Bose S1 Pro+ wireless PA system × 松井祐貴&井草聖二
- 2024/04/25
Framus Idolmaker、Panthera II
フレイマスは、ワーウィックの創立者=ハンス・ピーター・ヴィルファーが、先代である父の意志を受け継ぎ、1992年に立ち上げたギター・ブランドである。先代フレイマス(1950〜1975年に運営)ではおもに箱モノやビザール系を得意としていたが、現フレイマスではハイエンドで独創的なモデルを生み出しており、特に良質な木材の膨大なストックに関しては世界トップクラスと言えるだろう。今回はフレイマス・ギターを愛用するスティーヴィー・サラスが、シグネチャー・モデルであるアイドル・メイカー、そして最新モデルのパンセラⅡをハードかつファンキーにプレイし、熱く語ってくれた。
そもそもフレイマスとの出会いはどんなものだったんですか?
フレイマスのブランドそのものを設計し直そうっていう話があって、俺も関わることになったんだ。歴史があり名門でもあるフレイマスを、現代的でさらにカッコいいものにしたくてね。そこで新たにフレイマスのチームを作って、再活性化をはかることになった。ワーウィックの創始者でありフレイマスの代表でもあるハンス・ピーター・ヴィルファーと、デザイナーのマーカス・スパングラーと一緒にね。
それでシグネチャー・ギターを作ることになったんですね。
ほかの人とは違う新しいギターを作りたかったのさ。それで2年ほど前、何か独創的なものをデザインしようとドイツにあるフレイマスの工場に行ったんだよ。まあ誰だって優れたストラトやレス・ポールのようなクラシックな音のギターを求めるよな? でも、自分ならではの独創性を発揮する新たな方法も模索したくてね。そこで俺はドイツに向かい、マーカスと一緒に新しいギターを作ることにした。俺たちはそこで、ギターのシェイプを丸ごとデザインすることを考えていたんだ。
確かにこれまでにない斬新なシェイプです。このアイディアはどこから?
例えば1980年のフェラーリには長所と短所があり、2006年には昔の長所はそのまま、さらに革新を遂げていたわけだろ? そういう車を念頭に、空気力学のことなんかを意識したんだ。そして最初に気づいたのは“ギターのパワーはボディの中心にある”ということだった。ほかは必ずしも必要ではない、とね。だからこのシグネチャーもボディの端は薄くて、パワーを生む中心部分はブ厚くなっている。そうすることでハイエンドが少し増し、ブライトな鳴りになるんだよ。それと、俺としてはやっぱりパンクをやってる友達にも、メタルをやってる友達にも、ジャズをやってる友達にもしっくりくるようなシェイプを目指したかった。俺自身、イギー・ポップでも偉大なるファンカデリックでも、いろんなスタイルの音楽が好きだからね。そういう自分の個性を体現するようなギターにしたかったんだ。そして見た目はちょっとレトロで、かつレトロすぎないものに、ヘッド落ちをしないように……そんなことを考えていたら、こういう形になったんだ。2年前にこれをNAMM SHOWで発表したら大騒ぎになったよ。“こんなに美しいセクシーなギターは初めてだ”と言われて、毎日このギターが記事になっていた。ただし、スティーヴィー・サラスのモデルだということは重要ではないんだ。例えばスラッシュがシグネチャー・レス・ポールを発表すれば、主役はスラッシュであってレス・ポールはむしろ添え物だが、これはスティーヴィー・サラスよりもギターのほうが主役だった。にも関わらず一大センセーションを巻き起こしたんだ。あれで俺たちも“スゴイものを創った”と確信したんだよ。
素晴らしいですね。シェイプ以外でもこだわった部分はありますか?
