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  • 多様なトーンを内包する名器の使いこなし術をERYが伝授!

ERY meets G&L L-2000

G&L / L-2000

  • 文:ベース・マガジン編集部 写真撮影:西槇太一 動画撮影&編集:森田良紀

レオ・フェンダーが最後に在籍したブランドG&Lにおいて、30年以上フラッグシップであり続けるL-2000。洗練されたシェイプを持ち、豊富なコントロールによって多彩なトーンを実現する本器は、レオが培ってきたノウハウが凝縮された集大成と言っても過言ではない。そんな名器を、KiLLKiLLSやRaglaiaなどのバンドで活躍するERYが、このたび導入。近年、パワフルなパフォーマンスとプレイでメキメキと頭角を現わしている彼女に、その魅力と使いこなし術を聞いた。

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about G&L L-2000

 ミュージックマンを退社後のレオ・フェンダーが、盟友ジョージ・フラートンとともに1980年に設立したのがG&Lだ。同社の第一号ベースとして発表されたのは、独自のマグネティック・フィールド・ハムバッカーを1基搭載したL-1000と呼ばれるパッシヴ・モデルだったが、その翌年に本稿の主役となるデュアル・ピックアップ仕様のL-2000が生まれた(発表当初、アクティヴ・モデルはL-2000Eと呼ばれていた)。同社のフラッグシップとして、のちにその名を広く知らしめることになる本器は、往年のフェンダー系ベースの流れを汲んだボディ・デザイン、実用的でオリジナリティに溢れたハードウェア、そして多彩なトーン・バリエーションを生み出すエレクトロニクスなど、当時のレオの思想がふんだんに盛り込まれている。

Working with Control
~コントロール使いこなし術~

 L-2000が擁する電装系の革新性は、最大のトピックと言えるだろう。先述の2基のハムバッカーはパワフルかつクリアな特性を持っているうえ、各ポールピースは個別で高さを調整できる独自の仕様を持つ。コントロール・ツマミはヴォリューム、トレブル、ベースに対応し、EQはフルの状態がフラットでカット方向にのみ作 動。ミニ・スイッチ類は、ピックアップ・セレクター(フロントのみ/ミックス/リアのみ)、ピックアップごとのシリーズ/コイル・タップ(フロントのネック側、リアのブリッジ側のコイルのみ駆動)/パラレル切り替え、トレブル・ブースト(アクティヴ)/アクティヴ/パッシヴ切り替えに対応している【上図参照】。2基のハムバッカーとコントロールにより、あらゆる用途をカバーできる幾多ものトーンを実現するというわけだ。

歌モノのアンサンブルに馴染むJB風トーン

  ノブは全開を基本として、スイッチはパッシヴ、コイル・タップ(シングルコイル)、ミックスの状態で、スタンダードなJB風トーンになります。一番スタンダードで馴染みがいい印象で、ベース単体で聴いてもハッキリしていて、アンサンブルに混ざっても輪郭が出るようなイメージですね。特に歌モノのバンドで、うまく混ざる音になると思います。

PB風サウンドでロックやパンクの勢いを演出

  こちらもノブは全開で、スイッチでパッシヴ、シリーズ、フロント・ピックアップのみを選択したPB風のサウンドです。先のJB風に比べるとパッと聴き丸く感じるんですが、コシがあって、かなりボトムがしっかりした音なので、ロックとか70's風のパンクにも合う印象ですね。個人的には、勢いがあるような曲を弾くときに良いと思います。

輪郭のクッキリしたドンシャリ・ハムバッカー

  ノブは全開、スイッチ類はアクティヴ、パラレル、リア・ピックアップのみをセレクトすると、イメージどおりミュージックマンのスティングレイ風のサウンドになります。ローもハイもしっかり出ていて、さらに輪郭もハッキリするので、いわゆるドンシャリに近い音ですね。例えばスラップをやるベーシストにも使いやすい、とにかく目立つ音になると思います。

存在感抜群のERYお薦めセッティング

  私のお薦めは、トレブル・ブースト(アクティヴ)、シリーズ、ミックスという全部乗せみたいなセッティングです。迫力があって、なんと言ってもパワフルで、さらにハイがかなり強調されているので、バンドのなかでも埋もれないような音。だけど、ほかの楽器と合わせたときの混ざりもいいので、自己主張が激しいタイプのベーシストにお薦めですね。

Interview with ERY

いろんなベースが1本のなかに存在しているイメージ

ERY meets G&L L-2000──L-2000の第一印象は?

