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  • 用途に合わせて使い分け! 珠玉のプロビデンス・シールドを徹底チェック!

梶原順 meets Providence Cables

Providence / Guitar/Bass Cable

  • 取材・文:山本彦太郎 撮影:菊地英二(製品写真を除く) 動画撮影&編集:森田良紀 データ解析・解説:長谷鉄弘

デジマート・マガジンではこれまで、プロビデンスが展開するエフェクター/プログラマブル・スイッチャー/ギターと紹介してきたが、ここでは同ブランドを語るうえでは欠かせないギター・ケーブルを改めて紹介しよう。プロビデンスでは、ケーブル部はもちろんのこと、プラグまで自社設計するなど並々ならぬこだわりを持って製作されているのは周知のとおり。今回は、リットーミュージック刊『ギタリストとベーシストのためのシールド・ケーブル・パーフェクト・ガイド』にて64種ものケーブルと向き合った練達のセッションマン梶原順氏に、主要6本のシールドを徹底的にチェックしていただいた。なお波形データは、映像前半の同一フレーズで各ケーブルを試奏した際の音源を解析したものである。

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S101 model “Studiowizard”

価格:7,700円(※記載価格は税抜、すべてS/Lプラグ/5.0m仕様のものです。プラグの種類や形状、ケーブルの長さ[1.0m〜10.0m]により価格は変動します)

S101

【S101】およそ110〜300Hzという幅広い帯域における比較的フラットな特性と、ギターの2〜3倍音が豊富に含まれるおよそ2.3〜4kHz付近の再現に優れる点が印象的。ピーク・カーブでは、8kHzより上のハイも伸びやかに出力されている。※緑のラインはピークを、紫のゾーンは平均値を表す(以下同)。

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 同社シールドのフラッグシップであるプレミアム・リンク・シリーズの1本。OFC(無酸素銅)0.08mm×100本の芯線とそれを囲むインシュレーターに、軽量かつ柔軟性のある新素材NAPエラストマーを用いることにより、音抜けやツブ立ちに関係する倍音までカバーしたワイド・レンジが特徴だ。“Studiowizard”という通称通り、シールドを長く引き回すことも多いスタジオ録音時や、エフェクターの多用時に真価を発揮してくれる。プラグは24金メッキ一体タイプ。

梶原's Voice ──「シールドのレンジ感を生かすなら、ライン録りのほうが向いているかな」

 音の立ち上がりの良さ、弾いた瞬間に音になるっていうところがまず印象に残りました。それからレンジの広さ。ただ、上から下までフラットに広いというより、ギターとしてオイシイ部分が強調されたうえでのワイド・レンジだと思います。このシールドのレンジ感を生かすなら、再生周波数に限界があるアンプ録りよりライン録りのほうが向いているかな。あと、セミアコのように実はワイド・レンジなギターとの組み合わせも良さそうですね。

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Z102 model “Livewizard”

価格:7,700円

Z102

【Z102】ギターのハーモニックスを豊富に含む3〜4kHz間のレベルがひと際高い。ピーク・カーブでは8kHzより上のハイも伸びやかに再現されており、この特性が“アンサンブルに埋もれない音抜けの良さ”を実現していると思われる。

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 S101同様プレミアム・リンク・シリーズの1本で、こちらは“Livewizard”の名が付けられた、ライブでの使用を念頭に開発されたモデルだ。構造的には、錫メッキ加工を施したOFC0.18mmを7本と、1本あたりがS101の約2倍の太さを持った芯線が特徴で、この特性を生かすためにインシュレーターのNAPエラストマーBKも新たに開発している。高域が生きるため、クリーン・サウンドはもちろん、歪みでもツブ立ちの良さと抜けを確保してくれる。プラグは24金メッキ一体タイプ。

梶原's Voice ──「音が前に出てくる元気な感じ。ボリュームが一段階上がったような印象」

 音が前に出てくるような元気な感じで、ボリュームが一段階上がったような印象がありました。それは高域がきれいに伸びているからなんですが、ギラギラしたピークは感じない。ラインナップの中で、一番わかりやすく“あっ良くなった!”って実感できるシールドだと思います。EQで処理したのとは違うアタック感とスピードの速さがあるので音の抜けも良いですし、軽い歪みをストラトのフロントで弾いてみても音が潜らなかったですね。