ピックアップはロックできるヤツが希望だったけど、それでいて繊細さもあり、弾き手の感情が伝わるものにしたかった。そこにプレイヤーの個性があるわけだからね。だからこのギターには、俺がずっと使ってきたセイモア・ダンカンを付けているよ。リアのSH-78はPAFをステロイドで増強したようなイメージかな。フロントのファットキャットはセイモア・ダンカン版のP-90だ。といってもクラシック・ロックの演奏に向いているだけじゃない。ストラトっぽくもあり、P-90より、もうちょっとファットだろ? もっと温かみがある。このファットキャットは、めちゃめちゃクールなピックアップだ。
オリジナルのインレイも美しいですね。
俺の人間性を密かに表現するものが欲しいと思って、インレイにネイティブ・アメリカンの羽根をあしらったんだ。でも、さっきも言ったようにギターのそこら中に俺の名前が書いてあるわけじゃない。俺が目指したのは、俺自身よりはるかに有名なギターを作ることだったからね。俺が死んで消えたあとも、うちの息子が“あれは俺の親父のギターなんだ”と言えるようなものだ。これが俺のシグネチャーだということが知られてなくても、そんなことは重要じゃないんだよ。大事なのはフレイマスであり、このデザインであり、ギターそのもの。俺は自分よりもこのギターに有名になってもらいたいんだ。だから自分の名前は書いてないのさ。
アイドル・メーカーというモデル名の由来はどこから?
ずっと前だけど、俺は大人気テレビ『アメリカン・アイドル』(アメリカのアイドル・オーディション番組)に関わっていて、優勝者の音楽監督兼相談役としてレコード会社やマネージメントとのやり取りをすべて手伝っていたことがある。それで当時、ある雑誌で“アイドル・メイカー”と書かれたことがあってね。“スティーヴィー・サラスはアイドルを作る人だ”と。それを誰かが思い出して“じゃあ、このギターもアイドル・メイカーって名前にしよう”と言ったんだ。俺もそれはなかなか気が利いていると思った。ギターを弾きたいキッズは“ミュージシャンになってロック・スターになりたい”と思っているはずだし、ぴったりの名前じゃないか。この名前にしたのはそれが理由なんだ。
【Specification】
●ボディ: AAAAキルテッド・メイプル(トップ)、マホガニー(バック)●ネック:メイプル ●指板:タイガー・ストライプ・エボニー ●フレット:24 ●スケール:628mm ●ピックアップ:セイモア・ダンカン ファットキャット(フロント)、セイモア・ダンカン SH-78(リア)●コントロール:ボリューム、トーン、5ウェイ・ピックアップ・セレクター、2ウェイ・キル・スイッチ●ブリッジ:トーンプロズ チューン・オー・マティック ●ペグ:グラフテック レシオ・ロッキング・ペグ ●付属品:ギグバック ●価格:850,000円(税別)
レリック加工のブラックはまた仕様が違いますね?
かなり違うな。これはフロント・ピックアップでカッティングなんかもできるよう意識した。このギターはむしろ昔の俺のサウンド・イメージに近いだろうね。俺が使っていた1988年のヘイマーはマホガニー製で薄いメイプル・トップだったんだが、このギターもトップはごく薄いメイプルなんだ。ボディ材の割合はバックのマホガニーのほうが多い。ネックはメイプルにするとハイエンドが出て、逆にハイを抑えて温かみのある音を出したい時はマホガニーのを使ったりもしたね。ほかにもコリーナやいろんなウッドで作ったよ。
リア・ピックアップにはビル・ローレンス作のOBLが搭載されています。
実はキャリアの初期の頃、俺はビルが作ったOBLのピックアップを使っていたんだ。彼はすごく変わっていて、変人なのは会えばすぐわかるくらい普通じゃなかった。でも、マジで天才だったね。フレイマスのファクトリーでもハンスに“昔、OBLのピックアップを使ってたことがあって、初期のアルバムはほとんどそれの音だった。ストラトだと思っている人が多いけど、あれはビル・ローレンスが作ったOBLのサウンドだったんだよ”って話をしたんだ。そしたらある日、ハンスから “OBLのデッドストックを見つけたぞ! まとめて買っておいた!”と電話がきた。全部俺のだって言われて“やった!”って感じだったよ。そしてそのOBLをリアに搭載した、このギターができたんだ。完全無欠のロックンロール・トーンさ。ひとつひとつの音が明瞭かつクリーンで、なかなかすごいピックアップだろ? そしてフロントはアーケインのP-90タイプ。これもけっこう良い音してる。というわけで、このギターはパープルのとはまたちょっと違うんだ。
レリック加工も個性的です。
ギターには60才ぐらいの風貌でいてほしくてね。古い50〜60年代のボロボロになったビンテージ・レス・ポールを探して、それのレリック加工版をアイドル・メイカーで作ったんだよ。あとはやっぱりインレイ。大きな羽根飾りやヘッドフォンをしている人もいて、言わばクールで今っぽい、ダンスミュージック系のイケてるネイティブ・アメリカンが刻まれているんだ。
【Specification】
●ボディ:メイプル(トップ)、マホガニー(バック)●ネック:メイプル ●指板:タイガー・ストライプ・エボニー ●フレット:22 ●スケール:628mm●ピックアップ:アーケインPX90n(フロント)、OBL500(リア)●コントロール:ボリューム、トーン、3ウェイ・ピックアップ・セレクター ●ブリッジ:トーンプロズ チューン・オー・マティック ●ペグ:グラフテック レシオ・ロッキング・ペグ ●付属品:ギグバック ●価格:1,000,000円(税別)
ブルーのトップが美しいパンセラⅡは新しいモデルですよね?
