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- 2024/03/22
Freedom Custom Guitar Research / Dulake Libero & Dulake Flat
今年のNAMMショー2016で発表され、この3月に1stロットが出荷されたばかり。そんなできたてホヤホヤでありながら、すでに多くのベーシストの話題となっている2種類のベースがある。フリーダム・カスタム・ギター・リサーチのDulake Libero(デュレイク・リベロ)とDulake Flat(デュレイク・フラット)だ。“架空の恐竜”をイメージしてデザインされた同社のオリジナル・モデルDulakeをもとに、よりオーセンティックなトーンにシフトさせた両モデルは、それぞれに個性的なボディ構造を持ち、またアルダー材/ライト・アッシュ材が選択できるなど、よりユーザーのニーズに合わせたサウンドと使い心地を備えている。そこで今回は、両器の4弦&5弦モデルを、ヒトリエのイガラシにプレイしてもらい、4本の試奏動画と共にその音色や弾き心地を探っていきたいと思う。「ARIMIZO & ONE POINT JOINT」に代表される独創性と高い技術力に裏打ちされたこれらの機種を、じっくりとチェックしていこう!
それでは早速、イガラシ(ヒトリエ)による試奏動画&レポートをお届けしよう。日頃はビンテージ・ライクなフェンダー製ジャズ・ベースを使うイガラシに、本シリーズはどのようなインプレッションを与えるのか? なお今回の試奏では、Dulake Libero、Dulake Flatともに、4弦はアルダー材モデル、5弦はライト・アッシュ材モデルをそれぞれプレイしている。
2ピース・アルダー(もしくはライト・アッシュ)をボディに採用した、Dulakeのニュー・スタンダードと呼べるモデル。取り回しのいいコンパクト・ボディながら、パッシブでもアクティブでも違和感なく使える、ジャンルを選ばないオールラウンダーだ。(試奏モデルのカラー:The Monsters/Mummy)
※ARIMIZO & ONE POINT JOINT(通称:アリミゾ)についてはこちらをご参照ください。
Igarashi's Impression
僕は普段、パッシブのジャズ・ベースを使っているんですけど、それに比べて音が前に出て行く“パンチ”がスゴい。スライドしたときに音が止まらない感じ、次の弦までつながってくれる感じは、アルダーの良さもあると思いました。音の幅も広くて、EQでハイやローを足しても、ジャンルが偏らず、自分のスタイルをうまく補強してくれるという感じです。
Dulake Liberoの5弦モデル。ペグ配置が新しくなり、より自然かつパワフルなローBトーンを得られるようになった。ここでの試奏はライト・アッシュ材モデルだが、アルダー材を選ぶこともできる。(試奏モデルのカラー:忍~Shinobi~/牡丹)
Igarashi's Impression
5弦ベースはローBの鳴りが尊重されるぶん、4弦がないがしろにされることもあって。でもこれは5弦の鳴りがすごく自然なのに加えて、4弦も前に出てくる。ベースとして大事にしている部分が、全然失われていないんです。タッチが鋭く出るのは、アッシュらしさですね。スラップのプルみたいなニュアンスが、指弾きでも気持ち良く出せます。
トップ材のフィギュアド・メイプルとバック材のアルダー(もしくはライト・アッシュ)で3mmのウェンジを挟んだ、ラミネイト構造のDulake Flat。DulakeとDulake Liberoの中間に位置するトーンを持ったモデルだ。(試奏モデルのカラー:For Maple Top/瑠璃)
Igarashi's Impression
Dulake Liberoに比べて、より一層、バチバチとした点の部分が見えるベースだと思いました。ボディ構造の違いなんですかね、自然なコンプレッションがかかる感じで、ファンクを弾いても気持ちよさそう。歪ませてもロー・ミッドの部分が甘くならず、タッチと同時にズバン!と出てくる。これならルート弾きをしているだけでも、気持ち良くドライブできるんじゃないかな。
Igarashi's Impression
