楽器探しのアシスト・メディア デジマート・マガジン

  • 特集
  • INNOVATIVE PASSIVE SOUND〜究極の“使える道具”

松原秀樹 meets Providence Bass

Providence / aCB-100WM、aRB-108M5

  • 取材・文・写真撮影:田坂圭 動画撮影・編集・録音:森田良紀

プロビデンスと言えば、革新的なシールド・ケーブルスイッチング・システムエフェクターの開発で知られ、信号劣化やノイズ対策、上質のトーンや道具としての完成度を追求した製品群は、トップ・プロの確かな評価を得て、今や“定番”となっているのは周知のとおり。そして、“INNOVATIVE PASSIVE SOUND”という理念のもとに開発が始まった今剛モデルなどギター本体に続き、2015年にはいよいよベース本体を発表。そこにはこの理念を実現する核心とも言える、デジマート・マガジン読者にはお馴染みのバイタライザーも内蔵されている。ここでは、セッション界の重鎮であり、すでにプロビデンス5弦モデル、aRB-108R5を愛用している松原秀樹氏に2本のプロビデンス・ベースをチェックしていただいた。

このエントリーをはてなブックマークに追加

松原秀樹 meets Providence aCB-100WM

松原秀樹 meets Providence aRB-108M5

デジマートでこの商品を探す

Providence aCB-100WM
トラッドな外観ながら使える道具としてのこだわりが満載された最新4弦モデル

 この手のシェイプにはPU一発やPJと呼ばれる仕様も多いが、本器はPタイプのフロントに加えて、それをリバースしたリアPUも積む、言わばPPという斬新なスタイルが目を惹く。そこから放たれるのはナチュラルさとモダンさを兼ね備えた個性的なサウンドで、さらに厚みと質量を追求した新開発のブリッジ・プレートがタイトなトーンと豊かなサステインに奏功する。もちろん同社ベースの核をなすVitalizer VZ-B1も内蔵し、ニュアンス表現に優れるが脆弱なハイ・インピーダンスのパッシブ信号を、ノイズや劣化に強いロー・インピーダンスに変換する機能は実戦で大きなアドバンテージとなる。回路を通った時点でビシッと音の軸が定まる印象もあるが、いわゆるバッファーのようなクセはなく、自然に音質を強化してくれる点が魅力だ。

志村昭三監修のリアPUはフロントのPタイプをリバースし、ポールピースをブリッジ寄りの弦間ピッチに合わせた専用設計。

ブリッジ・プレートは2mm厚の鉄製で、ボディ端に張り出したロゴ部も含めた重めの質量がタイトなトーンと豊かなサステインを生む。

ツマミは右からマスター・ボリューム、PUバランス、トーン(プッシュ/プルでバイタライザーのオン/オフをコントロール)となる。

内蔵されるVitalizer VZ-B1。

SPECIFICATIONS
●ボディ:アッシュ2ピース ●ネック&指板:メイプル1ピース ●フレット:21 ●スケール:864mm ●ペグ:ゴトーGB640 ●ブリッジ・プレート:プロビデンス・オリジナル ●PU:プロビデンスeXⅡ-V11&V31 ●サーキット:Vitalizer VZ-B1 ●コントロール:マスター・ボリューム、PUバランス、トーン(アクティブ/パッシブ切替兼用) ●カラー:TBS、BTS ●付属品:オリジナル・フィンガーレスト、ソフトケース、品質証明書
価格:260,000円(税別)

Matsubara’s Impression

 あまりに良いのでびっくりしました。Vitalizerをオンにしてもガッとアクティブ回路が効いてしまう感じもせず、ゴリッとした良い音ですね。オンでもオフでもイメージが変わらないのが素晴らしくて、でも音がまとまってクッとひとつ前に出る点は武器になると思います。ルックスの印象や2PU仕様からすると、PBやJB的な音を想像するかもしれないけど、それらとは違う独特でモダンな感じ。かといってクセが強いわけではなく、すごくナチュラルですよ。クラシックな匂いもあるけど作りがしっかりしていて、スラップもいけるし、ピックも合うし、使い勝手がいい。こんなベースが日本でも作られるようになったんだなって興味津々です(笑)。ぜひ現場で弾いてみたいですね。

デジマートでこの商品を探す

Providence aRB-108M5
プロビデンスの初代ベースにしてバーサタイルな5弦モデル

 プロビデンスの初代ベース=aRB-108シリーズは、Jタイプの流れを汲みつつ先進の音を放つ4弦と、現代のシーンに対応するバーサタイルな5弦からなる。M5を冠する本器は5弦/メイプル指板の1本で、同社ギター&ベースの共同開発者/セットアッパーである志村昭三氏監修のもとでKariya-Pickupsが製作したPUが奏者の表現に忠実なサウンドを創出。そのうえでVitalizer-B1を併載し、3バンドEQを備えたプリアンプVP-B1がパッシブ・トーンの維持と積極的な音作りを両立し、高域からローB弦に至るまでアンサンブルで引き立つ音像を具現する。ミッド・ツマミが担う周波数帯を変えられる3ウェイ・スイッチやVitalizerが効く位置をEQの前段/後段から選べるニュアンス・スイッチも装備した多機能型だが、中軸にはやはりパッシブの質感を重視したナチュラル指向が貫かれている。

