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  • 週刊ギブソン Weekly Gibson〜第26回

カスタム・モデルの仕掛人、エドウィン・ウィルソンが語る ギブソン・カスタムの最前線!

  • 取材:井戸沼尚也 通訳:ギブソン・ジャパン 翻訳:那波佳子 撮影:編集部 映像編集:熊谷和樹 取材協力:G-CLUB TOKYO

今週は、ギブソン・カスタムのヒストリック・プロダクト・マネージャーであるエドウィン・ウィルソン氏の最新インタビューをお届けします。話題の「ウィットフォード・バースト」の製作秘話から、コレクターズ・チョイス・シリーズの謎についてまで、開発のど真ん中にいるウィルソン氏にしか聞けない話が盛りだくさんです!

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Who is Edwin Wilson?

 エドウィン・ウィルソン氏はギブソン・カスタムのヒストリック・プロダクト・マネージャー、つまり開発の責任者です。週刊ギブソン読者の皆さんにはお馴染みのヒストリック・コレクション・シリーズ、そしてコレクターズ・チョイス・シリーズの企画から、木材の仕入れ、選定、カラーの製作等、非常に多くの部分に関わっています。材の仕入も彼の大切な仕事の一部で、月に二回は木材業者を訪れ、時には山に入って樹を切るところまで立ち会うとのことです。同氏は、年二回日本を訪れ、ディーラーへのトレーニング・クラスやギブソン・ファンに対するセミナーを開き、ギブソン・カスタム製品の普及にも尽力しています。今回、同タイミングで来日の氏に、ギブソン・カスタムの製品群について話をうかがいました。



ギブソン・カスタムの現在と未来

──ヒストリック・コレクション59リイシューは特に2013年以降、非常に音が良くなった印象です。

 それにはたくさんの理由があると思いますよ。2014年からは、指板をネックに接着するのにもニカワを使うようになりました。つまり、現在は指板とネック、ネックとボディ、どちらを接着するのにもニカワを使っています。だからよく鳴るようになったというのが一つ。もう一つの要因として、現在トップに使っている材の多くはハード・メイプル材ですが、バックにはそれとぴったりマッチする重量のマホガニー材を組み合わせているという点ですかね。

──59リイシューは毎年ブラッシュアップしていますが、今後さらに改善できる点はありますか?

 もちろん、今後改善していきたい点はあります。今ここで詳細に触れることはできないですが、かなり細かい点に取り組むべき課題はまだあると思っています。

──“取り組むべき課題”の一例だけでもお聞かせください。

 うーん……私はコレクターズ・チョイスというプロジェクトのリーダーでもあるのですが、オリジナル・ギターには個体差があるにも関わらず、ヒストリック・コレクションは平均値で製作してきました。このコレクターズ・チョイスでは、わずかな違いであってもできるだけ正確にそれを捉えて再現しようとしているので、スペックの面でもう少し突き詰める余地があると思います。例えばネックですが、よりオリジナルに近づけるにはどうしたら良いのか、そういったことをネックの製法自体から見直していくということです 。

──Collector's Choice #26 1959 Les Paul "Whitford 'Burst"について伺います。先日、私もこのギターを弾かせていただいたのですが、とにかく弾きやすく、音も抜群に良いと感じました。

 ええ、これはエアロスミスのギタリスト、ブラッド・ウィットフォードの59年製がモデルとなっています。コレクターズ・チョイス・シリーズでは、出来る限り細部まで情報を集めるために、いつも非常に細かな採寸の行程を踏んでいます。このウィットフォード・モデルでは、本人にナッシュビル・ファクトリーまで来てもらって、ギターのネックやトップに3Dレーザー・スキャンを施し、写真もたくさん撮り、採寸も細かくして、オリジナル・ギターから可能な限りの情報を集めました。こうすることで、見た目、フィーリング、サウンドのすべてにおいて実在器をしっかり再現できました。

──この再現モデルについて本人はどう感じているようでしたか?

