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  • Dr.Dの機材ラビリンス 第5回

装填の音質〜エレクトリック・ギター用ストリングス

  • 文:今井靖

『Dr.Dの機材ラビリンス』第5回は、ギターを鳴らすには絶対欠かせないアイテム……「弦」特集だ。今回も「すべて試奏して書く」のスタイルを貫き、ナットを2回交換するほどの弦交換を繰り返しながら、怒濤の30セットをレポートする!

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プロローグ

 新しい弦を張る。その高揚感は格別だ。自分の相棒に、まるでこの手で新しい命を埋め込んでいくように、慈しみ、期待に胸を躍らせて“条件”を整えて行く。そこには、確かに蘇生の作業がある。 誰かが言っていた。それは「拳銃の弾を込める」作業に似ている、と。銃と弾丸がそれぞれ単独では意味をなさないように、弦を張っていないギターもその真価を問うに能わないことは、このコラムを読むような人たちにはもはや説明不要であるに違いない。

 “事”は慎重に、素早く、そして、論理的に成さねばならない。まずは『獲物』の想定が重要だ。ライオンを仕留めたいのか、鳥を撃つのか。当然、狙っている『獲物』によって使用する弾が異なるように、ギターも出したい音によって弦の個性を区別しなければならない。出したい歪み、演っているジャンル、プレイアビリティ……必要な音を得るために、必要な弦を用意する事は基本中の基本だ。ブルースをしたいのならば、1、2弦のゲージが高いものを、ジャズならば3弦がワウンド仕様なものを、ダウン・チューニング用にはテンションの下降を防ぐために全体が太いヘヴィ・ゲージを、ビンテージ・サウンドが欲しいなら巻き弦に使用されるニッケルの純度が高いものを、といった具合に、だ。それが決まれば、ギター本体との相性を見る必要だってある。ロング・スケールのギターに意図せず最初からあまりテンションの高い弦を張るのは円滑なプレイの妨げになるし、硬過ぎたり伸縮性の無い弦はアーム・プレイには向かない。規格外の太い弦を張る時にはナットの溝も気になる所だろう……こいつはデリンジャーに45口径の弾を装填できないのと同じ理屈だ。

 一方で、用途によって利便性を高められている弦もある。高価だが過酷な使用環境に耐え長持ちする様々な材質のコーティング弦や、ボールエンドひとつとって見ても、シンクロ・トレモロでチューニング精度を高める“ブレッドエンド”タイプや、フロイドローズ用の弦を切断しなくて良い専用エンド、トラベル・ギター用の“ダブル・ボールエンド”なども有効な選択肢には違いない。鳥のように素早く動く相手に対して散弾を用意するのと同じく、ハード面での物理的な理由で弦を選択する場合もあるという事だ。

 これらがほんの一端の例であるとしても、弦を張るという“事”の中には、それほどの自由がある。そして、この選択の幅を意識した時、音を生み出す場所……『弦』の質をして、プレイヤーが夜も眠れぬほど頭を悩ます『音質』という最終結果に影響が無いとどうして言い切る事ができようか。 ならば、当然のように、ギターに対して弦を選択し張るという行為は、なかんずく、「その出音に対して責任を持つ」と言う事に直結するはずだ。……にもかかわらず、途中でその結果を知る事は許されない。全ての弦を張り終わり、チューニングをし、プレイする中でしかその『音質』は評価される事は無いのだ。そんな時、我々は、つくづくギターという楽器が“生き物”であることに気づかされる。そして、プレイヤーは、まるで人類を地上に降ろした神様よろしく、その誕生の前に音に対する差配を義務づけられる。何というギャンブル、なんという背徳感であろうか。その責任と希望が、買ってきた数百円の弦の袋を開けた瞬間から一気に訪れるのである!

 太い弦から細い弦へ。厳かに、一本ずつ丁寧にブリッジを通過し、ペグがきりきりとそれを締め上げてゆく。それを漫然とした作業で見送ってはいけない。

 弾丸を込める事で拳銃を『武器』たらしめるように、ギターが『楽器』に生まれ行く瞬間に立ち会う……それが、弦を張るという行為だ。『武器』となった銃が生き物の命を奪うように、また、音楽という世界を生かすも殺すも、あなたの手によって『楽器』へと転生を遂げたそのギターにかかっているのだ。故にまた、弦の寿命を「生きている」「死んでいる」と先人達が評したのは実に理にかなった表現であるとわかる。

 弦が生きている間だけギターは生き、弦が死ぬと同時にギターも死ぬ。ギターとは、そういう楽器なのである。

商品の選定・紹介にあたって

 今回は、エレクトリック・ギターの弦(ストリングス)について取り上げてみた。レビューは、基本的にライト/レギュラー・ゲージのセット弦(.010〜.046)に統一し、各メーカーでよく売られているなるべくスタンダードな商品を一種類のみ選抜して弾き比べてみた(これは現行のデジマートの在庫に優先している)。ギター側ではスケール、指板、フレット、ブリッジ形状、ピックアップ、ギター本体の素材などもなるべく多岐にわたるように考慮し、ピックやアンプも常に数種類のパターンを検証している。加えて、各種トレモロのフローティング・テストも全て実験し、16日を超えない範囲の耐久テストも綿密に行った(それ以上の期間の記述は筆者の経験則による)。結論として、製造日からの時間経過や同工房内でも工程そのものからくる個体差もあり常に一定の結果は得られなかったが、ケース・スタディを積むうちに、メーカーごとの目指している音質や品質のベクトルは概ね押さえる事ができたように思える。以下のデータを、今後、弦を選ぶ際の参考にしていただければ嬉しい限りだ。

