ソフトウェア音源
前回のMIDIについての話はいかがでしたでしょうか？ 難しく思われたかもしれませんが、”DAWのMIDIトラックに演奏情報を入力すれば、ソフトウェア音源が鳴る”、ということを理解するだけで十分です。
昔はコンピューター・ミュージックというとピコピコ・サウンドを連想する人が多かったと思いますが、最近の生楽器系ソフトウェア音源はかなり忠実に再現できるようになってきました。音楽制作においてのコンピューターは、もはや電子音楽を制作するためだけのものではなくなってきているのです。
そこで今回は、生楽器のシミュレーションを中心としたソフトウェア音源を紹介したいと思います。デモ・サウンドも掲載しましたので、それらを聴いてソフトウェア音源がリアルな楽器にどのくらい似ているのかを実感してもらえれば幸いです。
※これからご紹介する製品は単体で使用できるものと、DAWと組み合わせて使用するものとがあります。購入の際は、製品情報をご確認ください。
コンピューターでドラム、というとダンス・ミュージックで使用されているような無機質な音を連想するかもしれませんが、それらとは対極にある生ドラムの音を得意とするソフトウェア音源があります。その一部を紹介します。デモ音源、動画をクリックしてそのリアルさも実感してみてくださいね！
FXpansion BFD 3
EZ DRUMER 2
Addictive Drums 2
Groove Agent 4
いかがでしょうか？ どのソフトウェア音源もまるで人間が叩いたかのようなグルーブ感がありますよね！ さまざまなリズム・パターンのMIDIデータを収録しているので、まだMIDIの打ち込みに慣れていない初心者でもそれらを選ぶだけでリアルなドラム・パートを完成させることができます。プリセットのMIDIデータはカスタマイズすることができますし、それらを参考にオリジナル・パターンを作ることもできます。また拡張音源を購入すればさらに多くのドラムキットの音を鳴らすことができるのも魅力です。
ピアノ系のソフトウェア音源も各メーカーからさまざまな製品がリリースされていて、こちらもドラム系と同様にかなりクオリティが高いです。録音対象となるピアノによってサウンドに特徴があるので好みの音を選ぶと良いでしょう。
Ivory II Italian Grand
The Grand 3
SPECTRASONICS Trilian
こちらも打ち込みとは思えないこの表現力！ すごくないですか？
ギタリストの方であれば、以上のドラム、ピアノ、ベースのソフトウェア音源を使い、そこに自身のギター・サウンドを加えることで、リアルなバンド演奏がコンピューターで再現できてしまいます。もちろん！リアルなエレクトリック・ギターをシミュレーションしたソフトウェア音源もありますので、その一部を紹介しましょう〜。
Prominy V-Metal
これらのソフトウェア音源には、ギターのクリーン・トーンのみ収録されていて、別途アンプシミュレーターやエフェクター使用することでこのようなリアルなギターサウンドがを出すことができます。
それでは、人間の声はどうでしょうか？ コンピューターで忠実に再現するのはまだ難しいですが、それを少しでも可能にしたのがVocaloidです。
初音ミクはキャラクターとして一般的に知られるようになりましたね。Vocaloidは特定の歌手からの歌声ライブラリーを作り、MIDIノート情報や歌詞、音楽的表現を加えることで、歌声として聴けるようになります。今ではさまざまな歌声ライブラリーが発売されていて、ロボットのようでもあり、人間のようでもある曖昧さがVocaloidの面白いところだと思います。
しかも歌声ライブラリーの中には、なんと小林幸子さんの歌声を元に作られたモノもあるんですよ！
YAMAHA Vocaloid 4 Library Sachiko
Vocaloid4 Library Sachiko
小林幸子さんならでは節回しやこぶしなど、いい感じに再現されています！いや〜すごいですね〜！
そのほかにも、ストリングス、ブラス、リードなどのオーケストラ系、ビンテージ・シンセサイザーや電子ドラム、電子玩具に子供のおもちゃ、そして現実には存在しないソフトウェアだからこそ実現するシンセサイザー・サウンドを得意とするソフトウェア音源などもあります。また、それらを一つにパッケージしたモンスター製品もあります。それらの紹介はまた別の機会に譲るとして
ー最後に最近発売された、ユニークなソフト音源を一つ紹介しましょう。
Sonica Instruments KOTO 13
日本古典楽器、十三絃箏を忠実にシミュレーションしたソフトウェア音源。目を閉じてデモ動画を聴いていると、まるで目の前に本物の箏演奏者がいるように感じてすごいです！
いかがでしたでしょうか？ これらのソフトウェア音源は、鍵盤を弾く度にあらかじめ録音されたサウンド・ライブラリが再生されているような仕組みですが、こんなにもリアルなサウンドが得られるのは、近年によるコンピューター（CPU）の高速化、メモリやディスクの大容量化が大きく関係しています。そしてサウンド・ライブラリを作成する際の録音のクオリティが高いので、それこそ自分で楽器を演奏して録音するよりも良い音がすることの方が多いかもしれません。とはいえ、生楽器を演奏することは何よりも代え難い楽しさがありますし、たとえ完ぺきではなくても自分で演奏したものを自身で録音して楽曲に取り込むことは作品に個性を出すために必要な要素だと思いますよ！
それではまた次回！＜12月15日（火）更新予定＞
いっちー（市原 泰介）
サウンド＆レコーディング・マガジン編集部WEBディレクター。学生のころから作曲やDJ活動、バンド活動などの経験を積む。某楽器販売店を経てリットーミュージックに入社。前職では楽天市場内の店長Blogを毎日10年以上更新し、2008年ブログ・オブ・ザ・イヤーを受賞。得意ジャンルはクラブ・ミュージック。日々試行錯誤中。