ボディのバック材がライト・アッシュだからか、テンション感などで暴れやすくなるところも、イイ感じに中和されている。弾き手の言いたいことを整理して、手でうまくコンプをかけた感じにしてくれるような。アリミゾを締めたときはオーソドックスなフレーズ、ゆるめると柔らかくなったぶんだけ一番上のハイの部分が見えてくるので、重いリフものにも合うと思いました。
●ボディ:<Dulake Libero>アルダー2ピースorライト・アッシュ2ピース、<Dulake Flat>フィギュアド・メイプル2ピース+ウェンジ(トップ)、アルダー2ピースorライト・アッシュ2ピース(バック)●ネック:メイプル ●指板:ローズウッドorメイプル(24フレット、400R)●スケール:34インチ ●グリップ:オリジナルUシェイプ or オリジナル・ファットUシェイプ ●ジョイント:アリミゾ1ポイント・ジョイント ●ナット:シリコン・オイルド・ボーン ●ブリッジ:GOTOH 404BO ●ピックアップ:F.C.G.R.オリジナルDulakeハムバッカー×2 ●プリアンプ:F.C.G.R.オリジナル・プリアンプ
※フレットには、同社オリジナル・ステンレス・フレットを搭載する。硬さの違うスピーディorウォームを用意しており、高さや幅などの形状も、04〜09の6種類から選択可能。
──本当にジャズ・ベースやプレシジョン・ベースと同じ感覚で弾けるんです──
4本に共通しているのは、音の立ち上がりの速さ。僕が普段使っているジャズ・ベースは、4弦のアタックの速さがちょっと甘い感じなんですけど、この4本はそういったことがなくて。ボディ・バランスも良くって、4弦から5弦に移行しても、別の楽器に持ち替えている感じがしないくらい自然。
Liberoは指板をローポジからハイポジにかけて、広く縦横無尽に弾くようなフレーズが合いましたね。スライドしたときのニュアンスが本当に気持ち良く出てくれて、ベースで主張するようなラインがストレスなく弾けました。Flatは、Liberoよりも点がハッキリする感じ。そこにボディの構造も相まって、イイ感じにコンプレッションしてくれるので、強調したい部分がより見やすくなる感じです。
アリミゾの調整は、ホントみんなに体感してほしいですね。言葉のイメージどおり、締めると音もハッキリして、トーン自体にフレーズ感があるので、ルートを弾いているだけでカッコいい。ゆるめると暖かみが出てきて、もっとニュアンスで歌いたくなる。別の楽器のように変わるので、フレージングの発想にまで関わってくると思いました。
シェイプなどはジャズ・ベースやプレシジョン・ベースとはちょっと離れているかもしれないですけど、“ああいう音も出せます”じゃなくて、本当にジャズ・ベースやプレシジョン・ベースと同じような感覚で弾けるんですよ。アリミゾもスゴい可能性を与えてくれるから、誇張じゃなく、どんなスタイルの人にも気持ちいいポイントが作れるベースだと思います!
オリジナル・モデルDulakeのヒストリーを、フリーダム社代表である深野氏の言葉とともに振り返る。
1998年の創業時はユーザーの注文に合わせ、1本ごとのカスタム・オーダー・モデルを製作していた同社のエレキ・ベース部門。当初はオーセンティックなJBタイプ、PBタイプが多かったという。その製作時にエレキ・ベースのさまざまなノウハウを改めて蓄積し、初めて製品化したオリジナル・ベースが初代Dulakeだった。
“プロトタイプの製作には、3年くらいかけたと思います。もともとは5弦からデザインを始めたんですが、それは、そこから4弦・6弦を作った場合も、一番バランスのいいデザインにできるからなんです。ただ、きっかけは6弦モデルだったんですけどね(笑)”。
1960〜70年代のフェンダー・サウンドと、1980年代のコンテンポラリー・サウンドの融合を目指し作られたDulakeは、ボディ・センター・コアにウェンジ材などを挟んだラミネイト構造のラウンド・ボディ・モデルだった。そこからさらにユーザーの選択肢を広げるために開発されたのが、今年のNAMMショーで発表され、このたび発売となったDulake LiberoとDulake Flatだ。
“2014年のNAMMショーで新しいDulakeのプロトタイプを発表したんですけど、そこから2年間製作を詰めているなかで、よりフェンダー・ライクな倍音成分や生の鳴りを狙って生まれたのが、ソリッド・ボディのLiberoとラミネイト構造を継承したFlatというふたつのモデルなんです”。
