというのが、いまいちよくわかりません。実際のところ、どうなのよ?というわけで、同じ条件(同じ個体、同じセッティング)で、ビグスビー取り付け前/取り付け後の音を比べてみることにしました。

【実験環境】

■使用機材
ギブソン・カスタムショップ1956レス・ポール・ゴールドトップ(ギター)
ギブソン・カスタムショップSGスタンダード(ギター)※紹介個体はコチラ
ギブソン ES-335(ギター)
ビグスビー B5(テイルピース)
ビブラメイト(ビグスビー装着用パーツ)
マーシャル JVM410H(アンプ)
マーシャル 1960A(キャビネット)
プロビデンス S101(ケーブル)
ヴェムラム・ジャンレイ(オーバードライブ)
ヴァンデンハル(ケーブル)
ダダリオ EXL110(弦)
ギブソン THIN(ピック)
YAMAHA YTC5(クリップ・チューナー)

※セッティングについて
■3種類のギターを用意し、同じ個体に対し、ビグスビー装着前と装着後の音をチェックします。
■アンプ、エフェクター(ペダルで軽くクランチさせています)のセッティングは変えていません(ただし、音色のチェックが終了した後のアームを使ったおまけ演奏では、基本セッティングはそのままで、ブースター、エコーなどを加えています)。
■今回の実験はギター本体を加工して音色の違いを確かめるため、ルーパーの使用ができず手弾きとなっています。極力同じように弾くことを心がけましたが、それでもわずかな違いが出てしまう点はご容赦ください。
■各ギターで行なう一連の作業の最後に、音質比較用の映像があります。できればモニター用のヘッドフォン/イヤフォンを着用の上、聴き比べてください。

実験1 1956レス・ポール・ゴールドトップ

 まずはレス・ポールにビグスビーを付けてみます。が、その前に弦の張り替えです。今回、3本のギターを用意したわけですが、3本ともそれぞれ何の弦が張られていて、どのくらい使われてきたか、状態が異なります。「ビグスビーを付けたから音が変わったのではなく、単に古い弦を新品に変えたので音が変わった」ということではマズイので、まずは新品の弦へと環境統一を図ります。その後音をチェックし、ビグスビーを付け、また同じブランド、同じゲージの弦に張り替えて、取り付け後の音をチェックするわけです。め、面倒だ……。思えばこの地下実験室はいつもいつも面倒なことばかりだし、「Rock’n Roll Pan●●」とかいって勝手にパクってるヤツはいるし、もうオラやんだぐなってきた……。

 さて、ひと通り泣き言も終わり、新品の弦を張り終えたレス・ポール。P-90搭載のギターらしい、プリッとした感触を出すために、ピックアップのポジションはセンターを選び、チェック用のフレーズを弾きました。続いて、ビグスビーを装着します。初めてのビグ付け作業……意外と簡単です! はぁー、ビブラメイト、うまいことできてんなぁ……と思ったのもつかの間。難しいのは弦を張る方でした。こ、これは面倒だわ。どうやらビグスビーのタイプにもよるようですが、このB5は回転する棒状のテイルピースから飛び出た突起に、弦のボールエンドをはめて弦を張るのですが、これがすぐに外れてしまうんです……。ムギギ! イラッとする! ビグ初心者の私には、かなり困難な作業でした。まさか、ユニットの取り付けより弦を張る方が難しいとは!!

 なんとか張り終えまして、音を確かめる前に重量を測ってみます。ビグスビー装着前に測っておいたこの個体の重さは4.31kg。で、ビグスビーを付けたことで、4.6kgになりました。まぁ、70年代あたりのカスタムなどこれより重い個体はザラにありますが、やはり4.5kgを越えるとズシッとくる感じはあります。そのサウンドは……むむ、なるほど。ハイはしっかり出ていますね。で、高域だけ出ているというより、低音弦を弾いても輪郭がはっきりしているように感じます。全体に、音が前に出てくる感じですね。改めてビグスビーなしを聴くと、良く言えばナチュラル、悪く言えば弱々しい(装着後に比べて、ですよ)という感じです。ただ、今回、この違いは「わからん!」という人が続出しそうな気配……。ちなみに私は、モニターのド定番、ソニーのMDR-CD900STというヘッドフォンで聴いています。皆さんも、なるべくヘッドフォン着用で、ご確認を!

