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Electronic Drums ATV “aD5”の実力

ATV / aD5

2013年に設立された電子楽器メーカー、ATV。国内はもちろん、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなど海外拠点も持つ同社が、満を持して初のドラム製品=エレクトロニック・ドラム“aD5”をリリースした。今回開発にこだわったのは、ハイクオリティな音色に加え、ドラマーが心地良く叩けることにこだわったというその“演奏感”。リアルなタッチや奏者に合わせたダイナミクス・レンジが調整できるなど、これまでになかったコンセプトのもと、魅力的なエレクトロニック・ドラムに仕上がっているそうだ。ここでは、“リアルな演奏感と音質”を徹底追求したaD5の実力を、小森啓資、山崎 慶の試奏レポートを軸に迫ってみたい。

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About aD5
〜徹底的にこだわり抜いたaD5の特長を知る〜

 まずはエレクトロニック・ドラム、aD5の製品解説から。他メーカーのパッドを組み込んでも互換性があること、こだわりにこだわり抜いた5つのドラム・キットとその音色、ドラマーの特性に合わせたパッドの感度調整など、“リアルな音質と演奏感”を徹底追究したaD5の魅力に迫っていく。

 aD5はATV独自のテクノロジーにより、これまでのエレクトロニック・ドラムにはなかったという“ナチュラル”かつ“高音質”なサウンドを実現。“厳選された”5つのキット、画面に従って叩くだけで、プレイヤーの特性に合わせてパッドを調節する(Trigger Setup Wizard)、ハイレゾのステレオ・サウンドを低レイテンシーで発音、プレイヤーのタッチをそのままに表現する、まさに“限りなくアコースティック・ドラムに近い演奏”を可能にするのが大きな特徴と言えるだろう。

 また、トリガー入力は、各メーカーのエレクトロニック・ドラムに対応しており、バス・ドラム/スネア/タム/シンバルと、自分の好みにあったパッドを組み込むことができるのもポイント。

aD5(Top):”愛着の湧く楽器”を目指して、余計な加飾を排したシンプルかつ美しいデザイン。“メイド・イン・ジャパン”の素材感と精度を融合させ、品位あるルックスを実現したという。

aD5(Rear):接続端子も必要最小限でわかりやすい配置。SDカードやUSB端子の他、今後、同社製品との接続を可能にしてくれる“ATV LINK”も搭載されている。

Electronic Drums aD5

オープン・プライス(市場予想価格:¥128,000程度)

■Spec:【音色】5キット(追加音色をwebからダウンロード)【パッド入力】KICK、SNARE(3 Zones)、TOM1、TOM2、TOM3、HI-HAT(2 Zones)、HI-HAT CONTROL、CRASH(2 Zones)、RIDE(3 Zones)、AUX 1(2 Zones)、AUX 2(2 Zones)【接続端子】OUTPUT L/R:モノラル標準フォン×2、PHONES:ステレオ標準フォン、AUDIO IN:ステレオ・ミニ・フォン、MULTI TRIGGER INPUT:専用マルチコネクタ、AUX TRIGGER INPUT 1/2:TRS標準フォン、USB:2.0TypeBコネクタ(High Speed)、ATV LINK:RJ45 LANコネクタ、SD CARD:SD/SDHCカード、DC IN:付属ACアダプター専用【電源】DC12V【消費電流】600mA【外形寸法(WDH)】197mm×144mm×73mm【質量】1.1kg【付属】ACアダプター、マルチ・トリガー・ケーブル、スタンド・アダプター、クイック・スタート・ガイド

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Point 1 - KIT

 全5種類のドラム・キット(INSTはすべてバス・ドラムを表示)。“リアルな音質”を目指し、すべてにEQはかけず、あくまでナチュラルに鳴る、徹底した音作りがなされているという。ディスプレイに表示されているサイズ(例えばTru Acousticは22×15)は、実際にその口径×深さのタイコを録って作っているそう。各INSTの“名前”にも注目!

