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  • エレガットの世界基準、その現在進行形!

Godin / Multiac Nylon SA

Godin / Multiac Nylon SA

  • 試奏:前田智洋 解説・文:村田善行 動画撮影:伊藤大輔
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 Godinを代表するエレクトリック・ガット・ギター、Multiac Nylon SA。今ではエレガットの世界基準と呼んでいいモデルだろう。

こだわりに満ちた設計面  

 47.6mmナット幅は、ナイロン弦ギター(ガット・ギター)らしいサウンドはそのままに、通常のアコースティック・ギターやエレクトリック・ギターからのスイッチ(持ち替え)にもスマートに対応する。これはプレイアビリティのみならず、サウンドにも非常に影響を与えている。というのもナットは、6弦と1弦の鳴りを含めて全体的に低音の迫力やテンション感をコントロールしている部分でもあるので、単に弾きやすさを追求するのであればもっと狭い弦間ピッチでも良いだろう。16fジョイントなどを含め、本器は鳴りと演奏性を熟慮して設計されていることがよくわかる。

 そして生鳴りとエレクトリックのサウンドのバランスを決める役割も持つボディ構造。内部は独自のダブルチェンバー構造となっており、わずかこれだけの厚みのボディとは思えないほど、リッチで奥行きのある鳴りを生み出している。今回の動画も含め、特にライン録音された音源をチェックすると、そのエアリーでありながら芯のある音色が確認できるだろう。チェンバー・ボディのモデルは時として不要なロー・ミッドの鳴りを生み出すこともあるが、このMultiac Nylon SAではスッキリとして、なおかつ豊潤な音色を創出してくれる。

 さらにコントローラー周辺をサウンドホールとして機能させることで、フィードバックの影響も受け難くするようデザインされている。これは外見上の特徴的にもなっており、ゴダン・ブランドの象徴的デザインとしてもひと役買っている。

多彩なサウンドに対応するエレクトロニクス

 サウンド・システムも素晴らしい。RMC社とタッグを組んで作り込まれたプリアンプは、シンプルでありながら適切なEQポイントを持っており、楽にサウンドメイクできるのはもちろん、ハウリング・ポイントを探る上でも操作性が容易でいい。また、各弦独立のピエゾ端子(ピックアップ)のおかげでサウンドが干渉し合ってダマになることがなく、コードを鳴らした際にもスッキリとした音を聴かせることができる。

 サウンド面でのもうひとつの特徴は、本体内にMIDIピックアップを搭載していること。ローランドのGKシリーズなどのギターシンセ音源に直接インプットできる専用のDINアウトも装備している。前田智洋氏の素晴らしいデモンストレーションで聴けるように、このギターをトリガーとしてMIDI音源を鳴らしてやることで、通常のギターでは得られない、様々な音色を得ることも可能だ。MIDIピックアップを後付けに楽器に搭載するのはルックス的な問題だけでなくピックアップのバランス調整等も含めて手間がかかる作業だが、このギターにははじめからベストなセッティングで搭載されている。そしてMIDIピックアップとはいえ、その信号をトリガーとして使用する場合にはギター全体のバランスもかなり重要になってくる。これだけ安定した信号を出力できるということは、ギターそのモノのバランスが良いと換言できる。

 シンプルなエレガットとしてはもちろん、多彩な可能性も秘めたGodin Multiac Nylon SAは非常にクオリティの高い、世界的なスタンダード・モデルであると改めて言いたい。また、GKに対応するMultiacシリーズには、動画内で筆者が抱えている兄弟機種のMultiac Grand Concert SA(シダー・トップ/50.8mmナット幅/12fジョイント)や、ソリッド・ボディのACS Slim SA、同じくソリッド・ボディの日本限定モデルであるACS SA KOA / Rosewood / Flameなどがラインナップされている。

【動画での使用機材】
BOSS RC-300
Roland GR-55
t.c.electronic NR-1
BOSS OC-3 Super Octave
ERNIE BALL 6166 Volume Pedal
BEHRINGER MX400 MicroMIX
CAJ AC/DC Station Ver.3

Godin / Multiac Nylon SA

握りやすい47.6mmのナット幅

薄めのダブルチェンバー・ボディ

サウンドホールを兼ねたコントロール部

ヒールを工夫したボルトオン・ジョイント

各弦独立したピエゾPU「RMC Custom Piezo」を搭載

専用のGRアウトも備える

Godin / Multiac Grand Concert SA(シダー・トップ/50.8mmナット幅/12fジョイント)

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製品情報

Godin / Multiac Nylon SA

価格:オープン

【スペック】
●ボディ:スプルース単板(トップ)、マホガニー(バック、チェンバード構造) ●ネック:マホガニー ●指板:リッチライト ●ナット幅:47.6mm ●ブリッジ:ローズウッド ●フレット:22 ●ピックアップ:Custom RMC Piezo ●コントロール:PROGRAM DOWN、MID SELECTOR (700 or 1200Hz)、PROGRAM UP、PIEZO VOL、TREBLE (6kHz)、MIDDLE (700 or 1200Hz)、BASS (100Hz)、SYNTH VOL ●付属品:ギグ・バッグ
【問い合わせ】
JESインターナショナル TEL:0561-72-9801 http://godinjapan.com/product_multiacnylonsa.html
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プロフィール

前田智洋(まえだ・ともひろ)
1982年、大阪府出身。17歳でギターをはじめる。以降、自己のバンドを結成し自作の楽曲を中心に演奏を重ねるほか、数多くのミュージシャンと共演しレコーディングに参加。2005年に渡仏後、シルヴァン・リュックに師事し、自らのギター・スタイルの礎を築く。世界各国のジャズ・フェスティバルへ出演するなど、パリ、東京を中心に各地で様々な国籍のミュージシャンやアーティストと共演している。最新ソロ・アルバムは『Free Colors』。

村田善行(むらた・よしゆき)
株式会社クルーズにてエフェクト・ペダル全般のデザイン担当、同経営の楽器店フーチーズ(東京都渋谷区)のマネージャーを兼任。ファズ関連・エフェクター全般へのこだわりから専門誌にてコラムを担当する他、覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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