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  • ビンテージ・エフェクター・ファイル Vol.15

一挙6モデル試奏! ビンテージ・ファズの代名詞“BIG MUFF”

Electro-Harmonix / BIG MUFF

  • 文:西岡利浩
  • 写真・動画撮影:雨宮透貴

ビンテージ・エフェクターの歪みものといえば、オーバードライブでもディストーションでもなく、“ファズ”を思い浮かべる方が多いのではないだろうか。2015年一発目の当コーナーでは、FUZZ FACEと並び現在も高い人気を誇るBIG MUFFを取り上げてみた。極初期の“Triangle”から現行モデルまで全6機種の特集である。一時期はロシア生産になるなどさまざまな変遷を経ながら現在もリリースされているロングセラーは、爆弾のようなサウンドで多くのギタリストを虜にしてきたまさにファズの名機といえるだろう。モデルごとのサウンドの変遷、同時に変わらぬBIG MUFFトーンの両方をたっぷりと味わって欲しい。

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BIG MUFF〜その成り立ち


 BIG MUFF──さまざまな局面を迎えながらも、長きに渡り進化や変化を遂げつつリリースされ続けているエフェクター。世界レベルで愛用者の多いアメリカン・ファズ。大柄な筐体と爆弾のようなサウンドを持つファズは、1960年代後半にアメリカはニューヨークにて産声を上げました。ブリティッシュ・ファズとは異なる轟音のようなジャリジャリとした分厚い歪み。これでもかというほどの音の可変率。どれをとってもいまだに規格外のスケールの大さを感じます。それでは、リリースされた時期の順を追ってそのサウンドと特徴に迫っていきましょう!

BIG MUFF〜初期3モデル

BIG MUFF “Triangle”

Electro-Harmonix / BIG MUFF “Triangle”

BIG MUFF “Triangle”

BIG MUFF “Triangle”(底面)

BIG MUFF “Triangle”(側面)

BIG MUFF “Triangle”(上面)

BIG MUFF “Triangle”(下面)

 通称“Triangle”と呼ばれる60年代後半の最初期モデルです。おおらかな時代背景を物語っているのか、ツマミのゼロの位置が各ノブでバラバラという、現代では考えられない位置に取り付けられているのが印象的です。しかもポットのシャフトが異常に長く、筐体からツマミがかなり浮いたポジションでの操作になります。たまたま入手できた部品がこの長さだったのか? カットをすると問題があったのか? ここにまたビンテージ・エフェクターのロマンを感じますね。ルックスは楽器というより電化製品という印象が強いでしょうか。まだまだ世間にこの手の道具が少ない時代、必要な操作ができる事を優先したらこんな感じになったのかもしれません。

 エフェクターとしてのサウンド作りの肝が完全にTONEに依っているのがこのモデルの特徴です。TONEの位置がセンターで非常に心地よいサウンドを引き出せるため、どうやら設計者の意図でここを中心に個々のサウンド・メイクが出来るように、お勧めサウンドがこのセンター位置に設定されているようです。TONEツマミの動きですが、12時より左に回すと高域が強調されていきます。動画を参考にしていただければ解りやすいと思いますが、“ギャァーー”っとギラギラしたサウンドを出力します。また、反対にツマミをセンターから右に回すほど低域が太くなりつつファズ特有の潰れた感じに変化していくのが特徴です。

 また、VOLUMEの可変は非常にスムースに上がっていくのが扱いやすいポイントでもあります。古いエフェクターには可変率が急激に変わるモデルも多くありますので、その点では非常に優秀です。VOLUMEを上げることによりトーンもやや変化を起こすので、ハウリングを起こさない程度に設定すると良いでしょう。音作りの基本としてはSUSTAINを上げた状態でボリュームを設定し、TONEで好みの音色を探すというのが良いでしょう。

 電源のON/OFFは筐体左上部のスライド・スイッチにて行います。プラグを抜いていてもこのスイッチがONになっていれば電池を消耗しますのでご注意を。
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BIG MUFF “Ramb's Head”

Electro-Harmonix / BIG MUFF “Ramb's Head”

BIG MUFF “Ramb's Head”

BIG MUFF “Ramb's Head”(底面)

BIG MUFF “Ramb's Head”(側面)

BIG MUFF “Ramb's Head”(上面)

BIG MUFF “Ramb's Head”(下面)