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F201 model “Fatman”

価格:5,500円

F201

【F201】およそ110〜800Hzという、ギターの基音をほぼカバーする帯域での比較的フラットな(レベルの谷間が少ない)特性が印象的。ギターのハーモニックスが豊富に含まれる2kHzより上のハイ・ミッドも減衰の様子がスムーズだ。

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 看板シリーズであるプラチナム・リンクに属するケーブルで、“Fatman”の通称の通り、ナチュラルさとファットさを打ち出したモデル。OFC0.08mmの銅線を150本も束ねた芯線はラインナップ中随一の太さで、ギターの旨味である中低域をしっかり再生してくれる。他のモデルと同様に超過密編組のシールド線と、カーボンを含んだ導電ビニールで電磁ノイズ対策も申し分なし。プラグはケーブルの持つサウンドと良好なマッチングを誇る、24金メッキ一体タイプを使用。

梶原's Voice ──「重心が少し下にあるような印象。落ち着いたポップスやAORなどに特に合う」

 ファットさというより、落ち着いたサウンド。重心が少し下にあるような印象を受けました。ただハイ・レンジもしっかりあるので、ボテッとしたりもたつくわけではないです。Z102は上が伸びて下がフラットだとすると、これは下が伸びて上はフラットという感じですね。枯れたギターならその枯れた感じを、アクティブならツヤやかさを保ったまま重心を落としてくれる感じなので、落ち着いたポップスやAORなどには特に合うと思います。

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B202 model “Bottomfreq'er”

価格:5,500円

B202

【B202】60〜160Hz付近の盛り上がりを始め、4弦エレクトリック・ベースの基音に相当するロー〜ロー・ミッドが充実している印象。一方、約7kHzより上のハイ・ミッド〜ハイはすっきりしたカーブを描いて減衰している。

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 基本的にプロビデンスのシールドはギター/ベース兼用だが、その中で特にベース向きと謳われているのが、“Bottomfreq'er”の通称を持つ本モデルだ。芯線は、OFC0.08mm×50本の組み合わせで、中低域から低域の存在感はバツグン。7弦ギターやダウン・チューニング時にしっかりしたロー感を出してくれるのはもちろんだが、レンジ自体は広いのでエレアコや箱ものギターなどでも重宝するだろう。24金メッキ一体型のプラグを採用。

梶原's Voice ──「シールドを替えるだけでここまで変わる、というのが一番実感できました」

 ローがグッと来ますね。シールドを替えるだけでここまで変わるというのが一番実感できましたし、正直ビックリしました。例えばロックの歪みでも、やはりしっかりしたボトムが大切。そういう意味で、低音弦リフ中心の音楽や7弦ギターを弾く人には強い武器になりますよ。それと、シングルコイルでも重心が下がる感じがあるので、フロントでトーンを少し絞れば、ジャズ・トーンの箱鳴り的なイメージも出せると思います。

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E205 model “'59ers”

価格:5,500円

E205

【E205】ギターの4弦開放に近い140Hz周辺が余すところなく再現されている印象。ギターにおける最高音部の2〜3倍音に近いおよそ2.3〜3.5kHz、ハイに当たる10kHz以上の再現にも優れる。

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 マイケル・ランドウも愛用しているE205 model“ '59ers”は、名前からも想像できる通り、枯れたサウンドとピッキング・ニュアンスの忠実な再生を狙って開発されたモデル。芯線は他モデルと比べてやや太めのOFC0.12mmを16本用い、全体的にフラットな周波数特性を持っているが、歯切れや抜けに関わる中高域もしっかり生きるため、リズムでもリードでもバランスの良いサウンドを生み出してくれる。プラグは、ケーブルとのマッチングが最適なニッケル・メッキ一体タイプ。

梶原's Voice ──「僕も使っている大好きなシールド。フレーズがどんどん湧き出してくる」

 これは実際僕も使っている大好きなシールドです。周波数特性的にはすごくフラットなんですけど、ピッキングの強弱と出てくる音の変化がすごく気持ちとマッチしていて、それを楽しみたくなるからフレーズがどんどん湧き出してくる。それって結局、響きを楽しんでいるということで、とても音楽的ですよね。音量も抑え目だし地味に聴こえるかもしれませんが、これは実際に、しかもそれなりの時間試してもらいたいシールドです。

