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『MY DEAR BASS』に収録された珠玉のベースを嗜む

MY DEAR BASS 〜ベーシストが愛してやまぬ"この1本"

ベース・マガジンの人気コーナーMY DEAR BASSが待望の書籍化。『MY DEAR BASS 〜ベーシストが愛してやまぬ"この1本"』のタイトルで、2016年7月25日に発売となる。これまでの280回を超える連載の中から厳選した100人以上を掲載。さらに亀田誠治、JIRO、KenKen、ハマ・オカモトが本書のためだけに、それぞれの愛器への思いを語った。ベーシストの"愛"に満ち溢れた同書から、垂涎の2本を愛のコメントとともに紹介しよう!

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"愛"を感じながらベースに心酔できる完全保存版の1冊

MY DEAR BASS 〜ベーシストが愛してやまぬ"この1本" 書籍『MY DEAR BASS 〜ベーシストが愛してやまぬ"この1本"』に登場する“愛器”の面白みは、そのすべてがメイン・ベースとは限らないこと。思い入れのあるベースに対する思いの丈を、プロ・ベーシスト本人が楽しげに語ってくれている。珠玉のFenderビンテージ、ひとクセもふたクセもあるGibson、各メーカーがブランドの意地と誇りをかけたモデルたち、独自のこだわりで製作された多弦&少弦、ダブルネック、イチから作り上げられた世界にひとつだけのカスタム……。そのベース本体と持ち主とのストーリーを読めば、あなたの愛器もまた一段と愛おしくなる。

【CONTENTS】
①New Interview ②Fender ③Gibson ④Other Brands ⑤6-10strings, 2-3strings, Double Neck ⑥Original Custom

書籍『MY DEAR BASS』の中身を紹介

たなしん(グッドモーニングアメリカ)のFender / Jazz Bass '61

樋口豊(BUCK-TICK)のFender / Precision Bass '68

ROY(THE BAWDIES)のFender / Precision Bass '74

林幸治(トライセラトップス)のGibson / Grabber

鈴木研一(人間椅子)のB.C.Rich / Eagle Bass

内田雄一郎(筋肉少女帯)のSpector / NS-20

近藤洋一(サンボマスター)のRickenbacker / 4001 '77

岡野ハジメのヴァイブラ1号

◎『MY DEAR BASS 〜ベーシストが愛してやまぬ"この1本"』を購入する


 本記事では、同書の中から2本のビンテージFender JAZZ BASSを紹介しよう。

佐久間正英のFender / Jazz Bass (書籍P30〜31より抜粋)

佐久間正英のFender / Jazz Bass

最近自分でベースを作るようになったのは、このベースがきっかけなんです。──佐久間正英

 72~73年製だと思うんです。僕が買った時には新品で、かれこれ20年以上は使っています。当時、僕はとにかくジャズベが欲しくて、これを試しに弾いたら気に入って。本当は黒のジャズベを探していたけど当時はなくてね。あの時代はフェンダーやギブソンは高級品で数が少なく、楽器店の陳列棚に入れてあり、なかなか触らせてくれなかった。プロのミュージシャンでもフェンダーやギブソンの楽器は持ってなかった。だからこれを買う時には、選択の余地がなかったという感じです。僕はもともとギターを弾いていて、四人噺子のひとつ前のバンドからベースを始めたんです。始めた頃は、楽器は別に何でもいいやと思って何本か使っていたけど、あとでやっぱりいいベースじゃないとダメだとわかって(笑)。僕はギター弾きだったから、ベースをあなどってた部分があったんでしょうね。