 “Ramb's Head(ラムズ・ヘッド)”と呼ばれる2ndバージョン。全体的な特徴として、ファズ特有の“ブチッブチッ”とした成分がかなり多くなっています。Triangleに比べると、SUSTAINの可変についてはツマミの動きに素直に追従します。トーンの動きは12時より左で高域、右で低域とお約束の動きを踏襲しています。音量の出力レベルはとても高くパンチの効いた設計になっています。裏技的な使用法はTONEを上げてSUSTAINを落とし目に設定し、VOLUMEを上げた状態にするとブースターとしても十分な威力を発揮します。ON/OFFスイッチは入出力ジャックの面に移行されており、これは演奏中の誤動作を避けるための変更と推測されます。

 Ramb's Headの俗称の由来は、創設者をモチーフにした筐体右下のイラストが“羊毛のような髪型”であることからだそうです。
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BIG MUFF “3rd Version”

Electro-Harmonix / BIG MUFF “3rd Version”

BIG MUFF “3rd Version”

BIG MUFF “3rd Version”(底面)

BIG MUFF “3rd Version”(側面)

BIG MUFF “3rd Version”(上面)

BIG MUFF “3rd Version”(下面)

 これぞBIG MUFFというサウンドの特徴をしっかり守っているのが印象的なモデルです。ルックスもまさにBIG MUFF!な感じですね。世界的にもこのデザインが最もよく知られているでしょう。音色面ですが、TriangleとRamb's Headに比べると全体的に音がやや明るめに設計されているところが、特徴を守りつつ変化を起こしているポイントです。また、ボリュームのパワー感も非常に高いのでハウリングのポイントに到達するのもその分低い設定から始まりやすくなるので、サウンド・メイクの参考にしてください。

 全領域で扱いやすいサウンドを探したところ、全てのツマミ位置がセンターになりました。ここから推測されるのは、設計者の意図として、全てをセンターにセットしてから音作りを始めれば、お気に入りの出音を短時間で導けるというメッセージです。ユーザー思いの心遣いを感じる設計ですね。プレイヤーそれぞれのギターの出音の違いを補正するのにも非常に有効な扱いやすさを感じます。

 このモデルの最も大きな変更点としては、それまでのモデルとは異なり、TONEツマミの動作が変わったところです。“左に回せば低域強調”、“右に回せば高域強調”と、よりリニアな直感的な操作を可能にしました。常にプレイヤー側に立っての設計陣の思いが伝わります。電源のON/OFFは引き続きスライド・スイッチで行いますが、このモデルからACアダプターの使用が可能になります。
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BIG MUFF〜SOVTEC期2モデルをチェック

BIG MUFF “Civil War”

Electro-Harmonix(SOVTEK) / BIG MUFF “Civi lWar”

BIG MUFF “Civi lWar”

BIG MUFF “Civi lWar”(底面)

BIG MUFF “Civi lWar”(側面)

BIG MUFF “Civi lWar”(上面)

BIG MUFF “Civi lWar”(下面)

 製造元のElectro-Harmonix社の倒産から数年後、エレハモ創設者がロシアで新たなブランド“SOVTEK”を立ち上げ、BIG MUFFが再び帰ってくる事になります。あまり目にすることの多くないこのモデルは“Civil War”と呼ばれています。この頃になるとBIG MUFFならではのグシュッとしたファズ感が少なくなり、現代的な歪みサウンドに移行します。いわゆるファズならではのサウンドより、発売当時の90年代初頭の歪みサウンドにマッチした方向といえるでしょう。ツマミの表記がSUSTAINからDISTORTIONに変更されている点がそれを物語っているもしれません。それまでの特徴的なトーンの動きは、低域から高域まで、かなりの広範囲をカバーしている事でしたが、時代背景として、“不必要”と思われる超高域や超低域を排除し、ツマミをどこに持っていっても対応力の高いトーン幅に変更されています。

 しかし、その広範な守備力は一貫してBIG MUFFを貫いています。「どうだい? これ1台でこれだけ色んな音が出るんだぜ!」とエフェクターが語っているような気さえします。ルックスもがらりと変更され、頑丈なイメージが強くなりました。フット・スイッチのサイズも大柄になりそのイメージをより強調しています。ON/OFFを視覚的に判断するLEDも搭載されているのも嬉しい変更点です。

 この後の90年代中盤頃からArmy Greenのモデルにお色替えを果たしますが、その頑丈・強靭なイメージはさらに加速し、もう戦車のような印象を与えてくれるほどでした。
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BIG MUFF “Army Black”