Point 2 - Trigger Setup Wizard

 叩き手の強弱レンジと、各パッドの出力に応じた最適な感度設定を行う"Trigger Setup Wizard"。各パッドのメーカー&モデル選択後(ヤマハ、ローランドなど)、ff(強)、pp(弱)で3回ずつ叩くと自動的に感度が調整されていく。

Point 3 - “Hybrid” Setting

 写真はセッティング例。aD5はマイク・スタンドでマウントし、バス・ドラムとスネア・ドラムにローランドのメッシュ・パッドを、タム類にヤマハのDTX PAD、シンバル・パッドは、ハイハット&ライド&スプラッシュがローランド製、左右のクラッシュがヤマハ製となっている。

Electronic Drums aD5 Review
〜プロ・ドラマーによるaD5試奏レポート〜

 続いては、小森啓資、山崎 慶によるATV aD5の試奏レポート。今回セッティングは、上記で紹介したものと同様、ヤマハ、ローランドのパッドを組み込んだ“Hybrid Setting”とし、音色や、打面を叩いてから発音するまでのタイム・ラグ(レイテンシー)、ダイナミクスなどを中心にチェックしていった。両名が感じたaD5の使い勝手、魅力とは?

 1人目の試奏者は、テクニカルかつ人間味溢れるプレイで、ロック、プログレ、ポップス、フュージョンなど、幅広くセッションをこなす小森啓資。アコースティック・ドラムの知識の深さはもちろんのこと、古くはシモンズなどデジタル楽器にも精通する彼が感じた、aD5の魅力とは?

小森啓資[KENSO、TRI-Offensive、野獣王国]

ステージ空間におけるアコースティック・ドラムの波動に限りなく近く
よりライヴ・サウンドにフィットする新しいドラム・サウンドが誕生するかも

 aD5のこだわりは多岐に渡って表現されているのですが、エレクトロニック・ドラムの音源は無数の音色を搭載して当たり前な現代に、大まかなジャンル分けを目的としながらも、確実にプロの現場で必要とされる音だけに絞り込み、厳選を重ねた末の“5キット”にとても強く現われている気がしました。

 今回、メーカーの異なるパッドを使って叩いたのは初めてで、しかも個人的には両メーカー共に所有し、よく使用していたモノだったこともあり、身体にインプットされているタッチと、aD5から発信される音のイメージがリンクするまでに、エレクトロニック・ドラム特有の、叩いてから発音するまでに生じるあの独特なタイム・ラグに対する先入観とのバランスに多少の時間を要しましたが、ATVのスタッフからアドバイスをいただききつつ微調整を加えていくうちに、みるみるその真価と対面することができました。

 aD5は限りなくアコースティックと見紛うほどのハイ・レスポンスゆえ、より微調整を施すことで、これまで抱いていたそのあたりのストレスは皆無になるのでは?と思わせるほどの超高精度に正直驚いています。

 また、今回の試奏でたまたま長く叩いていたジャズ・キット(Legacy Jazz)におけるダイナミクスでは、従来の電子ドラムのそれを遥かに凌ぐ驚愕のダイナミック・レンジを体感しましたし、これまでによく表現されて来た、“まるでアコースティック・ドラムのような”という比喩は、実はこの事だったんだな!という印象でした。

 別キットでもそのクオリティは、あくまでもアコースティック・ドラムのフォルムありきでの音像なので、サウンド・メイクにおける未知数が無限に垣間見れる気がしました。

 aD5の特性を使ってプロ・クオリティのサウンドを把握するには、多少の時間を要するかもしれませんが、選りすぐりの5セットで、ハイレゾかつ低レイテンシー、そして各パーツの細部に渡る見事なまでの音の深み…これらを駆使することで、ステージ空間におけるアコースティック・ドラムの波動に限りなく近く、でもよりライヴ・サウンドにフィットする“新しいドラム・サウンド”が誕生するかもしれない!という可能性を強く感じました。また、aD5のテクノロジーそのものは、継続的にアップデートされていくようなので、これはプロ/アマ問わず、多くのユーザーにとってとても魅力的なことだと思います。

 aD5を試してもらったもう1名のドラマーは、しなやかで芯のあるタイトなビートで名だたるビッグ・アーティスト達の歌を支える山崎 慶。自宅や現場などで、エレクトロニック・ドラムを愛用している彼に、“自分だったらaD5をこう使う!”を提示してもらった。

山崎 慶

イメージ通りのタイミングで鳴ってくれるし余韻がしっかり残ってくれるのも気持ちいい
誰もいなかったらずっと叩いていると思います(笑)

 僕はドラムを始めた頃に、ヤマハのDTX drumsを自宅で使っていたり、7〜8年前にはローランドのV-Drumsを手に入れたりと、エレクトロニック・ドラムはよく使っていました。特にV-Drumsは、ライヴやレコーディングでも使用したりしていて。エレクトロニック・ドラムの打感に関して言われることがあるようですが、僕自身はアコースティック・ドラムとはある意味“別物”と解釈していたので“もう少し、こうだったら良いのに”とかはあまり考えなかったですね。

