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  • Dr.Dの機材ラビリンス 第22回

ベース用D.I.プリアンプ・ペダル〜深淵の聖堂

ベース用プリアンプ、ベース用D.I./ダイレクトボックス

22回目を迎えた機材ラビリンス、久しぶりのベース・ネタである。「ベース用D.I.」「ベース・プリアンプ」は、ベース・サウンド作りの根幹を担う、今もっともアツいベース用デバイスと言えるだろう。その定義は若干のあいまいさを伴っているが、ここではベース用「プリアンプ」と呼ばれるジャンルの中で、それ単体でPA卓に直結できるバランス信号を出せる機器と定義し、20機種を厳選してみた。皆さんのベース・サウンド作りに役立つ1台がきっとあるはず!

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プロローグ

 エレクトリック・ベースは、至極“真っ当”な楽器である。何故、そう言えるのか? それはラインで音を録るからである──。

 この話をすると、多くのバンドマンが「?」という顔をする。いやいやいや、ほら、ボーカルだって、ドラムだって、ギターだってマイクで録るじゃん(笑)。ベースの方が変だよ……と言う。その通り。歌もドラムもエレキも、マイクを音源にくっつけるようにして大音量で録音するのが世の常だし、現代でもその手法が最もメジャーな収録方法であることに違いはない。

 だが、電子楽器という括りでそれを考えた時はどうだろうか。キーボードやシンセサイザーを、わざわざスピーカーから大音量で出してそれを録ったりするだろうか? テルミンや、エレクトーンは? それらは全て電子楽器だが、現代ではまずわざわざマイクを立てて録音するような事は無い。例外があるとすれば、よく知られる所では特殊なスピーカーを使うハモンド・オルガンくらいのものか。もちろん、そうなってくるとベースだって電子楽器だから、ラインで録るのが普通ということになる。サウンドを電気信号化する楽器は、ほぼラインで録る。そう考えると、エレキ・ギターのような録音方法の方が、実は電子楽器にとっては特殊な例だということがわかってくる。

 とはいえ、ベーシストにはベーシストなりに、それをどことなく納得いかないと感じる部分もあるだろう。せっかくお気に入りのアンプで完璧に音作りをしても、あの地の底を這い回るような轟音を生み出す増幅部をすっ飛ばして、ペラペラの生音を録ると言われるのだから。例えアンプ出しが許されても、アンプからのライン・アウトを卓に引かれて、結局はスピーカーをパスされてしまう。なぜ、バンド・アンサンブルの中で、ベースをラインで録らなければならないのか? ギターは良くて、ベースはダメな理由って何だ? 自分だって、あの大好きなアンプの音を録りたい! そう思っているベーシストは少なからずいるに違いない。

 このような話を宣うベーシストがいると、レコーディング・スタジオならば「じゃあ、マイクで録りましょうか」とあっさりエンジニアに言われるに違いない。当然だ。ベース・アンプの音は、正しい方法と正しい機材で知識のある人間が録れば、ちゃんといつも耳で聴く音と同等のサウンドをマイクで録る事が出来るのである。マイク選びから始まり、ギターよりも遥かに高電圧な数百ワットの音を鳴らすスピーカーからくる振動波とコーン紙の風圧対策、ベースのベースらしいキャラクターを支える周波数帯域が恐ろしく広範囲をカバーしていることへの知識、ベース・キャビ特有のマイキング・テクニックと距離特性、etc……。スタジオでならばそういったものを満たす環境が全て揃う。実際に、プロの現場でマイクを立ててベースを録音する事など日常茶飯事だ(もちろん、ラインをミックスするパターンも多い)。ただ、ライブなどではその条件がなかなか揃わないので、一番手っ取り早いPA&モニター任せの音作りになってしまうだけなのである。

 だから、ベーシストはアンプによる音作りをあきらめないで欲しい。ベースをラインで録るのは、なにもアンプの音が悪いからでもそういう技術が無いからでもなく、エレクトリック・ベースを取り巻く環境がそうさせるだけの1つのパターンにすぎないのだから。現代ではPAに送る音対策として、リアルなベース・サウンドを作るためのプリアンプ類やD.I.も数多く存在している。アンプとプリ……二度手間になっても、ベーシストはあくまでもその二つの音を手放さず、それぞれの音作りにこだわるべきでなのある。そこで作ったプリアンプの音はライブに脚を運んだより多くの観客を酔わせるだけでなく、今度は、レコーディング・スタジオに持って入った時に、アンプとラインを混ぜた音がベーシストの個性という名のエッセンスを何倍にも濃くするからだ。

  “真っ当”だから、音に向き合う。“真っ当”だからこそ、ラインでも録る。アンプだろうがラインだろうが音を出すのはベーシスト本人だという事を忘れてはいけない。最も“真っ当”であろうとするベーシストが奏でる楽器だから、その音はいつも人の心を打つ。それを理解した時に初めて、ベーシストの通すべき筋(ライン)が楽器に繋がるのである。

 そう。ベースに流れるのはライン信号などではなく、音楽なのだから。至極“真っ当”な話じゃないか。

商品の選定・紹介にあたって

 今回は、ベース用のD.I.機能付きプリアンプ・ペダルを特集する。「プリアンプ」という言葉が、近年の楽器業界では様々な誤解を生む種になっている事はご存知の方も多いとは思うが(この話を始めると本が1冊書けてしまう)、この企画を行なうにあたって、その選別ではきっちりと機能面で線引きをすることにした。キーワードは『D.I.』。音の世界で言うD.I.とは、「Direct Injection Box」のことで、別名「ダイレクト・ボックス」とも呼ばれる信号変換デバイスの独立したカテゴリーである。それは簡単に言えば、“インピーダンスを下げる事”と“不平衡(アンバランス)信号を、平衡(バランス)信号に変換する事”を同時に行なう機能を意味しており、そういった性能をベース専用の“音作りの根幹を担う”という意味での「プリアンプ」に搭載している機器だけを選び出してみる事にした。難しい理屈はさておき、あくまでもベース用「プリアンプ」と呼ばれるジャンルの中で、それ単体でPA卓に直結できるバランス信号を出せる機器を選定したと考えてくれてよい。だから、ベース用の音補正の無い単体D.I.(例えば、BOSS“DI-1”やAVALON DESIGN“U5”等)や、逆にD.I.機能の無いベース・プリアンプ(Demeter Amplification“BEQ-PB”やHAO“BASS LINER”等)は、今回は残念ながら除外している。ちなみに、パワー・アンプが直接駆動できるかどうかは、あえて線引きを行なっていないので、駆動できるものも駆動できないものもその中に含まれる。実はそちらの検証も可能な限り今回リサーチした機種では行なっているので、オフィシャルにその性能について公表されていないものに関しては予想外な結果になっているものもある事だろう。紹介するアイテムは、いつも通りデジマートに在庫のあるものを優先的に選定してある。なかなかこうして比較する機会の無いベース・プリの一角について、プレイヤーとエンジニア目線の2方向から検証を行なうこの企画、興味のある人はぜひ見ていって欲しい。

D.I.機能付きプリアンプ・ペダル(べース用)

[SansAmp BASS DRIVER DI]

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01 Tech 21 [SansAmp BASS DRIVER DI、SansAmp BASS DRIVER DI-LB、PROGRAMMABLE BASS DRIVER、BASS DRIVER DELUXE]

