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  • ビンテージ・エフェクター・ファイル Vol.13

濁りの少ない深い歪みと絶品の甘いトーンを持ったレアなジャパニーズ・ファズ

MIRANO / Exciting Fuzz EF-1

  • 文:西岡利浩
  • 写真・動画撮影:雨宮透貴

歪み系エフェクトを数多く紹介しているビンテージ・エフェクター・ファイル。今回は第5回の“Roland AF-100 BeeBaa”以来となるジャパニーズ・ファズ、“MIRANO Exciting Fuzz”を取り上げてみた。非常にレアな個体で、初めてその存在を知る方もいるかもしれないが、深く太い歪みと伸び、絶品の甘いトーンを持った非常に興味深い個体である。

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MIRANO Exciting Fuzz〜その成り立ち

 “MIRANO”は60年代中盤から後半にかけて日本全国を駆け巡ったGSブームの頃に、テープエコーで有名なブランドでした。製造していたのは片山電子楽器という会社です。今回紹介するExciting FuzzはそのGSブームの少し後になる70年代初頭に登場しました。定価は¥9800。エフェクターとしては平均的な価格でしたが、当時の若者にとってはとても高価に感じたようです。ちなみに同じ頃のElectro-Harmonixのパワー・ブースターは¥3800でした。昭和40年代中頃の事です。

 Exciting Fuzzを含め、当時の国産ファズの多くは海外製のファズ、特にElectro-Harmonix社のBIG MUFFを基本に設計されている物がほとんどでした。まだまだ著作権があいまいな時代だったこともあり(電子楽器の商業規模は家電に比べごく小規模)、デッド・コピーも氾濫しました。しかし、当時の米国産のトランジスタと日本製のトランジスタは規格が違ったりすることもあり、仮に回路が全く同じであっても、代用部品などを使用することになるため確実に音が目指すところとズレて行きました。そういう経緯で、各社のファズに音の違いが存在したのです。また、もともとある物を有益変更していくのが得意な日本メーカーは、そのころから独自の進化を加速させていくことにもなりました。

 Exciting FuzzのサウンドにはFUZZ FACE的な“ビリッビリッ・ビャー”のエッセンスは全くありません。方向的には完全にBIG MUFFをお手本にしているでしょう。しかしながら、そのサウンドはBIG MUFFのダーティーな感じや、コード・トーンが団子になってしまうことも無い、非常に伸びやか且つ深い歪みが印象的です。

Exciting Fuzz〜そのメカニズム

 サウンド的にはBIG MUFFをお手本にしているであろうExciting Fuzzですが、外観/筐体に関してはMaestro社のFuzz-Toneを参考にしてる面も感じられます。特にツマミとフット・スイッチの取り付け位置です。更に、筐体の形状は国産ファズの先駆者的モデルのHONEY(ハニー)の流れがハッキリと見てとれます。色々ミックスすることにより独自の進化を遂げて行ったようです。筐体の裏側は電池交換用のパネルも付いており、わざわざ裏ブタの全てを開ける必要がありません。また、内部には電池ホルダーも取り付けられているのでガタつく心配もありません。非常にユーザーの側に立った筐体設計になっています。

 動画を参考にして頂ければ、非常に理解しやすいと思いますが、どのツマミもとても美しくサウンドが可変していきます。可変抵抗器には100kΩというボリュームの王道値を使用しているからでしょうか。ただ、カーブに関してはSUSTAINとVOLUMEはAカーブの“100kΩ A”を使用していますが、TONEのみBカーブの“100kΩ B”を使用しています。古い国産ファズはトーンAとトーンBを選択できるモデルが多数存在しましたが、Exciting Fuzzにはサウンド・カラーを変更するスイッチがありません。それでも大きな可変率のサウンド・カラーを得られるのは、この100kΩ Bの可変抵抗器のおかげかもしれませんね。

Exciting Fuzz

Exciting Fuzz(底面)

Exciting Fuzz(右側面)

Exciting Fuzz(左側面)

Exciting Fuzz(上面)

Exciting Fuzz(下面)

Exciting Fuzz〜サウンド・インプレッション

 非常に強い歪みを発生しているにもかかわらず濁りの少ない、それでいて十分な太さを得る事の出来るExciting Fuzz。これぞ“JAPAN FUZZ”なサウンドです。海外製のファズや国産のハニーやシンエイのファズも参考にしていたでしょう。そのサウンドを作り上げる回路にはICは一切使われていません。しかし、現代ではもう使われることのないCANパッケージのトランジスタが4つ使用されています。この感慨深いサウンドの要は間違いなくこれらのトランジスタによるものと思われます。伸びのある甘いトーンは絶品です。また、素晴らしい守備範囲を見せるのが、真ん中に位置する“TONE”ツマミです。目盛りの両サイドに“5”と表記のあることから、センターがフラットという考え方でいいでしょう。左に回すとトレブル・ブースト、右に回すとベース・ブーストとなりますが、これでもかと言わんばかりの音の可変率に感動します。

 Exciting Fuzzはもちろんファズですが、サウンドの傾向としてはその後登場する事となるディストーションの原型に成り得るサウンドです。まだチューブ・アンプが少なかった時代には重宝した歪みでしょう。一般的なファズはコードを弾く事にはあまり向いていなかったようですが、Exciting Fuzzはコード弾きにもリードにもマッチしているサウンドです。もしこのまま現代に再登場するときっと人気が出るでしょう。“太い・伸びる・甘い”。ファズは苦手という方にも是非、機会があれば試してみて欲しい1台です。

試奏に関して

サウンドの特色を分かりやすくお伝えするため、ハムバッキング・ピックアップのギターと、真空管アンプの代表的なモデルを使用した。

・ギター:レス・ポール・タイプ
・アンプ:マーシャルJCM2000

動画ではマーシャルをクリーン→クランチにセッティングし、試奏を行なった。

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MIRANO / Exciting Fuzz EF-1

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