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スモール・ボディ・ギブソンが好きだ! 〜ギブソン・アコースティック・プレイヤーズ・ブックより

Gibson Acoustic Player's Book

  • ギター解説:井戸沼尚也、編集部 撮影:星野俊 撮影協力:Woodman、RimShot

J-45を筆頭にハミングバード&ダヴ、スモール・ボディ、J-200、J-160Eといったギブソン・フラットトップを1冊まるごと大研究し、奥田民生、斉藤和義などのアーティストのギブソン・アコースティック、清水依与吏(back number)スペシャル・インタビューなども掲載したムック『ギブソン・アコースティック・プレイヤーズ・ブック』が9月に発売となった。本記事ではそのムックと連動し、J-45と人気を二分するスモール・ボディ・シリーズを紹介していこう。ギブソン・フラットトップの先駆けとして1920年代後半に登場したLシリーズを筆頭とするスモール・ボディ。続くLG、Bといったスモール・ボディ・シリーズは、多くのアーティストが愛用していることで有名。扱いやすい音量/音質と取り回しの良さから、改めて高く評価されているギターである。各モデルの歴史や特徴を是非知ってほしい。

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L SERIES 〜Gibson Acoustic SMALL-BODY GUITARS

L-1 1926製

Gibson/L-1

 ボディ・シェイプが丸みを帯びたロバート・ジョンソン・スタイルのL-1。サイド&バックがメイプル、指板、ブリッジはエボニーとなっている。本器は初期モデルにのみ存在するラウンドバック。ペグはオリジナル・オープンバック3連で、ブッシュは新しく交換されている。ナット、フレット、サドルともに交換調整済み。ナット幅46ミリのカマボコ形状のネックで、指板のアールはほぼフラット。ヘッドのロゴデカールが完全に消えているため、コレクター的価値はその分落ちるが、プレイヤーには問題なく使える貴重なギターだ。乾いて暖かみのあるサウンドで、見た目より音量がある。

ヘッドには本来スクリプト・ロゴが貼ってあったが、この時期のものは取れやすく、すっかりなくなってしまっている。

ペグはオリジナルのオープンバック。ブッシュは交換されている。

シンプルな二重のリングが入ったサウンドホール。

細身でシンプルなエボニー製のブリッジ。

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L-0 1920年代製

Gibson/L-0

 ギブソンのフラットトップ・ギターの中でも最も古い歴史を持つモデルが、このL-0とL-1。1926年に生産が開始されている。L-0は、当初はL-1とほぼ同じメイプル・アーチバックだったが、1928年にオール・マホガニーに変更され、その後、1932年にL-00にモデル・チェンジされる。この個体は28年以降のオール・マホガニーで、まだロバート・ジョンソン・スタイルの丸みを帯びたボディ・シェイプという貴重なモデル。ブリッジはハカランダ製のスクエア・タイプに交換されている。指板もハカランダ。かなり以前にリフィニッシュされており、不自然さはない。ナット幅は45ミリの極太だが厚みはそれほどなく、フィンガーピッカーにはむしろ弾きやすいかもしれない。

ヘッドは初期の特徴である筆記体の“The Gibson”ロゴが入っている。

サウンドホールのまわりにはシンプルなロゼッタが入る。

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L-00 1932年製

Gibson/L-00

 1932年から1946年まで生産された、オリジナルのL-00。本器は貴重な初年度1932年のモデルだ。近年はリイシュー・モデルも人気を博している。レクタンギュラー・ブリッジ、ファイヤーストライプのピックガード、Gibsonスクリプト・ロゴなどが特徴で、サンバーストといってもボディ中央部に申しわけ程度に色味が残っているだけで、ほとんどがブラックと言ってよい。サウンドホールまわりの弾き傷がど迫力だが、製造から80年以上経過していることを思えば状態は良い。太めのトライアングル・ネックを握れば、自然とブルージィなプレイになりそうだ。

ピックガードには独特の模様が浮かび上がっている。

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L-Century 1938年製

Gibson/L-Century

 強烈なルックスが印象に残る、L-センチュリー。トップはアディロンダック・スプルース、サイド&バックはメイプル、パーロイド・ヘッド、パーロイド指板で、ホワイトパールのインレイが施されている。当時のシカゴ市政100周年を記念して開催された世界博覧会から名前をとった記念モデルで、1933年から1940年まで製作されている。生産数が極端に少なく、独特なルックスを持っているため、コレクターからの人気が高いが、サウンドもしっかりしている。L-00よりも低音に余裕があり、乾いた軽い音色ながらボリュームがしっかりある。音よし、ルックスよし、コレクションとしてのバリューありの逸品だ。