※注:「*」マークがメーカー名の前につくものは、レビューをしながらもこのコンテンツの公開時にデジマートに在庫が無くなってしまった商品だ。データ・ベースとして利用する方のためにそのままリスト上に残しておくので、後日、気になった時にリンクをクリックしてもらえば、もしかしたら出品されている可能性もある。気になる人はこまめにチェックしてみよう!

イタリア製


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01 La Bella [EL-R]

 同社の中でも50年以上ものリリース実績を持つ高品質エレキ弦。教科書通り、音の立ち上がりが速く硬質なトーンを持つが、サスティンはやや控えめでテンションも抑えられている。レギュラー・ゲージでもストラトなどのロング・スケールにストレス無く対応する玄人好みの優秀な弦だ。ワウンド面は平面に揃えられており滑りが良く、運指は楽。だが、その反面アタックの倍音は迫力に欠け、一瞬の間を置いてウォームな残響が盛り上がってくる感じなのでタッチの余韻に慣れる必要があるが、一旦慣れてしまえば粘り強い音質がクセになる。弦質は非常に柔らかく、跳ね返りも心地よいため、指板の材質にかかわらず楽に弦を押さえる事ができる。あまりつるつるのピックを使うと弦の引っかかりが無さ過ぎて今ひとつアタックを強くできないのが難点か。プレーン弦よりも巻き弦のテンションがかなり高く、柔らかいネックのギターではネックの捻れ防止のために、プレイしない際には巻き弦を少し緩める事をお勧めする。 [この商品をデジマートで探す]


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02 Galli Strings [RS200]

 100年以上もの歴史を持つイタリアの老舗弦メーカー。巻き弦が六角の芯を持つヘックス・ワウンド弦なので、丸芯のものよりも巻き付けが強く、巻き弦の音像は明瞭そのもの。円心のラウンド巻きよりもギラギラした金属質な出音があり、指板上で弦をこじると音質を自在に変化させられる感覚は、他ではなかなか味わえない。ただ、ヘックス弦の特徴として、張った弦がねじれているとフレットに接触する箇所が面と角ではアタックの出方が異なってしまうので、弦を張る時には細心の注意が必要だ。チョーキング等でもフリーケンシーをコントロールできるだけでなく、ピックの当たる角度の違い一つでも音が変化する……つまり、有機的な音像を生むダイナミズムこそが、この弦の醍醐味と言えよう。タイトな演奏には向かないが、この弦とフェイズ系の揺れるエフェクトと組み合わせて幻想的なフィールを引き出すのは弦楽器のトラディショナルな効果の一つとしてもはや定番だ。曲によってヘックス弦を張ったギターに持ち替えるというのは、今でも多くのプロが用いる技の一つだ。このRockstarシリーズは、パンキッシュなざらついたバッキングから、ピックと指を混ぜて弾く右手の技巧に凝ったプレイヤーまで幅広く愛好される高音質弦として有名。 [この商品をデジマートで探す]


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03 IQS STRINGS [NPS 1046]

 イタリアはサンヴァレンチーノ産のハイ・クオリティ弦。生音で聴いてもはっきりとわかるほどに巻き弦で低音が出る。ウォームな音質だがしっかりと重心が座った芯のある出音を備え、アンサンブルの中でも埋もれない迫力がある。エッジはそれほど無いものの、ピッキングへの反応は抜群で、とくに柔らかく弾くタッチへのレスポンスに優れている。全体的なパワーは控えめだが、それを補って有り余る繊細さと倍音の気持ち良さがある。強く弾いてもピーキーになりすぎないまとまった音質が、シングルコイルのピックアップと特に相性が良い。歪みにも強く、ハイゲインなディストーションとかませても音が潰れないだけでなく、弦同士の分離も実にはっきりしており素晴らしい。欠点らしい欠点が特にない、モダンな万能弦だ。 [この商品をデジマートで探す]

アメリカ製


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04 D’Addario [EXL110]

 業界シェアの上位を常に占める定番弦。評判どおり、実にコスト面と品質のバランスに秀でており、初心者から上級者まで愛用するプレイヤーが多いのも頷ける。同価格帯のニッケル・ワウンド製品と比べるとテンションが高めで、アタックが強く出る傾向にあるので、弦高を低くしたいテクニカルなプレイを志すギタリストには特にお勧めできる。音質は明るく派手なので、無自覚のままジャンボ・フレットのギターで使っていると最初はやや金属音がうるさく感じるかもしれない。プレーン弦、巻き弦共に、劣化によるトーンの減退は均一で、どれほど時間が経っても各弦同士の音の張り、音量にばらつきが生まれにくいのが最大の強みか。ピッキングの強さにはそれほど敏感ではないが、芯の出方もクセが無いので初心者でも望んだ音が出し易く、ジャズ、カントリーから、ロック、メタルまで幅広く使って行ける。寿命こそ長くはないが、そのニュー弦の出音の派手さから、プロのレコーディングでよく使われる事でも有名。 [この商品をデジマートで探す]


