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  • “高音質”で音楽を聴く楽しみを!ハイレゾ入門〜第13回

ネットワーク・オーディオの世界〜CDに代わるオーディオのスタンダードに?

  • 文:菊池 真平

すっかり春めいてきたこの時期、入学や就職など新生活を始める準備に忙しい方も多いと思います。そのような方は、なかなか新居でのリスニング環境まで考える余裕がないかもしれませんが、新たな生活に今よりも快適に音楽を聴ける環境があれば、新生活も一層楽しめるかもしれません。また、特にイベントがない方でも、音楽を聴く環境を一新し、春からの生活をスタートすることで、リフレッシュしたような気持ちで毎日に向き合えるかもしれないですね。近年では、ハイレゾ音源が脳をリラックスさせ、ポジティブな気持ちを生むといった研究結果も公表されています。それには個人差があると思いますが、好みの音質で毎日音楽を聴けると、それだけで生活が楽しくなりますね。今回はそんな新生活にお薦めしたい、CDプレーヤーに代わり次世代のオーディオのスタンダードになる可能性を秘めた“ネットワーク・オーディオ”をご紹介したいと思います。

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ネットワーク・オーディオとは?

 ネットワーク・オーディオとは、有線(主にLANケーブル)や無線(Wi-Fi等)などのネットワークを利用し、音楽再生を行なうオーディオ機器を指します。下の図を見て頂けると分かりやすいと思いますが、PC等でダウンロードした音源を、ネットワークに対応したハードディスクであるNAS(※下記に説明しています)に収録し、それをネットワーク(・オーディオ)・プレーヤーと呼ばれる機器で再生するのが一般的です。ネットワーク・オーディオのメリットとしては、音源の転送等にPCを使いますが、音源の再生はネットワーク・プレーヤー自体で行ないます。そのため、一度音源をNASに入れてしまえば、音源の再生のためにPCを立ち上げる必要がありません。一般的なCDプレーヤーと近い感覚で使え、さらに多くの曲を簡単に管理することもできるのです。もちろんCDを交換するという手間も省けますね。

 近年のネットワーク・プレーヤーは、PCM音源だけではなくDSDなどにも対応し、幅広いファイル形式を再生できます。また各社からネットワーク・プレーヤーをコントロールする専用のアプリもリリースされ、iPhoneなどのスマートフォンやiPadなどのタブレット、アンドロイド端末などでも、機器を簡単に操作することができます。さらにネットワーク上にあるNASへのアクセスは、同一の部屋でなくても可能(※有線/無線ネットワークで接続できることが条件)です。音源を収録したNASはリビングルーム、再生機器はベッドルームに置いて音楽を聴くといった使い方もできます。またひとつのNASを複数の再生機器で共有することもできます。

 ただしネットワーク・プレーヤーの多くは、DLNA(※Digital Living Network Allianceの略称で、異なったメーカーの機器家電等をホーム・ネットワークで結びつけ互換させる、ガイドラインです)というネットワークの規格に準拠しています。そのためDLNAのガイドラインから外れた製品との組み合わせでは使えないこともあります。また、ややネットワークの接続や初期設定で戸惑う方もいるかもしれませんが、各社の説明書をよく読み、ホームページ等で情報を取得して順序よく接続していけばクリアできると思います。

 現在ネットワーク・オーディオに必要なネットワーク・プレーヤーは、各社から数多く発売されています。基本的に音楽の再生には、別売りのプリメイン・アンプやスピーカーが必要ですが、アンプを内蔵したモデルやCDプレーヤーを内蔵したモデル、ネットワークが無くても使えるHDDプレーヤーなど、多彩なモデルが発売されています。そういった意味でも、今後ハイレゾ再生のスタンダードになりうる、オーディオ機器と言えるのかもしれません。

NASとは?

