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Knaggs Guitars〜熟練ルシアーたちの新たな挑戦〜

今剛がナッグス・ギターズを試奏レポート・Vol.1/ナッグス・ギターズとは?

伝統と革新を持ち合わせる気鋭のギター・ブランド、Knaggs Guitars。木材の美しさを前面に押し出したデザイン、確かな技術に基づくプレイアビリティの高さは、世のギタリストの感性を大いに刺激することだろう。今回は同ブランドの魅力に迫るべく3回にわたって特集記事を展開していく。第1回目は、日本のトップ・ギタリスト=今剛の試奏レポートに加え、ブランド設立者であるジョー・ナッグスのインタビューも合わせてお届けする。

連載第2回はこちら:『今剛がナッグス・ギターズを試奏チェック・Vol.2/ナッグス・ギターズ工房レポート』
連載第3回はこちら:『今剛がナッグス・ギターズを試奏チェック・Vol.3/スペック・チェック&スタッフ・インタビュー』

About a Knaggs Guitars 〜ナッグス・ギターズとは?

 アメリカの首都ワシントンDCからチェサピーク湾を挟んだすぐ東側、メリーランド州グリーンズボロに拠点を構えるナッグス・ギターズは、2009年創立とまだまだ年若いブランドだ。ただ、それはあくまでもブランドの話で、創立者にしてデザインと製作を取り仕切るジョー・ナッグスはポール・リード・スミスの片腕として20年以上PRSギターズに在籍し、同社の最高峰であるプライベート・ストックの責任者も務めた人物。共同創立者のピーター・ウルフも元PRSのマーケティング責任者であり、ふたりのPRSでの同僚など数十年のキャリアを持つクラフトマンたちが集ったのがナッグス・ギターズの実態である。

 先住民族が名付けた近隣や北米の河川名からシリーズ名やモデル名を取り、エレクトリック・ギターとアコースティック・ギターが2シリーズずつ、加えてベースの製作も行なうなど、新興ブランドとしては豊富なラインナップをそろえている。主軸となるエレキ・シリーズは2タイプのオリジナル・ブリッジでシリーズ分けされているが、小規模のギター工房には珍しく、金属パーツまでデザイン/製作しているのだ。同社のギター製作理念や姿勢が端的に表われている部分と言えよう。また、木製ピックガードも含めたさまざまな木材のラミネイトによるトーン設計とデザインなども大きな特徴で、すべてのエレキ・モデルはセットネック・ジョイントを採用しているのも同社の個性。さらに、各モデルごとにTier1〜Tier3までのグレードが存在し、T1には最高級グレードの材やインレイを用いる一方、T3はプレイヤーに向けた実践的仕様となっており、比較的低価格での設計を実現している。

 現在のギター・シーンで高い評価を受けているPRSギターズの、さらに最高峰ラインを手がけていたルシアーたちによる新たな挑戦。今後も多数の革新的なギターを生み出していくことだろう。

Products & Guitarist's Review 〜製品レビュー&今剛試奏レポート

 ここからはKnaggs Guitarsの人気機種、ChesapeakeシリーズのSevernとChoptankの2機種を、今剛の試奏レポートとともにチェックしていこう。

Chesapeake Series : Severn Tier 1

 チェサピーク湾に注ぐ河川から名前を取ったセヴァーンは、25.5インチ・スケール、おもにシングルコイル・ピックアップを採用など、フェンダー・ストラトキャスターを基盤にしたモデル。ティア1と2はスワンプ・アッシュやアルダーにカーリー・メイプル・トップを組み合わせたラミネイト・ボディで、さらにマホガニーの一種であるサペリを化粧板として配しているのが特徴だ(ティア3はスワンプ・アッシュもしくはアルダー単体)。またセットネック・ジョイントの採用も注目のポイントだろう。ピックアップは、ティア1にはビンテージ指向にパワーを足したリンディ・フレーリンのブルース・スペシャルを、ティア2と3にはアルニコ2マグネットを用いたセイモア・ダンカンのAPS-1を採用している。さらに注目なのがオリジナル・ブリッジで、トレモロ・タイプはリア・ピックアップ部のプレートとブリッジ本体が2点でジョイントされており、そこを起点にブリッジが上下する構造となっている。ユニークなシステムだが、プレートがボディ振動を効率的に伝えることで豊かなサステインを生み出すとともに、音の立ち上がりなど反応の良さも向上させているわけだ。“61”とタイプ分けされたネック・グリップは、ジョー所有の61年製ストラトを参考にしたもので、約215Rというフラット目な指板アール、細く高さのあるフレットの採用などもあり、フィンガリングも良好だ。