Electro-Harmonix(SOVTEK) / BIG MUFF “Army Black”

BIG MUFF “Army Black”

BIG MUFF “Army Black”(底面)

BIG MUFF “Army Black”(側面)

BIG MUFF “Army Black”(上面)

BIG MUFF “Army Black”(下面)

 90年代後半のSOVTEK時代、先程触れたArmy Greenモデルの次にリリースされたのがこの黒い筐体のモデルです。一般的な呼称はないようですので、ここでは“Army Black”と呼ぶことにいたします。

 この頃になると、一般的に言うディストーションにカテゴライズされるようなサウンドに設計変更されていきます。JCなどでもハードロックやヘヴィ・メタルのサウンドが作れるほどの歪みサウンドとなり、その質はいわゆるファズとは異なる位置付けとなります。しかし、ツマミの名称はDISTORTIONから再びSUSTAINに変更されています。その他、変更点として大きいのは、ロシア製以前のBIG MUFFの一貫した特徴であった"高出力"もやや控え目となり、ON/OFFでほぼ同等なるレベルがそれまでの10時くらいから12時程度に抑えられました。しかし一貫して言えるのはTONEの振り幅の広さでしょう。ただ、残念なのはジャックの取り付け位置です。右がOUTで左がINとなります。一体何故? ボードに入れにくいのは一目瞭然なんですけど……。

 また、ロシア産となってからの特徴として、化粧箱が上げられます。一般的にエフェクターの化粧箱は紙製の箱が圧倒的多数ですが、はるばるロシアから上陸してきたこれらのツワモノどもは、なんと木製の箱に入ってやってきましたわけです。痺れますね。
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BIG MUFF 〜現行モデルをチェック

BIG MUFF “Current Version”

Electro-Harmonix / BIG MUFF “Current Version”

BIG MUFF “Current Version”

BIG MUFF “Current Version”(底面)

BIG MUFF “Current Version”(側面)

BIG MUFF “Current Version”(上面)

BIG MUFF “Current Version”(下面)

 “あの”BIG MUFFが帰ってきたといっても過言ではないルックスでリリースされた現行モデル。ひょっとするとBIG MUFFシリーズで一番かっこいいかもしれません(笑)。よく似た3rd Versionとの最も簡単な識別方法は、LEDが配置されている部分でしょうか? ジャック面のスライド・スイッチもチェック・ポイントですね。

 印象としては、低域がブーミーになりがちな古株達のサウンドから、いい感じに低域が削られているような印象があります。あくまでも個人的な聴感上の感覚ですが、“丁度いい感じ”です。アウトプット・ボリュームも若干控えめになっています。また、最も進化を感じる点はSUSTAINのレベルの可変が物凄く美しくなったところでしょう。ツマミを回した分だけ変化を感じます。更に使い勝手が良くなりました。
※製品提供:イケベ楽器店 リボレ秋葉原店
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試奏を終えて:BIG MUFF~そのサウンドの特徴と変遷

 BIG MUFFをはじめとしたエレハモ・エフェクターの最大の特徴は、1台での音の守備範囲の広さでしょう。最近では細かいニュアンスを設定しやすいように、1つのツマミの可変率が少ないものが多くリリースされていますが、これだけガラッと変化するのはエレハモの潔くも素敵なサウンドポリシーかもしれません。

 歴代のBIG MUFFシリーズを同じ環境で演奏してみて理解できた事ですが、確実にそれぞれのモデルに“音の違い”を感じました。過去にとらわれず着実に進化を遂げる。それぞれのモデルに顔がある。そういった印象でしょうか。また、BIG MUFFのサウンドの変化はロック・ギター・サウンドの進化ともシンクロしているようなイメージも感じました。それぞれのモデルがリリースされた時期のレコードやCDで聴けるの代表的なアルバムのギター・サウンドを思い出してみてください。見事なまでに時代に追従してる感じがするのは筆者だけでしょうか? 少し大げさかもしれませんが、世界の歪みサウンドはBIG MUFFの進化の後に生まれたかもしれません。

 あなたにとってどのモデルがマッチするでしょうか? 動画を参考に是非検討してください。

試奏に関して

サウンドの特色を分かりやすくお伝えするため、ハムバッキング・ピックアップのギター、真空管アンプの代表的なモデルを使用した。

・ギター:レス・ポール・タイプ
・アンプ:マーシャルJCM2000

動画ではマーシャルをクリーンにセッティングし、試奏を行なった。

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