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  • ビンテージ・エフェクター・ファイル Vol.8

一度経験すると病みつきになる、妖艶なまでのウネリを持ったフェイザー

Electro-Harmonix / SMALL STONE PHASE SHIFTER

  • 文:西岡利浩
  • 写真・動画撮影:雨宮透貴

ビンテージ・エフェクター・ファイルの第8回目は、久しぶりに空間系のエフェクターを紹介しよう。ビンテージ・エフェクター界では欠かせないブランドのひとつ、エレクトロ・ハーモニクス社が74年にリリースしたフェイザー、スモール・ストーンだ。深いウネリの中にも美しい高域がしっかりと再生されるそのサウンドは、1度経験すると病みつきになるほどの魅力を持っている。

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Brand History 〜 About Electro-Harmonix

 Electro-Harmonix(エレクトロ・ハーモニクス)社は1968年にアメリカはニューヨークに設立されました。ビッグマフを世に送り出したことでも知られる有名なメーカーです。今回ご紹介するSMALL STONE(スモール・ストーン)もそうですが、非常にユニークな名称のエフェクターを数多くリリースしてきました。音のイメージとはかけ離れた名称のモデルが多いのですが、長きに渡り世界中で愛されています。

SMALL STONE〜その成り立ち

 SMALL STONEの生産は1974年から始まったようです。今回試奏しているモデルは1975年に日本国内にて販売された個体です。筐体のデザインを確認すれば一目瞭然ですが、このデザインが同社初のSMALL STONEにあたります。もうこの個体が出荷されてからほぼ40年が経過したわけですが、現在まで5世代に渡り進化を遂げています。

 しかし、非常に残念なことに、同社は財政難が原因で1984年に一度破綻し、90年代半ばまでは生産の停止を余儀なくされました。会社の再スタート時には生産国がロシアに移行され、それまでのSMALL STONEとはデザインが大きく異なったアーミー調の大型モデルが出荷されました。また、ロシアン・モデルは最初にカーキー色で生産され、後に黒の筐体で生産されました。黒のモデルには2つのシルク・デザインが存在します。

SMALL STONE〜その特色

 小さな石=SMALL STONEとは、種別的にはフェイザーとなります。出荷が開始された時期や音色の効果や、両ブランドともアメリカ製ということもあり、MXRのPHASE 90とは常にライバル視されてきました。位相をずらして絶妙なウネリを生み出すフェイザーは、その周期(RATE)を設定するだけで簡単に大きな効果を得る事が出来ます。SMALL STONEとPHASE 90にRATEツマミ(PHASE 90はSPEED)が1つしかないというところを見ても、そのサウンド効果が絶大である事が容易にわかると思います。しかし、SMALL STONEは更に、"COLOR"なるスイッチが設けられており異なる音色を2種類、選択出来る仕組みになっています。1つは非常に浅い効果。もう1つは非常に深い効果になります。

 エフェクター生産という仕事をいち早く開始していたElectro-Harmonix社は創世記ということもあり、現在主流のコンパクト・サイズに比べると、比較的に部品基板に対しゆとりのある大きな筐体を使用していました。その形状はプレイヤーの方向に対して傾斜があり、フット・スイッチを踏み込みやすい角度にデザインされています。材質はアルミ製で、軽量な筐体となっています。また、電池交換はコントロール面の4隅にあるネジを外して行います。お世辞にも耐久性があるとは言い難いですが、そのケースの存在感はElectro-Harmonix社の独特な世界観を作り上げて行く事になります。

Electro-Harmonix / SMALL STONE

Electro-Harmonix / SMALL STONE

Electro-Harmonix / SMALL STONE

Electro-Harmonix / SMALL STONE

Electro-Harmonix / SMALL STONE

Electro-Harmonix / SMALL STONE

SMALL STONE〜そのメカニズム

 SMALL STONEのサウンドの魅力は何と言っても深い効果のモードでしょう。その妖艶なまでのウネリは1度経験すると病みつきになるほどです。深いウネリの中にも美しい高域はきちんと再生されます。最初期のモデルにはCANパッケージのICが搭載されています。これは現在のモデルに搭載されているICとはサウンドも異なります。キレのいい高域が聴けるのはこのICのおかげでしょう。ただ残念ながら、このCANタイプのICが搭載されているモデルの生産は非常に短命に終わります。第2世代はこのICが通常の8ピン物に変更されるというごくわずかな設計変更が施されました。とにかく同社からリリースされるエフェクターたちは良くも悪くも"派手な効果" を持ち合わせていました。SMALL STONEの深いウネリもその一環かもしれません。

SMALL STONE〜サウンド・インプレッション

 潔く1つしかないコントロールですが、その守備範囲は非常に広範囲にわたります。完全に左に回してもうっすらではありますが、確実にウネリを感じることが出来ます。逆に完全に右に回しきった状態では、もはやフェイズシフターというよりシンセチックなサウンドも演出できます。現代では意外とボーカルの声にかけたりすると面白いかもしれません。COLORスイッチは特に名称は付けられていませんが、上に合わせると"深い"モードで、下に合わせると"浅い"モードに調節できます。どちらのモードも気持ちいいポイントはツマミを12時~2時あたりに設定した時です。是非お試しください。

 70年代にファンクやフュージョンで多用されたのは周知の事実です。カッティングや単音のミュート・フレーズなどは一世を風靡したものです。誕生からほぼ40年が経過していますが、そうした使い方以外にポップスなどでも印象深いサウンド・メイクをする事が出来る、今でも十分"使える"1台です。試奏ではフェイズ効果を鮮明にするため、クリーン・アンプのみでプレイしましたが、歪ませたチューブ・アンプにあえてループを通さずに直列で接続するのも"深い"モードであれば刺激的な効果を得ることが出来ます。是非、ビジュアル系やヘヴィ/ラウド系のプレイヤーにも取り入れて頂きたいサウンドです。

試奏に関して

 サウンドの特色を分かりやすくお伝えするため、ハムバッキング・ピックアップのギターと、真空管アンプの代表的なモデルを使用した。

・ギター:レス・ポール・タイプ
・アンプ:マーシャルJCM2000

動画ではマーシャルをクリーンにセッティングし、試奏を行なった。


※次回「ビンテージ・エフェクター・ファイル Vol.9」は8/20(水)更新予定です。

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Electro-Harmonix / SMALL STONE

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