ボディ材がアルダーとライト・ウェイト・アッシュの2種類から選べ、ともに4弦、5弦モデルをラインナップするDulake Libero & Flat。それぞれに個性的なトーンを備えたふたつの新Dulakeには、同社のサウンドへの探求心と妥協のないこだわりが集約されているのである。
“デザインから開発まで、スタッフ全員で行なった初のオリジナル・ベースDulakeには、フリーダム・イズムが詰まっているんですよ! Welcome to the FREEDOM!”。
続いては、これも同社のベースを語るうえでは欠かせない、ボディに施されたカラーについて見ていこう。
ボディに施された美しいカラーリングは、“その木の特性も見極めて色を生み出す”という、木工&塗装職人の情熱の賜物と言える。そこで両担当者の言葉から、そのこだわりを探ってみよう。まずは、その基礎となるボディ材選びからだ。
“まずは各モデルに合わせた重さと、そのモデルにしたときにイイ音がする材です。でも最も気にしているのは、完成したときに杢目がカッコ良く見えるものを選ぶということですかね(笑)”。(郷右近)
特に同社では、注文カラーに合わせ木材を選定するということもあり、最終的な仕上がりを見定めた郷右近の材選びが非常に重要な意味を持つ。
“僕らの持っている材料のなかで、注文をいただいたモデルのカラーをイメージし、その色で塗装したらカッコいいだろうなと思う材を選んで形にしています。塗装は船越にすべて託していますが、毎回塗装があがったものを見るのは楽しいですよ”。(郷右近)
木材と塗装のマッチングによって生み出されるカラーは、ある意味ではすべてワンオフと言えるものなのだ。
“杢目は「色を吸い込む部分、吸わない部分」、「強く吸い込む部分、弱く吸い込む部分」があり、同じ木材で数本作ったとしても杢目のバランスは異なり、正確に同じ色にはなりません。そのため毎回調色し、吹きながら微調整しています”。(船越)
この色の見極めで最も意識している点とは?
“結局は「見た目がいいか?」のみです。理屈抜きで「バン!と見て、グッとくる!」……そうでなければダメなんです。音に影響する塗膜厚も意識しています。その根底には「お客さんが喜んでくれたらいいな」という思いが常にあります”。(船越)
このように、各職人が協力し合うことで、フリーダムならではのカラーができあがるのだ。なお、各カラーはさまざまなテーマも持ち合わせているので、ぜひ楽器店にて、実物を間近で見てほしい。
特許も取得した、同社独自の新しいサウンド・コントロール・システムをチェック!
同社のベース/ギターに見られる、最も個性的かつ重要なサウンド・ファクターとなっているのが、“ARIMIZO & ONE POINT JOINT(通称:アリミゾ)”というボルトオン・ネック・ジョイント部の機構だ(写真参照)。
精巧な木工技術によって組まれたアリミゾ形状のスライド式のジョイントを、1本の大きなネジで固定した構造になっているのだが、このネジを六角レンチで回し圧着具合を微妙に変える(=トルク・マネージメント)ことによって、ベースの鳴りやサウンドの傾向自体も変えることができるという、まさに同社だけの画期的な仕組みなのだ(図版参照)。
しかもその調整を、ユーザー自ら行なえるという手軽さも特筆すべき点。同社のオリジナル・ベース全機種に搭載されているので、ぜひ自分の手でその変化を体感してみてほしい。
本記事はリットーミュージック刊『ベース・マガジン2016年5月号』の特集「話題の最新機種・Freedom Custom Guitar Research Dulake Libero & Dulake Flatの真価をリサーチ!」でも詳しく紹介されています。是非手に取ってご覧ください!
イガラシ(ヒトリエ)
wowaka(vo、g)、イガラシ、ゆーまお(d)により、前身バンド“ひとりアトリエ”を結成。その後シノダ(g)が加わり“ヒトリエ”として活動をスタート。イガラシはテクニカルかつエモーショナルなプレイに定評があり、リフものからスラップまで、幅広いスタイルでバンドの骨子を支えている。最新アルバムは『DEEPER』(非日常レコーズ)。