 ベース・プリの世界での大定番と言えば必ず名の上がる“BASS DRIVER DI”。初心者からプロにまで安定的に支持を受けるわかりやすいコントロール類と、くっきり、はっきりとしたメリハリの効いた効果は、やはり触っていても気持ちの良いものだ。音のクセは、EQをセンターに揃えてもドンシャリ気味で、重心が低く歪みがロールするところも時代を感じさせる。基本に合わせ、高域を絞りつつ“PRESENCE”を上げると、底から突き上げるような「あー、この音!」とはっきりわかるほど、この機種独特のドライブが沸き上がってくる。ゴリッとしていて、指で弾いてもしっかりと芯が立つ。まさに80年代、90年代のロックなベースにしっくりくる突破力のある音質だ。逆に、“PRESENCE”を下げて“TREBLE”を上げるとやや金属質なクリーンも作れて、思ったよりも適応力は高い。

 だが何といっても、この個体の強みはその“LEVEL”をマックスにしても輪郭の崩れない「音のデカさ」につきる。正統派プリアンプよろしく、フル・アップの音量は想定通りしっかりとパワー・アンプを駆動できるだけの音量を持っており、しかも、音量がマックスに近づくほどに立体感のあるハーモニクスが増し、まるで本物のチューブで歪ませたような細かい襞状の倍音が音の芯から沸き上がってくるから素晴らしい。アンプ・シミュレーターの老舗であるSansAmpの名を冠するとはいえ、大音量時のこの疾走感は格別だと感じた。XLR端子を通じたファンタム・パワー(48V)により駆動することでさらに圧倒的にダイナミック・レンジを得られるので、特に歪むとニュアンスが出にくいと感じるプレイヤーにはお勧めしたい。D.I.自体の音質は好みが分かれる所だが、ちょっと耳の痛い出方をするので、受けのH.A(ヘッド・アンプ)にはあまり硬くないものを選択したいところだ。このD.I.が気に入らなければ、メインのアンバランス・アウトからも十分にインピーダンスの下がったライン信号を取り出せるので、ハイファイな卓へ送る前にお気に入りのチューブD.I.を挟んで音質を調整する事ができるのも、ライブ上級者にとっては嬉しい機能だろう。

 3チャンネル分のプログラムを可能にする“PROGRAMMABLE BASS DRIVER”や、エフェクト・ループまで装備した“BASS DRIVER DELUXE”、さらには、多弦ベース等の近代的重低音再生に対応した日本限定モデル“SansAmp BASS DRIVER DI-LB”もファミリーに加わり、今後もこのシリーズが益々D.I.付きベース・プリアンプの大正義としてその地位を固めていくに違いない。
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[BASS DRIVER DI-LBの動画を見る]

[SansAmp [VT BASS DI]

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02 Tech 21 [VT BASS DI、VT BASS DELUXE]

 SansAmp BASSシリーズのもうひとつの顔であり、近年では定番の“BASS DRIVER DI”を凌ぐほどの高評価を得ている“VT BASS DI”。まず、音を出せばハッとさせられるほど、その際立った音質に特徴がある。あの聴き覚えのある「ワーン!」と鼓膜を揺るがす弾力のある図太いクリーン……それは、まさに70年代のAmpeg“SVT”アンプのサウンド・フィールそのものだ。音が、と言うよりは、その耳の底に届いてくるローファイで叩き付けるような「感触」に、実にAmpegっぽさが出ている。

 シミュレーター機能の格を司る“CHARACTER”ノブによる、アタック深度や歪みのかかる周波数帯の変化により各世代のAmpegキャラを演出できるのは確かに便利なのだが、この機種がそれまで定番とされてきた同社の“BASS DRIVER DI”と比較され、それを上回る評価を得てきたのには実は全く別の理由がある。それは、ダイレクト、メイン・アンバランス、キャノンの3つのアウトを備えたあらゆるシチュエーションに対応する基本機能はそのままに、コントロール系の使い勝手が格段に向上したからなのだ。やはり、“MID”ノブが追加されたのは大きい。これにより、元々中域の輪郭を出しにくかった“BASS DRIVER DI”よりも、音量を上げる事無く簡単に抜けの良いブリブリ系音色が得られるようになった。指弾きやスラップにこだわるプレイヤーにとって、これは実に有り難い進歩だろう。しかも、“BITE”(一種のロー・パス)スイッチにより低域の膨張を抑える事で、指弾き時に出るの可聴周波数帯以下のモコモコしたニュアンスや、バスドラとカブってしまいがちな80Hz付近のフィールに制限をかけ、モダンで抑揚のある音質を直感的に構築できる。

 また、あの硬かったD.I.の音質にまとまりのある立体感や音圧を自然に追加してくれるスピーカー・エミュレーション・スイッチ(Ampegキャビネットの10インチ・スピーカーをシミュレート)も効いている。加えて、メイン・アウトからパワー・アンプに直送りする時用に、強制的にライン音量を作り出す“+10dB”スイッチも装備し、“LEVEL”操作による音量不足を気にしなくてもよいアンプ型プリとしての機能の安定化に貢献している。シミュレーターとしてもプリアンプとしても実用面においてバランスよく強化された、SansAmp BASSシリーズの可能性をもう一段階押し上げる優秀なモデルと言えるだろう。
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[M80 Bass D.I.+]

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03 MXR [M80 Bass D.I.+、M81 Bass Preamp]

 東の横綱がSansAmpなら、このMXR“M80 Bass D.I.+”は西の横綱と言えるほど、ベース・プリ界ではよく定番比較されたりもする一大勢力を支える名機。2ch仕様で、基本のクリーン・サウンドは、中域に密度のあるナチュラル系な音色。音質的にそれほどフラットというわけではないが、ベース本体の特性をよく引き出すポイントがEQに振り分けられており、「繋げばその音になる」というプリアンプにありがちなアクの強い音色ではなく、あくまでも自然に竿(ベース)の個性を引き出すようにチューニングされているのが最大の特徴と言えるだろう。“音を作る”と言うよりは、“音を引き出す”プリ・エフェクトといった印象だ。

 3バンド・イコライザーにより、“BASS DRIVER DI”よりも繊細な音作りをしたいプレイヤーに好まれる傾向があり、クリーンの音質は滑らか。また、ディストーション・チャンネルの歪みは潰れ感のあるジャリジャリとしたエッジがあり、確かにSansAmp系とは対極の音色と言えるだろう。そして、この機種の大きな特徴として「GATE」と「COLOR」を装備している点がある。まず「GATE」だが、これはノイズ・ゲート的に使われるイメージがあるものの、実際に使ってみると、グラウンドの取り方が違うのか同社の“Smart Gate”のように柔らかくはかかってくれず、音の設定によってはせっかくのミドルの質感が目減りするように感じられた。また、アダプターや電池駆動時にはややリミッター的にも働くので、強調したいタッチのニュアンスもやや出にくくなる。タイトなピッキングが信条なハード・ロックやメタルの奏者ならそれでも使えない事は無いが、音楽的なプレイに“GATE”を用いたい場合は、少しでもヘッドルームを稼げるファンタム電源による駆動をお勧めする。一方、“COLOR”スイッチはややドンシャリ気味になるもののプラスの効果の方が大きく、手元のニュアンスを残したままシンプルに音を太く出来るので、あらゆるシチュエーションで重宝する。スラップ等を多用する時にアンサンブルの中で音が薄くなり過ぎる時にも、何も考えず音の存在感だけを増す音ができたりもする。どちらもパラメーター設定が無い分、音質にダイレクトに作用するので、総合的なセッティングを加味しながら、上手く使い分けていって欲しい。