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H207 model “Heartbreaker”

価格:5,500円

H207

【H207】全体に目立つ谷間が少ない点はF201とよく似ているが、ハイ・ミッド〜ハイに当たる約7.0〜10kHz周辺がより伸びやかに出ている。それより上の帯域はごく自然なカーブを描いて減衰している。

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 パッチ・ケーブルの定番P203を、通常サイズでも使いたいというラリー・カールトンからの要望を受けて開発されたH207。基本構造はP203と同様で、インシュレーターもNAPエラストマーと特殊ポリエチレンのハイブリッド構造を採用している。一点、長さの変更に合わせて、より低音が出るようにジャケットを紫から黒に変更。同社のこだわりが見て取れる部分だ。パッチ・ケーブルから発展したため柔軟性も高く、取り回しも良い。24金メッキ一体型のプラグを採用。

梶原's Voice ──「楽器やエフェクターの特性をそのまま生かしたい人には合っている」

 これは周波数的に特徴がないというのが、特徴ですね。パッチ・ケーブルから発展しただけあってすごくフラットですし、シールドとしてのキャラクターは強くないかもしれません。逆に、シールドで変化させたくない人、楽器自体やエフェクターなどの特性をそのまま生かしたい人には合っていると思います。自分の楽器や機材のニュートラルなサウンド、ゼロ地点を知るのは大事ですし、それを知ることができるシールドですね。

Interview 梶原順が語るギター・シールドの奥深さ

───今回はプロビデンスの6種類のシールドを試奏してもらいましたが、まず梶原さんのシールド観について教えてもらえますか?

シールドに求めるものは、やはり良い音色でしょう。一時、20年ぐらい前はシールドはもちろん電源まわりなどにも凝りまして、それこそメーカーの試作品まで手に入れて試したりもしていましたね。とはいえ、では良い音色とは何かと考えると、周波数特性的なものと、演奏者の弾き心地的なものとは、若干違うんじゃないかと思うようになったんです。今はまず弾き心地が良く、そのうえで音色的に自分のフィーリングに合うものを使っています。

───では、今回試奏してみたプロビデンスのシールドはいかがでしたか?

シールドが、エレキ・ギターでサウンド・メイキングするにあたっての、重要な役者の1人になってきたと強く思いました。EQやアンプのトーンでは絞り込めない音作りに関わっていますし、レコーディングの現場でも、音楽に合わせてどのシールドを選ぶか?っていうのをさらに追求してみたくなりましたね。プロビデンスのシールドは、もちろん周波数的な特性を持たせているものも多かったのですが、それがあざとくないという点が印象的でした。もっと色を持たせることもできたはずですけど、やりすぎていない。扱いやすい範囲をすごく意識しているなと思いましたね。もちろん周波数的な特性だけでなく、E205のように音楽のできあがりにまで関わってくるものもあって、シールドってそこまで進化したんだなと思います。

───そのE205の試奏時に、“フレーズが湧いてくる”というコメントが出てきましたよね。シールドの試奏でそのような感想を初めて聞きましたが、音色はもちろん、弾き心地などにも影響してくる存在なんですね。

ええ。E205は15〜20分ぐらい試してもらいたいですね。サウンド・メイキングの一要素という点でのシールドはもちろん、弾き心地も変わるということは、特に若いプレイヤーにもっと知ってもらいたいです。それと、個人的には取材の休憩時間にプロビデンスの奥野(猛)さんが言っていた、“ケーブルで何かを加えたりはできないんです。ケーブルを通過した電気的情報は基本的には劣化していくのみですから”という言葉が気になりました。あの時は、“うん、考えてみればそれはそうだな……当たり前のことなのに案外気がつかないものだな……”と思った程度だったのですが、なんとなくそのことを頭に巡らせていたら、ハッと気がつきました。“あのケーブルを使うとあんな音になる、このケーブルだとこんな音になる”というのは、つまりは“どのように信号を劣化させた結果なのか?”ということだと。あえて劣化という言葉を使いますが、高音が持ち上がっていたり、低音が強調されているように聴こえていても、それはケーブルが何かを加えたのではなくて、そういう印象に聴こえる状態に音を劣化させたのだと気がつきましたね。