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05 ERNIE BALL [REGULAR SLINKY(#2221)]

 D’Addarioに並ぶアメリカ製エレクトリック・ギター弦メーカーの大家。ニュー弦での音の派手さはイタリア弦に比べて控えめだが、チューニングの安定性、初期音の持続力はこちらが平均値を上回る。全体的にタイトな音像で、サスティンも良好。同価格帯ではずば抜けた伸縮性を保持しているのもこの弦の大きな特徴で、アーミングを多用するプレイヤーからも信頼されている。巻き弦がヘックス・ワウンド弦にもかかわらずスライドやチョーク時に不自然な指の引っかかりは感じられず、その密度の高い音質の旨味だけをきっちり活用する事ができる点も嬉しい。パワー感も十分で、1.5mm以上の厚みのあるピックでも弦離れがとても良く、切れ味の鋭いリフをガンガン刻むのにも向いている。ライブでの利用者が多く、その耐久性能の高さは特に折り紙付きだ。ややプレーン弦のテンションはばらつきがあるが、それを除けば多方面にわたって信頼性の高い製品。[この商品をデジマートで探す]


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06 Fender [250’s]

 名門Fenderのニッケル・ワウンド弦。程よくビンテージ感を備えた温かい鳴りと、ゴリっとした太いミドルが上手く溶け合い、パンチのある特徴的なサウンドを演出する。テンションは全体的に高めで、甲高いサウンドを得意とするテレキャスなどにびしっとキマる。アンプが非力でも弦自体に粘りがあり、ピッキングで歪み量やサスティンをコントロールしたい上級者にはおあつらえ向きの弦だ。ただ、ストラトなどのロング・スケールだと巻き弦は最初かなり硬く感じるはずなので、一度張った後、良く馴染ませてから使う事をお勧めする。広く揺れる事で真価を発揮するタイプの弦なので、あまり弦高の低いギターで使うとビビりの原因になってしまう。しっかり鳴らしたいのならば、高めの弦高で、深めにピッキングしてやる事を心がけた方が良さそうだ。[この商品をデジマートで探す]


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07 Elixir [12052]

 コーティング弦の名門と言えばElixirというほどに有名なメーカー。“12052”は同社のお家芸でもある超極薄の「ナノウェブ・コーティング」を施したレギュラー・ゲージ。その最大の特徴は弦の持続性。張りたて……とは言わないまでも、張ってから軽く馴染ませたレベルの歯切れの良いブライトなサウンドがずっと続く印象だ。アーミング等で酷使しない限り、少なくとも10日近くはその状態が続く。D’Addarioなどが2日目ぐらいで急激に劣化してくる事に比べれば、確かにかなり長寿命だと言えよう。ただ、その反面、完全なニュー弦でもそれほどスプラッシーなサウンドは望めないのはご愛嬌と言った所か。実際の使い勝手は実に快適で、コーティング弦という事を感じさせないほどアタックに張りがある。そして、宣伝通り、スライド時のフィンガー・ノイズも程よく抑えられている(完全に消えはしない)。コーティング弦の宿命とも言うべきピック・スクラッチ等の擦り技の音に迫力が出ない事を除けば、バランスも良く、コストパフォーマンスも実に良好だ。昔は、コーティング弦と言えば服が汚れるだけの代物だったが、このメーカーのコーティング技術は高音質、超寿命、そしてほとんど剥がれないという別格の高品質に辿り着いている。実際に、フロイドローズやビグスビー・タイプのビブラート・ユニットでも、あらゆる面でノーマル弦よりも品質が長持ちした。音質を保ちつつ弦交換を節約したいプレイヤーにはもちろん、ライブなどで絶対的な安全性を求められるサブのギターに張っておく弦としてもオススメだ。 [この商品をデジマートで探す]


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08 Dean Markley [2503 REG]

 アメリカ西海岸で40年以上の歴史を持つDean Markleyのスタンダード弦。張ってすぐの音は、本当に素晴らしい。リッチで密度があり、音が分散せずにしっかりとした輪郭を備えている。あまり弦自体が歪まないので、ニュー弦でまったりとしたクリーン・サウンドが欲しい人に最適だ。テンションはゆるめで、ギターがレス・ポール等だとややパワーに欠けるものの、ハムバッカーとの相性自体はそれほど悪くない。レンジの広い再生音をノイズレスに操りたいプレイヤー向けの弦だ。一方、弦が柔らかくとも伸縮性があるわけではないので、アーミングで力を入れすぎると張りが無くなって切れてしまう危険性がある。ナローなサウンドで勝負できるジャンルで真価を発揮する弦だ。[この商品をデジマートで探す]


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09 DR [MT10]

