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  • 週刊ギブソン Weekly Gibson〜第48回

田中義人が弾く! Gibson Memphis 1959 ES-175D

Gibson Memphis / 1959 ES-175D

  • 文:井戸沼尚也
  • 動画撮影:編集部 写真撮影:八島崇 映像編集:熊谷和樹 ギター調整:田中舘滋(T-bone Guitars) 取材協力:Gibson Brands Showroom TOKYO

スペシャル企画「田中義人が弾く! ギブソン・メンフィスのアーチトップ・ギター」も今週が最終回! トリを飾るのはフルアコの代名詞=ES-175、その2015年度版「1959 ES-175D」です。その音色に刺激を受けた名手・田中義人氏は、どう調理するのか。静かに熱い、クレバーな演奏とともに本器の魅力をご堪能ください。

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Gibson Memphis 1959 ES-175D featuring 田中義人

Gibson Memphis 1959 ES-175D

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さらに完成度を高めた16インチ・フルアコの代名詞

 名器がひしめくギブソン・アーチトップの中でも、16インチ・ボディの代表的な機種、ES-175。ジョー・パス、ジム・ホールらジャズ・ジャイアンツの使用で知られるが、スティーヴ・ハウやスラッシュを始め、多方面で愛されるモデルだ。その魅力は、プライウッドのアーチトップならではの音質、比較的コンパクトで抱えやすいボディ、意外と広いサウンド・バリエーションなど、バーサタイルに使える点にある。1949年の製造開始以来、現在まで生産が途切れたことがない人気機種だが、この1959 ES-175DはいわゆるP.A.F.期のものを細部にわたって再現している。ビンテージ・トーンを再現するために採用されたMHSピックアップとカスタムCTS550Kポット、チューブレス・トラスロッドの採用、ニカワによるネック・ジョイント、単板ボディ・サイドなど、こだわりの仕様となっている。さらに2015年版はブレイシングにアディロンダック・スプルースを採用し、一層充実した鳴りを実現。45度角エッジのピックガードによって、さらにビンテージの外観に近づき、これまで以上の完成度を見せている。

Interview

どうしてもこれにしか出せない音色
良い意味でポイントが絞られている楽器です

──1959 ES-175Dの第一印象からお願いします。

 そうですね、まず思ったのは“これって新品なの?”。パッと見た瞬間にビンテージのようなオーラとかムードを感じましたね。

──実際に弾いてみて、いかがでしたか?

 ES-175をちゃんと弾くのは、実は初めてに近いというか、自分で所有したことはなかったんですね。もちろん175を弾くプレイヤーで好きな人はたくさんいますし、レコーディングなどで「175で弾いてほしい」という指定がある場合はお借りして弾いてきましたので、音についてはわかっていましたが、今日改めて「やはりこれでしか出せない音がある」ということを感じました。自分の中ではES-335が判断基準になっているのですが、335が「使う上でのルールがなく、どんなジャンルでもオールマイティに使えるギター」だとすれば、175はそれとは違って「これで弾くべきもの、出すべき音」がしっかりある楽器だなと感じました。良い意味でポイントが絞られている楽器です。

──そのポイントとは、一般的にはストレートなジャズということになると思うのですが、試奏で弾いていたソウルっぽいフレーズにも非常にマッチしていたと思います。

 そうですね、ソウルっぽいのもハマりましたね。だからポイントは明確にあるんですけど、意外と広いのかもしれないです。まだまだ僕にとっては未知な部分が多いギターですので、その意味で弾いていて楽しかったですね。

──弾き心地についてはいかがですか?

 335とはボディの厚みが全然違うんですが、そこは意外と気にならなかったですね。175はこの厚みがあってこその音色だと思うし、音色にインスパイアされる部分が大きいので、集中して演奏できました。

──この1959 ES-175Dを、どんな人にオススメしますか?

