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  • Dr.Dの機材ラビリンス 第8回

“飛翔”に託す想い〜現行Vシェイプ・ギター

エレクトリック・ギター/Vタイプ

  • 文:今井靖

エレクトリック・ギターのボディ・シェイプは自由度が高い。ソリッド・ボディであれば制作者のイマジネーションのままにあらゆる形状を制作できるといっても過言ではない。“変形ギター”というカテゴリーが存在するほど、さまざまな造形を持ったギターが存在することは周知の通りだ。そのオリジナルとも言えるギブソン・フライングV。1958年に発売されたものの、わずか2年で生産を終えるほど市場の拒否反応は強いものだった。しかし “Vギター”の火は途絶えることはなく、21世紀になり、Vギターは誰もが認める変形ギター界の最右翼として君臨するに至った。Vギターというジャンルがいかにルシアー達の想像力を刺激して止まない卓越した造型であったか、そこに込められた“飛翔”にかける想いを、Dr.D厳選の現行23モデルから感じ取ってほしい。

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プロローグ

 それは、「誰もが必ず通る“儀式”のようなものだ」と、ギタリストは笑って語る。

 出会ってしまった時の衝撃と、痛みのように小さく胸を抉る得体の知れない戦慄……それでも惹き付けられ、目が離せなくなりながら立ちすくむ。そんな記憶が、ほんの少しでも、たとえ本人がそれを弾かないとしても……ギターという楽器を知っている人には、平等に訪れるのだという。

 “V(ブイ)”の形をしたギターとの出会い。

 人は、その時の圧倒的なインパクトを、まさに楔(くさび)のように胸に刻み込み忘れない。なぜならば、それをして好意を感じるか嫌悪するかはまた別として、少なくとも、その形状のギターに対して歴史の中で語られた事実について、誰もが教えられる事も無く察するからである。人々の細胞の中に刻まれている弦楽器というものに対してのセオリーに、自分の本能的な部分が明らかにアレルギーとも反発心ともわからない不思議な動揺について、人々は、すでに何十年と当て所無い吐露を続けてきた。無理も無い話だ。バイオリンやギターなど、筐体の曲線をもってその音質と向き合うことが前提だった弦を響かせるシェイプは、たとえソリッド・ギターの時代になってもいきなり覆される事は無かったからだ。名機と言われるレス・ポールやストラトキャスターとて、その例外ではない。あのフォルム……その曲線美をストリングスと組み合わせるシルエット無くして、それらのギターにも後の成功は望めなかったであろう。それほどに、弦楽器が持つ造型には、その楽器たるべき説得力と、音を予測させる事による安心感を与える効果が備わっているのである。

 しかし、そういった人の本能に真っ向から対峙するような形で、あの直線的な形状のみで構成されたギターは何の前触れも無く歴史上に姿を現した。

 Gibson“Flying V”。

 ようやく近代的ソリッド・ギターのラインナップが市場に揃い始めた1958年。その後の人々の心に挑戦と反骨心、そして得体の知れない本能的な危機感を同時に刻み付けることとなる「早すぎたギター」は誕生した。そして、人類は今後その象徴となるべき“見た目から音を想像できないエレキ・ギター”に直に向き合う事になる。現代人のDNAが有するはずの弦楽器に対する本能のレクチャーがまるで通用しない存在……V型のボディを備えたギターに対し、今もまだその論争はとどまる所を知らない。実際、最初の拒否反応はメーカーの予想以上に強く、初期“Flying V”の製造はたったの2年間、100本に満たない生産本数という結末に終わっている。しかし、その一見無謀だった小さな灯火は、志あるギタリスト達の手によって着実にその勢いを増す事になる。ジミ・ヘンドリックス、レズリー・ウエスト、アルバート・キング、マイケル・シェンカー……稀代の名手達の手から織りなされる“V”のサウンドは、それがただの奇抜なだけのギターでない事を知らしめるのに十分であった。そして、人々は、「証明されたサウンド」、「本能の拒否反応」、「形状による実用性と趣向」の間で設定された新たな三すくみのバランスの上で、そのギターと向き合う事になった……これが現在である。

 だが、21世紀になり、Vギターがもはや誰もが認める変形ギター界の最右翼として君臨するに至った今でも、その考察は崩されぬままである。それは、ひとえに60年近くも前に作られたこのギターのもたらす存在意義の全てが、未だに斬新で、かつそれに関わる人々全ての奥底に寝る感情を刺激するからである。それは今後100年経ってもおそらく変わらないであろう。それほどまでに、当時Gibsonが打ち出した本当の意味での“飛翔”にかける想いが、未だその途上にあるのだという事実は重い。ならば、異端の造型を目にするたびに、今よりもっと未来志向であった前人達の情熱を受け継ぎ、自分の中の小さな偏見など打ち捨てなければならないと悟るべきなのではなかろうか。

 決して最初に手に取られる事は無いが、必ず生涯で一度は手に取る事になるギター……“V”。だが、そんな本能的タブーをも打ち破り、「生まれて初めて手にするギターがVギター」という新人類が現れた時にこそ、きっと60年前にGibson社の目指した本当の意味での新しい時代が幕を開けるのかもしれない。