 七色に輝くネオン弦でも有名なDRだが、今やアメリカを代表するハイエンド弦メーカーの一つとなったそのクオリティは本物。スタンダード・シリーズである「TITE-FIT」は、旧来のラウンド・コア(芯の丸い巻き弦)の性能を極限まで高めた同社のポリシーが詰まった逸品と言えよう。さすがの丸芯仕様、手触りは最高だ。良く滑り、良くたわみ、押しても引いてもぎくしゃくした詰まりはどこにも無い。どっしりとしたアタックが常にあり、ハイ・フレットで弾いてもそのパンチは一切失われることがない。滑らかで、豊潤で、均一……音の立ち上がりスピードこそヘックス弦には及ばないものの、サウンド自体の太さでこのメーカーの弦に太刀打ちできるメーカーはそうは無いであろう。テンションが高いので、ロング・スケールのギターならばドロップ・チューニングも1音半ぐらいまでは余裕でいけそうだ。プレーン弦もバランス良く強化されており、高い位置で細かい歪みをしっかり作るので、リード・プレイにも最適。 [この商品をデジマートで探す]


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10 Cleartone [9410]

 カリフォルニアに拠点を置くEverly Music社が開発した、「EMP(Enhanced Molecular Protection)」と呼ばれる特殊コーティングを施した弦。「EMP」は、元々パソコンのハードディスク・プレートに用いられる耐久性に優れたコーティング技術を応用したもので、触るとややツルツルするものの、ほとんど手馴染み感が生弦と変わらないほどの極薄の皮膜を持つ。柔軟だが、引っぱりにも強く、初期状態に近いきらびやかなアタックがかなり長続きする印象だ。最大の特徴はプレーン弦にも完全にコーティングが施されている事で、最初は多少硬い印象を受けるかもしれないが、滑りも程よく、アームを多用することによって引き起こされる「弦を‘まだら’にしてしまう劣化」が全くと言ってよいほど無いので、かなり長時間にわたって快適な運指が可能になる印象だ。巻き弦は高密度に巻かれているがタッチがぼやける印象は無く、むしろスピード感のある返しが実践的であると言える。他のコーティング弦よりもかなり弦同士のテンション・バランスに配慮されているようで、ネックに張力が上下均等にかかっている感覚はかなり弾いていて気持ちが良い。スケールの短いギター、もしくは、柔らかい指板とアームを併設するようなギターにはかなり強力な武器になる弦だ。 [この商品をデジマートで探す]


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11 Gibson [SEG-LP10]

 一見、何の変哲も無いニッケル・ワウンド弦に見えるが、やはり“LP”と名付けられるシリーズなだけありレス・ポールには別格のマッチングを提供してくれる。マホガニー・ネックとミディアム・スケール、そしてチューン“オー”マティックに最適なテンションを意識して作られており、丸く明るいレス・ポールの音を上手く活かしつつも、ギリギリ失速を防ぐ程度の柔らかな張りを維持するように構成されている。巻き弦が全体的に緩く、強くピッキングすると波打ってしまいそうなほど余剰を感じるが、実際に弾くと弾き難さは無く、むしろ歯切れの良いサウンドが出せる。かなり弦高を下げてもパワフルに鳴り、音の立ち上がりも非常に良好だ。ただし、レス・ポール系以外の、例えばネックの硬いギターなどに張ると、途端に音に元気がなくなるのでやはりこれはレス・ポール専用弦として考えるのが良いだろう。寿命は短めだが、レコーディングなどでレス・ポールを存分に弾き倒したいギタリストには実に現実的で有効なアイテムだ。 [この商品をデジマートで探す]


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12 Jim Dunlop [DEN 1046]

 ジムダン製ニッケル弦。巻き弦は高密度なプレート・ワウンドで巻かれており、指の滑りは上々。ロー・フレットだと急激に硬くなるので、Rのキツい指板では巻き弦でのチョークにかなり力がいる。アタックにはやや鋭角なプッシュがあり、強い金属音が残るが、突出したエッジが現代的なハイゲイン・アンプと実に相性が良い。さらに、ミドルの分離も素晴らしい。一方で、弦が新しいうちはそれ自身がきめ細かい歪みを発声するほど派手な音になるのに対して、劣化してくると途端におとなしくなるので、トータルなドライブ・コンディションにはかなり神経質にならざるを得ない所が弱点か。耐久力も低く、1時間のステージだと初期のサウンドを保つのはほぼ不可能と思った方が良い。ただ、やはりニュー弦の中域の存在感は格別なので、レコーディングやライブで、ここぞという時の歪みを効かせたリードで使用したい。 [この商品をデジマートで探す]


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13 SIT Strings [S1046]

 オハイオ州アクロンで生産されているハイ・クオリティ弦。入手し易い価格帯の割にはチューニングがかなり安定する傾向にあり、コーティング弦ほどではないにせよニュー弦での狂いが少ないのが特徴。伸びやかでローもバッチリ出る。ボールエンドの滑りを防止する独自の「ステイ・イン・チューン」加工は本来チューニングの安定性を高めるためのものだが、この、コードで弾いた時のクリアかつ明瞭な各弦の主張などもその恩恵の一部のようだ。さらに、歪ませても音のピントを正確に補正してくれる効果があるらしい。これはかなり新しい感覚だ。弦の鳴りはややおとなしめでシルキーな余韻を持つが、強いピッキングでも音粒がはっきり残り、速いパッセージも綺麗に出る。アタックの派手さを求めないなら最高クラスのバランスを備えた弦だ。 [この商品をデジマートで探す]