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LG SERIES 〜Gibson Acoustic SMALL-BODY GUITARS

LG-2 1943年製

Gibson/LG-2

 ヘッドに旗のマークがついた“バナーヘッド”と呼ばれる貴重な最初期モデル。バナーヘッドのLG-2は1942年から1945年までの間しか生産されていない。スプルース・トップ、マホガニー・サイド&バック。ペグはオリジナルの3連タイプが搭載されている。ネックのグリップは幅があり厚みもあるが、不思議と弾きにくさはない。Xブレイシングが功を奏してボディ・サイズのわりに音量は大きく、しかし音が暴れず使いやすいのが人気の秘密だ。また、近年ジャクソン・ブラウンがバナーヘッドのLG-2を使用したことで人気に一層拍車がかかっている。

プリウォー・スクリプト・ロゴ&バナー・ロゴは1942年~1945年のみ。

ピックガードはスモール・タイプで、サウンドホールのロゼッタはワン・リング。

レクタンギュラー・ブリッジ。これらの周辺のスペックは同年代のJ-45と同様のものが採用されている。

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LG-3 1956年製

Gibson/LG-3

 LG-2のナチュラル・フィニッシュ・バージョンが、このLG-3。J-45とJ-50の関係を思い出してもらえば良い。スペック的にはサンバースト・カラーのLG-2とまったく同じだが、塗り潰しができないためトップ材を厳選、そのため生産本数が少なくプライスもやや高めに設定されていた。本器のペグはオリジナルの刻印ワンライン・クルーソンだが、ツマミは交換されている。ボディ・トップにわずかなポツキズ、ボディ・バックに米粒ほどの木地が出た打ちキズはあるが、ネック・バック、指板面も大変綺麗で製造年を考えると極上のコンディションといってよい。指弾きはもちろん、フラット・ピックのストロークでもしっかり抜ける音が魅力的だ。

1955年以降に採用されたラージ・ピックガード。スモール・ボディにこのピックガードが付くことでルックス面でのイメージはかなり変わっている。

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LG-1 1952年製

Gibson/LG-1

 比較的手が届きやすいビンテージ・ギブソンとして、近年人気が高いLGシリーズ。ラダー・ブレイシングのLG-1、XブレイシングのLG-2、そしてそのナチュラル版がLG-3だ。LG-1のトップのスプルースがマホガニーになると(つまりラダー・ブレイシングでオール・マホ)、LG-0となる。スモール・ボディのわりに鳴るLG-2や3も良いが、ラダー・ブレイシングならではのサステインが短く素朴な味わいを持つLG-1も、一度その魅力にハマったら抜け出せないギターである。本器は、スモール・ピックガードの初期スペックを持つ個体。ナット、フレット、サドルとも交換済みで、アジャスト・ロッドも余裕がある。ナット幅は42.5ミリのレギュラー・グリップで、60年代のものに比べると気持ち太目。54年までの初期モデルはラダー・ブレイシングでも箱鳴りがしっかりとある。

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LG-0 1965年製

Gibson/LG-0

 LG-0は、トップにもマホガニーを採用した、オール・マホガニーのモデル。1958年から生産されているが、本器はネック・グリップの仕様変更の過渡期となる1965年製。レギュラー・グリップ、17度ヘッドを持つ個体だ。指板には、まだハカランダがおごられている。ブレイシングはLG-1同様、ラダー・ブレイシングだ。そのため、オールマホの材構成と合わせて、非常に暖かく朴訥としたサウンドを持つ。オープンバック3連チューナー、ビス止めべっ甲柄ピックガードなどおもなパーツもオリジナル。フレットは擦り合わせ調整済みだが高さに余裕があり、当分は現状のまま楽しめるだろう。ほかのギブソン・スモール・ボディと同様、屋内でポロポロと弾くには最高のギターだ。

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LG-2 3/4 1950年製

Gibson/LG-2 3/4

 スモール・ボディのLG-2が、さらにコンパクトになったレア・モデル。ネックは多少細身のものが採用されており、まだ体の小さい子供ら、エントリー層の開拓を狙った、いわゆるステューデント・モデルだったのだろう。黒味の多いサンバースト、レクタンギュラー・ブリッジ、ロングサドルなどが特徴だ。コンパクト・ボディとはいえ1950年代の良質な木材が使われ、Xブレイシングが採用されているため、鳴りの良さはそのサイズからは想像もつかないほど。それでいて、適度に低音は抑えられており、実は非常にバランスが良いサウンドを放つ。家弾き用、フィンガーピッキング用としても最高の1本。