 今こそ、“V”が指し示す魂のベクトルに向かって、行くべきなのだ。おののきの向こうから波のようにやってくる、とても純粋な“ギターを弾く”という無上の喜びに応えて。

商品の選定・紹介にあたって

 数々の挑戦と試みが施された“V”の歴史。そのモデルの多様さは、実際に作られた本数との比率において、メジャーなタイプのギターの比ではない。しかし、それだけに、それぞれ作られた期間も短く、人の目に触れぬまま製造を終えてしまった名機も数多く存在するというのが実際の所である。故に、今回はあえて過去を振り返る事をよしとせず、今、現状のギター業界がVギターにどれほどの可能性を見ているのかをテーマに、現行品の中でなるべく幅広いタイプを網羅するようにリサーチした。メーカーは、基本的に現行品を中心に扱っていて、デジマート内で検索しやすいものをチョイスした。その過程で、かくいう自分もこのVギターというジャンルがいかにルシアー達の想像力を刺激して止まない卓越した造型であったかを改めて思い知らされる結果となった。今後Vギターの購入を検討されている人もちろん、すでに所有している人にも現代の最新Vギターの傾向チェックに役立てて欲しい。

海外ブランド・モデル


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01 Gibson [Flying V 120]

 Gibson伝統の「V-Factor」スタイルの正統血統として誕生した、120周年(創設者オーヴィル・ギブソンが、カラマズーの工房でマンドリンの製作を始めてから120年という意。Gibson社自体の創立は1902年)記念モデル。ワイドに張られたピック・カバー、ストップ・バーのチューン・オー・マティック、トライアングル・コントロール……まさに王道の“Flying V”。ボディ/ネックにマホガニーを採用し、ローズウッドの指板という仕様は、オリジナルの再生産モデル初期に見られる人気の67年モデルあたりを意識している事は明らかだが、丸いラインのヘッドやネック・バインディングが採用されるなど新旧のトラディショナル・スタイルを上手く融合させたモデルに仕上がっている。モダンなVギターよりも、ネックを掴んだ瞬間にわかるやや重心が上向きな感覚もビンテージそのままだ。ネックは時代相応のナロー・ネックを踏襲しているので、現代的なGibsonしか馴染みの無い人にはロー・ポジションに思ったよりも違和感を覚えるかもしれないが、さすが王者の品質というべきか、手馴染み自体は抜群なのでプレイアビリティを無下に損なってしまうようなことはないだろう。基本モデルのピックアップには“Burst Bucker Pro”を採用。立ち上がりが良く、ファットで歯切れの良い歪みを作るのに最適なピックアップであるだけでなく、このVシェイプされたマホガニーのボディとも実に相性が良く、何とも言えないブラウン系の飽和したエッジを聴かせてくれる。「Flying V History」モデルではピックアップがエスカッション・マウントのアルニコ“57 Classic”(フロント)/“57 Classic Plus”(リア)を採用し、これはこれで甘くクリアなアタックから繰り出される切ないトーンを持ち合わせたバランスの良い仕様に仕上がっている。近年ではレギュラーの生産ラインから外され気味の“Flying V”だが、本家の復活を待ち望んでいたユーザーも多いのではないだろうか? 原点に立ち返る意味でも、誇らしいアニバーサリー・インレイ入りのこの記念モデルを是非一度手に取ってもらいたい。400本限定品。
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02 Gibson Custom Shop [1959 Flying V Mahogany]

 希少なCustom Shop製ハイグレード・モデルの“1959 Flying V”。オリジナルの“Flying V”は、皆さんご存知の通り1958〜1959のわずかの期間にだけ生産され、本数も98本という非常に限定的な生産にとどまったモデルだ。そのほとんどは、当時は珍しかったコリーナ材のボディを採用していた事でも知られ、実際、この時期のモデルの復刻版はその多くがコリーナを用いたモデルでの再生産だったこともあり、50年代のVはコリーナという印象が強いのも確か。しかし、そのオリジナルVのプロトタイプにはマホガニー・ボディのものが存在していた事はあまり知られていない。これはそのプロトタイプそのものの復刻には当たらないが、50年代オリジナル後期の仕様を元にマホガニー・ボディで均整を量った、その歴史を知る人ならば垂涎のマニアック・モデルだ。50年代Vはそもそもボディ厚がその後のモデルとは異なり、まだまだ古い時代のどっしりとした体躯を宿している。さらに、ネックもしっかりと太く、指板のRもゆるい当時の特徴をこのモデルはかなり忠実に再現している。ボディ材に乾いた音質のコリーナではなくマホガニーを採用した事で、音の発色も深みがあり、しっかりとネックまで響く底に溜まった豪奢なトーンを出す、不思議と今まで余り感じた事の無い一種新鮮な手応えを持つバランスに仕上がっているのが印象的。鋭角なヘッドストック、釣鐘型のトラスロッド・カバー、三連コントロールに裏通しという古風なスタイルこそきちんと再現されているが、音質的には現代に通じる、倍音が強めのフラットな特性をしっかり備えたモデルだと言える。古い容姿を愛でるだけでなく、王道を貫きつつも“Flying V”の可能性を押し広げた実用的にも優れた機体である。
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03 Epiphone [1958 Korina Flying V]

