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  • いっちーのデジタル・デジマート 〜第9回〜

楽曲制作に不可欠なプラグイン・エフェクト〜 ミックス・ダウン/マスタリング編

プラグイン・エフェクター

DAWに関する機能や周辺機材の紹介についてそろそろ佳境に入ってきました。ギタリストやベーシストにとってなじみ深いエフェクターも、ソフトウェア音源と同じようにコンピューター上でシミュレーションできてしまいます。そんなプラグイン・エフェクトについて2回に分けて紹介いたします!

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 プラグイン・エフェクトにはハードウェアを忠実に再現したものから、ソフトウェアでしか処理できないさまざまな種類が存在します。最近のDAWには基本的なものが標準で装備されていますが、高品位なものや個性的なモノなど、別売ならではの魅力にあふれたものも多く発売されています。

プラグイン・エフェクトならではのメリット

設定した状態を保存、読み出しが簡単にできる

 ソフトウェア音源にも同じことが言えますが、どのエフェクトをどのトラックに使い、どのような設定にしたかという状態をすべて保存でき、いつでも再現できるというのはプラグインならではの特長です。アナログのエフェクターの場合、エフェクターに直接バミったり自分の記憶に頼る必要がありますし、プラグインの便利さにはかないません。またほとんどのプラグイン・エフェクトで時間軸にそった変化をDAWに記録し、再現することもできます(このことを“オートメーション”と呼びます)。

エフェクトのパラメーターをコントロールした軌跡を記録し、再現できる。

高品位なエフェクターがぜいたくに使える

 名機と呼ばれる高価なビンテージ・エフェクターも忠実にモデリングされ、比較的手に入れやすい価格で販売されています。CPUパワーには依存しますが、それこそ同じエフェクターを何台も同時に立ち上げることができます。もしこれがハードウェアだったらお金がいくらあっても足りませんね(笑)。もちろん機材のメンテナンスもいりません。さらに、シミュレーションではないコンピューターの高い処理能力を生かした独特な音声処理ができるプラグインも数多く存在します。

レアなビンテージ・エフェクターをこれだけの数を用意することは現実的に難しい……

楽曲制作に不可欠なミックス・ダウン/マスタリング用エフェクト

 楽曲制作の上で、作曲、演奏の次に重要なのが“楽曲全体の音質やバランスの処理”です。その際に使用するミックス・ダウン/マスタリング用エフェクトは、ディストーションやフランジャーのような劇的な音の変化はありませんが、元音を生かしつつ作者の想いをリスナーに届けるためには必要不可欠です。ご自身の作品をプロの作品と聴き比べたとき、何か聴こえ方が違うと感じる場合は、ミックス・ダウン/マスタリングのテクニックの差が影響していることが大きいです。その中でも代表的なエフェクトを紹介します。

リミッター/コンプレッサー/マキシマイザー

 リミッターは一定値以下に音量を抑える、コンプレッサーは音をつぶして全体を持ち上げる、マキシマイザーは音圧を上げるという効果が得られますが、基本的には“音のバラツキを整えるエフェクト”です。これらは一般的に売られている曲との音量の差をなくすためにも重要です。またクラブミュージックにおいては、コンプレッサーの使い方次第でグルーブが決まると言っても過言ではありません。

▲コンプレッサーの原理

 ▲上段左から順にL3-LL Ultramaximizer(WAVES L3 Multimaximizerに収録)、SLATE DIGITAL FG-X 、 model 670(IK MULTIMEDIA T-Racks 3 Deluxeに収録)、IZOTOPE Ozone 7 MaximizerSONNOX Oxford Limiter 、1176SE/LN Classic Limiting Amplifiers(UNIVERSAL AUDIO Apolloシリーズに収録)

イコライザー/フィルター

 イコライザーも重要なエフェクトです。さまざまなパートを重ねたときに生じる帯域の干渉を回避し、それぞれの音を聴こえやすくしたり、楽曲全体のバランスを決めたりします。フィルターは一定の帯域をばっさりカットしたり、強調することもできるのでイコライザーの仲間ですが、より楽器的な使い方ができます。