 “M80 Bass D.I.+ ”では高機能過ぎると言う人には、3バンドEQを持つ省スペースなベース用D.I.“M81”も選択できる。こちらは、ファンタム電源駆動こそできないが、内部スイッチの切り替えによるトゥルー・バイパス化も可能で、“M80 Bass D.I.+”とは異なるニーズに対応する個体だ。ただし、“M81”では、キャノン出力がON(これも内部ディップ・スイッチで操作可能)に設定されている場合は、入力バッファが固定化されるため、トゥルー・バイパスにはならない事を憶えておこう。
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[Tone Hammer]

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04 aguilar [Tone Hammer]

 米国ベース・アンプ業界に新たなスタンダードを確立したニューヨークの新鋭ブランド、aguilar 。トータライズされたサウンド設計を旨とする彼らが設計し、好評を得ているオンボード(インボードとも言う=ベース・ギターの内部に入れるアクティブ回路のこと)プリアンプ“OBP-3”の音色を、そのままストンプ・ボックス化したのがこの“Tone Hammer”だ。もちろん、D.I.機能も内蔵されている。クリアで透明感があるアタックと、シルクのようにきめ細かいサチュレーションが常に際立つ、まさにaguilarサウンドが求める音そのものを凝縮した見事な完成度のプリアンプだ。生の反応性こそさすがにオンボード・スタイルには及ばないが、音質はむしろ“OBP-3”そのものよりもフラットで、ダイナミクスに奥行きがあり、コントロール特性は向上していると感じた。こうしてストンプ・ボックス・タイプになり、パッシブ・ベースにこだわりのある諸兄には嬉しい選択肢となったことだろう。

また、“PRE/POST”スイッチが搭載されている事も、この機種の使い勝手を大きく向上させている。“PRE/POST”スイッチは、D.I.出力をEQ等のトーン・スタック回路の前(PRE)に置くのか、後ろ(POST)に置くのかを選択できる機能。つまり、POSTを選択すれば、D.I.にツマミの設定が反映される。ベース・アンプ、もしくは他のエフェクター類の音作りによって、PAのモニターの音色とのバランスを量るのに必要な機能と言えばわかりやすいだろうか。例えば、ベースの生音を活かしたいと考えるベーシストならば、“Tone Hammer”のEQはスタジオや小屋のアンプに合わせた現場での音作りに専念させ、PAへは常にベースのダイレクト・サウンドを送るといった使い方が可能になるわけだ。

18Vアダプターや9V電池2つによって駆動する事も出来るが、やはりこれもファンタム・パワー対応なので、48V駆動の方がよりクリーンに張りが出るのでオススメ。“AGS(ADAPTIVE GAIN SHAPIN)”という独立したドライブ機構を搭載しているのも特徴。これは、単純なオーバードライブ等ではなく、ゲイン・ノブの設定に応じてEQの効きが変化するドライブ・ブーストで、特にロー・ゲインなレイアウトでは絶妙なニュアンスの歪みを足せるので、ビンテージ・ライクで繊細な効きの歪み調整に非常に役立つ。これは、むしろ同社製のアンプに備わっている歪みよりも使いやすいと好評を得ている機構なので、気になる人は多いに試す価値があるだろう。
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[Microtubes B7K]

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05 DarkGlass Electronics [Microtubes B7K]

 フィンランドはヘルシンキに拠点を置き、アメリカにも工房を立ち上げた巷で勢力を拡大しつつある実力派ベース・エフェクト・メーカーDarkGlass Electronics。全体的に歪みに強く、ゲインを上げていってもヘタることの無いガッツのあるサウンドが特徴。音色はダークで、サチュレーションと言うよりは明らかなコンプ感があり、フィードバックも力強い。

 象徴的な中〜高域集中の4バンドEQを持ち、“LOW”も100Hzとややミッド寄り。ロー・エンドはクリッピング・ステージ前のブースト量を“Grunt”スイッチ(Fat/Thin/Raw)から設定しておく事で不用意な音の回りを回避できるのが嬉しい。“Attack”スイッチはプレゼンス・コントロールに近く、Cut側にすると耳障りな帯域を削る事が出来る。音決めが終わった後でPAモニターからの返しがアンサンブルの中で浮きまくっていた時など、効果を発揮しそうだ。公言はされていないが、このダイレクト信号を通すアンバランス(フォン)アウトはフル・アップにするとライン・レベルに近い出力を出せるので(ただし、インピーダンスは特定のパワー・アンプに入れられるほどには下がり切っていないので注意)、音量によってはアンプのインプットに直接接続するのは危険。アンプのインプットに入れる場合は“Level”を10時前後で抑えるようにすることを推奨する。ただ、これにはこれで、ラック・タイプ等のライン信号に対応したハイ・エンドな空間系をこのプリの後にかませられるというメリットがある。歪んだ後でもノイズに強い信号でディレイ等をコントロールしたい人には、別のD.I.を用意して、純粋なライン・ドライバー的な信号強化プリとして徹するのもこのペダルの能力を活かし切る秘訣だ。音質的にも、性能的にも、インスト・バンドには最高のプリアンプ・ペダルだろう。

 “B7K”には、21世紀版“Hulk(ハルク)”等のイラストレーションを担当した寡作のアーティスト、デール・キーオンによるアート・イメージをトップにレーザー刻印した“B7K Limited Edition”もあるので、ファンはこの限定モデルを求めるのもよいだろう。また、このメーカーの同種のラインナップには、人気のベース用オーバードライブ“Vintage Microtube”にバランスド・ライン・ドライバーやコントロールを追加した“Vintage Deluxe Limited Edition”も存在する。こちらは、創始者ダグ・カストロのスペシャル・メイドによる限定(200台)品。もちろん、元がシンプルな歪みエフェクターなので、メインのアンバランス・アウトはライン出力を得る事は無いが、D.I.機能を持った段階で補佐的プリアンプとして十分機能するので、空間系がいらず、アンバランス・アウトを低い信号レベルのままアンプ直結で利用したい人はこちらを選択する手もある。
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[Micro Bass II]

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06 EBS [Micro Bass II]

 ベース用コンプの世界では圧倒的なシェアを持つEBSの、複合D.I.プリアンプ。2つのインプットを持ち、割り当てられたチャンネルはそれぞれ切り替えながら使う事もミックスする事も出来るフレキシブルさが売り。まず、繋ぐだけでミドルの質感が増して、気持ちの良い厚みが生まれる。まさによく聴き慣れたEBSサウンドで、実に安定感のあるブリンとした中域の張り出した出音はジャンルを問わず重宝しそうだ。特に、ジャズ・ベースとは相性が良い。

 2チャンネルのうち、Aはあっさり、Bはミドルが濃いといった印象か。ただ、それぞれのチャンネルでEQを操作できる帯域が異なっているのは何故か、ちょっと謎な仕様だ。せっかく2本のベースを切り替えられるようになっていても、チャンネルごとにボリューム(レベル)設定ができないので、結局は2つのチャンネルをミックスする「A+B」ボタンを使うことになるだろう。それを1本のベースで使用すれば、複数のフィルターと全体域をカバーする完璧な3バンドEQ(チャンネルAのTREBLEとBASSはそれぞれシェルビング・タイプなので注意)と複数のフィルターを集中して使用できるので、こちらの方が音作りは格段に自由になる。一応、2つ分のインプットとチャンネルは備わっているものの、この機種は基本的にA+Bの1ch仕様として使うのがベストということだろう。2つのチャンネルは、クリーン・ブレンダー、もしくはデュアル出力を持つベースのためにあると割り切ってしまうと良い。ミックス・ノブ付きのセンド/リターン端子も装備しているので、どうしても別のサウンドが欲しいのならば、むしろここにサウンドの構造を入れ替える新たなプリアンプなどを接続して、2つ目のチャンネルとして使うのも有りだ。