 50年代オールドVの醍醐味を低価格で味わえるEpiphone製リイシュー・モデル。マホガニー・ネック、ローズウッド指板、コリーナ・ボディという基本を押さえた造り。安い価格とは思えぬほどしっかりとVサウンドを継承しており、コリーナ独特の、ややマホガニーよりも重心が軽めでしかもレス・ポールなどのメイプル・トップのギターとはひと味違った中域に寄ったサウンドは健在。Gibson製コリーナ・モデルのVギターもほとんど市場に残っていない今、50年代特有のサウンドをしっかりと出せるこういったモデルがある事は有り難い。ピックアップには基本的にEpiphoneオリジナルのハムバッカーを二発搭載しており、そのロー・パワーながらミドルのエッジを掬い上げるようなストレートなエッジと、ブーミーになりすぎない軽快なロー・エンドが、このギターならではの卓越した個性をうまく引き出している。全体的に緩く散漫になりがちなV独特の音質を、ピックアップを通じてメリハリの利いた歯切れの良さで丁寧に中和するこういったバランス重視の音質は、一見ヴィンテージとしてのジャストな音域と若干異なるものの、コリーナという材の特徴を素直に生かした好感の持てるサウンドで、とても使いやすい。値段的にも材的にも信じられないくらいの完成度を誇るモデルである事は疑いようがないので、初心者でも安心して購入して良いモデルの一つと言える。
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04 KRAMER [NITE V]

 現在はGibsonの傘下だが、元はアルミニウム・ネックなどで有名なコンポーネント・ギターの先駆者的存在のKRAMER。Vスタイルでは、小型のボディを持つランディVタイプの“Vanguard”でも知られているが、こちらは現行品の“NITE V”シリーズ。エッフェル塔のようなアーチ股を持ち、ボディの両端を大胆にカットした固有のシルエットを持つ。一見重そうに見えるが、立って持てばバランスは良く、メイプルのネックは程良くウエイトが乗っていて取り回しが楽。ボディがマホガニーなので音が広がりやすいかと思いきや、実に低音が引き締まったストレートな出音を持っている印象を受けた。旧タイプの“Alnico V”ピックアップは非力で音量的にも厚みがやや物足りなかったが、“NITE V Plus”ではSeymour Duncan製のものがデフォルトで装備されるようになり、音もスプラッシーで、強く80年代の歪みを意識したサウンドに仕上がっている。音質的にも強度的にも非常にバランスのとれた良質なモデルで、ボルト・オン・タイプのハイ・フレットの弾きにくさを鑑みても、コストパフォーマンスに秀でたモデルであることは疑い様が無い事実である。
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05 Jackson USA [King V/KV/KV2]

 近代Vシェイプ・ギターの最右翼として知られるJacksonの二大ラインナップの一つ。スルー・ネックが基本の“KV”シリーズはロビン・クロスビー(ラット)用モデルとして開発されたギターで、彼の大柄な体格が“King”と称されていた事からその名が付けられたという逸話を持つ。90年代のメタル・シーンでは欠かす事のできないギターであり、左右対称の鋭角かつ幅広のシルエットは、当時主流になりつつあったハイパワーなピックアップを受け止めるのに適したモダンな共鳴域を獲得し、深くきめ細かいディストーション・サウンドの中でも失われない光沢のある倍音と分厚く力強いサステインを作り出す要因ともなった。さらに、Jacksonのお家芸とも言えるコニカル・フィンガーボード(コンパウンド・ラディアス指板:ヘッド側からボディへ向かって円錐状に均一に広がっていく指板のこと。創始者グローヴァー・ジャクソンが開発した仕様で、高度な加工技術を要するが、現代的なプレイアビリティの向上には欠かせないR形状の一つ)はそういった音質構造とも抜群の相性をもたらし、パワフルなリフ・ワークとテクニカルな運指による高速リードを両立させる機構として称賛を浴びたことでも知られる。現在では、サイド材にアルダーを用いた低音域にバランスのとれた通常モデル“KV2”と、サイド材、センター材ともにマホガニーという攻撃的な仕様で中域の抜けの良さに特化した“KV2T”が主なラインナップとなっている。
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06 Jackson USA [Rhoads/RR]

 いわゆるランディV。このメーカーの独立性を決定づけた歴史的ギターであり、初めてシャーベルとは区別された単独のJacksonロゴが入れられたモデルでもある。その名の通り、あの悲劇の天才ギタリスト、ランディ・ローズの受注(すでに当時ランディはあの有名なカール・サンドヴァルのポルカドットVを好んで使用していた)によってこの世に生み出された名機で、左右非対称の鋭角的なボディ・シェイプやコンコルド・ヘッド、スカーフ・ジョイントの採用など、ランディの情熱とグローヴァー・ジャクソンの英知が高度な条件の下で結集した、真に革命的な仕様のギターとしても名高い。プロトタイプ製作は、元Charvelの技師で、後にFenderでシニア・マスター・ビルダーとなる名工マイク・シャノンが担当。オフセットのメイプル・ネック/ボディとシンクロナイズド・トレモロを搭載したその“V”にランディはさらなる改良を重ね、より鋭角に、そして軽量化を追求したセカンド・モデルへと進化させていった。不幸な事にそのモデルは完成直後に飛行機事故で亡くなったランディのフィードバックを得る事は永遠にできなくなってしまったが、このスタイルはそのまま今の“Rhoads”シリーズへと受け継がれている。現在ではクオーターソーンのスルー・ネック&アルダー・ウイング、さらにピックアップにはDuncanの“JB TB4”などがメインで選択されているが、実際には仕様は細かく差別化され、コロナ工場のスタッフによるニーズの研究による個体差を楽しめるようになっているのも特徴。独特のセレクター位置や、深いハイ・フレット形状で、さらに小振りな個性を持つ“RR1.5”も変わらず人気だ。
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07 GJ2 [Concorde 5 Star]

