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ワウ・ペダルの超定番! 「CRY BABY」2メーカーを弾き比べる

CRY BABY(THOMAS ORGAN/Jim Dunlop)

  • 文:西岡利浩
  • 写真・動画撮影:雨宮透貴

ギターを“歌わせる”エフェクターと言えば、歪み系に並ぶ必需品であるワウ・ペダルの右に出るものはないだろう。ギタリストの感情をストレートに表現できるアタッチメントとして、基本的な構造をほとんど変えないまま、半世紀もの間、支持されてきたデバイスだ。本シリーズ第6回では、そんなワウ・ペダルの代名詞とも言える「CRY BABY」を取り上げてみた。

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CRY BABY(THOMAS ORGAN) 0:00〜1:05 クリーン / 1:06〜3:28 クランチ / 3:29〜 クランチ&ペダル半止め

CRY BABY(Jim Dunlop) 0:00〜1:58 クリーン / 1:59〜 クランチ

About CRY BABY〜その成り立ちとワウ・ペダルについて

 ワウ・ペダルが世に登場してから既に半世紀ほどが経過します。そのサウンドは数々のギタリストにより様々な音源に名演が刻まれています。中でも現在でも入手出来る有名なモデルと言えば、VOXやJEN、THOMAS ORGANやJim Dunlopなどのメーカーが製作した「CRY BABY」でしょう。名実共に確固たる地位を築いた世界的名器、CRY BABYの中から、今回はTHOMAS ORGAN社製とJim Dunlop社製の比較的新しいCRY BABYのサウンドをご紹介してみましょう。

 ご存知のように、ワウ・ペダルとは、一般的なエフェクターのようにツマミを固定してサウンドを決定するのとは違い、ペダルを踏み込んで動作させることにより音色を変える方式のエフェターです。その歴史は古く、1960年代中盤に世に登場しました。エレキ・ギターの音色を変える道具としてはファズより早く登場したのではないか?との説もあります。それほど古くからエレキ・ギターの歴史と共に歩んできたエフェクターなのです。では、歪みより早く登場したとされるこのエフェクターは一体どんなサウンド効果を目的に開発されたのでしょうか? 実は、あの独特の効果は、アンプの回路の改良中に偶然発見されたのだそうです。

 ワウ・ペダルの動作の仕組みは、手動(足動?)式の「パラメトリック・イコライザー」と考えていただいて問題ないと思います。パラメトリック・イコライザーには効果を与える帯域の幅を表す「Q」と、その中心となる周波数を表す「Frequency」というコントロールがあります。ワウ・ペダルは「Q」は固定したままで「Frequency」をペダルで変化させることであの独特なワウワウ効果を得ることができるのです。

 回路・構造的な面から見ると、インダクターといういわゆるコイルが全体のサウンドのカギとなりますが、製造時期により銘柄が異なるので、ビンテージの個体のそのサウンド全てを把握することは非常に難しいと言えます。また、ペダルの動きをダイレクトに受けるポットのどこからどこまでを回すかで欲しいサウンドを決定できる点も特徴と言えるでしょう。また、操作中は体重を乗せて踏み続けられることから、耐久性も重要になってきます。

 CRY BABYは元々、VOXのブランドとして発売されましたが、後に会社の合併や商品名の商標登録などで、少しずつ生産地や名称が変わっていくこととなります。珍しい例として、我が日本の老舗ブランド「GRECO」のロゴが入ってるワウ・ペダルに「Made In ITALY」と生産国表記されているモデルがありますが、これはJEN社でOEM生産されていました。発売当時の状況では「JEN」を冠するよりも、国内で絶大なる知名度のある「GRECO」のロゴを使用した方が国内販売では有利と判断されての生産となったようです。きっと諸外国向けのOEM生産のモデルも存在するでしょう。

それでは、歴史もモデル数もある中から今回の個体、THOMAS ORGAN社製とJim Dunlop社製のCRY BABYをチェックしてみましょう。

CRY BABY by THOMAS ORGAN

CRY BABY(THOMAS ORGAN)

CRY BABY(THOMAS ORGAN)

CRY BABY(THOMAS ORGAN)

CRY BABY(THOMAS ORGAN)

CRY BABY(THOMAS ORGAN)

CRY BABY(THOMAS ORGAN)

 非常に踏み心地が良いモデルです。古いワウ・ペダルは踏みしろの角度が狭いため、トーンの可変幅はそれほど広くないですが、どうやらペダルの角度の決め具合が足でテンポをとる時の人間の足の動きにぴったりフィットするように設計しているようで、非常にコントロールしやすいのが特徴です。従って、リズム・ギターに向いているように思われます。70年代のファンク・ミュージックの様なカッティング・ギターに非常に向いているでしょう。逆に、歪んだアンプに接続すると、ペダルを踏み込んでも効果はあるものの、薄めの変化しか期待しにくいというデメリットも現在のロック・シーンにはあるかもしれません。

CRY BABY by Jim Dunlop

CRY BABY(Jim Dunlop)

CRY BABY(Jim Dunlop)

CRY BABY(Jim Dunlop)

CRY BABY(Jim Dunlop)

CRY BABY(Jim Dunlop)

CRY BABY(Jim Dunlop)

 現在ではこのペダル角度が一般的ですが、古いモデルと比べると、非常に踏みしろの角度が深いため、大きな足の動きが要求されます。従って、カッティングなどのリズム・ギターで使用するにはあまり向いていません。

 その昔、ジミ・ヘンドリックスがもっと高域のワウ効果を得るためにペダルの先を削って使っていたところから、ペダル自体を薄くした金型に変更したようです。ペダルの可変角度が広い分、ポットの回転を広くコントロールできるので、高域までカバーしやすく設計されています。従って、ペダルを踏み込むスピードが一定で持続しないようなソロ・プレイやバッキングの一部などでトリッキーに使用する場合などには非常に積極的な効果を期待できます。
 また、高域まで踏み込めるので、歪んだアンプに接続した場合、その効果は非常に分かりやすく聴き取りやすくなります。そういう意味では、現代のロックに向いているでしょう。

試奏に関して

サウンドの特色を分かりやすくお伝えするため、ハムバッキング・ピックアップのギターと、真空管アンプの代表的なモデルを使用した。

・ギター:レス・ポール・タイプ
・アンプ:マーシャルJCM2000

動画ではマーシャルをクリーン → クランチとセッティング変更し、試奏を行なった。

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THOMAS ORGAN / CRY BABY

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