 それはもう驚嘆していましたよ。それは、このプロジェクトに関わった人に共通して見られるリアクションではあります。彼の場合、さらに面白いのが、エアロスミスのリハーサルにこのギターを持ち込んで演奏したところ、他のメンバーに、いつも弾いているオリジナル・ギターよりこっちのギターの音の方がいいと言われた、と言うんです。そんな素晴らしい反応を得ることができました。

──このウィットフォードのオリジナル・モデルを選んだ理由は?

 このギターを所有している人、ブラッドの人柄もあります。エアロスミスの初期、ブラッドとは仕事上関係があったんですけど、当時はオリジナルの59レス・ポールを持っていて、それをよく弾いていたそうです。ある時、そのギターをなくしてしまい、少ししてからこのギター("Whitford 'Burst"のオリジナル)を手に入れました。新しく入手したギターのお陰で、自分がどれだけ以前のギターを愛していたか、どれだけいい音のするギターだったか、どれだけ弾き心地が良かったかを思い出したそうですね。それからというもの、その2台目の“59”は仕事用の1本として加えられるようになったとか。このエピソードは、ギターとアーティスト、双方にまつわるいい話だったので、このギターは再現しないといけないね、となりました。

──オリジナルのサウンドを解析する際、どんなアンプやペダルを通すのでしょうか?

 サウンドをチェックするときは、50Wのマーシャルを使います。サウンドの全容をつかむためにかなり弾き込み、ピックアップからもあらゆる情報を測定します。そのピックアップの特性として、平均値であるか、もしくは独特のサウンドなのか、その辺りの個性を見極める作業ですね。再現しようとしているギターのピックアップと同じ性能を持つピックアップが既製品であれば、新しい物は作りません。時々全く異なる個性を持ったピックアップを持つギターがあるので、そういう場合は新しく作る必要がありますね。

──ところで、コレクターズ・チョイスのナンバーはなぜ1番から順に増えていかないのですか?

 まずコレクターズ・チョイス1を製作して、その後に2をやって、3、4ときました。しかし5を飛ばしています。5に関しては企画として通っていたにも関わらず、そのギターに見合うトップ材の入手が困難なため、時間がかかるとなったわけです。一方でもっと実現しやすそうな企画がある場合は、先にそちらに着手しました。そうやって作業が止まるものもあるため、番号順にリリースできないのです。

──今回初露出となるトピックを一つ教えてください!

 OK、これはまだ誰にも言っていませんが、我々は今、歴史的に見て正確な1968レス・ポール・カスタムを作っているところです。ここまで徹底的な68カスタムの再現は今回が初めてですね。トップのカービング方法やルーティングのやり方、ネックのプロファイル寸法、そしてピックアップまで新調しました。68のオリジナル・ギターを数本ショップに持ち込んでみると、その仕様には2種類あることがわかりました。一つは生産開始から50本以内に作られたと思われる本当に初期のもの、もう一つは後期のもの。比較してみると全く違いましたね。今回は初期のモデルを参考にすることにしました。ピックアップの出力を測ってみたら、今までのどの製品とも似つかなかったので、新製品の68カスタム用のピックアップを新しく作ったわけです。そのピックアップにはまだ名前は付いていませんが、呼んでいるうちに自然とそれが名前になると思います。

──ありがとうございました!


厳選! レス・ポール・コレクション

 ここではエドウィン・ウィルソン氏のインタビューにも出てきたギブソン・カスタムの製品や、これから発表される新製品の情報をお届けします。

Historic Collection 1959 Les Paul Reissue “Hand Select”

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 毎年マイナーチェンジを重ねながら、その精度を高めていっているヒストリック・コレクション。2014年モデルは、2013年の仕様変更(ニカワによるネック接着、トラスロッドの見直し等)を踏襲しつつ、さらに一歩前進し、指板の接着もニカワで行うようになりました。これによってヒスコレ史上最高とも言えるボディとネックの鳴りを実現し、これまで以上にオリジナルのバースト・サウンドに近づいています。その中でも、“ハンド・セレクト”と名付けられたシステムで制作されたギターは、トップ材の美しさが特筆モノです。それもそのはず、ただでさえ選び抜かれた59 Reissue用の材の中から、日本のショップ担当者がナッシュビルまで出向いて1枚1枚手に取りながら厳選した材だけを使用しているのです。極上のサウンドとルックスを兼ね備えた、究極のレス・ポール。それがHistoric Collection 1959 Les Paul Reissue "Hand Select"なのです。これまでに、週刊ギブソンでは何度か"Hand Select"の動画を取り上げています。そのサウンドをぜひ、改めてチェックしてみて下さい。 [この商品をデジマートで探す]