 Jackson/Charvelの経営を退いて以来、WashburnやRickenbackerを転々としたグローヴァー・ジャクソンが立ち上げた新ブランド。ランディVの様な左右非対称で小型なボディと、緩やかなカーブを持つイルカの鰭のようなシルエットが特徴。ネックはオリジナルのランディVを彷彿とさせるような3ピース・メイプル、エボニー指板という仕様で、お得意のコンパウンド・ラディアスに合わせた「Shallow“D”」ネックの手馴染み感は、まるで手に吸い付くよう。現行のJacksonの指板よりもさらにRが緩くなっているが、それを感じさせない自然な指の回り込みを確保し、ほとんど平らに近いハイ・ポジションの弾き心地も全くストレスなく均整がとれている。何時間でも弾き続けられそうな、本当に惚れ惚れするようなネック形状が、さすがグローヴァー・ジャクソンというこだわりを見せつけている。サイド材はありがちなアルダーではあるものの、ピックアップにオリジナルの“Habanero Classic”を載せるなど、音質面でも格段のオリジナリティを有しており、80年代のJacksonを知る人には、むしろこちらの方が馴染みやすいだろう。全体的に高域にエッジがあり、分解能に優れた反応の良いピックアップとワンテンポ遅れてにじみ出るように浮かび上がる厚みのあるサステインとのバランスが最高で、実に使い勝手に優れた音を備えた逸品だ。このシリーズには、他にバスウッド・サイドを持つミック・マーフィー仕様の“Concorde Triple M”がある。
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08 DEAN [V CHICAGO FLAM]

 オリジナルは35年以上前から存在するという、DEAN式Vギターの典型ともいうべきモデル。独自のセットネック構造に、マホガニーのネック/ボディ、メイプル・トップというまるでレス・ポールのような仕様から推察される通り、その音質は実に丸みがありながら高音にもしっかりとエッジが乗る表現力豊かな出音で、これでしか得られない音という物が確かに存在する。また、ボディにもネックにも施された派手なバインディングに目が行きがちだが、Rの薄い指板に対して指の入りを柔らかくさせるふち角のコーナー加工等基本的なプレイアビリティにもよく配慮されている。程良く全てのバランスがモダンにシフトした従来のGibsonスタイルでもあるミディアム・スケールのVギターという意味だけでも、このギターを手に取る価値は十分にあるはずだ。ピックアップのチョイスがDimarzioの“Super Distortion”という点からも、歪みに強いモデルだとわかる通り、マーシャルなどのようにややコンプ感のあるハイゲイン・アンプとの相性は抜群。
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09 DEAN [シグネチャー・モデル]

 元々、Vギターは何らかの高名なプレイヤーの特別モデルであることも多く、各メーカーでもシグネチャー・モデルとしてVタイプのラインナップを維持している場合も多い。中でも、DEANと言えば多くの変形ギターのシグネチャーで実績を上げてきた事で知られる通り、Vギターにおいてもそのエンドーサーは超大物ぞろいだ。かの「Y2KV」事件(Jacksonが2000年代に“King V”をGibsonスタイルに近づけようと大幅なモデル・チェンジをはかった事が原因で、数多の大物のエンドーサーに見限られた案件)でも名を知られたデイヴ・ムスティン(メガデス)が、ESPを経た後、最後に辿り着いたのもこのDEANである。DEANのシグネチャーは、数も多いだけに差別化を図るべくそれぞれかなりクセの強いモデルを揃えているが、それは、それだけ個性的なVギターに出会える確立が高いという事も意味している。Vギターの更なるオリジナリティを追求したいユーザーはDEANのシグネチャーは要チェックだ。他にもマイケル・アモット(アーチ・エネミー)やマイケル・シェンカーなどの仕様も数多く取り揃えているので、気になる人は検索してみよう。
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10 B.C.Rich [JR V]

 B.C.Rich独特のスタイルのVギターの中では、小ぶりにサイズを揃え、現在では主流としてラインナップを支える“JR”シリーズ。仕様は細分化されており、ボルト・オンのメイプル・ネック、ニャト・ボディ、セラミックのハムバッカーRockfield“Mafia”を搭載した“Standard”から、オール・マホガニー(物によってはサイドがニャト)、スルー・ネック、EMGピックアップの上位機種“NJ”、他にもメイプル・トップの“Exotic Pro”まで様々。価格帯が上下極端なVギターの中では、実売価格10万円前後で、EMG搭載のモダン型Vギターが手に入る線として、これらのモデルの存在意義は大きい。出音はいかにも突っ込み感の強い頭でっかちな暴れサウンドだが、EMGのロング・サステインはその特性を上手く中和してくれており、特にエフェクターなど抑揚が得にくい歪みをメインに使用しているプレイヤーにとっては意外に相性の良い所をみせる可能性もある。ちなみに、同社人気のシグネチャーであるケリー・キング“KKV”は本来標準サイズの“Speed V”仕様のみであったが、2年ほど前に25周年記念モデルとして “JR V”モデルも発売し好評を得ている。
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11 GMP Guitars [“V”]