3/4にボディを縮小しているが、全体のルックス面でのバランスもとてもよい。ネックは14フレット・ジョイント。

通常のLGシリーズとのサイズの比較。思わず手にしたくなるキュートなサイズとなっている。

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B-25 〜Gibson Acoustic SMALL-BODY GUITARS

B-25N 1963年製

Gibson/B-25N

 B-25は、1962年にLG-2、LG-3のマイナー・チェンジにともない、名前が変更されて誕生した。初期のものはLG-2とほぼ同じスペックである。つまり、Xブレイシングで、トップはスプルース、サイド&バックはマホガニー、マホガニー・ネック、ハカランダ指板という仕様。本器はプラスティックのアジャスタブル・ブリッジ、セラミック・サドル、薄い塗りこみラージ・ピックガード、クルーソン・ペグもオリジナル。ナット幅42.5ミリのレギュラー・ネック、17度ヘッド角の60年代初期スペックだ。LG-2同様の、小ぶりながらしっかりと鳴るサウンドは人気が高く、日本でも著名なミュージシャンが多数使用している。

薄めのセルロイド製べっ甲模様のピックガード。このラージ・ピックガードは1964年頃まで採用されていた。

プラスティック製のアッパー・ベリー・アジャスタブル・ブリッジ。サドルはセラミック。このあたりの仕様はJ-45と同様だ。

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 『ギブソン・アコースティック・プレイヤーズ・ブック』は、これ以外にも定番のJ-45やハミングバード&ダヴ、J-200、J-160Eの各モデルを総力特集。さらに、国内ミュージシャンの愛器にも迫る。奥田民生、斉藤和義、スガシカオ、押尾コータロー、山崎まさよし、秦基博が所有する名器を、是非本でじっくりとご覧いただきたい。さらに! back number清水依与吏のスペシャル・インタビューまで収録。少しだけ中身を紹介しよう。

映像で詳しく知るなら『週刊ギブソン』で!

 稀代のトルバドールおおはた雄一氏によるギブソン・アコースティック2016モデルの徹底試奏企画は、ムックにも再掲載されている。珠玉の試奏映像は以下から!

週刊ギブソン Weekly Gibson〜第100回

本記事は『ギブソン・アコースティック・プレイヤーズ・ブック』からの抜粋でお贈りしています。

ギブソン・アコースティック・プレイヤーズ・ブック表紙

本記事はリットーミュージック刊『ギブソン・アコースティック・プレイヤーズ・ブック』の一部ページを転載しています。他シリーズの紹介などが満載で決定版となったムックをどうぞご覧ください。

【CONTENTS】
■ラウンドショルダー~J-45ファミリー
■スモール・ボディ~L-0、L-1、L-00、LG-1、B-25、etc.
■スクエアショルダー~ハミングバード&ダヴ
■キング・オブ・フラットトップ~J-200
■魅惑のビートルズ・ギア~J-160E
■アーティストのギブソン・アコースティック ~奥田民生、斉藤和義、スガシカオ、押尾コータロー、山崎まさよし、秦基博 ~清水依与吏(back number)スペシャル・インタビュー
■ギブソン・モンタナ・ファクトリー・ツアー
■おおはた雄一が現行モデルを徹底チェック
■メインテナンス・ガイド
■2017ギブソン・アコースティック・ラインナップ

●『ギブソン・アコースティック・プレイヤーズ・ブック』の購入はこちら!

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製品情報

ギター・マガジン / ギブソン・アコースティック・プレイヤーズ・ブック

価格:¥2,160 (税込)

【発売日】
2016/9/28
【スペック】
一番人気のJ-45を筆頭にハミングバード&ダヴ、スモール・ボディ、J-200、J-160Eといったギブソン・フラットトップを大研究。至高のビンテージ・ギター・ギャラリー、ファクトリー・ツアー、現行モデル試奏レポートなどでその奥深い魅力に迫っていきます。さらに奥田民生、斉藤和義などのアーティストのギブソン・アコースティック、清水依与吏(back number)スペシャル・インタビューなども掲載。ギブソン・アコギ弾き必携の1冊です。
【問い合わせ】
http://www.rittor-music.co.jp/books/15213006.html
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