 このベースは今でもちゃんと生きている。それがすごいなって思います。一時はさすがにこの楽器にガタを感じて、捨てるしかないなと思い、しばらくは弾かずにしまっておいてたんです。でも、久々にセッションで使ってみたらメチャメチャ良くなってて。このベースの良いところは、まずチューニングが狂わないということ。四人囃子の頃は、何ヵ月もチューニングしたことがなかったんです。その当時僕は、わざとレコーディングの3ヵ月前から弦を替えないようにしていて。たとえ弦を替えてチューニングして、どこかのセッションに行ったとしても、ケースから出してからチューニングをしたことがない。今でも狂わないですね。20年間、ネックにフレット、その他のどこも調整したことがないんです。ブリッジのサドルだけは買ってすぐに取り換えましたが……それだけかな。結局これがずっと僕のメイン・ベースで、20年間使ってたとは思えないはずです。それはひとえに僕の弾き方のせいだと思うんですよ。例えば誰かにこのベースを貸すとチューニングが狂ってしまう。ベース・マガジンでやったピック弾きの特集でも話しましたが、無駄な力を入れなければフレットも減らない。楽器の保存はケースに入れて部屋に置いておくだけで、湿気のある場所に置いても平気。四人囃子の頃はよく放り投げてたけど、どこも壊れてないし……楽器としての完成度は素晴らしい。僕も見習いたいところです。実は最近、自分でもベースを作っていますが、そのキッカケがこのベースで、たくさんのことを教えてもらいました。特にいい作りをしてるわけでもないし、いい金具でブリッジを作ってるわけでもないのに、いい音を出すというのがすごい。例えばネックとボディのつなぎ目に少し隙間があるのですが、作る人の立場からするとちょっとイカンなと思うわけです。こんなゆるいはめ方だとね。でもそんなことは関係なく、いい音するし、別に狂いがくるわけでもないって、すごいですよね。

 僕は楽器をすぐ売っちゃうほうだけど、このジャズベだけは絶対に売らない。昔、松井常松にどうしても売ってほしいと頼まれたけど、イヤだって断りました(笑)。BOØWYの頃は、彼がこのベースを弾いてレコーディングしてました。僕がプロデュースするバンドには、よくこのジャズベを貸してるんです。例えば黒夢なんかもね。自分でベースを作り始めた理由のひとつに、いろんなバンドを長いことプロデュースしてきて、ずっと思ってたことがあって……みんなロクな楽器を持ってないというか、何かしら楽器に問題を抱えてる人が多いんですよ。で、そのつど直してあげたりしてたんですが、結局僕のベースやギターを貸すことが多くて。そうこうしている時に一度、どう調整しても良くならないベースがあって、試しに僕のジャズベのネックを付けてみたんです。そしたらそれだけで良くなったことがあって。で、楽器を直すよりも作るほうが早いなと思い、試しに1本作ってみたら、予想どおりいい音が出たんです。なんだ、簡単じゃんって(笑)。それは、いろんな楽器を修理してきて、僕の中でこうすればいいのにって思うところがあったからなんです。20年間、演奏家として楽器を研究してきたわけですから。

 自分が作った楽器は全部、実際に僕がレコーディングで試してみて、調整するところがあればして、そのあとで本人に渡すようにしてます。今までは一般に売ってきたものじゃないから、その人の演奏スタイルや音などを把握したうえで、その人に似合ったパーツを僕が勝手に決めて作ってたんです。でも、この先知らない人に作る場合があるとしたら、できればどういう演奏するのかを知って、注文を受けたいなと思います。実際に僕の前で弾いてみなさいと(笑)。それぐらいわかってないと、逆にその人に悪いなって思うんですよ。(ベース・マガジン1995年9月号掲載 ACT-39)

ヘッド部には65年以降から使用された、順巻きのペグがレイアウトされている。またロゴの横にはⓇマークが刻印されているので、72年以降に製造されたモデルだと推定できる。