 上記の説明でも出てきたNASは、“Network Attached Storage”の略称で、ネットワークに接続して使うことができる記憶装置(HDD)を指します。一般的なHDDと違って、LANケーブルを用いてブロードバンド・ルーター(ハブが付いているもの)や、モデムに接続したハブに繋いで使います。つまりPCからは一度ネットワークを介して、NASにアクセスすることになります。この辺りは上の図を参照して頂けると分かりやすいかもしれません。故に、同一のネットワークに介在する、複数のPCやタブレットからアクセスできるメリットがあります。このNASにハイレゾ音源を収録し、ネットワーク・プレーヤーを用いてダイレクトに音源を再生することができます。ただし1点注意があり、DSDファイルの再生は、NASの種類や使っているネットワーク・オーディオの機器によっては対応していないこともあります。DSDファイルの再生も視野に入れている方は、NASの購入前に確認することをお薦めします。

話題のネットワーク・プレーヤー

 次に、現在発売されている話題のネットワーク・プレーヤーを一部ご紹介したいと思います。現在発売されているネットワーク・プレーヤーは、基本的なネットワーク接続に関しては似通った仕様ですが、それ以外の機能に関しては機種により異なってきます。そのため各ネットワーク・プレーヤーは、音質はもちろん、各社が提供するアプリ、推奨するネットワーク環境やPCなどのOSのバージョン、NASとの相性など、様々な点が異なっています。故に、なかなかすべてを説明することは難しいのが現状です。はじめて購入する際には、使用する目的や環境をしっかりと専門店の担当者に伝え、自分の目的に添う機種かどうかをよく吟味して購入することも大切です。ただあまり難しくは考えず、まずは求めやすい機種を購入して、その魅力を味わってみれば、その便利さに驚くと思います。

DENON DNP-730RE

DENON DNP-730RE / 希望小売価格:46,000円(税別)[メーカー製品ページ

 ネットワーク・プレーヤーの入門機種としてお薦めのモデルが、デノンから発売されているDNP-730REです。実売4万円前後の価格帯ながら、DSDの再生にも対応し、コストパフォーマンスに優れています。音源は、DSD5.6MHZ、PCM24bit/192kHzまで対応しています。ファイル形式も豊富で、WAVやFLACに加えて、Mac使いには嬉しいAIFFやALAC(24bit/96kHz)も再生することができます。さらに魅力的なのは、インターネット・ラジオを再生できる点です。従来の求めやすいアナログ・ラジオの音を聴き慣れている方は、一聴すればその音質の良さに驚かれると思います。リビングやベッドルームでのBGM用途でも、とても重宝するはずです。ネットワークは、DLNA 1.5、AirPlayにも対応しています。また、IEEE 802.11n規格のWi-Fiに対応し、ワイヤレスでのより高速かつ安定度の高い伝送を可能にしています。さらにWi-Fiも簡単に設定できるようになっています。

 本機は、同社オリジナルのリモコン・アプリ『Denon Remote App』を使うことで、スマホやタブレットでの操作も可能です。前面にはUSB入力も付き、iPodなどの携帯プレーヤーからの音も再生できます。もちろん同社のフラグシップ・オーディオ機器から受け継いだアナログ回路の設計など、音質面においても工夫がなされています。入門機としては十分過ぎるほどの機能で、長く使える機種ではないでしょうか。

Pioneer N-50A

Pioneer N-50A / 希望小売価格:89,500円(税別)[メーカー製品ページ

 パイオニアから昨年11月に発売されたN-50Aは、前述のデノンと比較するとやや高く、中級機というイメージがあります。しかしこのモデルは、NASではなく一般的なHDDをUSB接続することができ、そのHDDに収録した音源をプレーヤー単体で再生することができます。もちろんネットワーク・プレーヤーとしての基本的な使い方はできますが、それよりも簡単にハイレゾを含む音源の再生が可能です。そういう意味では、デノンよりもややお値段は上がりますが、初めてネットワーク・プレーヤーを購入される方にもお薦めです。またPCとUSB接続することで、一般的なUSB DACとしても機能します。ただそのような使い方だと、ネットワーク・プレーヤーではなくても……という突っ込みがあるかもしれませんが、この辺りはまだ試行錯誤している段階なのかもしれません。やはり手間を極力少なく高音質な音源を再生できることは、広いユーザーを獲得する上でも大切で、こういった製品は今後増えていきそうな気がします。