 Linkジャックは所謂パラ・アウトに近い構造で、「Mute」状態でも出力され続けるので、チューナー等を繋ぐとよいだろう。本体はファンタム・パワーで駆動できるが、その際にはヘッドフォン端子は使えなくなるので注意したい。かなり上質のチューブ・シミュレーターがあったり、キャノン出力のみに任意で設定できるスピーカー・シミュレーターを装備していたりと、ダイレクト・レコーディングにも有利な機能を備える個体なので、宅録派にはオール・イン・ワンの統合ステーションとして1台持っていて損は無いモデルだ。ちなみに、今回は紹介を見送ったが、同社のリアル真空管を使ったベース用ドライブ・ペダル“ValveDrive”にもバージョン・アップに伴いXLRバランス・アウトが追加されD.I.としても使えるようになって久しい。多少重量はあるものの、歪みメインのベーシストはこちらを検討するのもよいだろう。
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[BASS ATTACK]

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07 Hartke [BASS ATTACK]

 アルミニウムを用いたスピーカー・コーンでおなじみのベース・アンプ・ブランド、Hartke。横に広がるように抜ける硬めの音色が特徴のこのプリアンプ。無設定のまま通すと一見音が痩せているように聴こえるが、実はそうではない。音作りのキモはハイ・ミッドからロー・ミッドをカバーする“SHAPE”と呼ばれる中域制御コントローラーである。こいつを上手く理解して使いこなさないと、このデバイスの持ち味はバンドの中に埋もれてしまい、全く役に立たないアイテムに下がり果ててしまうので注意したい。

 “SHAPE”の効果を端的に言えば、ノブで狙った帯域を極端にカットし、そのすぐ下を厚めに強調するベース特有のピーク・サウンドを作り出す機構で、要するに、ギターやドラム、管楽器とカブる帯域を避け、アンサンブルの隙間を的確に埋めるアクティブEQのことだ。特に、シンバルやブラス、トランペット、サックス、そしてギターの低域を支える中心周波数である200Hzから350Hzあたりを狙ってカットし、バスドラとの隙間にベースの土台を据えるように設定してやると、見違えるようにサウンドが抜けてくるはずだ。実際のHartkeアンプの“SHAPE”ノブを触った事のあるプレイヤーならいざ知らず、これは、感覚だけでは掴むのが難しい構造なので、アンサンブルで使用する他の楽器やそれぞれのプレイヤーが出す音の特徴を見極めた上で音作りに臨むしかない。このデバイスを使用すると、いかに単体で良い音だと思っていたベースの音も、バンドの中ではどれほど役に立たないかを思い知らされる事になるだろう。

 歪みは直接的なドライブ操作ではなく、チューブの飽和と倍音をコントロールする“HARMONICS”とそれをドライ音とミックスする“MIX”、そして、プレゼンス・コントロールにあたる“BRITE”を組み合わせて作り出す、実にアンプライクな仕様だ。言っておくが、これも“SHAPE”でしっかりとベースの出る帯域を確保していないといくら歪ませてもペラペラのサウンドにしかならないので注意が必要。逆に、“SHAPE”さえ上手く機能していれば、マットな芯を持った実に奥行きのあるドライブを得られる。ただ、D.I.の音質は思っていたほどレンジが広くないので、好みもあるが、きちんとライン・レベル(パワー・アンプ駆動も可能)の信号を出せる同機のメイン・アンバランス・アウトにお気に入りのチューブ式D.I.を繋ぐ方が無難だろう。
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[BAP-2]

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08 Crews Maniac Sound [BAP-2]

 長年、ハイエンド・ベース・プリの研究を続け、自社モデルへの妥協無きバージョン・アップを重ねるたびに、プロ、アマ問わずその支持を広げていったCrews Maniac Soundブランド。“BAP-2”は、好評を博した“DPA-2B”の直系機で、2インプット、エフェクト・ミックス、ヘッドフォン・アウト等を備える純国産統合型プリアンプの決定版だ。こういった豊富な入出力を備える機種は多々あるが、このモデルの特徴は、本質的な音作りにとって現場で必要とされる仕様がいかなるものかを明確に主張している点にある。

 まず、特に素晴らしいと感じたのは、2つの入力それぞれに、インプット・ボリュームの設定が備わっている点だ。アクティブ・ベース用のパッドを備えていたりする機種もあるにはあるが、これはそんな簡易的なものではない。本格的なスタジオ・ミキサーを触った事がある人にはわかる事だと思うが、このインプット・レベルの操作はミキサー卓の「インプット・ゲイン」に相当する機構である。つまり、入力するソースがいかなる状態(この場合、ベース個体による出力の違いを意味する)であろうと、現実的な想定内を全てカバーし、まず楽器の特性に最適な入力値をプリ側で用意できるということだ。これは特にエフェクター・レベルのコンパクト・デバイスでは軽んじられがちな仕様だが、はっきり言って、この入力に対するアナログなレベル・マッチング機能を持たない機材に対して、いかに「自然」とか「ナチュラル」などの要望を通そうとしても無駄である。そこには、必ず不要な歪みや、ゲインの不足などによる音痩せが生じるからだ。この入力機能を持たない機種で、例え原音に忠実に聴こえるものがあったとしても、それは「たまたま」デバイスと竿の取り合わせの相性が良かっただけで、それでも真の「安定的な音質」とは別次元のものであると言う事を知るべきである。この“BAP-2”ならば、それをきちんと合わせられる──つまり、ベース側にもプリアンプ側にも最高の音質を引き出すための準備をする事が可能なのだ。

 各チャンネルのインプットと、アウト(マスター・ボリューム)が独立しているという、この点を満たしているだけでも、ブランドの音作りに対する目の付けどころがいかに突出しているかが伺える。あわせて、ほぼハイからローまでベースに必要な全ての帯域をカバー出来るほど超ワイドなパラメトリック・ミッドEQにより、思いのままに音作りをする事が出来るので、このプリを使ってはじめて音作りの楽しさに気付く人も多い事だろう。ひとつ不満があるとすれば、アンバランス信号はラインと表記されているが、信号レベル的にはパワー・アンプに直挿しするにはやや非力なことくらいか。アンプに対しては通常のインプットへの入力へ繋いでおくのが無難だろう。ここまで実用本意で高品質な音質と機能を持っているとどうしても欲が出てしまうが、それ以外は文句の付けようが無い音質なので、特に原音を大切にしたいプレイヤーにお勧めしたい逸品である。
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[Bass Preamp/D.I.]

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09 Sadowsky [Bass Preamp/D.I.]

 Sadowskyのベースと言えば、やはりあの独特のハリハリ感を纏ったハイファイなアクティブ・サウンドを思い出す人も多いはず。その音の根幹となっているオンボード・アクティブ・サーキットのアウトボード版がこれだ。他ブランドのファンタム駆動できるような機種に比べるとレンジ感もほどほどで、ささやかな変化だが、通すだけですっきりとした上品で緊迫感のある音質が得られるのが良い。音の詰め方に不自然さが無く、アタックもしっかりとまとまりがあるし、倍音も十分。こういったセンスの良い「増幅」が得られる機種というのは、意外なほど少ないものだ。