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14 ghs [Nickel Rockers R+RL]

 ミシガン州バトルクリーク産の名門弦メーカーghs。中でも、50年というロング・リリースを続ける“Nickel Rockers”は、匂い立つような渋みが漂う色濃いビンテージ・トーンが特徴で、かのSRVの使用でも有名。ピュア・ニッケルを巻いた弦をローラーで潰したという通り、はっきりと指先に伝わる平たい感触と、ざらついた引っかかりのある表面の奇妙な抵抗に慣れるのに時間がかかるかもしれない。ただ、この無機質なテイストを持つゴツい鳴りは、かなりクセになる。突き放すように、泥臭く奏でるブルース・ロックこそその真骨頂である事は明白だ。テンションがかなり高く、ピッキングにも二まわりぐらい太い弦を弾くつもりのパワーが必要で、優しいタッチではこの弦の良さを引き出すのは難しいかもしれない。わざとらしいサスティンもなく、ミドルがぎっちり詰まった硬派な音色を自らのテクニックや手クセで飼いならすくらいの気概があるプレイヤーが使うならば、素晴らしい化学反応を起こせるだろう。 [この商品をデジマートで探す]


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15 Everly [#9010]

 コーティング弦部門のCleartoneやVOSTOKをもプロデュースするEverlyのセンター・ライン・ブランド。芯に対して超高圧でワイヤーを巻く独自の「スーパー・ハイテンション・ワインディング」を全製品に採用し、巻き弦全体のサウンドに一段上の鳴りと耐久性をもたらしている。ピッキングすると弦自体に重量を感じるほど、明確な手応えがあるのが特徴。ただのニッケル・ワウンドとは思えない音の太さがあり、アタックの強弱に左右されない人工的なサスティンを生むので、結果、ジャンル適性が広く、万人に弾き易い弦と言える。巻き弦の剛性感とは逆に、プレーン弦は柔らかくレンジの広い音を出すが、こちらは寿命が短く、切れ易い印象。総じて全ての弦を使うアルペジオなどでは各弦の音量や音質の差がやや気になるか。パワー・コードとリード主体のシンプルなロックで使う事を薦めたい。ちなみに「スーパー・ハイテンション・ワインディング」弦ではボールエンド近くにかなり余剰ワイヤーが盛られているので、ギターによってはブリッジ側の通し穴が細すぎると奥まで通らない可能性もある。特に裏バネ式ギターで使う際には、ブリッジ・パーツとの適正に細心の注意を払うようにしよう。 [この商品をデジマートで探す]


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16 VOSTOK [#9710]

 クライオ・ジェニック弦のパイオニア、Everly社のクライオ弦専門のブランド。腐食や劣化を抑制する超低温処理により、長時間使っていても品質が落ちにくい強靭な耐久性を持つ特殊弦。コーティングが無くても汗や指油に十分に強く、数週間張ったままでも弦の滑りは全くと言って良いほど変わらなかった。こころなしかピックアップの磁気にも強く応答しているような気がするので、手元の強弱によるニュアンスが出し易く、単純なコーティング弦よりも使い勝手が良い。音はくっきり、はっきり出るタイプで、歪みは少なく色彩の強い音が出せる。ビンテージ・ライクな艶っぽさこそほとんど無いが、基本性能の高いモダンで優秀な弦だ。コーティング弦の、何とも言えないもっさりとした“違和感”が気になる人にはオススメだ。[この商品をデジマートで探す]


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17 SCALAR DESIGNS STRINGS [ORIGINAL NICKEL L]

 数多くの弦のOEMを手がける、アメリカのギター弦ディーラーSFARZO社が管理する高品質弦。巻き弦は純度の高いニッケル・ワウンドで構成され、クラシカルかつ滑らかな響きを持つ。アタックは抑制されており、雑味の無い凛と張ったトーンが実に上品。弦同士の音量バランスも均一になるよう、気を配って作られている。このままの特徴を生かしてジャズやカントリーなどで使うも良し、柔らかいピックで妖艶なアルペジオに興じるも良し……繊細なトーンほど威力を発揮するこの仕様は貴重。Gretschのような一部のアンカーを打たない木製ベースのブリッジを持つギターだと、より高い効果を引き出せるようだ。よりデリケートなプレイを求めるユーザーにこそ積極的に使って欲しい。 [この商品をデジマートで探す]


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18 *Curt Mangan [10-46 Nickel Wound]

