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  • 週刊ギブソン Weekly Gibson〜第121回

ギブソン公式ES-335メンテナンス術アドバンスクラス〜攻める調整「ギブソン・セミアコ/フルアコを鳴らす」

Gibson Memphis / ES-335

  • 実演:福嶋優太(ギブソン・ジャパン) 文:井戸沼尚也 動画撮影・編集:熊谷和樹 写真:八島崇  録音協力:加藤和彦(オンキヨー) 取材協力:Gibson Brands Showroom TOKYO

かつてないほどオリジナル・ビンテージ・モデルに近づき、非常に高い完成度を誇るギブソン・メンフィスES-335。ロック、ブルース、ジャズなどさまざまなジャンルに対応できる多様性がES-335の魅力ですが、その魅力をさらに高めるべくピックアップ調整によるジャンル別セッティング術を大公開! さらにES-355を愛用する生形真一氏、ES-275を愛用する小沼ようすけ氏のセッティングにも迫ります!

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ES-335をジャンル別に鳴らすためのピックアップ・セッティング術

1958年製のビンテージES-335を再現

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 本企画で使用するギターは、Gibson Memphis 1958 ES-335 VOSです。ES-335の長い歴史の中でも稀少な生産初年度の1958年製のビンテージを再現したもので、バインディングなしのネックにドット・インレイ、ロング・ピックガード、“ミッキーマウス・イヤー”ボディ・シェイプなど、外観上の再現度の高さはもちろん、サウンドに関わる部分も下記のとおりこれまで以上のこだわりを見せています。

◎アンマッチド・コイル・ワインドを採用したMHSハムバッカー
◎550kのマッチド・ポット
◎チューブレス・ヒストリック・トラスロッド
◎主要部分のハイドグルー接着(ネック、指板、ボディ)
◎ライト・ウェイト・センターブロック

 そのままでも十分に良い音で演奏を楽しめる1958 ES-335ですが、ジャンル別にセッティングを追い込んでいけば、そのサウンドはさらに輝きを増します。今回はピックアップの高さ調整に特化して紹介していくので、比較的手軽に作業を行なえるのもポイントです。

専用メンテ工具の用意を!

 専用工具があればピックアップの高さを調整する以外にも、ネックの調整なども行なえます(詳しくは、前回の「攻める調整〜レス・ポール編〜」をご覧ください)。解説は写真・左上から時計回りに。

◎ジャック・ザ・グリッパー(※アウトプット・ジャック緩み増締め用)
◎ストップ・テイルピース・レンチ(※テイルピースのネジ回し)
◎プラス・ドライバー 1/4インチ(6.35mm)(※トラスロッド・カバー外し、エスカッション、ジャック・プレートなどの用途)
◎マイナス・ドライバー 4mm(※ポールピース、ピックアップ調整)
◎フレットボード・コンディショナー(※レモン・オイル)
◎マルチ・スパナ(※スイッチ・ナット増締め用)
◎ブリッジ・ジャック(※ブリッジ持ち上げ用)
◎ワイヤーカッター
◎レンチ(※トラスロッド用は5/16インチを、ポット・ナットの増締め用は1/2インチを用意)
交換用弦(※ギブソン.010〜.046)
◎スケール(※本来インチ・スケールで作業しますが、mmスケールで代用OK)
◎ウエス(※柔らかい布、お勧めはcarラグラグ)

ロック・セッティング

【狙い】パワフルなサウンドにするため、フロント/リアともにピックアップを高めにする。

●1~6弦まですべてのポールピースがPUカバーの表面上でフラットになっている状態から調整スタート。
●現状のピックアップ高をチェック:1、6弦の最終フレットを押さえた状態で、ポールピース頂点〜弦下側の隙間を測る。現状では4mmだったがまず3mmに調整する(次のポールピース調整をきちんと行なうため)。
●ポールピースの調整:出力を確認できるレベル・ゲージで、各弦の音量をチェック。強く出ている音を基準に、その他の弦のポールピースを上げて音量を揃えていく。
●ピックアップの高さを調整:ポールピースの調整後、再度ピックアップ全体の高さを調整。ロック・セッティングではフロント/リアともポールピースと弦の隙間が1.6mmになるよう、ピックアップ高を調整する。

ジャズ・セッティング

【狙い】ギター全体の音を拾うため、フロント/リアともにピックアップを低めにする。

●まずはロック・セッティングと同様に、現状の高さの把握と調整、ポールピースの調整を行なう。
●ピックアップの高さを調整:ジャズ・セッティングではフロント/リアともポールピース頂点〜弦下側の隙間が3mmになるよう、ピックアップの高さを調整する。

ファンク/ソウル・セッティング

【狙い】センター・ポジションで歯切れの良いカッティングを、フロントではメロウなプレイができるよう、フロント・ピックアップを低めに、リア・ピックアップを高めにする。

●まずはロック・セッティングと同様に、現状の高さの把握と調整、ポールピースの調整を行なう。
●ピックアップの高さを調整:ファンク/ソウル・セッティングではフロントのポールピース頂点〜弦下側の隙間が3mm、リアのポールピース頂点〜弦下側の隙間が1.6mmになるよう、ピックアップの高さを調整する。

ブルース・セッティング

【狙い】リアでバッキング、フロントに切り替えてソロを弾けるよう、リア・ピックアップを低めに、フロント・ピックアップを高めにする。

●まずはロック・セッティングと同様に、現状の高さの把握と調整、ポールピースの調整を行なう。
●ピックアップの高さを調整:ブルース・セッティングではフロントのポールピース頂点〜弦下側の隙間が1.6mm、リアのポールピースと弦の隙間が3mmになるようピックアップ高を調整する。

ES-355 生形真一セッティング

【狙い】ピックアップのセッティングを1弦側をやや高く、6弦側をやや低くスラントさせることで、アルペジオの高音が美しく響くようにする。

●ロック・セッティングと同様に、現状の高さの把握と調整(1.6mmに)、ポールピースの調整を行なう。
●上記の状態から、フロントは1&2弦のポールピースを反時計回りに約1/2周、6弦側のピックアップ高さ調整ネジを時計回りに2周回す。
リアは1&2弦のポールピースを反時計回りに約1周、6弦側のピックアップ高さ調整ネジを時計回りに2周回す。
高音側はポールピース、低音側はピックアップの高さ全体を調整するのがポイント。フロントとリアの微妙な違いにも注意!
●ビグスビーの弦交換は、テンションバーの下に布を通し、ボールエンドのところで弦を曲げて、ボールエンドを引っ掛けるのがコツ。

ES-275 小沼ようすけセッティング

【狙い】より生鳴りを活かすため、「ジャズ・セッティング」からさらにピックアップを低くセットする。

●ロック・セッティングと同様に、現状の高さの把握と調整、ポールピースの調整を行なう。
●ピックアップの高さを調整:ジャズ・セッティングではフロント/リアともポールピース頂点〜弦下側の隙間が5mmになるよう、ピックアップ高を調整する。
●フラットワウンド弦を張り、オクターブ・チューニングを行なう。

 いかがでしたか? トップ・プロのセッティングも参考に、ぜひ自分好みのセッティングにトライして、ESモデルの魅力を十分にお楽しみください!

【注意】
メンテナンス作業を行なう際は、個人の責任において、細心の注意を払って行なってください。ギター側へのダメージを含む万が一の事故に対して、ギブソン・ジャパン、及びデジマート編集部で責任を負うことは出来かねますので、ご了承ください。

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※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは10月14日(金)を予定。

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