 機能も実にシンプルだが、2バンドあるTrebleとBassはそれぞれ4kHz、40Hzと、ハイ/ロー・エンドの一歩手前という実にオイシイ帯域を支えている。こいつを少しいじるだけで、特にジャズ・ベースにはバッチリなプッシュを手軽に得られる感じも実にスマートだ。こういったプリは、普段あまりエフェクターに頼らずベース本体だけで仕事をするプレイヤーにこそ使って欲しいアイテムである。普段はチューナー・アウト用としてバイパスしておき、小屋やアンプの相性でどうしても設定が上手くいかない時にのみこいつをオンにしてみる、というやり方が良いだろう。積極的に音作りをするのでなく、いざと言うときの「最後の切り札」的にさりげなく使ってみてはいかがだろうか。ステージのD.I.ではどうしてもノイズが入ってしまったり、ひどい所だと足下モニター用のアクティブ・スピーカー送りのバランス・アウトを直出ししなければならない環境だって無いとは言えない。この軽量かつツボを押さえたD.I.プリをツアー・ケースに入れておき、自分にもPAにも負担をかけない現場対応力を持ち歩く、そんな大人な使い方がしっくりくるアイテムだ。
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[Rusty Box]

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10 Tronographic [Rusty Box]

 知る人ぞ知る、米国の前衛エフェクト・ブランドTronographic。“Rusty Box”は、ベースで使用する事を前提に作られたハイパワーなプリアンプで、音質も構造もかなり野心的な特徴を持っている。まず、その音だが、何というか……実に「清々しくダーティ」なサウンドとでも表現するのが適当かもしれない。ややロー・ミッドの削れたフィールに、軋むような高圧なハイと叩き付けるようなサチュレーションが追っかけてくる。一見、統一感の無いバラバラな音色に思えるが、弾いてみると意外にもアタックへの追随が速く、表現力も十分にある。強く弾けば硬く薄くなり、柔らかく弾けば一度弾むように飛び出してからひしゃげていく。これは凄く癖になる音だ。ベース・プリアンプの世界ではハイファイ志向が強いのが昨今の風潮だが、それをまるで逆行するようなレトロで“むき出し”な音質は、もの凄いインパクトだ。宣伝文句としてうたわれている「70年代のソリッドステート・アンプの音を再現」というのは、あながち的外れではないようだ。70年代と言えば、ACOUSTIC(米国のアンプ・メーカー/Acoustic Control Corporation=今のAcoustic Amplification)あたりの金属質な歪み方に確かに良く似ているが、その元ネタはよくわかっていない。

 このプリの基本構造はシンプルで、目的としては、パワー・アンプ直結のライン・アウトとD.I.アウトを同時に使用するためのプリアンプ、といったレイアウトなのだろう。メイン・アウトは、通常のアンバランス・プラグを差すとロー・インピなインスト(オーディオ)信号を出し、TRSプラグを使うとD.I.用のバランス出力になるハイブリッド・アウト。ライン・アウトはパワー・アンプを十分に駆動できる信号レベルを持っており、本体の“Vol”こそ効かないが、Input Gainには反応するので、入力部のゲインを直接パワー管に送り込む印象だ。これらは同時に使う事を想定しているが、間違って演奏中に“EFFECT”を切ってしまうと、いきなりトゥルー・バイパス化してしまい、ライン・アウトはミュート状態、メイン・アウトはアンバランスドされてしまうので、特にメインをバランス送りしている時には注意が必要。

 もうひとつ面白い特徴として、インプットのインピーダンスを変えられる事がある。あまり無い仕様だが、“LO”にするとアクティブ・ベースに対してだけでなく、前段にエフェクターを繋いだ時にもS/Nを向上させる効果が望める。これは目から鱗の機能だ。EQの並びが、TREBLE、BASS、MIDなのも、某ビンテージ・アンプを意識したような仕様で思わずニヤリとさせてくれる。駆動電源が外部入力の24V〜40Vのみというとてつもない仕様だが、冗談ではなく、この釘をばらまいたような音質には必要な容量なのだと理解したいが……このデバイスはなんとエレキ・ギターでも使用できる。その効果はちょっとここでは語り尽くせないのでまたの機会にさせていただこう。気になる人はぜひ試してもらいたいものだ。
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[SCR-DI]

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11 Ampeg [SCR-DI]

 2015年に発売されたばかりの、Ampeg本家が打ち出したシミュレートじゃないリアル・アンペグ・トーンを持ったプリアンプ。長年待ち続けたベーシスト達ならば、何よりもまず、その音に感動するはずだ。パッシブのフェンダー・タイプのベースで弾いたならば、それはまさしくAmpegのトーン。バンと張り出したミドルに、糸を引くように伸びのある高域。さすがにチューブ・ライクなサチり感こそ無いが、MOS-FET的というのか……地を這うようなオーセンティック・フィールがうまくAmpeg特有のサウンドに融合していて心地良い。今まで、数々のメーカーがSVTなどをシミュレートしたプリを出したが、さすが、本家の面目躍如といった貫禄のサウンドだ。

 歪み部は独立した「Scrambler」オーバードライブ・サーキットを搭載(“BA”シリーズのコンボに搭載されているのと同等の回路)。アクティブ・ベース(内部ジャンパーによる-15dBパッドを使用)だと多少Ampeg感は削がれてしまうものの、これもまた有用な歪みだ。個人的なことを言えば、「Scrambler」スイッチをオンにするとユニティでもすでに歪んでしまっている状態なので、どうせならアンプと同等にゲインがギリギリ下がった状態の“天井に張り付くような”サウンドを味わってみたかったというのはある。が、それは贅沢な悩みか。その代わりと言っては何だが、「Scrambler」はプリアンプ回路にエンゲージしてなくても単独で歪みとして使用できる。プリアンプがオフでも常にバッファードされているので、ドライブのみでもそれほど音量に差が出ないのはうまく考えられている仕様だ。バランスXLRアウトもいかなる状態でもレベルが極端に落ちないようにコントロールされるので、システムの中でどの場所に置いても接続構成にそれほど気を使わなくてよいのも、とても扱いやすい。EQもアンプと同等の効果が得られる効きの良い仕様で、ウルトラ・ローは500Hz帯域を削り、さらに下の40Hz域を強調、ウルトラ・ハイは8kHzあたりの感度を上げる事によりエンハンス効果を得られる……といったところまで忠実に再現されている。

 また、多彩なイン/アウトを装備しており、アンバランス・アウトはパワー・アンプにも接続できるが、ここから出る信号はボリューム・コントロールの影響を受けるため、それ自体がインプット・レベルをコントロール出来るタイプの外部機器(パワー・アンプやパワード・スピーカー)への接続を推奨したい。AUX INPUTは外部のオーディオ機器からバック・トラック・サウンドを取り込んでベース練習用に使う事が出来る上、この信号はヘッドフォン・アウトにしか流れないので、安全にトレーニング・デバイスとして活用できるところもよく考えられている。不満があるとすれば、ファンタム・パワーでの駆動に対応していない点と、ヘッドフォン端子がミニ・ジャック(これは誤接続をしないための配慮だとは思うが、だったら1/4ステレオ・アウトをトップ面に付けてくれても良かったように思う)な所くらいだ。亜鉛ダイキャストの筐体はややライブや練習に持ち歩くには気軽にというわけにはいかないが、それでも憧れのAmpegサウンドを今日から家で録音できると思えば、それだけでもこのプリの存在価値は計り知れない。
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[T-Di MK2]

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12 Taurus [T-Di MK2]

 ベース・コーラスや、パワー・アンプ内蔵のストンプ・ヘッド・アンプなどで名を馳せたポーランドのエフェクト/アンプ・メーカーTaurus。その定番ベース・プリがバージョン・アップして帰還。“T-Di MK2”最大の進化は、アンプの音構成を劇的に入れ替える“CHARACTER”ノブが装備され、初代では選択式だったVintage/Mix/Modernの切り替えがシームレスに可変できるようになった事につきる。このプリ自体の音は、アタックのニュアンスがよく出るレンジの広い突っ込みとなだらかなロールが同居する、少しブライト目に寄ったパーティクルなきらびやかさが魅力のサウンドなので、Vintage側では低域がワイドに広がった暗く厚みのあるサウンド、逆にModern側では低音がタイトに引き締まった芯のある乾いた出音になる。