 コロラド州コーテズが本拠地の弦メーカー。テンションが高めの硬質弦で、細めのフレットを持つギターできっちり押さえきるにはかなり指の力が必要だ。一方、伸縮性はそれほどでもないので、テンションが高くてもダウン・チューニングでは使いづらく感じるかもしれない。サスティンは、最初は派手だが立ち枯れ感が強いので、そういったサウンドを求めるユーザーに勧めたい。開封してすぐはD’Addarioほどのきらびやかさは無いものの、弦が落ち着いた後のサウンドは良く似ており、ブライトで軽快なトーンを呼び出せる。また、弦にあそびが無い分、ピッキングの弦離れは最高で、ミュートを併用したカッティングではかなり切れ味の鋭いサウンドが得られる。一癖ある弦という事を理解しつつ、威力を発揮するシチュエーションをよく考えながら使いたい。 [この商品をデジマートで探す]

その他の海外製


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19 ROTOSOUND [R10]

 1958年創業の弦専門メーカー。イギリスはケント州にある自社工場で一環生産されているため、品質のばらつきが少ない事でも知られる。この“ROTO”シリーズは同社のスタンダード・ラインナップで、かなりマットな音色を持つ。レス・ポールなどで音が丸すぎると感じた時など、竿を変えずにタイトなロック・サウンドが欲しい場合には重宝する。ブリッジへの伝達性も良く、ミュートにもシビアに反応するため、20世紀末のLAミュージシャンの間では一大ムーブメントになった事もある銘弦。馴染んだ後でもその底力のあるパワフルでストレートなトーンがかなり長期間持続するので、ニュー弦のきらびやかな出音が煩わしいプレイヤーならば、あえて使い込んだこの弦でライブに臨むのも一興だろう。[この商品をデジマートで探す]


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20 *Picato [1046]

 老舗英国産ニッケル・ワウンド弦。リッチー・ブラックモアの“RB77”でも知られるPicatoの弦は、丸く太いマッシュ・トーンが魅力の、いかにも英国風なサンド・ドライブに最適な響きを持つ。立ち上がりやサスティンは標準的だが、一旦歪みに乗せると途端に粘りのあるサウンドを放ち、音がぐっと引き締まってくる。広い帯域をカヴァーする重厚な倍音とスプラッシーなミドルが上手く融合し、厚みのあるサウンドを演出しているのがわかる。耐久性もそれなりにあるが、若干巻き弦の劣化がプレーン弦に比べて早い気がする。そのまま無理に使っているとよく使う弦とそうでない弦で音量がバラバラになってくるので、弦のバランスが崩れ始めたら伸張が落ち着くまである程度放置して、弦が育つ期間を置く方が賢明かもしれない。プレーン弦のテンションは平均以上に高いので、なるべくRの少ない指板を持つギターで使うと楽にプレイできる。 [この商品をデジマートで探す]


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21 Thomastik-Infeld [IN110]

 金属弦の源流としてすでに100年以上前にオーストリアで設立され、ジャズ・シーンを中心にヨーロッパ全土に名を馳せる、知る人ぞ知る弦の総合メーカー。“Infeld”シリーズは、ジェット・エンジンなどに用いられるニッケル基の耐熱合金『Superalloy』 をワウンドし弦の安定性を飛躍的に高める、同社ならではのこだわりを詰め込んだ新感覚の製品だ。『Superallow』には鉄やコバルトも含まれているようで、ピックアップの磁界にかなり強力に反応しているのがまず好感触だった。表皮は程よく滑らかで運指もスムーズな上、どのフレットで弾いても不自然な引っかかりは微塵も感じない。弾き易さとは裏腹に、金属的なアタックはむしろ抑えめで、柔らかな芯を持った重厚なトーンゆえにごまかしが一切きかない上級者向けの弦だと言える。指で弾いても何とも言えない気品のあるピュア・サウンドを紡ぎ出し、しっかり弦ごとに主張があるのが素晴らしい。エレキ・ギター用としては、音楽的なタッチを追求する事のできる数少ない弦の一つ。 [この商品をデジマートで探す]


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22 MAGMA STRINGS [GE140ED]

 最近、ヨーロッパでも人気が出てきたアルゼンチンの新興メーカー、MAGMA STRINGS。“EXTENDED DURABILITY COATED”と名付けられたこのシリーズは、高温多湿な南米産を象徴するにふさわしい強力なコーティング弦だ。巻き弦に六角芯を採用しているのでサスティンが長く、ジャリっとした歪みのあるアタックが持ち味。あまりコーティング仕様である事を意識させない極薄皮膜のため、弦そのものが柔らかく、滑りも良い。ありがちなフェイズの脈動で不規則に波打つ事も無く、素直に減衰するので、ハイ・パワーなアクティブ・ピックアップとも非常に相性が良かった。また、巻き弦に関してだけ述べれば、Elixirほど長持ちする印象は無かったが、劣化によって急激に音が曇る事も無く、弦が育つまで急激な音質変化に戸惑う事が無いのが最大の強みか。日本の夏も近年ではかなり高温多湿気味なので、ハードケースに入れられないギターにおいて、弦の管理に余計な気を使わなくて済むのは大きい。コーティング弦なので汗などによる腐食にも強く、夏専用のシーズン弦として活用しても重宝する事だろう。 [この商品をデジマートで探す]


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23 Black Smith [AOT NW-1046]