Collector's Choice #26 1959 Les Paul “Whitford 'Burst”

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 エアロスミスのブラッド・ウィットフォード所有器を再現したモデルで、詳細は週刊ギブソン第25回に譲りますが、レモンドロップ系の色味、サウンド、弾きやすさ等、レス・ポールの最高峰となる1本であることは間違いありません。なお、そのサウンドをハイレゾ録音でより鮮明に記録した音源をダウンロードできる特別企画・第9回『ハイレゾ入門』も絶賛公開中です! この機会に、ぜひ"Whitford 'Burst"の真の実力を、感じ取ってください。 [この商品をデジマートで探す]

■Specification
Body Top:Unique Figured Maple
Back:Genuine Mahogany
Neck:Mahogany Neck/Maple Spline
Fingerboard:1-Piece Indian Rosewood
Tuners:Reissue Kluson Deluxe Green Key
Tailpiece&Bridge:Aluminum Stop Bar、ABR
Pickup:Neck /Custom Bucker、Bridge /Custom Bucker
Finish:Whitford Sunburst

Robby Krieger 1954 Les Paul Custom

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 ドアーズのギタリストであるロビー・クリーガーが所有する54年製レス・ポール・カスタムを、ギブソン・カスタムが限定300本(上限)で再現しました。54年製の復元ということで、本器のボディは1ピースのマホガニーです。フロント・ピックアップには本来“アルニコⅤ”ピックアップが搭載されていますが、本器はロビー・クリーガーが施した改造と同様に、セイモア・ダンカン製のミニ・ハムバッカーが搭載されています。リアにはお馴染みのP-90を搭載し、クラシックなギブソン・トーンを楽しめます。 [この商品をデジマートで探す]

■Specification
Body Top:Lightweight Mahogany
Back:Lightweight Mahogany
Neck:1Piece Genuine Mahogany
Finger Boad:Ebony
Tuners:Gold Plated Waffle Back
Tailpiece&Bridge:Aluminum Stop Bar(Gold)、GOTOH Tune-O-Matic with Double Thumbwheels
PU:Neck/Seymour Duncan Mini SM1N、Bridge/P-90
Finish:Lamp Black

Collector's Choice #14 1960 Les Paul “Waddy Wachtel”

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 コレクターズ・チョイスの最新版である#14は、ビグスビー搭載の見た目が強烈な印象を残すワディ・ワクテルの所有器を再現したモデルです。ワディ・ワクテルは70年代からアメリカの音楽シーンの最前線にいたセッション系ギタリスト/プロデューサーで、リンダ・ロンシュタットのレコーディングやキース・リチャーズのバンド『エクスペンシヴ・ワイノーズ』のメンバーとして知られています。日本での知名度はそれ程高くはありませんが、キースが「趣味のいい魅力的なギタリスト。超音波だって聴き分けそうな尋常じゃない耳の持ち主」と述べるほど、海外での評価は高いプレイヤーです。オリジナル器は1960年製です。チェリーの色味が強く残る個体が多い60年製にしては珍しく、レモンドロップ系に退色したカラーを“Wachtel Burst”として再現。ビグスビーのテイルピース、シャーラー製ペグが独特の雰囲気を醸し出す1本です。 [この商品をデジマートで探す]

■Specification
Body Top:Lightly Figured Maple
Back:1Piece Genuine Mahogany
Neck:1Piece Genuine Mahogany
Finger Boad:Rosewood(Hide Glue Fit)
Tuners:Schaller
Tailpiece&Bridge:Nickel Plated Bigsby Vibrato & Chrome TOM
PU:Custombucker×2
Finish:Aged ,Wachtel Sunburst Aniline Dye Back & Sides


※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは11月21日(金)を予定。

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