 “TREBLE”と“BASS”のEQを操作すると、ミッドの位置を最適化する独自の「MLOシステム」も前バージョンからしっかりと受け継がれている。バランスを変えるには、ハイとローそれぞれに効く−/+(カット/オフ/ブーストの三点)スイッチを活用することで音の輪郭を維持したまま均衡をいじっていける。「MLO」による変化は基本的にミッドの支点をイコライザー間で平衡に“ならして”いくものなので、一見するとEQが効きにくいように感じるかもしれないが、録音してモニターすると恐ろしいほどに音の重心が変化しているのがわかる。意図的にオリジナルな音色を掘り下げたいと考えているユーザーには、かなり有益な機能という事になるはずだ。

 フット・スイッチの機能は、バイパスだけでなく、ミュート・スイッチに切り替える事も出来る。バイパス時の信号はトゥルー・バイパスなので、もちろんインピーダンスや出力の変化は考慮しなければならないものの、当機をシンプルな歪みユニットとしてアンプ前に置く場合などに適している。逆に、ミュート機能にすると、踏めばメイン・アウトが遮断されるので、バランス・アウトを卓に繋いだライン・レコーディング時には重宝する事だろう。D.I.の性能的には、どちらかと言えば小さい音を思った以上に拾ってくれる感じがあるものの、上側には壁があるので、なるべく対応電圧で一番高い24Vを繋いで少しでもヘッドルームを稼いでおくといいだろう。
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[WTDI]

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13 EDEN [WTDI]

 来年で創立40周年をむかえるベース・アンプ・メーカーEDENの、技術力の高さを伺わせる逸品。“WTDI”は、同社製“WTX500”アンプの機能凝縮版とも言うべきオール・イン・ワンな使い勝手の良さもさることながら、何と言ってもその筐体の小ささにまず驚かされる。手に乗るほどコンパクト、それでいて高性能な上、音も実用的となれば気にならないベーシストはいないであろう。

 高域は多少荒削りでパワフル、明るくワイドに振れるサウンドが持ち味のEDENだが、このプリもその傾向は顕著で、ややローは足りない感があるものの芯のある押し出しがしっかりと“指にかかる”印象の出音だ。基本を押さえた3バンド・イコライザーにコンプレッサーがデフォルトで装備されており、どちらもかなりガツンとかかる系で効果がわかり易く、セオリーを外さない設計なので、極端に回し切らなければ常に使えるサウンドを提示してくれるのも嬉しい。“Mid Shift”は、中域のフリーケンシー選択で、500Hzを選択すればドンシャリが作り易くなり、2.2kHzだとビンテージ・トーンに近くなる。一方で、同社アンプにもほぼ例外無く装備される通称「マジック・ノブ」と呼ばれる“Enhance”を強めてやると、あっという間にEQの効きがさらに大胆になり、硬質なエッジがピークを叩くようになる。何にしても、この機種において歪みがそれほど強くなり過ぎないのも、EQ、コンプでの音作りにとっては幸いしているようだ。ただ、“Bass Boost”だけは極端にバランスが悪くなるので、慣れるまでは使わない方がよいだろう。ベースとはいえ、ローだけを無闇に上げればよいというわけではない事は言わずと知れる所である。

 D.I.の性能もこのサイズの割りにはまずまずで、ロー・ミッドにわずかに減衰がある他は極めてフラットで良い。ひとつ難点と言えば、電源がDC15V/400mAでセンター・プラスという汎用性の無いものを使用している事くらいか。付属の専用アダプターが今ひとつ貧弱なので、この電源さえ市販のパワー・サプライなどで強化できればアンプ前に置くフロント・プリ(パワー・アンプは駆動できない)としてはかなり優秀なのではなかろうか。少なくとも、これほどD.I.付きベース・プリとしての性能を満たしながらもコストパフォーマンスの面でも秀でている当機は、ベース・エフェクター初心者にも最初に買うべき1台として自信を持ってお勧め出来る価値ある商品と言えるだろう。
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[Quad Sound Bass Pre Amp] 写真:三木楽器 アメリカ村店 中古・ビンテージ・アウトレット専門店

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14 Freedom Custom Guitar Research [Quad Sound Bass Pre Amp]

 ナチュラル系音質を求めるベーシスト達にとって最高峰の一角として常に名前が挙がる、Freedom Custom Guitar Researchの“Quad Sound Bass Pre Amp”。まず、ノブが全てセンターだと、音はそれほど変わらないが芯がしっかりと座って安定する感じがある。内部昇圧(18V)が効いているのか、低音はタイトだが力があり、モダンと言えばモダンだが艶のある高域が実に優雅な雰囲気をかもし出している。このハイのピークをなめるようなカーブが、“TREBLE”の6kHzシェルビングという仕様に完璧にマッチしている。上げていけば硬くマットになり、下げれば糸が解けるように音が流れるようになる。素晴らしい効きだ。

 また、キャラ付けは全て“MIDDLE FREQUENCY”だけで事足りるくらい、絶妙な山を持ったミドルのEQチューニングが見事という他は無い。パッシブのベースならば、これほど自然にかみ合う帯域コントロールには未だかつてお目にかかった事が無い。これだけで、この個体は購入する価値があると感じさせるほどの徹底したこだわりを感じさせる仕様だ。そして、自然なアクティブ・サウンドを追加する“BUFFER BOOST”もよく考えられている。この歪まないナロー・ブーストが、プリアンプがオンになっていない状態の時でも単独で機能させられる所に、「Quad Sound」の意味する音色バリエーションを見る事が出来る。

 このブーストはかかっているだけで音がセンター寄りになり、立体感が増す。ゲインではなく、フルレンジのクリーン・ブーストとコンプを合わせたような効果によって音圧を稼ぐレイアウトを採用し、あくまでもベース本来のサウンドを損なわないようにしているという点ではプリアンプ部のセンスとも一貫性が見て取れる。この音色で直接パワー・アンプを駆動できないのは残念だが、プリアンプにとって、こういったひとつの音色を突き詰めていく仕様もまた正しいスタイルであることを我々に見せつけるような構成に、メーカーの秘めたる主張を感じる事が出来る。パワーでも、音圧でもない、「整った」力学の結晶を武器に加えたいパッシブ・ベース信者ならば、必ず一度は試して欲しい名機だ。
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[Bassbone V2]

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15 Radial [Bassbone V2、Bassbone OD]

 スタジオ・クオリティのルーティング・インターフェイスでおなじみのRadialによる、高機能型ベース・プリ&D.I.“Bassbone”シリーズの最新バージョン“V2”。完全独立の2チャンネル+2インプット、さらにループ・トラックをかなり自由度の高い組み合わせで選択、もしくはミックス出来るのが最大の特徴。スイッチ類やEQも機能的に洗練されたレイアウトになっており、さすがの使い勝手の良さだ。