 韓国の新鋭ブランド。「ナノカーボン・コーティング」を採用したこのワウンド弦は、コーティング弦としては比較的軽めで、ピッキングにあまり力が要らない快適なプレイ・フィールを実現する。引っぱりに対する耐久力はあまりなく、過激なアーム・プレイに向かない面はあるものの、弦全体のしなやかさやスムーズなアタックの盛り上がりもイヤミが無く、バランス重視のコストパフォーマンスに優れた逸品と言って良い。ただし、タッチの軽さを追求しすぎたせいか、ヘックス・ワウンド・タイプにしては巻きの密度が薄く、ニュー弦の段階から倍音の出方は散漫で、パワーも全体に控えめな印象だ。一長一短があるとはいえ、値段と機能を比較すれば十分おつりが来るスペックである事は間違いないので、使いどころを心得ていればかなり有効なサウンドが得られるはず。コーティング弦未経験者のお試し用に、リスクの少ない安価な弦としてもお勧めしたい。 [この商品をデジマートで探す]


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24 Ashton [ES1046]

 オーストラリアの楽器ブランド発、これまた激安なニッケル・ワウンド製品。実際には値段以上に良い弦で、特にきらびやかなサウンドを欲しない限り十分使える製品だと感じた。サスティンは伸びやかで突出した帯域も無く、低音はきりっと引き締まり、エフェクトも乗り易い。耐久性こそ無いものの、練習用でバンバン弾き潰すには最適な弦かもしれない。使う際には錆防止の油をよく拭き取ってから使わないと、フレットにも指板にも悪影響が出かねないので、その点のみ注意しよう。 [この商品をデジマートで探す]

日本製


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25 YAMAHA [H-1020]

 古くからある国産弦の一つ。とても柔らかな弦で、初期状態のテンションこそ高いものの、一回でもフローティング・テストでアームを強めに使用すると、その後はそれほど力を入れていないのにすぐ限界値を超えて切れてしまう。アーミングさえしなければチューニングは思ったほど狂わないが、強めにピッキングしているだけですぐに弦が死んでしまうのはあまり現代的とは言えない。ただし、音質は素晴らしく、弦が完全に死んでしまわない限り、常にふわっと漂う色香のある柔らかなサウンドを出すのが特徴。弦同士の音量も均一で、コード・ストロークの一体感はずば抜けているので、柔らかいピックでナローなサウンドを楽しむのに向いている。[この商品をデジマートで探す]


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26 K-GARAGE [10-46 HQC]

 キクタニ・ミュージックのプライベート・ブランド弦。製造は大陸産だが、品質は予想以上に良好。しかも、この値段でコーティング弦という有り難さ。澱みが無くてフラットな出音が持ち味で、アタックの派手さが無い分サスティンは長めに出ているような気がした。現代的適性も高く、コストパフォーマンスを見ても評価できるが、音にインパクトが弱い事は否めない。巻き弦がやや太めなのも、気になる人はいるかもしれない。また、ピッキングすると旧式のコーティング弦さながらにカスが大量に落ちる点は、改良されればもっと使い勝手が良くなるだろう。伸縮性や耐久性には不満が無いだけに惜しい。 [この商品をデジマートで探す]


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27 Bacchus [Medium]

 国産ギター・メーカーのDeviserが提供する自社ブランドBucchusのギター弦。低価格だが基本を押さえた造りで、巻き弦は意外なほどブライトなサウンド。少し手触りがざらざらするが、これも慣れれば使い心地は悪くない。ただ、劣化による音質の変化はかなり極端。同じ弦とは思えないほどに、特に巻き弦で一気に高域が失われてしまうのが残念。これは個体差なのかもしれないが、3弦のテンションが少し高いのも気になった。ストラトで弾くとそれはより顕著で、コード・プレイにストレスを感じるほど。ただし、それらの難点を除けば非常に優秀な弦で、弦交換のタイミングさえ間違わなければスタジオや自宅ではレギュラーで使っても良い程の品質を備えている。 [この商品をデジマートで探す]


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28 Mavis [EGS1046]

 石橋楽器のオリジナル・ブランドMavis。超低価格ながら、整った音質を持つ弦なので侮れない。巻き弦のワウンド密度の緩さは気になるものの、全ての弦がバランス良く鳴り、音の大きさも凸凹していない……これは低価格弦では貴重なファクターと言える。アタックは優しく、音粒の輪郭もそこそこある。難点と言えば、巻き弦、プレーン弦共に“ねじれ”が強く、指板に対する打面が平行になるように張るのに少し手間取る事くらいだ。もちろんこの値段で多くを望むべきではないが、スタジオ等でも十分活用できるクオリティがあるという事だけは断言しておこう。[この商品をデジマートで探す]


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29 Aria Pro II [AGS-800 L]

 六角芯、ニッケル・プレーテッド・ワウンド弦という、世界標準のモダン・タイプ国産弦。もともとAria製の弦は国内でもテンションが高いことで知られる通り、かなり指にもピックにも手応えを感じる。だが、音はそこまで硬くはなく、むしろパワーやアタックの量感は全く無いに等しい。期待しすぎれば拍子抜けすることだろう。きっちりと理想通りアンプを歪ませるつもりならば、相当強めのピッキングが必要となる……そんな優しい音の弦だ。コードのストロークでは綺麗に音が混ざるので、出音のバランスは良く、各弦の音色もベクトルが整頓されており、そこにはインテリジェンスすら感じることだろう。ベタなロック・プレイには全く合わないが、レスポンスとタッチを活かしながら弾きこなしていくならば、この弦の甘く優美なスイート・スポットを味わう事ができるだろう。 [この商品をデジマートで探す]


