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  • 週刊ギブソン Weekly Gibson〜第106回

密着! ギブソン・カスタム・ディーラー訪問ツアー2016

Gibson Custom Shop

  • 文:井戸沼尚也 動画・写真撮影:編集部 映像編集:熊谷和樹

True Historicシリーズに代表されるように、現代における最高品質のレス・ポールを作り続けるGibson Custom。素晴らしい製品をひとりでも多くのユーザーに届けるべく年に2回、Gibson Customの要人が来日して、日本全国の主要ディーラーを訪問。ギブソン製品担当者と直接情報交換をしながら販売サポートをしていることは、あまり知られていません。今回、そんなディーラー訪問ツアーの一部(渋谷地区)に週刊ギブソン取材班が同行し、Gibson Custom流のリレーションの築き方をレポートします。

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15年継続しているディーラー訪問

 このディーラー訪問ツアーは、2000年頃から始まったすでに15年も続くプログラムです。今回来日したのは、エドウィン・ウィルソン氏(Historic Program Manager)とトム・ファール氏(Trade Channel Manager)の両名。もう何度もツアーで来日しており、ディーラーの販売担当者はもちろん、日本の熱心なギブソン・ファンの間でもお馴染みのふたりです。2016年2月に行なわれた同ツアーで約1週間の滞在中、大阪、名古屋、福井、東京の18店舗を回り、合間にインタビューやイベント、ディーラーとの勉強会を挟むハードなものでした。ふたりはリラックスしながらも、各店舗を精力的に回っていきます。取材に同行したのはツアー最終日、東京・渋谷の4ディーラー訪問です。

渋谷地区ディーラーのリレーションを強化

イシバシ楽器 渋谷店

 この日、まず訪れたのはイシバシ楽器 渋谷店。1,200を超える弦楽器を揃え、ビンテージやハイエンド・ギターにも強いショップです。もちろん、Gibson Customの品揃えも豊富なことは言うまでもありません。ここでは同店副店長の在原央顕氏(写真、前列左からふたり目)とエドウィン氏がPeter Frampton "Phenix" 1954 Les Paul Customについて話していました。このギターはピーター・フランプトンが大ヒット・アルバム『カムズ・アライブ!』で使用した有名な個体を復元したモデルです。実はこのギター、1980年の飛行機事故で失われたとされていたギターですが、2012年に発見され、ピーターの手元に戻ったという逸話があります。こうしたドラマを作り手と売り手が共有し、ユーザーに付加価値として提供しようという姿勢が感じられるひとコマでした。

Peter Framptonモデルの物語をレクチャー

Gibson Customコーナーの陳列状況を視察

コントロール・カバーにサインを入れるEdwin

クロサワ楽器 G’CLUB SHIBUYA

 次に訪れたのは、クロサワ楽器 G’CLUB SHIBUYA。地下1階から地上6階まで、ギター/ベース/ウクレレが埋め尽くす楽器好きにとっての楽園です。ここではエレキギター部門営業統括の鍛代博行氏(写真、中央右)とエドウィン氏が、ユーザーから問い合わせが多いTrue HistoricのPUカバーや塗装について情報を共有しています。「オリジナルのP.A.F.ピックアップ・カバーは、型はひとつだが、バフがけをした人物によってバリエーションが出る。現在True Historicではバリエーションの再現の意味で2種のカバーを使っている」「ラッカーの種類が変わり、塗装が薄く、硬くなったことで音へも好影響を与えている」といった非常にディープな話をしています。かなり熱心なファンが訪れるショップだけに、ユーザーからの質問も突っ込んだものが多いとか。それだけに作り手と売り手の深いコミュニケーションがとても重要になります。ここでは、ペルハムブルーのビンテージ・メロディメイカー、しかも3ピックアップという超レア・モデルにエドウィン/トムの両氏とも、興味津々だったことを付け加えておきます。

ビンテージ・メロディメイカーをパチリ

製品ラインナップや状態に目を配っていく

製品に関する疑問点などを直接コミュニケート

池部楽器店 ギターズステーション

 この日3軒目となるディーラーは、池部楽器店 ギターズステーション。ハイエンド・ギターにとにかく強いショップとして知られています。ここでは入荷したGibson Custom製品を美しく撮影し、その写真を購入者にプレゼントする独自のサービスを行なっています。訪問したエドウィン/トムの両氏は、この写真1枚1枚にサインを書き入れて、販売促進の支援をします(ちなみに他店ではロッド・カバーなどにサインをしていただいていました)。その後は同店長の鈴木健太郎氏(写真、右)がトップの杢について話し、それをエドウィンとギブソン・ジャパンのご担当者がヒアリング。正統派の杢以外にもちょっと変わった杢を好むお客様がいるため、そうした個体も意図的に仕入れているとか。日本の販売現場の生の声を吸い上げ、製品開発に活かすこともディーラー訪問ツアーの目的のひとつです。

購入者用の特別な写真にサインをする

1本1本に異なるメッセージが添えられていた

ユニーク・トップに関する打ち合わせが続いた

池部楽器店 グランディ&ジャングル

 4軒目に訪問したディーラーは、池部楽器店 グランディ&ジャングルです。1階のジャングル・フロアは若いプレイヤー向きのショップで、地下1階のグランディ・フロアはプロ御用達のショップです。ふたりが向かったのは、グランディ・フロア。ここではギブソン製品ご担当の坂本義明氏(写真、中央右)からエドウィン氏に、お客様から問い合わせが多いというフレックについての質問がありました。「私が購入するイースタン・メイプルにフレックが入っているものが多いのは事実ですが、それだけを理由に材を購入したりはしていません」とのこと。一方、トム氏は店内のTrue Historic 1958 Les Paul Reissue Murphy Agedを試奏しています。我が子のようなギターが日本の環境下でどのような状態かをチェックするのも重要な仕事になっています。

ラインナップから日本市場のトレンドを見るふたり

音出しをして状態を確認するThom

たまたま来店していた(?)井戸沼室長と

 ここでふたりは渋谷を離れ、この日最後の訪問先となるクロサワ楽器G’CLUB TOKYOで開催されるイベントへと向かっていきました。

“生涯の1本”を支える地道な活動

 駆け足でツアーの1日をレポートしましたが、本来はこれを連日、しかも長距離の移動を伴いながら行ないます。Gibson Customがこれだけハードなツアーを年に2回、15年も継続しているのには理由があります。ひと口に日本のディーラーといってもショップごとに異なる個性があり、その先にはひとりひとり異なるユーザーがいます。彼らが求める情報を正しく伝え、愛器選びをサポートしたい。彼らのニーズを丁寧に吸い上げ、次の製品開発に活かしたい。そのために、各ディーラーと直接コミュニケーションをとり、深いリレーションを築きたいと考えているのです。

 Gibson Customの製品は、質の高い木材や練り上げられた製作技術はもちろん、こうした地道で息の長い活動によっても支えられている──だからこそ、特別な魅力を持つ、生涯の1本になり得るのです。


※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは6月17日(金)を予定。

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製品情報

Gibson Custom Shop / Peter Frampton "Phenix" 1954 Les Paul Custom

【問い合わせ】
ギブソン・ジャパン http://www.gibson.com/
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Gibson Custom Shop / True Historic 1958 Les Paul Reissue Murphy Aged

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ギブソン・ジャパン http://www.gibson.com/
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