やはり志村昭三監修のもとKariya-Pickupsと共同開発したeXpressoⅡは、フラットな音色特性を持つ。

aRB-108のブリッジは4&5弦ともヒップショットAスタイルを採用。

パッシブ音色を重視しつつも3バンドEQを備え、微細な音作りに対応。スイッチは右がアクティブ/パッシブ切替、左上はミッド・フリケンシー切替、左下はVitalizerが効く位置をEQの前段/後段から選ぶもの。

内蔵されるVitalizer-B1併載のプリアンプVP-B1。

SPECIFICATIONS
●ボディ:アッシュ2ピース ●ネック:メイプル ●指板:メイプル ●フレット:21 ●スケール:864mm ●ペグ:ゴトーGB528 ●ブリッジ:ヒップショットAスタイル ●PU:プロビデンスeXⅡ-511&531 ●プリアンプ:Vitalizer VP-B1 ●コントロール:フロント・ボリューム、リア・ボリューム、トーン、トレブル、ミッド、ベース、アクティブ&パッシブ切替、3ウェイ・ミッド・フリケンシー、ニュアンス ●カラー:ナチュラル ●付属品:ソフトケース、品質証明書 ●その他:インディアン・ローズウッド指板/バーガンディ・ミストorブラック・カラーのaRB-108R5もラインナップ
価格:290,000円(税別)

Matsubara’s Impression

 実はすでにaRB-108R5を使ってるんですよ。5弦ベースはなかなか気に入るものがないんですけど、すごくナチュラルなところが良くて、けっこう仕事でも弾いてますね。しっかり作られていてセットアップもいいし、コントロールがたくさん付いてるからいかにもアクティブの音なのかと思いきや、回路を通しても下世話じゃなくて自然。5弦は音抜けとローB弦の出方が重要で、音程感がわかりづらかったり、ブーストしちゃうようなのは嫌なんですよ。でも、これはVitalizerをオンにしてもドンシャリになることもなく、ナチュラルで嫌みがないのに音が前に出てまとまる。輪郭がぼやけやすいローB弦の5フレット、3フレットあたりも気持ちよくブーンと出てくれますね。

使用ペダル・ボード

 試奏に際しては、プロビデンスがNAMM SHOW 2016用に組んだスペシャル・ボードを接続。右下から時計回りに、歪み機能も備えたベース用プリアンプの試作機Bass Drive Pre-Amp+DI w/Vitalizer-B(仮)、プログラマブル・スイッチャーの定番PEC-04をベースに最適化したうえにVitalizer-BとEQも積んだPEC-4BVの試作機、原音重視のプリアンプとして人気のDBS-1、低音表現にこだわったアナログ・コーラスABC-1、緻密な設定に対応するコンプBTC-1、クリーンな電源供給を追求したパワー・サプライProvolt9、そしてVitalizer BF VZF-1だ。ちなみにパッチ・ケーブルはすべて世界最小級のハンダ式プラグProvidence NP-21&NP-21Lを使用したV206 “Silverbullet”。試奏時にはさまざまサウンドを試しているが、動画では近日公開予定の「Vitalizerの実力チェック!編」でVZF-1を使用した以外、エフェクトはバイパスしている。

使用アンプ

 今回の試奏で使用したアンプは松原氏の希望で用意したエデンWTP600D410XSTで、すべての試奏&実演で用いた。かねてからフェンダーやメサ・ブギーとともにエデンも愛用しており、6月から参加する徳永英明のツアーにも投入する予定だ。5弦のロー感まで気持ち良く表現でき、かつイナタさも備えている点がお気に入りだという。

“INNOVATIVE PASSIVE SOUND”とは?

 “プレイヤーはプレイ時にストレスを感じることなく最高の道具によって最高の音楽を奏で、それを聴いた人々は幸せになる──そうして皆が幸せになることは総じて世界平和にもつながる”というのがプロビデンスの信念であり、同社製品はすべてその根本たる最高の道具を目指して開発されている。同社ギター&ベースが内蔵するVitalizerも然りで、弾き手の表現を余さず汲み取るパッシブ・トーンを尊重したうえで、しかしハイ・インピーダンスゆえに脆弱なそれをロー・インピーダンス化してノイズ混入や劣化から解放するツールとして生み出された。バッファーの一種でもあるアクティブ回路だが、主旨はあくまでパッシブの質感を維持したままの信号を出口まで送り届けるキャリアーに徹することにある。パッシブの良さを享受するためにアクティブを用い、しかし従来のアクティブとは一線を画すこの回路を、プロビデンスは“もうひとつのアプローチ”として提案。それを集約したのが、“INNOVATIVE PASSIVE SOUND~パッシブ・サウンドをそのままに”というスローガンだ。


ベース・マガジン2016年5月号で詳細をチェック!

 本記事はベース・マガジン誌にて2015年11月号より連載されている「Providence〜プロビデンスの挑戦」と連動しています。2016年5月号の記事では、より詳しい松原秀樹氏のインタビュー・コメントも掲載されていますので、ぜひチェックしてみて下さい。

■ベース・マガジン2016年5月号の詳細はこちらから!

このエントリーをはてなブックマークに追加

製品情報

プロフィール

松原 秀樹
1961年、大阪府生まれ。70年代に音楽活動を開始し、ANKHでバンド・デビューしたのちにセッション・ワークも行なうようになり、現在まで第一線で辣腕を振るっている。これまでに中島みゆき、高中正義、今井美樹、角松敏生、スガシカオなどのライヴ/レコーディングに参加してきたほか、C.C.KINGやBattle Cryの一員としても活躍中。

製品レビューREVIEW

製品ニュースPROUCTS