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30 ESP [GS-6L]

 高級スチール弦などに使用される「ハイカーボン」芯をプレーン弦に採用。応答性に優れ、音量もあり、そしてなにより倍音が気持ち良く溢れるその音は、ダイナミックな演奏を志す全てのプレイヤーに有効だ。張り替えたらすぐに安定するのも、実に使い易い。ただし、この弦には錆びやすいという欠点がある。少し古くなると、未使用でも錆びている場合がある。高温多湿の日本では、実際に使う時もそうだが、保存にも気を使わなければこの弦の効果を堪能できない。買ってすぐ使用する時も、収納時には乾燥剤が必須だ。巻き弦はプレーン弦のきらびやかさに負けないよう最初こそパワーがあるが、こちらは劣化が進むと次第に高、中域の倍音が失われてくる。プレーン弦との音量の差が気になりだしたら、惜しまず弦を交換する事を勧める。 [この商品をデジマートで探す]


エピローグ

 弦の交換をしていると、まだギターを始めたての頃を思い出す時がある。

 プロローグでは弦の重要性についてあんなにえらそうに宣っておきながら、昔は、私も例に漏れず、弦の音などには相当に無頓着だった。金もなく、ただひたすら安くて丈夫な弦ばかりを探し求めて楽器屋を巡っていた事を思い出す。弦とはいえ、消耗品に500円以上かける事がまるでタブーであるかのように、異常な脅迫観念に駆られて、言語道断な安弦を買い漁ったものだ。まあ、毎日、エアコンの無い部屋で、汗だくになりながら何時間も力任せにギターを弾き続けるような輩にはそれで良かったのかもしれない。

 あまりに無茶な弾きっぷりに、朝張った弦が夜には切れる(しかも巻き弦が!)事も度々だったし、1セット89円の瀑安セール弦を30セットも買って家に帰って開けたら、半分以上が錆びていて店に怒鳴り込んだ事も、今となっては良い思い出だ。同じく初心者の友達の中には、最初に弦を張った時に余りを切らずにヘッドにぶら下げたままにしておき、弦が切れたらそれを引き出して、さらに、ボールエンドは釣り糸に固定するサルカンの要領で結び直すという……そんな堂々とした弦リサイクルをやらかす強者もいたほどだ。しかも、その弦がまた切れたら、さらに余りを引き出してまた同じ事を繰り返し、3回も同じ弦が切れるまで使い倒すから驚きだった。もちろんマシンヘッドのポストに巻かれていた部分はゴワゴワにねじれているので、それだけでビビったり、チューニングが狂ったりする原因になっているのだが、当の本人は一切おかまい無しで「弦高上げてっから大丈夫!」というのが口癖だった。当時の自分を思い返してもそれほど人の事は言えないが、ひどい話である。

 そして、年月が経ち、今回、レビューをするのに毎日のように弦を替えていると、いかにあの頃に比べて今の自分が弦交換をしなくなったのかがわかり、ちょっと恥ずかしい……というか、どこか寂しい気持ちが呼び起こされたのは事実である。まあ、ギターを弾く時間も圧倒的に少なくなり、弦もそれなりに耐久性のある良い物をチョイスするようになったからというのもあるにはあるが、今、あらためてこれだけの数の弦に一度に触れると、弦の張り替えひとつでも自分の手が早くなっていくのがわかり、奇妙な高揚感があったのは確かだ。

 そして、もうひとつ感じたのは、やはり新しい弦を張ってやると、自分のぼろギターでも、なんだか物言わないそいつも嬉しそうにしているように見えたって事だ。ピカピカとして、ちょっと胸を張って誇らしそうにふんぞり返っている……少なくとも、自分の相棒がそんな感じだと、こちらも気分が良くなってくることは間違いなさそうだ。

 つくづく、ギターと弦というのは切っても切れない間柄なのだ、ということをしみじみ思った次第である。そして、それがわかるようになった自分もまた、少しはあの頃より成長したのだろう。ギターの弦はもう少しマメに替えてやろう、と齢を重ねて改めて思い知らされたと言うお話。

 それでは、次回(8月6日/水曜日)の『Dr.Dの機材ラビリンス』もお楽しみに。

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プロフィール

今井 靖(いまい・やすし)
フリーライター。数々のスタジオや楽器店での勤務を経て、フロリダへ単身レコーディング・エンジニア修行を敢行。帰国後、ギター・システムの製作請負やスタジオ・プランナーとして従事する一方、自ら立ち上げた海外向けインディーズ・レーベルの代表に就任。上京後は、現場で培った楽器、機材全般の知識を生かして、プロ音楽ライターとして独立。徹底した現場主義、実践主義に基づいて書かれる文章の説得力は高い評価を受けている。

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