 まずはもちろん、ジャズ・プレイヤーですね。あとは、大人の楽器というイメージですが、若いプレイヤーにも弾いてみてほしいです。どうしても偉大な先駆者達が使ったこの楽器のイメージがあると思うんですが、それにとらわれない使い方をしても面白いんじゃないでしょうか? 例えば、これで弾き語りをするというのも面白いし、かっこいいと思いますよ。この楽器が持つ未知なる可能性も、開花すると思います。

──ズバリ、175の魅力とは?

 僕にとってはやはり“ジャズの香りがするところ”ですね。335では出せない、どうしてもこの楽器でないと出せない音を持っている。そこが魅力です。

──最後になりますが、今回、4週にわたり4本のギブソン・メンフィスを弾いていただきました。ルシールは少し違いますが、どれも基本的にはビンテージ系のリイシューです。これらのギターを振り返ってみて、いかがでしたか?

 ビンテージの良さである味の部分と、新品のレスポンスの良さや扱いやすさを併せ持つ“新旧ハイブリッド”を感じましたね。ビンテージだから絶対にいいかといえば、中にはルックスはいいんだけど弾いてみるとコントロールしづらいとか、音がイマイチだとかいうこともあります。ただ、ビンテージが持つ“板についた音”、つまり倍音感や、バイブレーションや、ビンテージがまとっているオーラというものも、確実にあります。こうしたものと演奏のしやすさ、このバランスが難しいと思うんですけど、どれもうまく調和していました。例えばES-335は、自分でも1962年のビンテージと2007年製の2本を持っていますが、今の新品はここまでいいのかと本当に驚きました。ピッチもいいし、バランスもいいし、ビンテージの大事な部分も残っている。素晴らしいです。335に限らず、今回弾いたギターにはどれもそうした要素は感じました。どれもすごくインパクトがありましたし、それを知るいい機会をいただいたと思っています。


※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは5月1日(金)を予定。

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製品情報

Gibson Memphis / 1959 ES-175D

価格:¥637,000 (税別)

【スペック】
●ボディ:3プライ(メイプル/ポプラ/メイプル)●ネック:マホガニー●指板:ローズウッド●ナット:ナイロン●ピックアップ:MHSハムバッカー×2●コントロール:2ボリューム、2トーン、3ウェイ・トグル・スイッチ●テイルピース:ジグザグ・スタイル●フィニッシュ:ビンテージ・バースト(写真)、ビンテージ・ナチュラル●備品:オリジナル・ハードケース
【問い合わせ】
ギブソン・ジャパン http://www.gibson.com/
※価格は、ビンテージ・バーストが637,000円(税別)、ビンテージ・ナチュラルが698,000円(税別)となります。
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プロフィール

『THE 12-YEAR EXPERIMENT』

田中義人
1973年、北海道札幌市生まれ。“今最も忙しいギタリスト”と称されるギタリスト/コンポーザー/アレンジャー。1997年にES-335を携えて上京。1999年、大沢伸一と出会い、monday michiru bandへ参加したことを皮切りに、bird、絢香、嵐、今井美樹、m-flo、大黒摩季、ケツメイシ、Chemistry、さかいゆう、Jazztronik、JiLL-Decoy association、柴田淳、Superfly、スガ シカオ、SMAP、徳永英明、中島美嘉、葉加瀬太郎、秦基博、Funky Monkey Babys、ファンキー加藤、藤巻亮太、BoA、松下奈緒、YUKI、塩谷哲、レミオロメンなど数々のアーティストのレコーディング・セッション/ツアー・サポートを務める。自身のプロジェクトとしては2010年に、松原秀樹(b)、森俊之(k)、玉田豊夢(d)とC.C.KING結成。2010年に1stアルバム『C.C.KING』を、2014年に2ndアルバム『C.C.KING Ⅱ』をリリースする。さらにソロ・アーティストとしても2013年2月に待望の初ソロ・アルバム『THE 12-YEAR EXPERIMENT / YOSHITO TANAKA』をリリースした。ブルージィでありながらジャジィ、ソウルフルでありながらファンキーというクレバー&ハイブリッドなプレイ・スタイルは、世代を問わず各方面から高い評価を得ている。

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