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  • 週刊ギブソンWeekly Gibson〜第149回

遠くリバプール・サウンドが浮かぶ歴史的名器1962 J-160Eが日本限定で復刻!

Gibson Acoustic / 1962 J-160E VOS

アコースティック・ギターにP-90ピックアップを搭載、あえてハウリングを抑えるボディ構造を持つJ-160Eは、初期のザ・ビートルズの名曲で使用されたことで有名ですが、通常のアコギとは異なるサウンドや、エレキギター同様の使い方にも対応できる守備範囲の広さが大きな魅力です。今回、ジョン・レノンやジョージ・ハリスンが当時手に入れたものに最も近いとされるフィニッシュをまとったJ-160Eが日本限定で復刻されました。

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使用アンプ:マーシャルJVM410H(ヘッド)+マーシャル1960A(キャビネット)
使用シールド:ギブソンInstrument Cable

ジョンやジョージが手にした1962年製J-160Eを再現!
Gibson Acoustic 1962 J-160E VOS

 ラブ・ミー・ドゥ(Love Me Do)、恋する二人(I Should Have Known Better)、ノルウェーの森(Norwegian Wood)……。音楽ファンなら誰もが一度は耳にしたことがあるであろう、これらThe Beatlesの名曲たちの曲中で聴こえるのが、Gibson J-160Eというアコースティック・ギターのサウンドです。ジョン・レノンとジョージ・ハリスンはスタジオでのレコーディングのみならず、ライブ・ステージでもこのギターを愛用していました。その特徴的なルックスを見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。

 今回、ジョンがJ-160Eを初めて手に入れたと言われている1962年製の仕様を忠実に再現したモデルが、日本限定生産モデルとして登場しました。ビートルズの二人は、このギターのどんなところに魅せられ、愛したのか。じっくりと探っていきたいと思います。

P-90ピックアップ搭載で通常のアコギとは異なるサウンド・アプローチが可能

弦高調整が簡単に行なえるアジャスタブル・サドル

トライ・バースト・フィニッシュのボディ・トップに取り付けられたコントロール・ノブ

 トップに合板のシトカ・スプルース、サイド&バックにマホガニー、サドルはアジャスタブル・サドル。そこに加えて、ラダー・ブレイシング(「ラダー=はしご」のように平行にデザインされたブレイシング)という仕様選定がされたのは、ライブ・ステージで使用した際のフィードバック対策として、良い意味でコントロールされた音色のコンセプト・デザインを考えてのことと言えるでしょう。また、極薄で仕上げられたトライ・バースト(赤味を加えた3色からなるバースト・カラー)のVOSフィニッシュは、新品にもかかわらずビンテージの風格を漂わせています。ギブソン・モンタナでJ-160Eにこのカラーを吹くのは初めてとのことで、ボディ・エッジの黒をタイトに仕上げた色合い、雰囲気はジョンやジョージが当時新品で入手したJ-160Eにかなり近いとされていることも大きな魅力です。

 そして本器の一番の特徴は、フィンガーボードのエンド部に搭載されたP-90ピックアップと、ボディ・トップに付いたふたつのコントロール・ノブ。ピックアップが取り付けられたことにより、通常の14フレット・ジョイントが15フレット・ジョイントになっているなど、強い個性を感じると同時に、どんな音がするのだろうと想像が膨らむ魅力的なルックスです。

生音からアンプ・サウンドまで対応力の広さがすごい!

 早速フラット・ピックを手に弾いてみると、材料の組み合わせとアジャスタブル・サドルの相乗効果からか、非常に歯切れの良い、優秀なコンプレッサーを薄くかけたような粒立ちの揃ったサウンドが響きました。ジャカジャカとストロークしても、音が潰れず1本1本の弦がそれぞれの存在感を放ち、パーカッシブでリズミックなプレイにはその魅力をいかんなく発揮してくれるのです。メロディ弾きでも同じ理由で音が立って聴こえるような印象を受けました。ピックアップが搭載されているため、プラグドありきと思ってしまいがちですが、その個性的な生音は味わい深く、このギターでしか出せない音色は、レコーディングの際など、ここだという“使いどころ”のあるギターだと感じました。

 続いてギターにケーブルを差し込み、アンプにつないでみると、そのサウンドに驚かされました。ピエゾ・ピックアップを搭載した一般的なエレアコとはまるで違う、甘く鼻にかかったような中域を持ちつつも、クリアに抜けてくるような音色。豊かなミドル・レンジがそのままナチュラルに出ているような印象で、バンド・サウンドの中でストロークするような場面でも、耳に突き刺さることなくナチュラルな響きを期待できそうです。そのフルアコを思い起こさせる音色は、ジャジィなコード・カッティングや、ソウルフルなリフにも絶妙にマッチングする印象を受けました。

 せっかくアンプにつないだので、試しにオーバードライブ・ペダル(TS-9)を加えて踏み込んでみると、またもこのギターの新たな表情を見ることができました。P-90ならではのいなたいロック・サウンドはとても心地良く、ライブを目的とするミュージシャンなら、この選択肢はひとつの大きな武器になるのではと感じました。

 ジョン・レノンがこのギターでしか書けなかった名曲の数々がどのように生まれたのか、ジョンがこのギターの向こう側に見た景色を想像しながら、ぜひあなたもJ-160Eの魅力を体験してみて下さい!

アコースティック・ギター+P-90の魅力!

 J-160Eの特徴であるアコースティック・ギター+P-90の発するサウンドは大きな魅力ですが、他にも同様のモデルを週刊ギブソンでは紹介してきました。斉藤和義モデルのJ-160Eや、J-160Eよりも以前に生産されたCF-100EもP-90を先駆けて搭載していました。今回の動画でも試しましたが、フルアコ的サウンド・アプローチをこなせるのも魅力ですね。ぜひサウンドを聴き比べてみてください! 加えて、週刊ギブソン100回記念で大特集したおおはた雄一氏によるギブソン・アコースティック・ギターのサウンドをいま一度お楽しみあれ!

斉藤和義モデルJ-160E! 抜群の生鳴りとデュアル・アウトプット仕様

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※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは5月5日(金)更新を予定。

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製品情報

Gibson Acoustic / 1962 J-160E VOS

価格:¥429,000 (税別)

【スペック】
■ボディ・トップ:シトカ・スプルース合板 ■ボディ・サイド&バック:マホガニー ■ネック:マホガニー ■指板:ローズウッド ■ブリッジ:ローズウッド(アジャスタブル・タイプ)■ペグ:グローバー ■ピックアップ:P-90 ■フィニッシュ:トライ・バースト
【問い合わせ】
ギブソン・ジャパン http://www.gibson.com/
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プロフィール

エバラ健太
えばら・けんた●1983年、東京都出身。地元と第2の故郷徳島を拠点に、全国各地を旅する弾き語りシンガー/ソングライター。作詞・作曲だけでなくアレンジ・録音・ミックスまでを自ら手がける。的確なギター・ワークと歌唱によるオーガニックなサウンドを、デジタルマシンで即興的に加工しながら情緒的に歌い上げるライブは、既存のジャンルにカテゴライズされない新しい音楽シーンの幕開けを予感させる。自身の活動の他、CM、TVなど、さまざまなレコーディングにも参加。Morris FingerPicking Contest 2015にて最優秀賞、オリジナルアレンジ賞を受賞。最新ソロ・アルバムは初のフィンガー・ピッキング・アルバムとなる『7』。

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