  1本のベースなんですけど、その1本のなかにいろんなベース・サウンドが存在しているというイメージがありました。それくらいスイッチとノブで音色がガラッと変わる印象で。普通はスイッチとかノブの調整ができるとしても、基本の音があって、それを色づけする程度の変化のみなんですけど、このベースは、コントロールを使うとキャラクターがガラッと変わるんですよね。

──たくさんのスイッチが付いていることについて、最初は複雑だと思いませんでしたか?

  最初はやっぱりノブが3つ、3ポジション・スイッチが3つもあるので、どれを選んでいいかわからない、どうセッティングしていいかわからないという印象だったんですけど、実際ひも解いていくとアクティヴ/パッシヴ切り替えとピックアップの回路の選択、どのピックアップを使うかってだけで、一度理解してしまうとわかりやすい。なので、瞬時に切り替えたりすることもできるし、すごく便利だという印象に変わりました。しかもバンドのなかに入っても埋もれないような音作りができるのが、すごく印象的でした。

──ERYさんはピック弾き主体のプレイヤーですが、だからこそ、ベース選びの際に気にしているポイントはありますか?

  これはサウンド面ではないですが、ピックで弾くときにアクションも含めて安定させるために、小指をブリッジに固定するようにしているんです。だからブリッジとピックアップの位置関係とか、ブリッジのなめらかなディティールはすごく気にしていて。例えばブリッジ・サドルにネジ山が出ていたり、ピックアップの位置がうまく合わなかったりするようなものは避けているんですけど、L-2000はそんなこともなく、しっくりきて弾きやすいですね。

──ERYさんが重視しているライヴ・パフォーマンスにおいて、L-2000はどんな利点がありますか?

  軽いことが一番大きいです。これだけヴォリューム感のあるコントロールを積んでいるのに、パフォーマンスの取り回しがしやすい重さで、これもポイントのひとつですね。しかも、やっぱりコレ1本でいろんな音色が出せることがポイントで、私は足下に機材をたくさん置きたくないタイプなのですが、本体だけで完結できるのが大きいです。もちろんチューニング違いでの持ち替えは必要になりますけど、それ以外の音色の部分で持ち替えを特別気にしなくていいのはすごくありがたい。ライヴでもバンバン使えるベースだと思います。

──では最後に、L-2000はどんな音楽ジャンルに合うと思いますか?

 音色のキャラクターがガラッと変えられるベースなので、オールマイティに使えると思います。ただあえて言うのであれば、かなり激しめな、音数が多いバンドのなかで、存在感を出す音作りにすると華やかになるんじゃないかと思いますね。

本記事はベース・マガジン2016年9月号にも掲載されています

ベース・マガジン2016年9月号本記事はリットーミュージック刊『ベース・マガジン2016年9月号』の特集「ERY meets G&L L-2000」を転載しています。

【ベース・マガジン2016年9月号 内容紹介】
表紙:レイザーラモンRG
■Special Program2016年版!
最新ペダル型プリアンプ事情
■THE BASS INSTRUMENTS
プロ15人が語る 私とプリアンプ
■奏法特集 CD連動
どんなコード進行も一刀両断!
不動のワン・ポジション演奏術
and more...

■ベース・マガジン2016年9月号の詳細はこちらから!

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製品情報

G&L / L-2000

価格:¥360,000 (税別)

【スペック】
●ボディ:アルダー or スワンプ・アッシュ●ネック:ハードロック・メイプル●指板:ローズウッド or メイプル or エボニー●スケール:34インチ●フレット数:21●ピックアップ:マグネティック・フィールド・ピックアップ×2●プリアンプ:オリジナル●コントロール:ヴォリューム、トレブル、ベース、ピックアップ・セレクター・スイッチ、シリーズ/コイル・タップ/パラレル切り替えスイッチ、トレブル・ブースト/アクティヴ/パッシヴ切り替えスイッチ●ペグ:G&L“Ultra-Lite”withアルミニウム・テーパード・ストリング・ポスト●ブリッジ:G&Lサドル・ロックwithクローム・プレート ブラス・サドル●カラー:3トーン・サンバースト、チェリー・バースト、ナチュラル、レッド・バースト、ブラックほか、計51カラー
【問い合わせ】
山野楽器海外営業部 TEL:03-3862-8151 http://www.glguitars.jp
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プロフィール

ERY
エリー●8月16日生まれ。2009年にketchup maniaの元メンバーらとともにKiLLKiLLSを結成。さらにMARSAS SOUND MACHINEやピストルバルブなどのサポートを行なう。2015年にRAMI(vo/元Aldious)、K-A-Z(g/SADS,etc)、YOUTH-K!!!(d/BAT CAVE)が結成したプロジェクト・バンドRaglaiaに加入する。最新作は2015年11月にリリースした1stアルバム『Creation』。

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