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Chapter02 - Test Report ~ リズム&ドラム・マガジン編集部による試奏レポート

今回試奏するのは、アッシュ・バージョンとメイプル・バージョンの2種類で、共にグロス・フィニッシュが施されている。

PHOTO:Takashi Hoshino(星野俊)

ロック、ジャズという垣根なく幅広い音楽に対応できる魅力的な新世代ドラム

YAMAHA PHX/アッシュ・バージョン
試奏&文:山本雄一(RCCドラムスクール)

タイコそれぞれがバランス良く鳴る心地良いアッシュ・バージョン

 試奏スタジオに到着すると、そこにはアッシュ仕上げとメイプル仕上げの2セットが置かれていました。どちらも22"、12"、13"、16"という構成です。“うわっ、キレイ……!”、これが率直な第一印象。これまでにもいろいろなヤマハのドラムを見てきましたが、一目で“別格”を意識させる独特の存在感がありました。特にガーネット・フェイドの木目は美術品のような仕上がりで、“早く叩きたい”というよりも、“本当にコレを叩いていいの……?”と臆してしまう程でした。

 さて、実際の試奏は、どちらも新品の状態であったため、基本チューニングからスタート。最初はアッシュの方を選んでみました。ニュー・フック・ラグの滑らかさと安定感は良い感じです! ある程度のチューニングを終えて軽く叩き始めた瞬間……思わず笑顔になってしまいました。最初からあまりにも見事に鳴ってくれたのです。まず音が大きい! 太い! 音圧がすごい!  そしていくら強く叩いてもピークを感じさせず、“もっと思いっきり叩いてもいいよ!”と挑発(!?)するかのように反応してくれるのです。でも耳障りな爆音ではありません。実に心地良い大音量です。さらに、タム、フロア・タム、バス・ドラム、それぞれが実にバランス良く鳴ってくれます。最初はやや遠慮がちに叩いていたのですが、途中からは楽しくて、もう夢中になってしまいました。海外ドラマーがPHXをテストしたとき、なかなかセットから離れなかったというエピソードを聞きましたが、その気持ちはわかりますね。もちろん、音が大きいだけが魅力ではありません。ピアニッシモで叩いたときの繊細なトーンも実に美しいのです。メロディアスなフレーズが次々と自然に湧き出てくる感じでした。その一方“こんなに簡単にチューニングが決まるの?”という疑問もあったのですが、しばらくピッチを上下させてみてわかりました。PHXは、それぞれが“鳴る音域”を幅広く持っていて、サイズに合ったピッチならば、比較的楽に音色が定まるのです。見方を変えれば、とにかく鳴るドラムなので、若干チューニングが甘くても底力で鳴ってしまう感じですね。試奏の途中では、他の人にも叩いてもらい、聴く位置による音の違いもチェックしてみましたが、驚いたのは、自分が叩いたときと、人の叩いている音を聴いたときとで、その気持ち良さにほとんどギャップを感じなかったことです。どのポジションで聴いても“鳴るドラム”という印象は変わりません。特にフロア・タムのヌケの良さ、そして正面から聴いたバス・ドラムの迫力に感動しましたね。


縦方向に芯の通った太い音が魅力のメイプル・バージョン

 次にメイプル・フィニッシュですが、こちらもチューニングはほとんど悩むことなく決まりました。やはり最初からよく鳴ってくれます。価格はこちらの方が抑えられていますが、アッシュを叩いたときに感じた“すごさ”はすべて共通していますね。あえて両者の違いを挙げるならば、メイプルの方が若干硬質な印象を受けました。アッシュの音が全方向に膨らむ太い音だとしたら、メイプルは縦方向に芯の通った太い音……といった感じでしょうか。とは言え、どちらもまったく優劣のつけられない見事な鳴りっぷりなので、いざ“買おう!”となった場合は悩むでしょうね……。このあたりはぜひとも試奏の機会を得て、自分の耳とタッチで確かめてもらいたいところです。それと今回の試奏機種とは別に、ある程度使い込まれたPHXも参考として叩かせてもらいましたが、その音がこれまた素晴らしくてビックリ! 新品の2台も最初から良く鳴りましたが、音の“深みとツヤ”のような部分はこちらに軍配が上がりましたね。というわけで、PHXには“育てていく楽しさ”も存分にありそうです。


総評

 試奏の後日、20"のバス・ドラムを中心とする小さめのPHXも叩く機会がありました。そのとき、キックのフェザリングがあまりにも美しいトーンで鳴るのに感動! 私の師である猪俣猛氏は、そのセットをピアノ・トリオのステージで使ってみて、非常に好感触を得ていたとのことです。最初に試奏をしたときは“PHXの音はロック、ポップス向けかな?”と思っていた私でしたが、 そう考えると、PHXにロックとかジャズという垣根はなく、“幅広い音楽に対応できるシリーズ”と言えそうですね。これまでに比べると高価な楽器ではありますが、“このサウンドが手に入るのならば……”という気持ちの方が上に立つ、魅力的な“新世代ドラム”です。

続いてはYAMAHA開発スタッフ・インタビュー▶▶

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