ネックは1ピース・メイプル。黒のブロック・ポジション・マークがはめ込まれているが、四角の形状がやや雑にも見える。

ネック・ジョイントは4点止めのデタッチャブル方式で、プレートのシリアル・ナンバーは“386598”と刻印されている。

ピックアップは未改造なので、オリジナルのままのフェンダーのシングルコイルがマウントされている。各弦に2本ずつのポールピースを持ったお馴染みの形状だ。

コントロールの構成は2ヴォリューム&1トーン。もちろんコントロール・ノブも、オリジナルのままだ。

唯一オリジナルのままではないブリッジ。買った当初は、スパイラル・タイプのサドルだったが、ネジがゆるみやすいのを理由に、フル・アジャスタブル・タイプに交換してある。

BASS DATA
●楽器製造年/入手年:1972年〜73年/1975年頃 ●ボディ:アルダー ●ネック&指板:メイプル ●フレット数:20 ●ピックアップ:フェンダー・オリジナル ●コントロール:2ヴォリューム、1トーン ●改造点:サドル交換

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PROFILE
佐久間正英さくま・まさひで●1952年、東京都生まれ。中学時代にギターを始める。ベースに転向したのは73年、MythTouch結成時のこと。75年に四人囃子、78年にPlasticsへと参加して活躍。プロデューサーとしても名高く、BOØWY、GLAY、黒夢など日本を代表するロック・バンドを手がけた。また、楽器製作にも携わり、Top Dog名義で数多くのプレイヤーに楽器を提供してきた。2014年1月16日、他界。◎http://www.masahidesakuma.net

取材協力:佐久間音哉

岡沢章のFender / Jazz Bass '61 (書籍P24〜25より抜粋)

岡沢章のFender / Jazz Bass '61

塗装の剥げや黄ばみは裏面も同様。国土計画アイスホッケー・チームのステッカーが貼ってあるが、これはチームに入っている友達がいるのだそうだ。

いつでもどこでも、ほとんどこればっかり使ってる。──岡沢章

 このベースを手に入れたのは1975年頃。それまではプレシジョンを使っていたんだけど、特徴がある音だから曲によっては向かないものもあった。で、ジャズ・ベースが欲しくてずっと探してたんだ。すごくいいオールドも見せてもらったりもしていたけど、高くて買えなかった。そしたらある日、キーボードの佐藤準から電話があって、“アメリカから来てる友達が国に帰る金がなくなっちゃって、持っているジャズ・ベースを売りたがってるけど、どう?”って声かけてくれたの。それで見に行ったらこのベースだったってわけ。

 ヘッドのロゴが最初からなくて、一瞬ニセモノかって思ったけど、佐藤は信用してる友達だから、そんなはずないだろうって思い直したんだ。でも、色が白ってのは好きじゃなかった。今じゃ、僕っていうと白いジャズ・ベースっていうイメージがあるみたいだけど、本当は好きな色じゃないんだ。そういうどうでもいいところにこだわっちゃうんだよね、僕(笑)。そんな僕がなぜこのベースを買ったかって言うと、持った時の肌触わりがすごく良かったから。ネック裏の塗装は最初から剥がされていたけど、その感触が良くてね。今は珍しくないけど当時のベースはみんなテカテカに塗装されていたから、こういう感触のネックってなかった。だからみんな“このネックいいなあ”って言ってたよ。

 僕はあんまり詳しいことは知らないけど、買ったあとで詳しい人に見てもらったら、指板の厚さやいろんなスペックから総合的に判断すると、61年のものだろうって。ただ、音の面で言うと、この年代のものとそれ以降のものでは、同じジャズ・ベースでも音が違うんだ。ジャズ・ベースっていうと“ブゥウーン”っていうか、弾いたあとに一瞬減衰してから立ち上がるみたいな鳴り方をするでしょ? 僕のはそうじゃなくて、弾いた瞬間にドンって出てくる。立ち上がりがいいっていうのかな。で、それはたぶん指板が厚いせいだろうって。