 カリフォルニア州サンディマスに拠点を構える少数精鋭のハンドメイド工房GMP。主宰のダン・ローレンスは、あのランディVが開発された80年代初頭のCharvel/Jacksonに在籍しており、その後、ペイント技術を買われてB.C.Richのエルモンテ工場に引き抜かれた経緯を持つ凄腕の職人。経歴を見てもわかる通り、モダンVギターに関しては最前線で腕を磨いてきただけあり、その造りは実用的かつ近代的。ロング・スケールの左右対称Vは圧倒的存在感を持ち、エボニー指板の渋みがそのシルエットをバランス良く落ち着かせている。Rは当然Jacksonゆずりのコンパウンド・ラディアスだが、本家よりもロー・フレット側がほんの少し傾斜が緩く造られており、よりテクニカルな運指に耐えられるように工夫されている。トレモロは積極的に採用せず、裏通しやストップ・バーのテイルピースと、Sperzelのロッキング・チューナーを好んで採用するなど、現場での信用性と演奏性の向上に重きを置いた仕様は、ハードとしての質で勝負したいというこのメーカーの意気込みを感じさせる。立って持つと思ったよりもセンター寄りに重心が来るようにストラップ・ピンの位置が調整されており、Vギター独特の斜め下に引っ張られる感覚が少なく、とても安定している。お得意のスペシャル・ペイントと合わせ、今後ますます注目を浴びそうなギターだ。
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12 RS Guitarworks [TeeVee/TeeVee Fat/TeeVee Custom]

 ケンタッキー州ウィンチェスターの小さな工房で90年代からリペアや復元などで実績を積み上げてきた職人達が、長年のビンテージ・ギターの研究を元に作り上げた異色のオリジナルVギター。“TeeVee”……それはまさに、「テレキャスターV」の名に相応しい、夢のVギターだ。一発、チャリーンと鳴らしただけで、あのテレキャス独特の甲高い音色が飛び出すのがわかる。しかも、そこにはVギター特有の圧力のあるミドルが程良く付随されており、キンキンするだけではない実に剛胆なサウンドに整えられている。ネックはメイプルが基本でボディはアルダーもしくはアッシュ。ローズウッド指板を持つ個体もあり、アタックの出具合や指馴染み、低音の出方の好みでモデルをチョイスできる。指板のRは10”に固定されているのでハイ・フレットの手応えなどは、オールド・フェンダー系から移行したい人にも全く違和感はないはずだ。面白いのは各モデルによるサドル材の違いが顕著に音に表れている点で、芯のある強いアタックと「面」の出音が欲しい人には“鉄”製のものを、多少音量は落ちるが柔らかく微細なタッチを重視するプレイヤーには細かい高音が売りの“アルミ”を、その中間の音質で良質なサステインが欲しい人には“ブラス(真鍮)”を……というように棲み分けがしっかりできているのもビンテージ・サウンドを知り尽くしたこのメーカーならではの差別化で、非常に好感が持てる。全体の金属パーツに施されたエイジド・加工もさすが。ビンテージなサウンドと風格を持ちながらも斬新極まるこの新世代のシングルV、これは革命だ。
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13 Blast Cult [Hollow V/ Hollow V STD]

 元々ウッド・ベースの奇才ルシアーとして西海岸で名を馳せていたジェイソン・バーンズが立ち上げたブランドBlust Cult。斬新なシェイプと、最大限に木の鳴りを活かしたオンリーワンなトーンを持つこのセミ・ホロー・ボディのVギターは、彼以外には作り得ない、真にアメリカンなカントリー・トーンを宿したアイテムに仕上がっている。さすがにボディ自体は大きめに作られているので一見取り回しが難しそうだが、手に取ってみると思った以上に軽く、上下のバランスが取りにくいVギターには有り得ないほどぴったりと身体に吸い付くようにバランスされていた。クラシカルなヘッドストックやBigsbyのビブラート・ユニットを配置した風体から古くさいサウンドを想像しがちだが、カッタウェイのある普通のギターでは有り得ない完全に左右対称のホロー構造が生む豊潤でしっかりと中心に腰が据わったサステインが、同社独特のサイプレス・ボディ/メイプル・トップという構造により上手く芯のある太く抜けの良いトーンにまとめ上げられている。特にリアの膨らみのある豊かな響きは必聴。T.V.Jones“TV Classic”ピックアップの歯切れの良い音色と相まって、丁度、テレキャスの・シンライン系とグレッチの往年サウンドの良いとこ取りをしたような音質に収まっている。基本ラインは、BigsbyテイルピースとHIPSHOT製ロッキング・チューナーが勇ましい“Hollow V”、コントロールをボディ・エンドに格納した“Hollow V STD”の二種類。Vボディが生む全く新しいサウンドを体感したいのならこれ以上の個体は無い。
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14 HAMER [Vector/Vector Korina]

 昨年、創立40周年を迎えた米国イリノイ州の老舗ギター・メーカー。設立当初からギブソン系変形ギターの生産に主力を置いており、Vギター製造には積み上げたノウハウを持つ。近年はFender傘下になるも、アメリカでは未だトップ・プロの愛好者も多く、そのクオリティは世界中で高く評価されている。様々なカスタムVを作っているが、基本は50年代仕様のVボディ・シェイプをマホガニー/コリーナの両モデルでデザインしたベーシックなスタイルが得意で、意図的に載せられるハイ・パワーなピックアップとのコンビネーションがこのメーカー独特のトーンを生む。厚めのボディ、ロング・テノンの構造の物は更にその音質が顕著で、分離の良いミドルと落ち着いた粘りのあるアタックがうまく現代的ハイゲインにもマッチしている。ありそうでなかったモダン・トーンとの融合をさりげなく達成しているあたりに、このメーカーの実力に底知れないものを感じる、そんな逸品だ。
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15 GMW Guitar Works [Polka Dot V]