───確かに“劣化”というよりも、ケーブルそのもので音が変わるという印象を抱きがちですよね。

 E205を使うと気持ち良く演奏できる、というのは紛れもない僕の感想ですが、気持ち良く演奏できるような音に“劣化”させているという風に考えたことはなかったので、目から鱗が落ちたような感覚でした。このように考えることでさらに理解できたこともあって、例えば高級ケーブルと言われるもの──特に音の劣化を最小限に──という指向のものが必ずしも演奏しやすいわけではないんですよね。逆に、安価で明らかに悪い音に聴こえるものが、演奏すると意外にも違和感がなかったりする。ギター本体の音をそのままに出そうと考えれば、究極はギター本体とアンプを0cmで直結ということになりますが、それは果たして僕たちプレイヤーにとって心地よい音なのだろうか。最終的には、良い音楽を残す、そのために良いプレイができるようなシールドを使うという点が重要ですよね。好みやプレイ・スタイルによっては、必ずしも価格帯が絶対ではないと思いました。ギター用ケーブルの役割、良い音の定義について、今までとは違った観点から考察できてとても興味深かったです。

▶ギターとアンプは梶原が所有するT.M.PのSTタイプ、Egnater Renegadeヘッド/同キャビネットを使用。

ハンダ付け無用! 
ソルダーレス・ケーブルV206 modelの作り方

 梶原順氏によるプロビデンス・ハイエンド・ケーブル試奏に続いて、同社が誇る人気パッチ・ケーブルの新パッケージであり、誰でも手軽に高音質パッチ・ケーブルを製作できるソルダーレス・ケーブル&プラグ・セット、V206 modelをご紹介。まずはその作り方を、デジマート地下実験室・井戸沼室長にレクチャーしてもらおう。

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V206 model “Vital Link”

価格:8,700円(2.0m、S/Lセット ※定価はすべて税抜


 パッチ・ケーブルの定番として人気のP203は5cm刻みでラインナップしているが、エフェクターも多様化している昨今では、より柔軟なケーブリングを求めている人も多いだろう。そこで注目したいのが、必要な長さのパッチ・ケーブルを簡単作業で自作できるV206だ。作業工程は上記映像のとおりとてもシンプル。面倒かつ音質に関わるハンダ付け不要で、プロビデンス・グレードの高音質が得られるというスグレモノ。この構造を成立させているのが実用新案を取得したプラグ・キャップの2本のネジで、これにより接点不良やケーブルの抜けなどを防いでくれるわけだ。なお、セット販売のほか、3.0m、5.0mのケーブル、Sプラグ、Lプラグのバラ売りも用意されている。

●プラグ&ケーブルセット
V206 2.0m w/S x 8 set:¥7,900
V206 2.0m w/S x 4 + L x 4 set:¥8,700
V206 2.0m w/L x 8 set:¥9,500

●ケーブル単体
V206 3.0m Pack:¥1,800
V206 5.0m Pack:¥3,000

●プラグ単体
S Plug NP-20:¥900
L Plug NP-20L:¥1,100

V206のS/Lセット。

V206にはミニ・プラグもラインナップ予定(左/試作品)。右はSHORTプラグのP203 model "The Patch"。

ギター・マガジン2015年2月号、3月号のProvidence Cable記事も必読!

 リットーミュージック刊ギター・マガジン2015年2月号』ならびに2月13日発売予定の3月号でも、連載「プロビデンスの流儀」にて、同社製ケーブルの試奏記事やその哲学についてフォーカスしている。本特集と併せてチェックを!

定価:823円(本体762円+税)
仕様:A4変形版/210ページ
発売日:2015.01.13

ギター・マガジン 2015年2月号の内容・購入はこちら!

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製品情報

プロフィール

梶原 順
かじわら・じゅん。61年、茨城県出身。79年にプロ活動を開始し、渡辺貞夫Groupなどに参加したのち、99年にJ&Bを結成。角松敏生ほか数多くのミュージシャンの録音/ライプ・サポート・メンバーとしても活躍し、2011年に安達久美とのユニット=J&Kを立ち上げた。音楽講師として後進の育成にも力を入れるなど、多方面で精力的に活動している。なお、今回の試奏にはすべてS/Lプラグ、5メートル仕様のものを用意。ギターとアンプは梶原が所有するT.M.PのSTタイプ、Egnater Renegadeヘッド/同キャビネットを使用した。

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