  • Knaggs Guitas / Chesapeake Series: Severn Tier 1

    Specifications: ●ボディ:カーリー・メイプル(トップ)、アルダー(バック)●ネック:カーリー・ロック・メイプル●指板:ココボロ●フレット:22●スケール:25 1/2インチ●ピックアップ:リンディ・フレーリン・ブルース・スペシャル×3●コントロール:ボリューム、トーン×2、5ウェイ・セレクター●ブリッジ:チェサピーク●ペグ:クルーソン・タイプ●カラー:Wicked Burst
    価格:オープン・プライス(市場実勢価格:648,000円)

    デジマートでSevern Tier 1を探す
  • リア・ピックアップ部のプレートとブリッジ本体が蝶番のように組み合わされたオリジナル・ブリッジ。サドルはうしろ下がりに傾斜が付けられて設置されている。

  • ナッグス・ギターズの、弦振動へのこだわりが見て取れるセットネック・ジョイント。船の先端を思わせる美しいジョイント部のカーブは、のみを使った手彫りによるもの。ハンドカーヴィングの技術が今なお息づいている。

 

Chesapeake Series : Severn Tier 2

 セヴァーンのTier2はアルダー・バック&メイプル・トップに加え、マホガニーの一種であるサペリを薄く貼ってある(メイプル・トップ・モデルもあり)。ジョーによると、サペリはメイプルのような硬質な音響特性を持ち、独特な杢目を描くことから、大胆にもフレイム・トップの化粧板に採用したという。木製のピックガードはウェンジ材を用いたもので、独特の細かい縞模様が3層ボディともうまく調和している。Tier1では、この部分に白蝶貝を埋め込むことで、さらなる高級感を演出している。

  • Knaggs Guitas / Chesapeake Series: Severn Tier 2

    Specifications: ●ボディ:カーリー・メイプル(トップ)、アルダー(バック)●ネック:ロック・メイプル●指板:ココボロ●フレット:22●スケール:25 1/2インチ●ピックアップ:セイモア・ダンカンAPS-1×3●コントロール:ボリューム、トーン×2、5ウェイ・セレクター●ブリッジ:チェサピーク●ペグ:クルーソン・タイプ●カラー:Winter Solstice
    価格:オープン・プライス(市場実勢価格:378,000円)

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Chesapeake Series: Choptank Tier 2

 チョップタンクは、セヴァーン同様にチェサピーク湾に注ぐ河川から名前を取り、25.5インチ・スケールを採用したシングル・カッタウェイ・モデル。ストラト的なセヴァーンに対しテレキャスター的な位置付けのモデルと言えるが、セットネック・ジョイントで、シングルコイル・ピックアップを3基搭載している点がおもしろい。ピックアップはセヴァーンと同じく、ティア1がリンディ・フレーリンのブルース・スペシャルで、ティア2と3はセイモア・ダンカンのAPS-1。セレクターは5ウェイなので、リア&センターやセンター&フロントといったハーフトーンも活用できる。ボディは、ティア1と2がメイプル・トップを配したラミネイト構成で、ティア3が単材。テレキャスター・シェイプではあるが、トップのエルボー部やバックにコンター加工がなされており、体へのフィット感を向上させているのも実用的なアイディアだ。本器も約215Rの指板アールやトール&シン・フレットを採用しているが、ネックのグリップは52年製テレキャスターをもとにした“52”タイプ。セヴァーンよりやや厚みがあり、ガッシリと握り込みやすい形状を持っている。ブリッジはナッグス・オリジナルで、ノン・トレモロ・タイプのためリア・ピックアップを囲むプレートとブリッジ本体は一体型。弦の裏通しとも相まって、ボディ部での弦振動がしっかり還元されたサウンドを持つギターだ。

  • Knaggs Guitas / Chesapeake Series: Choptank Tier 2

    Specifications: ●ボディ:カーリー・メイプル(トップ)、アルダー(バック)●ネック:ロック・メイプル●指板:ココボロ●フレット:22●スケール:25 1/2インチ●ピックアップ:セイモア・ダンカンAPS-1×3●コントロール:ボリューム、トーン×2、5ウェイ・セレクター●ブリッジ:チェサピーク●ペグ:クルーソン・タイプ●カラー:Winter Solstice
    価格:オープン・プライス(市場実勢価格:378,000円)

    デジマートでChoptank Tier 2を探す
  • リア・ピックアップを囲むプレートと一体となったブリッジ。トレモロ式がプレート部を5点止めだったのに対し、こちらは全体を4点で固定している。弦は裏通しだ。

  • セヴァーンと同じくセットネック・ジョイントを採用。シングル・カッタウェイのため接地面も大きく、それがまたセヴァーンとは異なるサウンド特性を生み出している。

 