 ネットワークに関しては、DLNA1.5に準拠しています。ただし無線で接続する場合には、別売りの無線LANコンバーターAS-WL300を購入する必要があります。音源は、DSDも再生でき5.6MHzまで対応します。PCMは32bit/192kHzまでで、WAV/FLACに加え、AIFF/ALAC(96kHz)も再生可能です。筐体の前面には、3.5インチのカラー液晶ディスプレイが備え付けられ、アルバムのジャケットなどを表示(※ファイル形式によっては表示できないこともあります)できる点も嬉しいですね。本体の操作は、独自のアプリ『ControlApp』でも可能ですが、Wi-Fi環境が整っていることが条件になります。内部の設計にもこだわり、アナログ/デジタル部を分けた独立したトランスを搭載するなど、音質にもこだわっています。より上質なサウンドを目指したい方は、上位モデルのN-70Aも用意されています。

marantz NA6005

marantz NA6005 / 希望小売価格:68,000円(税別)[メーカー製品ページ

 オーディオ・ファンからの人気も高いマランツから、今年発売された最新のネットワーク・プレーヤーがNA6005です。上位機種であるNA8005譲りのフル・ディスクリート回路を用いてアナログ出力が設計され、音質にもこだわりが感じられるモデルです。またNA8005で採用されていた、USB DAC機能やデジタル・アイソレーション・システムなどを廃し、コストパフォーマンスを高めています。NA6005は、インターネット・ラジオの再生、Air Play、Wi-FiやBluetoothに対応。ネットワークは、DLNA1.5に準拠しています。音源はDSD5.6MHz、PCM24bit/192kHzまで再生可能です。ファイル形式は、WAV/FLAC/AIFF/ALAC(96kHzまで)に対応し、多くの市販ハイレゾ音源を聴くことができます。

 またハイレゾ再生のビギナーに嬉しいのが、前面に備えられたUSB端子です。ここにハイレゾ音源(DSD5.6MHz、PCM24bit/192kHz)を収録したUSBメモリーを挿せば、手軽に再生することも可能です。ネットワーク・オーディオの環境が整っていなくとも、音源の再生を楽しむことができるのは嬉しいですね。本体のコントロールは、専用のリモコン・アプリ『Marantz Hi-Fi Remote』でも行なえます。エントリー・ユーザーはもちろん、マランツ独自の高級アンプ・モジュール『HDAM』や、電流帰還型フィルターアンプ兼送り出しアンプ回路『HDAM-SA2』などを搭載するなど、音質にこだわった設計がなされ、幅広いユーザーが満足できる製品に仕上がっています。

シンプルなシステムが組めるアンプ内蔵モデル
SONY HAP-S1

SONY HAP-S1 / 価格:オープン(ソニーストア販売価格:税別76,000円)[メーカー製品ページ

 ハイレゾ・オーディオを積極的に推進しているのがソニーです。ハードだけではなく、ハイレゾ音源などをダウンロード購入できるサイト『mora』を運営し、新たなリスニング・スタイルを提案し続けています。そんな同社が手掛けたネットワーク・プレーヤー(※メーカーの呼び名は、HDDオーディオ・プレーヤー)がHAP-S1です。このモデルの大きな特徴は、本体内部に500GBのハードディスクを内蔵している点です。よって、ネットワーク環境がなくても、ハイレゾ音源の再生を楽しむことができます。もちろんネットワークにも対応しているので、購入後にネットワーク環境で使いたくなっても対応できます。またこのモデルは、40W+40W出力のアンプを内蔵し、背面にはスピーカー端子が付いているため、これ1台とスピーカーを用意することで、手軽にハイレゾ音源を楽しむことが可能です。筐体前面には、ジャケットなども鮮明に表示してくれる4.3型のフルカラー・ディスプレイも付いている点も、音楽ファンには嬉しいですね。

 音源はDSD5.6MHz、PCM24bit/192kHz(※アップデートで32bitのWAV再生も可能)に対応し、WAV/FLAC/AIFF/ALAC(96kHz)などの主要ファイルが再生できます。本体の操作は専用のリモコンに加え、アプリ『HDD Audio Remote』でも可能です。また前面に付けられたジョグ・ダイヤルで手軽に曲を選ぶこともできます。こちらの機種も、インターネット・ラジオに対応しています。シンプルなシステムで、ハイレゾ音源を楽しみたいユーザーには、特にお薦めしたいプレーヤーです。

便利なCDプレーヤー内蔵モデル
ONKYO C-N7050

ONKYO C-N7050 / 価格:オープン(オンキヨーダイレクト販売価格:税別50,000円)[メーカー製品ページ

 実売5万円を切る価格ながら、ネットワーク・プレーヤーとしての機能に加え、CDプレーヤーも内蔵しているお得なモデルが、オンキヨーのC-N7050です。ハイレゾ音源が徐々に浸透し、CDもリッピングして音楽を楽しんでいる方もいますが、まだまだCDを聴いている方も多いと思います。ハイレゾもCDも楽しみたい方にはお薦めですね。ハイレゾ音源はDSD5.6MHz、PCM24bit/192kHzまで対応しています。再生可能なファイルは、WAV/FLACなどですが、AIFFは非対応です。DSDの再生は、DSD対応のNASが無くとも再生できる独自の『Home Media』機能も特筆すべき点です。