 プリアンプの音質自体は、1、2チャンネルの入力(チャンネル2は入力インピーダンス切替が可能)により多少変化するものの、やや重心が高域に寄った、オーセンティックで色付けの無いスタイル。低域にあざとい引き締め感も無く、この手の製品には珍しく人工的なサチュレーションがほとんど付加されないタイプの生々しい音で、ややもすると素っ気ないほどに純粋にエネルギー量だけが増幅する感じのフラット・スルーが潔い。過度な音質変化に期待するとがっかりするかもしれないが、その分、ベース本体でやったことは補正無しでダイレクトに反映されるので、ちょっとでもいい加減な弾き方をしていると音の不安定さがモロに出てしまう。これは、腕に自信のあるプレイヤーでないと乗りこなせない玄人好みの音質と言える。だが、その分、幅広い用途に応用が利くように設計されており、これ1台あれば、アップライトからピエゾ混合、アクティブ、ダブル出し……あらゆる入力ソースに万能なシステム・インプット・ユニットとして活用できる。特に、チャンネル2には超ハイ・インピーダンス受け設定(10MΩ設定切替。通常は220kΩ)の他に、ピエゾ用の「PZB」ブースター回路や、アップライトの共振を抑える「LPF(ローパス・フィルター/なだらかな35Hzロールと急激な60Hzロールを選択可能)」機能を備えているのでそちらも存分に活用したい。実際のアップライト・ベースではテストはできなかったが、ホロウ構造のエレクトリック・ベースの場合にも、このフィルターは劇的に効果を発揮したことは付け加えておこう。

 そして、何よりも、このデバイスはD.I.の性能が他社の製品よりも圧倒的に優れている。XLRバランス・アウトは、あえてマイク・レベルよりも低い300Ω設定にされており、ベース特有のブースト域でピークが抑えられるのを防ぎ、また、これが2系統のH.Aに分配することにも対応できるインピーダンス設定になっているところに、信号制御デバイスのプロフェッショナルRadialの実力を垣間見た気がする。また、当然のようにこのバランス・アウトにはグラウンド・リフトだけでなく位相反転機能も搭載されており、ノイズや信号特性の改善の他、ここでもホロウ系ベースの余計なフィードバックを制御できる事も付け加えておこう。

 ちなみに、ブースト・スイッチはミュート機能にも切り替える事が出来るので、現場の環境によって性能を入れ替えて使える事が出来るのも嬉しい。また、兄弟機の“Bassbone OD”では単独のドライブ回路を持つ他、Bインプット側にパッシブ・ピックアップの音質を最適化する「DRAG」コントロールを装備しており、こちらはこちらで全く違う角度から音の構築が出来るので面白い。“Bassbone”シリーズは、パワー・アンプの駆動にこだわらず、あくまでオーディオ信号の安定化とスタジオ機器とのマッチングに特化する事で音質の向上を最優先にした、真にプロのために作られたプリアンプとして完成されたモデルなのだ。
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[A1BP pro]

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16 ALBIT [A1BP pro、A2BP pro]

 本物の真空管を搭載した、ALBITのスタンダード・ベース・プリD.I.群。今やこういったタイプの機種は少なくなったが、真空管ならではの切迫した飽和と熱いディレクションは、やはり本物でなければ出し得ない部分が確かに存在する。ALBITの音は、一言で言えば実に“真面目”な音色だ。奇をてらっておらず、高域に撒かれた倍音のスローブを一つひとつ丁寧に拾い上げていくような音質、とでも言おうか。前のめりになってイコライジングを効かせていくタイプではなく、音に付加される艶っぽいピークを上手く増幅してやるだけの音だ。よって、それは嫌味が無く、不器用なまでにストレートに響く。

 実際、“A-BP pro”シリーズのトーン・スタックは4バンド+プレゼンスというフルサイズEQであるにも関わらず、その効きは現代的な派手に反応するタイプではなく、あくまでも帯域の押さえを効かせたり色味を濃くしたりする程度のやさしい曲線で構成されている。それでも音の芯は柔軟で倍音感も十分乗っているので、うわずった感じはせず、その鳴りは常に音楽的だ。同社のベース・アンプにも搭載されている“NOTCH”コントロールで、耳障りなカシャつくミッドのグリッジを排除できる他、スラップに最適化したプレゼンスの「HIGH」設定も可能で、地味ながら痒いところに手の届く作りはさすが。

 複数の入力とチャンネルを持つ“A2BP pro”では、チャンネル・ミックスや、一方のループ内に位相反転回路を備えてミックス時のチャンネルの位相を揃えたりも出来る等、隙のない構造にこのメーカーの硬派な作りがよく現れている。ひとつ残念な点を挙げれば、アダプター電源が昔ながらのAC(交流)入力な所か。内部でプレート電圧を稼ぐためとはいえさすがに現代ではその使い勝手の悪さは否めない。おかげでパワー・アンプを駆動できる+4dBmライン信号は安定しているようだが、それならばせっかくXLRバランス・アウトがあるのでファンタム電源を引き込めるようにして欲しかった感は否めない。あと、TRSバランス・アウトを兼ねるヘッドフォン・アウト端子は位相が反転する点などはご愛嬌といったところか。ただ、それでも、リアル・チューブかつ、ナチュラル・ゲインをダイレクトにパワー・アンプへ入れられる機種は少ないので、このスタンスは今後も守っていて欲しいものである。

 同社のベース・プリアンプのシリーズには他にもトラディショナルなクランチ・ディストーションを載せた“A1BP VINTAGE”や、軽量化されたソリッドステート・プリである“A1BP TYPE II”、そして同社のフラッグシップ万能D.I.プリとして、センド/リターンにも真空管を用いた“A1FD”もあるので、気になる人はそちらも調べてみるとよいだろう。
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[Bass Metaphors]

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17 Electro-Harmonix [Bass Metaphors]

 エレハモ謹製の、多機能タイプのベースD.I.プリ。第一印象は「やっぱり、エレハモ」の、あの奇妙なフェイズ感というのか、うねるような独特の粘り気を持った音質に圧倒される。個性的と言えば個性的だが、ダイレクトな音圧自体はあまり感じられず、バッファの音を含めてもやはり使いこなすには中々にコツがいる。

 高域はスパイシーなのでリミッターで厚みを出し、60Hzあたりのハイ・パス・フィルターを含んだブースターで強化してやると、プレシジョン・タイプのベースでぐんと音のノリが良くなる。その環境が揃った所で、この機種のアドバンテージである、ややスクイーズ気味なコンプと独立したシャギーな歪みを活かしてギンギンなサウンドを作ってやるのに向いているだろう。多少4弦に歪み感は出てしまうものの、そのクセも馴染んでしまえばこれはこれで独自の「色」を出しやすいというメリットもあるし、先ほど言ったリミッターさえしっかり効いていれば、案外アンサンブルの中でも埋もれなさそうだ。ただ、難点としては、電池が使えないのに、専用アダプターだとノイズが多い点だ。少しグラウンドが不完全な仕様のようなので、システムとはアイソレートされたクリーンなDC9Vを供給するように心がけたい。どうせファンタム駆動できないなら、グラウンド・リフト・スイッチが欲しい所だ。

 あと、1/4フォンのアウトが、バランス、アンバランス両対応なのは応用が利いて良いのだが、注意したいのが、このアウトにTRSではなくTSのアンバランス・プラグを差すと、XLRの方までアンバランスになってしまうことだ。PAにキャノンで送り、さらにアンプに送りたい場合は、ダイレクト・アウトの方を使用しよう。やはりこれも最大レベルでもパワー・アンプを直接駆動するには苦しい音量なので、素直にアンプのインプットに入れて前段用歪みプリとして割り切って使うことをお勧めする。コンプの初期設定はかなりパンパンな効きだが、内部基板にあるトリムで効果を調整できるので、それも憶えておくと使い勝手が断然に増すのでぜひ有効に活用して欲しい。
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[BB-1X]

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18 BOSS [BB-1X]

 エフェクター界の大御所BOSSが満を持して放った、待望のコンパクト・ベース・プリ。周波数ごとの高速な同時DSP処理を駆使する「MDP(Multi-Dimensional Processing)」が実践配備されて久しい同社が、その技術を余す所無く使って作り上げたこのプリアンプ音は、もはやデジタルという事を完全に忘れさせてしまうほど衝撃的なものだった。