【総評】重さやバランスも良いし、このまま仕事に行けちゃう感じですね。

:セヴァーンのティア1はとにかく弾きやすいね。特に、このココボロっていう指板がすごく良い。初めてのギターは“馴染み”をチェックするんですけど、これはすごく馴染みますね。初めて弾いた感じがしない。サウンドは、メイプル・トップならではのアタックがあるし、低音も高音もしっかり出ている。アルペジオなんかを弾くと高音がすごくキレイですよ。ギターとしてはモダンな感じで、僕はビンテージにはあまり興味がないからこういうギターは好きです。この独特のアームも使いやすいですよ。重さやバランスも良いし、このまま仕事に行けちゃう感じですね。ティア2はティア1に比べると少し重いかな。でも、これも指板がすごく良いしフレットもキレイに仕上げてありますね。ピックアップがセイモア・ダンカンだからサウンドはティア1とは違うけど、こっちも良いですよ。シングルコイルでもパワーに不足を感じないです。

 チョップタンクは一番気に入りました。セヴァーンより太めのネックだけど違和感はないし、とにかく反応が良い。これも指板がすごく手に馴染むね。リアはテレキャスターっぽい音がするし、リアとセンターのハーフトーンは今までに聴いたことがないサウンドですよ。高域が出ているのはもちろん、粒が揃っていて密度が濃い感じがします。いろいろなギターの要素があると思うけど、それを意識しないで弾けるのが良いね。いや、これ本当に良いなあ(笑)。

Profile

今剛(こん・つよし)
1958年、北海道出身。日本を代表するスタジオ・ミュージシャン。寺尾聰の「ルビーの指環」から宇多田ヒカルの「Automatic」まで、ヒット曲にこの人ありと言われるほど、数多くのアーティストのレコーディング、ライブに参加。現在は、同郷で中学の後輩であるkoがボーカルを務めるBattle Cry及びclass with Battle Cryのギタリストとしても活動している。
なお、今回の試奏では、フラクタル・オーディオ・システムのAxe-Fx IIプリアンプ、Amcronのパワー・アンプPSA-2、メサ・ブギーのスピーカー・キャビネットで組まれたサウンド・システムを使用した。
Battle Cry Sound

Builder Interview 〜ジョー・ナッグス インタビュー

 最後に、PRSでプライベート・ストック・チームを率いた経験を持つジョー・ナッグスに、Knaggs Guitarsの立ち上げの経緯、ブランド理念などを尋ねた。(翻訳:守屋智博)

基本コンセプト

ジョー・ナッグス/生産部門責任者

 Knaggs Guitarsが誇るユニークなサウンドやフィーリングを持った最高のクオリティーのギターを作ることにあります。“フェンダー・ストラトキャスターやギブソン・レス・ポールとは違う、ましてやポール・リード・スミスのサウンドとも違うギターじゃないか!”と言われることもあります。しかし、必ずしもそれらのギターと似たサウンドを持っている必要はありません。あくまでKnaggs Guitarsらしいサウンドにしたいと 思っており、私たちはそれだけを追求しています。そして素晴らしい人々とともに良い時間を過ごしながらやっていきたいと思っています。

ブランド立ち上げの経緯

 2009年の8月、私たちはKnaggs Guitarsを立ち上げました。私はPRSで何年もギターの設計を行なってきたうえで、開発チームを率い、会社在籍時にはプライベートストック・チームも統率しました。その頃から、Choptank、Severnといったいくつかのギターの設計を、個人的に行なっていたのです。これらのギターは、PRSで設計したモデルよりも私自身のテイストに近く、自分の好みを反映させたギターたちでした。実は、これらのモデルをChesapeakeという名前でPRSに導入しようと考えましたが、社長のポールは通常のPRSの生産ラインに集中することを考えていたため実現には至らなかったのです。しかし、私が設計したギターを世界中のギタリストに手に取ってもらいたいと考えました。その結果、自分の会社を立ち上げて運営することになったのです。

現在のスタッフ

 ダニー・ディド、デイヴ・ヘイゼル、そして私の3人はオリジナルのプライベートストック・チーム出身です。ダニー・ディドと私は20年も仕事をともに行い、HollowbodyやMiraといったモデルを作ってきました。ダニーと私はプロトタイプを作り、それを生産していくためのプロセスを担当してきました。プライベートストック、Artistモデル、手作業によるカービング、カスタムCNC装置による作業もすべて行なっていましたね。3Dモデリングのプログラミングとなるとダニーは本当に魔法使いのように卓越した存在で、優れたギタークラフトマンだけではなく類を見ないプログラマーなのです! デイヴ・ヘイゼルは私の右腕のような存在で、プライベートストック・チームでの私のスケジュールやギター製作のペースの管理も任せていました。ジョン・イングラムはギターのセットアップを35年間に渡って行なってきましたっが、プライベートストックやArtistといったモデルのほとんどすべてを、彼が組み上げてきたのです。ジョンは芸術レベルですべてをマスターした存在ですね。ほかのスタッフもみんなPRSでかつて仕事をしたことがあり、類まれなる才能豊かなギター製作者ばかりです。