 GMW Guitar Worksという名を世界に知らしめた数々の逸話は、もはや説明不要の“Polka Dot V”。GMW謹製の故ランディ・ポルカドット・リイシューを、ザック・ワイルドが家に来たダイムバック・ダレルの前で弾いたエピソードはあまりにも有名。GMWはB.C.Richで“Mockingbird”など数々の名機を発明した変形ギター製造のカリスマとして名高いニール・モーザーと、現トップのリー・ガーバーの手で作られたハイエンド・ブランドである。当時、カール・サンドヴァルのポルカドット(大きな水玉模様の)Vを再現するのにこれ以上の人材はいないとされたほどニール・モーザーの手腕は確かで、ランディを崇拝するザックを虜にするだけのクオリティは確かにあったようだ。ボウ・タイのインレイ、ミディアム・ジャンボのフレット、フロイド・ローズ、そしてDiMarzioのピックアップ(フロント:Paf/リア:Super Distortion)……それらはランディの意志を受け継ぐザック仕様として、現ラインナップを支える基本マテリアルとなっている。ガツンと突き上げるような硬質なアタックと刻み込むようにエッジを迸らせる歪み、そして漂う甘い余韻が、80年代の華々しいトーンを現代に蘇らせる。ちなみにザック仕様にはホワイト・ベースの黒ドット・バージョンもあるので、更なるステージ・インパクトを求めるユーザーには最適な一台となるに違いない。
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16 Washburn [PSV2200]

 19世紀末にシカゴで創設された、歴史ある楽器メーカーWashburn。ジャズ・シーンをはじめとしたベテランに愛される渋いギター・ラインナップの中でも格段の異様を誇る“PSV2200”は、泣く子も黙るポール・スタンレー(KISS)のシグネチャー・Vモデル。Duncanの“JB”を基本とした1ハムのシンプル・スタイルで、マホガニー・ボディ/マホガニー・ネックの迷いの無い色調の強いトーンとチューン・オー・マティックのもたらす質実剛健な造りは、我が道を貫くロックな気質に溢れている。上位機種には本人と同じく、ボディに割れた鏡を貼り付けたような“CM”、ラインストーンを敷き詰めた“RS”がラインナップされ、そのド派手な外観にも何者をも寄せ付けない強いポリシーを伺う事ができる。また、実用面においても、ギターの構造上からくるチューニングの矛盾を解消する「バジー・フェイトン・チューニング・システム」を採用する等、近代装備に裏打ちされた正確な音像の追求にも余念のない個体となっている。派手なだけではない、本物の実力派Vとして今後もっと注目されても良いクオリティを十分に擁している。ただし、ボディ・エンド側のストラップ・ピンの位置がV股の一番底にあるため、ストラップ角が垂直になりがちなのには注意が必要。気をつけないとボディ側がすぐに下がってくるので、常にギターを立てて弾くようなクセのあるプレイヤーにはむしろ丁度弾きやすく感じるかもしれないので、試奏は必ず必要だという事は憶えておこう。
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国内ブランド・モデル


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17 ESP [ARROW/AERO]

 アレキシ・ライホの“Katakana”モデルやSUGIZOシグネチャーの“ECLIPSE V-VIII”など、数々のカスタム・Vモデル製作を絶やさぬ国内屈指のハンドメイド大手となったESP。今年はTHE ALFEEデビュー40周年となる、高見沢俊彦生誕60周年を記念した“Flying A-V”も手がけるこのメーカーの、高い製造技術を物語るVギターのセンター・ラインナップがこの“ARROW”と“AERO”だ。重量バランスの取りにくい非対称Vでありながら、ハイ・フレット側のカッタウェイを深く掘ったり、さらにボディ脇の大胆なベベルド・カットと直線曲線を織り交ぜたボディ・エンドの形状を維持するのは並大抵の技術ではない。それぞれスルー・ネックとボルト・オンという違いはあれど、ともに指板のRが305”という絶妙に緩やかなカーブを持っており、プレイアビリティの高さで言えばその万能性は予想以上だ。ピックアップに、アクティブとはいえきちんと中域にも質量を感じることのできるナチュラルな出音を備え、ピッキング・ニュアンスも出せる反応性の良さが売りのDuncan“AHB”を選択している事からも、ただの歪み専用ギアでない事は明らか。粒立ちの良いシャープな音像とクリアなサステインは、使い方次第でいかようにもプレイヤーの個性を引き立たせてくれそうだ。ちなみにESPメイドでは、旗下ブランドのNavigatorのGibson系コピー・Vモデル“N-F-LTD”や、EDWARDSの羽の造詣を模したボディを持つREVO(リンクトホライズン)モデル“E-Flying Freiheit”なども積極的に手がけ、同社の技術が国内におけるオリジナルVギター開発・研究の最先端である事を証明し続けている。
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18 Dragonfly [CUSTOM FV 666]