 さて、ここまではあくまでも音質チェックが主眼でしたので、ビグスビーを付けたにも関わらず、アームを使っていません。せっかくですから、おまけとしてニール・ヤング風(あくまで“風”ですよ、ファンの方怒らないで)の演奏も付けておきました。それでは、他のギターでも同じような傾向になるのか、試していきましょう。

実験2 SGスタンダード

 次はSGでも、一連の同じ作業をしてみましょう。これは、初期の“レス・ポール”SGを再現したモデルですね。かっこいいなぁ。重さは、なんと2.82kg! かっる〜! これにビグスビーを取り付けると……うおおー、かっこいい! なんて似合うんだ。重さは3.11kgになりました。まだまだ、十分軽いです。で、そのサウンドですが、こいつはロックな感じが似合いそうだったので、ビグスビー装着前後とも、リアで試しています。むうう、なるほど、これもビグスビー装着後の方が少しパワフル&ハイ上がりな感じですね。例えるなら、ビグスビー装着前はアンプ直、装着後はごく薄くブースターをかけたような感じに聴こえます(実際にはどちらもアンプはほぼクリーン、ジャンレイで少しクランチさせた同じセッティングです)。

 それから、SGにビグスビーを付けたとなると、皆さん気になるのはボディ・バランス……もっと率直に言うと、ヘッド落ちの問題がどうなるかだと思います。今回試した個体では、ボディ側が290g重くなったことで、より良いバランスになったと感じました。動画でもストラップで吊るしてみましたので、そちらも見てください。またSGにも、アームを使ったおまけ映像を付けました。SGでビグスビーというと、ミック・テイラー? でもあんまりアームを使っている印象ないですねぇ。フランク・マリノはマエストロだし……。結局、●●風というのは思いつかなかったので、アームの可変幅、音程がどのくらい下がるのかを見せるに止まっています。では、次に行ってみましょう。

実験3 ES-335

 最後に、ES-335にもビグスビーを付けてみました。まず装着前の重さですが、3.53kg。これは335にしては、かなり軽い個体です。で、ビグスビーを付けると、3.82kgになりました。しかし、サンバーストの335にビグスビーを付けると、強烈にぶさい……否、個性的になりますね。ビグスビーでもロング・タイプのものだと随分印象が違うはずですが、この大きなボディに小さいタイプのビグスビーを付けるとなんとも言えず変な感じです。他人と違ったものが欲しい人には、良さそうですね。

 で、音の方は……あ、これまでと一緒です。ビグスビーを付けるとハイがしっかり出て、音が前に出てくる。ビグスビーなしでは、若干弱々しい感じもしますが、非常に自然な音がします。おまけ映像ですが、うーん、やはり335にこのショート・タイプのビグスビーを付けて使いまくっている人が思い浮かびません。まぁビグスビーは激しく使うよりはユルユルと使う方が合っていると思うので、エコーでもかけて、それっぽく揺らしてみましょうか。お、お、気持ちいいぞ。なんかスペイシーな感じですね。このまま、宙に浮かび上がるまで、弾いてみることにします…………。

実験結果

結論 ビグスビーを付けると、音がブライトになり、前に出てくる

 これはSHAKALABBITSのTAKE-Cさんがおっしゃっていた「ビグスビーが付いていると、音がよりはっきりするというか、ブライトになります」という言葉と完全に一致しますね。さすがです。ビグスビーを付けると、「アームが使えるようになる」「ルックスが変わる」「重さが変わる」ことに加えて、「音も変わる」わけです。ビグスビーを付けるか悩んでいる人は、これらの要素を踏まえて検討してください。

 今回の実験を通して、個人的な感想は「レス・ポールは重くなり過ぎるのでナシ」「SGはかっこいいし、バランスも良くなるのでアリ」「335は、ブサイク・ギター好きの自分でも苦手なタイプのブサイクさなので、ナシ」です。だた、3kg台の軽いレス・ポールに付けたら重さは苦にならないですし、ワディ・ワクテルやトミー・ボーリンのレス・ポールは凄くかっこいいので、それはそれでアリです。335も、チェリーだったら印象が変わるかもしれません。音に関しては好きずきだと思いますが、私は付けていない音の方が好みですね。ナチュラルで。「ここまで散々実験して、個人的にはない方が好きって、それでいいのか地下実験室?」と思う方もいるかもしれませんが、いいんです、だって実際にやってみないとわからなかったことですから。

 皆さんは、いかがでしたか? 皆さんのギター・ライフに少しでもお役に立てたら、嬉しいです。では次回、地下20階でお会いしましょう!

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製品情報

ビグスビー

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プロフィール

井戸沼 尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。
井戸沼尚也HP 『ありがとう ギター』

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