年間の生産本数

 現在のところ、我々の工房では毎年約400本近く製作しています。ギター製作にはチーム全体が関与しており、特定の分野は専門のスタッフに担当させています。例えばディーン・ニッチとルーカス・フロンゾーリは木材工房での作業を行ない、ニック・ラルフとスティーヴ・ボムガードナーはフィニッシュの工程を担当しています。彼らは、必要であれば両者の作業を線引きすることなく往来する形をとることもありますね。私も必要あればすべての異なる分野での作業を行なっていますよ。それから、ネック、ボディ、ラジアスを付けた指板など、木材の大まかな裁断作業はCNCルーターを使います。フレットの打ち込みやネックのシェイピング、ボディのヤスリがけ、塗装といった作業はすべて手作業になります。

影響を受けたギター・ビルダー

 PRSはもちろん私にインパクトを与え、実際に彼の下で仕事をすることで多くを学んできました。ダキスト、マーティン、フェンダー、ギブソン、ボブ・ベネデット、コリングス、テイラー、トム・アンダーソンといったメーカーからも私は学んできました。とにかく、ギターの製作で大切なプロセスはたくさんあります。もしルシアーを志す学生の前で私が講義をする機会があれば、かなり長々しくて深みのあるものになることでしょう。木材の乾燥、樹木を伐採する時期、各掘削作業の段階でどの程度削り落とすのか、塗装の仕方、どの程度の塗料をペイントするのか、ナットの溝の切り方、最終的なセットアップなど、すべてをリストアップしたら何千もの項目が上がることでしょう。ギター製作は生涯学習と呼べるものです。

独自開発のブリッジ

 Chesapeakeシリーズのブリッジは、Severnタイプのトレモロ、ハードテイルともに100%ユニークな設計となっています。ブリッジはサウンドをボディの中心部に伝える役割を担っており、トレモロ・ブリッジはナイフエッジ構造ではなく蝶番のような構造をしているため、ブリッジ・ユニットは安定した状態でボディに固定されています。これはスワンプ・アッシュやキルトの出たメイプル・トップでも高い安定性を生み出すことにつ ながります。一方、Influenceシリーズのブリッジは弦の固定部とブリッジを融合させていて、かなりユニークなものとなっています。ブリッジとテイルピース間で発生する弦振動によるサウンドや倍音を、メインの弦振動に融合させているのです。この設計によりサウンドをさらにボディの中心に集め、サステインと明瞭さを作り出しています。

ネック・シェイプのこだわり

 ChesapeakeとInfluenceのネックはともに多くの人が愛して止まない昔のクラシックなネック・シェイプを再現しています。両シリーズのボディ・シェイプとインレイはともにオリジナル・デザインとなっています。ブリッジのデザインが私たちのギターにユニークさをもたらしていると思いますが、ネックの仕込み角、ネックの作り方、ボディ・サイズといったさまざまな要素が我々の楽器にサウンドやフィーリングをもたらしているのです。また、私はセットネックの安定感が大好きです。これはKnaggsのChoptankやSevernのサウンドの特徴を作るひとつの要素と考えています。

Knaggs Guitarsのユーザーへ

 トラディショナルなスタイルを好むプレイヤーだけでなく、Knaggs Guitarの持つサウンド・クオリティを理解し、実験するための耳や知識を持った人たちにもぜひプレイしてもらいたいです。複雑に絡み合うハーモニクスや長いサステインによって、私たちのギターは少し異なったサウンドを持っていると個人的に考えています。おそらく多くの人たちにとってこのサウンドに馴染みはなく、今までの考え方を少し変えることになるかもしれません。ダグ・ラッパポート、スティーヴ・スティーヴンス、ミック・ヘイズ、ニルス・ロフグレン、そしてその他多数のギタリストたちがそのユニークさを理解し始めてくれています。Knaggs Guitarsの機能を高いレベルに持っていってくれるアーティストに出会いたい。違いは小さなものかもしれませんが、グレイトなミュージシャンならそれを聴き分けられることでしょうし、そのニュアンスを自分のものとしてくれることでしょう。