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- 2024/03/22
Catalinbread / Echorec
カタリンブレッドのエコーレックは、その名の通りビンソンのエコーレックを再現したペダルだ。といっても、そもそもオリジナルのエコーレック自体が市場でほとんど見かけることのないレアな機材なので、まずは簡単にそちらの説明をしておこう。
ビンソンのエコーレックは、1960年代にイタリアで生産されたエコー黎明期のマシーン。入力された音をテープではなく磁気を帯びた金属製のディスクに録音し、4個の再生ヘッドを経てディレイ音をアウトプットするという個性的な仕様の機材だ。再生ヘッドの組み合わせにより10種のディレイ・パターンを選択することができた。その音質はクリアで、かつ幻想的な深みと揺らぎがあり、これでしか出せないものだった。そのサウンドを確認したければ、ピンク・フロイドの音源を聴くのが一番だろう。
一方、カタリンブレッドのエコーレックは次のような特徴を備えている。
・オリジナルのサウンドを高い次元で再現している
・オリジナルでは10種だった再生ヘッドの組み合わせによるディレイ・パターンを12種に拡張
・オリジナルにはないディレイ・タイムのコントロールが可能(40msecから1000msecまで)
・筐体内部にバッファー/トゥルー・バイパスのスイッチを備えている(これにより、曲中のブレイクなどでディレイ音を残すか、ディレイ音も消すかといった選択が可能になる)
さらに、オリジナルはちょっとしたアンプ・ヘッドほどの大きさと重さで持ち運びには極めて不便だが、カタリンブレッドのエコーレックはコンパクトなサイズの筐体で非常に扱いやすい。また、ビンテージと違って入手しやすく、動作も安定しているなどのメリットがある。
実際に弾いてみた印象としては、クリアなディレイ音とかすかな揺らぎが非常に心地良く、アルペジオやロング・トーンでは特にその威力を発揮する。一度オンにすると、いつまでも弾いていたくなるような気持ち良さだ。個人的なオススメは、プログラム・セレクトの4番。マルチ・ヘッドを再現した独特のリズミカルなディレイの返り方、揺れ方、にじみ方がたまらない。
現実的な価格で手に入れることができる、扱いやすい幻想的なディレイ・ペダル──ピンク・フロイド好きのギタリストは必携である。
リットーミュージック刊『ギター・マガジン2016年9月号』の連載「The Deep and Dope」では、ART-SCHOOLやMONOEYESなどで活動する戸高賢史氏を試奏者に迎え、本稿とは違った角度でカタリンブレッドのサウンド、魅力をインプレッションしています。誌面でフィーチャーしているのは“Belle Epoch”。エコーレックも含め6モデルの試奏インプレッションに加え、ブランド/機材解説など読み応え十分。ぜひこちらもチェックしてみてください。
価格:オープン
井戸沼尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。