 重低音ユーザー御用達の国内ブランドとして定着したDragonflyの人気シリーズ、“666”モデルのVタイプ。666mmの特殊なロング・スケールを搭載する事で、ダウン・チューニング時にも適切なテンションを確保し、オリジナルのピックアップ“dfn-5N/B”も低音のレンジが広いチューニングに仕上げられたクリアでしっかりとエッジの立つ音質と合わさって、総合的に重心の低い音に万能なモデルに仕上がっている。だが、実はこのシリーズ、ノーマル・チューニングでも非常にバランスが良く、特にこのVはステンレス・フレットから来るブライトで拡散する高音と、メイプル・トップ・ボディによる引き締まった音像が上手くマッチして非常に良く音が抜ける。出音自体にコンプ感もあまり無く、意外にもビンテージ系のユーザーに支持される事も多い個体だ。22フレットなのでやや指の広がりは大きく感じるが、不便なほどではなく、むしろハイ・フレットがせせこましくなくて快適だ。前衛的なバリトン対応ながら、ギターの本質的なサウンドも楽しめる画期的モデルとして紹介しておこう。
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19 Aria Pro II [XX DLX 80's]

 イングヴェイ・マルムスティーンという偉大なギタリストが、アルカトラス在籍時にAria Pro IIの白いVを使っていた事は有名だ。その洗練されたフォルムを持つ“XX-DLX”を完全オーダーで復刻させたのがこの“XX-DLX 80's”である。ハム・サイズのピットに前後ともシングルを載せ、さらにシンクロナイズド・トレモロとボルト・オンのメイプル1Pのネック……仕様だけ見ればまさにストラトそのものだが、それでもVシェイプの筐体にそれが搭載されると何とも言えない太く突き抜けるミドルが加算され、全体的な圧力が増すように感じられるから不思議だ。イングヴェイが好んだスキャロップ指板と緩やかなRの組み合わせはなかなか趣があり、これも弾きこなせればかなり多彩な表現を可能にしてくれそうだ。ただの奇を衒ったスペック・モンスターでない。こだわりを持った演奏形態の充実を図りたいプレイヤーならば、一度このギターを試せば一気に視界が開けるかもしれない……そう思わせるに十分な、本当の意味で演奏性の高い楽器へと昇華したVギターの神髄を、是非味わって欲しい。
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20 Momose [MFV]

 国産ギターの黎明期から数々のOEM製作でその名を知らぬ人はいないほどの名工として不動の地位を築いた職人・百瀬恭夫氏が、少数精鋭のスタッフとともに長野は松本の工房で作るハイエンド・ギター。“MFV”は50年代のGibson“Flying V”をモチーフに、ボディはおろかネックまでフルにコリーナ材を使用した贅沢なVギターだ。手にした瞬間に伝わるこの凄まじい「本物」感。並のトラディショナル・ギターなど比ではない、ネックから伝わる抜群の手馴染み感、そして極上のボディ・バランス。沸き上がるように細やかな倍音を放つJescar“FW9662-NS”フレットと国産TokiwaのABR-1タイプ・ブリッジのシャープな音質の相性は抜群。立ち上がりの早いオリジナル“BEANO”ピックアップとともに、その狂おしいまでに鮮烈な出音はまさに日本のギター製造技術の高さを示す物として芸術の域にまで高められた逸品と言えよう。ラッカー・フィニッシュのコリーナVでは、間違いなく「本物を越える本物」として世界に誇れる素晴らしい品質のギターである。
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21 Killer [KG WISHBONE V/TRIUMPH V]

 元は高崎晃のギターを作るための専門ラインとして同テックの荒木一三氏が立ち上げたプライベート・ブランドKiller。“KG WISHBONE V”は、S-Hレイアウトのピックアップを持つVギターとしてKillerの代名詞でもあった名機“ARMED V”を、万人向けにアレンジした繁用個体。独自技術であるDeep Insertによる5点(通常の4点留めに、さらにピックアップの裏のテノン部から更にボルトを穿つ方式)ボルト・オン形式を引き継ぎ、ロング・サステインとともに、EMGレイアウト(89:コイルタップ可能/81)による濁りの無いまとまったサウンドが特徴。一方、“TRIUMPH V”はルーク篁仕様のシグネチャーで、もはや定番となった3ハム(Duncan“SH-1n”“SH-1n”“SH-5”)の圧倒的な存在感と、その変幻自在なサウンドは素晴らしいの一言。オール・マホガニーのスルー・ネックから繋がるボディはやや薄めの40.0mmに抑えられており、実の詰まったような従来のVサウンドより開放的で爽やかな音質に整えられているのもこの個体ならでは。だが、最大の特徴は持って初めてわかるその独特の弾きやすさで、落とし込み加工されたチューン・オー・マティックによって初めて達成できる低い弦高と、オリジナルVUネック・シェイプ(やや6弦側寄りに頂点がある非対称気味(個体による)なロー・ポジション付近のVシェイプから、ネックの根元に向かってUシェイプになる独特の仕様)のシルエットを残す造詣の取り合わせは、ハマれば恐ろしいほどの弾きやすさを提供してくれる。腕に覚えのある人は、国内でも有数の独自技術を詰め込んだこのスペシャルなVギターを一度是非手に取って欲しいものだ。
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22 Moon [VD 290 LF]