 本体の操作をスマホやタブレットなどから行なえる、独自のアプリ『Onkyo Remote』も配信されています。iPod/iPhoneとUSBケーブルでデジタル接続も可能で、インターネット・ラジオも再生できるので、BGMを流す用途でも重宝しそうです。ネットワークはDLNA1.5ですが、無線やBluetoothでの接続を考えている方は、別売りのアダプターが必要になります。現在この機種以外にもネットワークに対応したCDプレーヤーが各社から発売されています。例えばティアックのCD-P800NT、マランツのM-CR610、ヤマハのCD-N301、デノンのRCD-N9、パイオニアのXC-HM82-Sなど、多くの機種が発売されています。やはりCDプレーヤーに対する需要も根強く、今後もCDレシーバーの新機種が登場するのではないでしょうか。

AVアンプでもネットワーク・オーディオが楽しめる
YAMAHA AVENTAGE RX-A2040

YAMAHA AVENTAGE RX-A2040 / 希望小売価格:180,000(税別)[メーカー製品ページ

 最後にご紹介するのは、AVレシーバー(アンプ)です。AVアンプは、5.1chや7.1chなど複数のスピーカーを配置して、主に映画などを臨場感のあるサウンドで楽しむために使われる機器です。紹介するヤマハのAVENTAGE RX-A2040は、なんと9.2chに対応しているため、9つのフル・ディスクリート回路のアンプを搭載しています。今回なぜネットワーク・プレーヤーの紹介で採り上げたかというと、近年のAVアンプには、ネットワーク・プレーヤーとしての機能が予め搭載されているモデルも多く売られています。もしかすると手持ちのAVアンプが、実はハイレゾ対応だったということもあるかもしれません。このモデルも、PCMの24bit/192kHzのWAV/FLACなどにも対応し、ALAC(96kHz/※AIFFは非対応)の再生も可能です。もちろんNASに入れた音源を、ネットワークを介して聴くこともできます。

 ただしAVアンプは多機能で、元々映像に向けた機能が多いため、音楽だけを聴きたいという方は、通常のネットワーク・プレーヤーなどを購入した方が良いかもしれません。ですが、ホーム・シアターを検討している、もしくは映像をより臨場感のある音で楽しみつつ、ハイレゾ音源も聴いてみたいと考えている方は、こういったモデルを選ぶのもひとつの選択肢だと思います。他にも、ブルーレイ・ディスク・プレーヤーにネットワーク・オーディオの機能が盛り込まれた製品が発売されるなど、様々な機器がネットワークに対応し、ハイレゾ音源の再生を可能にしつつあります。

最後に

 現在オーディオは、CDからハイレゾへの移行期と言えます。そんな状況の中、登場したネットワーク・プレーヤーは、各社が様々な試行錯誤をし、次のオーディオのスタンダードとなる製品を生み出そうとしているのが感じられます。まだ過渡期でもあるため機能が各社マチマチで、なかなか1台を選ぶのが難しいですが、まずは求めやすいものを購入して試し楽しんでから、自分に合う機種を購入するというのもひとつの方法です。ネットワーク・プレーヤーは、慣れてしまうと快適なオーディオ機器なので、なかなかCDプレーヤーでの再生に戻れなくなります。音質も、同価格帯のCDプレーヤーでは太刀打ちできないモデルも多いので、より高音質な音楽再生を望む方にもお薦めです。春から快適な音楽ライフができると、日々の生活にも張りが出そうですね。次回は、そんな素敵なリスニング・ライフが送れるオーディオ・システムのご紹介を考えています。では、また次回!


※次回のハイレゾ入門は4月15日(水)予定です。

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プロフィール

菊池 真平(きくち・しんぺい)
音楽雑誌「Player」、オーディオ誌を発行するステレオサウンド社で「Beat Sound」、「Digi Fi」の編集に携わった後に独立。現在はフリーランスで、ヴィンテージ・ギター関連書籍/ギターに関する雑誌等に、編集/ライターとして携わる。国内外のミュージシャンへのインタビュー等も多数行っている。

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