 いつでもどこでも、ほとんどこればっかり使ってる。これが壊れたりでもしたらどうしようかと思って。だから絶対、身から離さないようにしてる。今はみんな楽器を機材車に積んで手ぶらで移動するけど、僕はそれができない。いつも友達に作ってもらった革のソフトケースに入れて抱えながら歩いてるよ。だから僕はスペアの楽器って一切用意してないのね。スペアって結局スペアとしてしか扱えないから、そういうのがイヤなんだよなあ。ステージでテンションが上がってる時に弦が切れたからってベースを交換したりすると、替えの楽器を触った瞬間に世界が変わっちゃうでしょ? 僕は不器用だからそういうのがダメなの。スペア用のベースを探したことはー度もないけど、いいジャズ・ベースをもう1本欲しいなと思っている。でも、いいなって思ったものは必ず高いんだよね。

 このベースは、ここ7~8年、ずっと一人のリペアマンに最低でも月に1回は見てもらって、修理や調整をしている。やっぱり弾いてるうちにボディとネックがズレてきたりするのね。あと、ブリッジがゆるんだりとか。そうすると弦のテンションが変わってきちゃう。今はヴォリューム・ポットを探してもらってて、これまで1回も取り換えてないからもうグラグラになっちゃっている。

 このベースで取り換えたパーツは、ナットとフレット、ピックアップ、それからブリッジのコマについてるネジくらいかな。ピックアップを換えたのは高域が出なくなってきたからだけど、新品だと音が変わっちゃうから、古いフェンダーのものを探してそれを付けてもらった。やっぱりできるだけ同じ音が出てほしかった。同じ音っていうか、ベースから伝わってくる感じみたいなものってあるじゃない? それが同じであってほしいわけ。女の人に対してだってそうでしょ? みんなそれぞれ顔は違うけど、自分に与える印象が前に好きになった人と同じだと、やっぱり好きになるじゃない? 遊びは別だよ、遊びは(笑)。長くつき合っていくとしたらの話ね。だからベースもそれとー緒なんだよね、僕にとっては。(ベース・マガジン1990年8月号掲載 ACT-3)

厚みのあるブラジリアン・ローズウッドの指板に注目。このフラット貼りが年代を知る手がかりとなった。そののち、フェンダーはアールが付けられているネックに対し、同じアールで薄い指板を貼り付けるラウンド貼りという仕様へと変更された。このベースは、先述したフラット貼りのため指板底面にアールは付いておらず、指板がかなり厚いのが特徴だ。

フレットは3回くらい打ち換えたそうだが、現在はギブソン・タイプの断面の丸いものが採用されている。

ジョイント・プレートの下にプラスチックのプレートを1枚噛ませて、二重にしてある。これはネック調整の際、何度もネジをゆるめたり締めたりすることでボディ材にかかる負担を緩和するため。つまり木部の保護のためだ。

ピックアップはハイ落ちしてきたため取り換えたという。もちろんフェンダー製。それもわざわざニューヨークから取り寄せた“オールド品”である。

BASS DATA
●楽器製造年/入手年:1961年/1975年前後 ●ボディ:アルダー ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●フレット数:20 ●ピックアップ:フェンダー・オリジナル ●コントロール:2ヴォリューム、1トーン ●改造点:ピックアップ、ナット、フレット、ブリッジのコマ交換 ●編注:岡沢の代名詞とも言える本器だったが、5弦ベースをメインにすることが多くなり、今から7〜8年ほど前に手放している。

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PROFILE
岡沢章おかざわ・あきら●1951年3月23日、東京都生まれ。17歳の時に伝説のグループ“M”に参加。19歳より本格的にスタジオ・ミュージシャンとして活動を開始した。稲垣次郎&SOUL MEDIA、松岡直也、渡辺貞夫などのグループを経て、79年から“プレイヤーズ”に加入と同時に、各種レコーディングその他セッションなどで現在に至っている。現在はケイコ・リー、高中正義、PontaBoxなど、数々のセッションで活動中。 ◎http://www.face-music.co.jp/3_player/okazawa.htm


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