 PGM工房のコンポーネント・ブランドの一つMoon Guitars。THE VOODOOと銘打たれたこのシリーズは、Lindy Fralinのハム・キャンセル3シングルPU“Tall-G”とシンクロナイズド・トレモロを搭載したストラト・ライクな仕様が特徴のVギター。ジャキジャキした突き抜ける高域と、ピーキーだが色調の強い表情豊かな音色はクセになる。舟形ジャックもウイングの縦面に装着されており、シールのまわりの取り回しでは意外にVシェイプ構造と相性の良い所を魅せているのも面白い。指板のRは400”とほぼ平らに近いが、それでもエッジ部のカーブによりしっかりと指にかかるそのタッチは快適そのもの。お得意の極薄ラッカーも良い味を出している。マホガニーVの高音の抜けてこないもっさり感を吹き飛ばしたいプレイヤーには、もってこいの選択肢となるだろう。
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23 SS by Shimura Special [Custom Order Flying V]

 近年、ギター・テックとしてもリペアマンとしても最高の評価を得て、すでにフュージョン界では密かなブームを巻き起こしつつある志村昭三氏謹製のカスタム・ブランド。この少数のみ生産された“Custom Order Flying V”は、左右非対称のボディに伴った6弦側にほどこされた深いオフセット・ネック・ジョイント構造により、チャキっとしたアタックの中にもくっきりと低音が浮かび上がる、Vギターの音質面での弱点を補った一段上のスペシャルなギターだ。この独自の接点方法は音質面だけでなく、ハイ・フレットのボディ・カットによる強度不足を補ってくれるだけでなく、ネックの捻れも抑制するというハード面でも素晴らしい恩恵をもたらす仕様だ。エンド・ピンがピックガード上に配置されているため、ストラップをウイングの上から通すか下から通すか悩む所だが、実際に持ってみたバランスで言えばストラップはボディの上を這わすのが良いように思える。おかげで非常に軸がとりやすいバランス性能を持つ個体なのだが、ふとももにV股を挟んでの演奏には、押し上げたストラップがブリッジに触れる可能性もあり、ややプレイ・スタイルに気を使う必要があるかもしれない。ただし、それ以外の部分は全ての面でハイエンドに熟成されており、音質重視のプレイヤーにはかなり強力な武器となるだろう。
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エピローグ

 V型ギターを使う度に、必ず頭を悩ます問題がある。

 それはギター・スタンドの事だ。特にランディVなど非対称ギターを使う面々は、少なからずその懊悩に直面した経験があるはずだ。普通のU字受けのあるタイプの安価なスタンドでは、まずVギターを置く事はできない。例え置けたとしても、必ずと言って良いほど、ボディ・エンドが地面についてしまう。それが要因の、ウイングの先端部分の傷、欠け、塗装の剥がれなどをどれほど多く見てきた事か知れない。非対称Vギターにおいては、もはや立てかける事さえできない。不安定な状態で置かれたVギターは、休憩中、ちょっと煙草を吸いに出た間にスタンドから滑り落ち、鋭く尖ったヘッドストックでキャビネットのグリル布を斜めに引き裂きながら落下。そして、誰に看取られる事も無く地面に叩き付けられ、ネックはポッキリ。一服から戻ってきたギタリストはその惨状を目の前に、頭を抱え、膝を突く……。その、まるで自らが“Frying V”を形態模写するような姿勢で途方に暮れる姿が、まざまざと目に浮かぶようだ。

 ただ、毎回、休憩やシステムの接続を替える度に、いちいちハード・ケースにギターを戻していては効率が悪くなって仕方が無いのも事実だ。かといって、レンタル・スタジオの壁に壁かけ用のハンガーを設置する事はできない。……折り畳んで運べ、V字等変形ギターにも対応するスタンドの入手は、V字ギター保有者にとってギターを手に入れるのとセットで考えるべき重要事項なのである。

 だが、いざスタンドを探し始めると、意外にもそういった変形ギターを安心して置いておける商品が少ない事にも気付かされる。やはり、Vギターを使う者は少数派でしかないのか……と、やや寂しい気持ちを抑えつつ、Vオーナー御用達の代表的スタンドを一つここで紹介しておこう。

HERCULES [GS412B/GS422B/GS432B]

 このスタンドは、一点式のバック・レストでギターを背後から支える仕組みの傾斜タイプで、レスト位置もかなり自由に上下できる上、ネック・グリップ部が自重でロックされるAGS(オート・グラブ・システム)もかなり便利という優れもの。折り畳めて、スタジオにも持っていける。ただし、レスト・ヘッドやネック・グリップの接触部に使用される特殊ゴムはラッカー塗装には対応していないので、高級な塗装を施されたギターを乗せる場合はゴム部を布で覆う等多少工夫して使う必要はある(当然、バック・レストのグリップ力は落ちるので使用時には注意が必要)。その点以外は、ほぼ完璧と言えるVギター用スタンドだ。

 楽器は装粧品ではないので多少の傷はやむを得ないにしても、無駄な損傷は誰もが遠慮したいはずだ。変形ギターに限らず、スタンドには値段を問わず良い物を使用したい。

 それでは、次回(10月8日/水曜日)の『Dr.Dの機材ラビリンス』もお楽しみに。

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製品情報

エレクトリック・ギター/Vタイプ

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プロフィール

今井 靖(いまい・やすし)
フリーライター。数々のスタジオや楽器店での勤務を経て、フロリダへ単身レコーディング・エンジニア修行を敢行。帰国後、ギター・システムの製作請負やスタジオ・プランナーとして従事する一方、自ら立ち上げた海外向けインディーズ・レーベルの代表に就任。上京後は、現場で培った楽器、機材全般の知識を生かして、プロ音楽ライターとして独立。徹底した現場主義、実践主義に基づいて書かれる文章の説得力は高い評価を受けている。

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