 ▲上段左から順にPuigTec(WAVES DiamondHorizonJJP Analog LegendsPlatinumMercuryに収録)、EQ 601(Steinberg Vintage Channel Stripに収録) 、SOLID EQ (Native Instruments KOMPLETE 10シリーズに収録)、Linear Phase Equalizer(IK MULTIMEDIA T-Racks 3 Deluxeに収録、FG-N BRIT"N" EQ、FG-S BRIT"4K" EQ(SLATE DIGITAL Virtual Mix Rackに収録)、Pultec Pro Equalizers(UNIVERSAL AUDIO Apolloシリーズに収録)

リバーブ/ディレイ/コーラス

 これらは楽器的な音色変化をもたらす効果としても使用されますが、各パートの空間処理をする上で欠かせないエフェクトです。2つのパートが重なっていて、どちらも聴かせたいという場合、ディレイ・タイムを非常に短く設定して発音タイミングをずらすことで帯域が被っているパートを聴こえるようにするというテクニックもよく使われます。

 ▲上段左から順にManny Marroquin Delay(Manny Marroquin Signature Seriesに収録)、Doubler(WAVES Power PackGoldPlatinumHorizonMercuryなどに収録) 、EAST WEST QUANTUM LEAP SPACES、RealVerb Pro(UNIVERSAL AUDIO Apolloシリーズに収録)、TrueVerb(WAVES Power PackGoldPlatinumHorizonMercuryなどに収録) 、H-ReverbMercuryにも収録

 これらのタイプのエフェクトはDAWに装備されていることがほとんどですが、上記に紹介したような単体で発売されているプラグイン・エフェクトはさらに高品位で、自分が理想とするサウンドに近づけやすいです。特にマキシマイザーやコンプレッサーはオススメです! これらのプラグイン・エフェクトを購入する場合は、まずはさまざまな種類がまとめられたお買い得なパッケージを選んで、足りないものを後から追加してみるとよいでしょう。

 ▲上段左から順にIZOTOPE Ozone 7IK MULTIMEDIA T-Racks 3 DeluxeWAVES Power PackGoldPlatinumUNIVERSAL AUDIO Apollo Twinシリーズ(専用プラグインDSP搭載のオーディオインターフェース)

エフェクト関連書籍

 今回紹介したプラグイン・エフェクトを使い、ミックス・ダウン/マスタリングで理想のサウンドに近づけるには、知識と経験が必要になります。下記のような書籍を積極的に利用して実践に役立ててください!

 

 ▲上段左から順に新・エフェクターの全知識エンジニアが教えるミックス・テクニック 99ミックス・ダウンをDAWで学ぶ本スグに使えるコンプ・レシピスグに使えるEQレシピスグに使えるディレイ&リバーブ・レシピProduction Mixing Mastering with Waves (日本語版)WAVES Hit Records(日本語版)


 またサウンド&レコーディング・マガジンではアーティストや現場で活躍するエンジニアの声、楽曲制作に役立つコンテンツを毎月掲載しています。はじめは難しいと感じるかもしれませんが毎月購読することで音楽シーンをリードするクリエイターへの道が開けるかもしれませんよ!

サウンド&レコーディング・マガジン2016年3月号

(→ サウンド&レコーディング・マガジンをチェック!

 次は後編、サウンドを積極的に変化できるプラグイン・エフェクトについて紹介いたします!
 <次回2016年2月16日(火)更新予定>

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プロフィール

いっちー(市原 泰介)
サウンド&レコーディング・マガジン編集部WEBディレクター。学生のころから作曲やDJ活動、バンド活動などの経験を積む。某楽器販売店を経てリットーミュージックに入社。前職では楽天市場内の店長Blogを毎日10年以上更新し、2008年ブログ・オブ・ザ・イヤーを受賞。得意ジャンルはクラブ・ミュージック。日々試行錯誤中。

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