そうだね。これはアイドル・メイカーを念頭に置きながら、波や海のようなエネルギーの流れを持つイメージをデザインに取り入れたんだ。パンセラ(前モデル)の長所を生かしつつ、木材の種類や厚みの工夫をして、よりファットなものにした。トップはメイプル、バックはブラック・コリーナだね。フレイマスのカスタムショップならおよそ何でも好きな材の組み合わせが作れるからさ。コリーナは少し明るめだけど、マホガニー・ネックにすることで少し温かみを増しているよ。もちろん、ゴージャスどころじゃない美しいトップも魅力だね。ボディは中央にいくにつれ少しずつ厚くなっていき、真ん中がまたさらに厚い。トーンもパワーもここから出てくるんでね。アイドル・メイカーの“流れ”というテーマを受け継いでいるんだ。ロックも弾けるし、実に美しくて繊細でもある。こんなガッシリとした材のギターなのに、へヴィに鳴らすだけでなく、いろんなことができるんだよ。そこらのギターとは違うね。
最後に、フレイマスというブランドの魅力はどこにあると思いますか?
クオリティだな。ワーウィック・ベースのクオリティって驚異的だろ? フレイマスも同じ会社だから、木材は世界最高峰だ。俺が特に気に入っているのは、彼らが植樹をしたりして環境に貢献しているということ。これは俺にとって非常に重要な点だ。彼らは厳しい基準を設けているから、古木を切り倒してしまうようなことはなく、厳密にルールを守っているところが俺にはすごく大きなポイントだった。非常に地球に優しい、ということがね。
【Specification】
●ボディ: AAAキルテッド・メイプル(トップ)、ブラック・コリーナ(バック)●ネック:マホガニー ●指板:タイガー・ストライプ・エボニー ●フレット:22 ●スケール:628mm ●ピックアップ:セイモア・ダンカン SH-APH-1(フロント)、セイモア・ダンカン SH-11(リア)●コントロール:ボリューム×2、トーン(プッシュ/プルでコイルタップ)、3ウェイ・ピックアップ・セレクター ●ブリッジ:トーンプロズ チューン・オー・マティック ●ペグ:グラフテック レシオ・ロッキング・ペグ ●付属品:ギグバッグ ●価格:900,000円(税別)
本記事はリットーミュージック刊『ギター・マガジン2016年8月号』の特集「Stevie Salas × Framus」でも詳しく紹介されています。本稿未掲載のフレイマス代表・ハンス・ピーター・ヴィルファー氏のインタビューも収録するなど読み応え十分。ぜひこちらもチェックを!
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以前から親交が深かったというスティーヴィーと稲葉浩志(B'z)による初のフル・コラボ・アルバム。東京、ハワイ、ロサンゼルス、オースティン、ナッシュビル、トロントなどでセッションを重ねながら育まれた楽曲たちは、両者の素地がメルティングした究極のグルーヴィ。もちろんスティーヴィーはこの作品中でもフレイマス・ギターを使用しているので、本特集でフレイマスが気になった方はぜひチェックいただきたい。
『CHUBBY GROOVE』
INABA/SALAS
VERMILLION RECORDS BMCV-8050
価格:¥850,000 (税別)
価格:¥1,000,000 (税別)
価格:¥900,000 (税別)