 今回aD5を試奏して、“生楽器を演奏している感”を非常に強く感じました。音色は5キットでも不足に感じることなく、どれも素晴らしかったのですが、僕は特に“Metal 9000”の音色が好みですね。キックの重心が低くてパキっとしているんですよ。“このキット名はもしかして、このメーカーのこのモデルが由来なのでは……”と、想像を掻き立てられるのもナイスですね(笑)。サイズも、例えばMetal 9000のバス・ドラムに表示されている“24×18”みたいに、同サイズで録っているそうなので、そこにも好感が持てました。

 僕はイヤモニの現場が多くて、例えばタムが聴こえづらかったら、タムの音だけを上げてもらったり、そういうキット・バランスが気持ち良く演奏する上で大事になると思うんですけど、aD5は理想のバランスに限りなく近づけられることも1つの魅力だと思います。

 それから、ダイナミクス・レンジがつけやすく繊細なタッチからフル・ショットしたときにも、ちゃんとついてきてくれる印象ですね。反応もすごく良くてイメージ通りのタイミングで鳴ってくれるんですよ。余韻がしっかり残ってくれるのも気持ちいいですね。あとは他のメーカーのパッドでセットが組めるというのも新しい試みですよね。各メーカーによってパッドの特性が違うので、自分の好みのものを組み込む楽しみもあると思います。

 aD5は叩きたい気持ちにさせてくれるというか、演奏意欲を掻き立てられますね。誰もいなかったらずっと叩いていると思います(笑)。いわゆる消音パッドだけでももちろん練習になりますけど、やっぱりaD5を使って叩いた方が絶対に音楽的だと思うし、良い音で良いタッチだからより練習しがいもありますよね。自宅でトレーニングしてスタジオに行っても、生楽器との違和感をさほど感じずに叩けるのではないかと思います。今後、アップデートされていくのがすごく楽しみです。

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製品情報

ATV / aD5

価格:オープン

【スペック】
【音色】5キット(追加音色をwebからダウンロード)【パッド入力】KICK、SNARE(3 Zones)、TOM1、TOM2、TOM3、HI-HAT(2 Zones)、HI-HAT CONTROL、CRASH(2 Zones)、RIDE(3 Zones)、AUX 1(2 Zones)、AUX 2(2 Zones)【接続端子】OUTPUT L/R:モノラル標準フォン×2、PHONES:ステレオ標準フォン、AUDIO IN:ステレオ・ミニ・フォン、MULTI TRIGGER INPUT:専用マルチコネクタ、AUX TRIGGER INPUT 1/2:TRS標準フォン、USB:2.0TypeBコネクタ(High Speed)、ATV LINK:RJ45 LANコネクタ、SD CARD:SD/SDHCカード、DC IN:付属ACアダプター専用【電源】DC12V【消費電流】600mA【外形寸法(WDH)】197mm×144mm×73mm【質量】1.1kg【付属】ACアダプター、マルチ・トリガー・ケーブル、スタンド・アダプター、クイック・スタート・ガイド
【問い合わせ】
ATV http://www.atvcorporation.com/
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プロフィール

小森啓資[KENSO、TRI-Offensive、野獣王国]
こもりけいすけ:1964年生まれ。16歳でドラムを始め、19歳でプロ・デビュー。その後、難波弘之率いるSense Of Wonder、葉加瀬太郎、熱帯ジャズ楽団、和田アキラ、山本恭司、榊原大など多くのライヴ/レコーディングに参加。2000年に“野獣王国”、04年に“KENSO”に加入。05年にはKENSOで、米国開催のプログレッシヴ・ロック・フェス“NEARfest2005”に出演を果たした。近年はコンポーズ/アレンジも手がけている。

山崎 慶
やまざきけい:10代の頃よりさまざまなバンドで活動し、プロ・ドラマーとしてのキャリアをスタートさせる。2007年からは自身のバンドであるVenomstripでの活動の他、Acid Black CherryやDEAD END、GACKT、TETSUYA、河村隆一、BREAKERZ、May J.など、さまざまなアーティストのライヴ/レコーディングに参加。近年は、T.M.Revolution、宮野真守、TETSUYA & The Juicy-Bananasなどのサポートを務める。

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