 まず感じたのは、物理的な音の広がりに伴ってやってくる、恐るべき奥行きと透明感。パンチがあるとか、芯があるとか、その程度の言葉では言い表せない、揺るぎない「定位」が根を張っているのがわかる。歪みを完全に奥底まで呼び込んでおきながら、ダイナミック・レスポンスがクリーン時とほぼ変わらないのは驚異。これは不自然と言えば不自然なのだが、決して手元のニュアンスが出にくいわけではなく、むしろコンプを使ったフィールに比べて格段に音楽的と言ってよい。味付け自体は薄めで、縦方向に飛ぶ音質を持っており、とにかく「中心部に重力があるサウンド」という表現が的確だろう。このプリの良い所は、これほど歪みに対して強い耐性があるサウンドにも関わらず、「DRIVE」コントロールの立ち上がりがかなり奥に設定されているところにある。10時程度まではほとんど歪まず、「BLEND」を上げても高域のわずかな倍音の増幅と、ハイ・ミッドの巌のような金属質の体積がせり出すのがわかりやすく変化するだけなのだ。実際にはそこまででかなり指やピックにかかる感触が変わって来るのだが、音の表情は常に豊かなままなので、歪みの前のあの切ない「張りつめ感」を心行くまで堪能させてもらえる。

 セッティング面では究極に怠けさせてくれる反面、プレイヤーの心情としては弾き手の腕がモロに音に乗ってしまう、なかなか油断できない感度を持ったプリだと言える。また、ピーク帯域にも余裕がある音なので、多弦ベース等でも十分対応できそうなのが嬉しい。機能面で言えば、これほどコンパクトなのにもかかわらず、TRS端子によるバランス・アウトを装備する点は特筆に値する。ただし、当然の事ながら、それは普通のフォン・ジャックに見えてもバランス出力端子のため、例えモノ・プラグを突っ込んでもパワー・アンプは駆動できない。懐古主義を排し、常に最先端を歩み続けるBOSSのベース・サウンドから今後とも目が離せない。
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[BASSWITCH IQ DI]

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19 Lehle [BASSWITCH IQ DI]

 スイッチャー界の先鋭Lehleによる、機能、音質共に最高峰のループ付きベース・プリアンプDI。今回試した中ではずば抜けてS/Nが高く、最も特性がフラットに近い音質のプリとして機能していたのがこのモデルだ。この音を聴くと、他社のものがいかにフラットな性質を求めていたとしても、それがあくまで「情緒的」なものに過ぎなかった事がよくわかる。あまりにも、この“BASSWITCH IQ DI”の制御されたバッファード音質が、無慈悲と言ってもいいほどロスが少なくさりげなさ過ぎて、危うく、検証中であるにもかかわらず無意識にその存在をスルーしてしまいそうになったくらいだ。むしろ、トゥルー・バイパスのエフェクターの方が音質的に変化しているくらい……いや、そういう意味では、しっかりこの音はプリアンプ機能により補正されていうことか。とにかく、地音が「フラット」であることにおいて、これほど「不自然なまでにフラット」な音質は他には無い。もちろん、良い意味で、である。

 こういう音質がある意味ハイファイに聴こえないのがこのLehleというメーカーの恐ろしい所なのだが、そのサウンド・メイクのセンスはさらに素晴らしく、4バンド・セミ・パラメトリック構造(中域の2段がパライコ)は、ベース・サウンドにとって定番の180°波形(一度山になって急速に落ち込む波形)を再現するのに最も効率の良い構成になっている。しかも、パライコを2つ連続させているので、波形の勾配も思うがままだ。音作りの自由度においても、一歩先を行く性能である事は明白だ。ただし、インプットは2チャンネル分用意されているものの、ボリュームを含めたトーン・スタックが効くのはAチャンネル(LED青)の方だけだ。Bチャンネル(LED白)はあくまでもアンプのインプットに入れる“ストレート・スルー”なインスト・レベルの信号を維持するための目安であり、二つのインプットを切り替えて使うのは、あくまでもBチャンネルの信号にAチャンネルのボリュームを抑えて音量を合わせられる場合に限られる。つまり、パワー・アンプに直結できるのは、“VOL”ノブの備わったAチャンネルをフル・アップさせた場合だけに限られ、Bチャンネルではパワー・アンプを駆動できないという事だ。Aチャンネルにはピエゾ用の“ΩA(10MΩ)”スイッチも備わっているため、基本的にはこのプリアンプはAチャンネルをメインとしてシステムを組むようにできている事は念頭に置いておく必要がある。

 また、D.I.の絶縁性能も素晴らしく、卓の入力方を抑制するためのパッド機能もバランス出力専用に備わっているため、レコーディング時には最高の相方となってくれる事だろう。2つのセンド/リターンのうち、一方のループにはブレンド機能があり(もう一方はシンプルなシリーズ・ループ)、フット・スイッチでループ・ブースト機能を切り替え可能なのもよく考えられている。電源が、直流、交流、極性を問わず、9〜20Vのあらゆる電圧に対応(130mA必須)していることといい、今後その実力が知れるほどに人気が高まりそうな予感のする機種である。
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[The ENABLER]

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20 3Leaf Audio [The ENABLER]

 エフェクト・ループ付きフィルター“GR2”により、一躍世界的に名を馳せたシアトルのハンドメイド・ペダル・ブランド3Leaf Audio。彼らが考えるペダルは、ライブでも自宅でも常に最高のパフォーマンスを発揮するように設計されており、この高品位ベース・プリ“THE ENABLER”にもその思想は全面的に受け継がれている。

 コンパクトなサイズながら、ヘッドフォン端子やAUXインを備え、さらに、入力インピーダンスも2MΩとかなりのハイ・インピーダンスな受けを搭載しているので、ホロウ・タイプのベースでもマグネティック・タイプのピックアップならばかなり余裕を持って入力できる。音は、通すと太さが増すタイプのプリで、ハイ・ミッドに強力な磁場のようにサチュレーションが絡み付いており、さらに設定次第では高域がスパッと軽快に抜けるので、スラップ奏者には相当に有用な音質だろうと思われる。また、ローがブライトかつ解像度が高いせいか、使用したベースのボディ材がアッシュとアルダーの場合で最も違いが明確に出たのがこのプリだった。安直なビンテージ・サウンドとは一線を画すものの、全体的に極めてエネルギッシュな音を放つプリという印象だった。

 そして、この個体でもうひとつ驚かされたのが、そのヘッドフォン・アンプの音質についてである。アンプ系の機種に自宅練習用としてヘッドフォン出力がついている機種は今までもよく見てきたが、この“THE ENABLER”に搭載されているものはその中でも群を抜いて高性能な部類の逸品だ。モニター・アンプのように分離が良く、それでいて、自分のベースの音がバック・トラックを塗り潰してしまう事が無い。しかも、長時間聴いていても疲れない。やはり練習用とはいえ、耳馴染みの良いクリアな音でプレイするのはとても気分の良いものだ。これさえあればわざわざミキサーにソースを立ち上げなくても快適な練習環境がたった1台で成立してしまう。レコーディング時の音チェックに、または、ライブ前の調整にと、家以外でもこのヘッドフォン出力は重宝しそうだ。トータルなベース・システムの環境を見直す時に、1台持っておくと何かと便利に使ってやれそうなデバイスと言えるだろう。
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エピローグ

 久々のベース関連ネタ(※本連載がメルマガで行われていた時以来!)、いかがだっただろうか?

 こと「プリアンプ」に関しては一言ある私も、これだけの数のプリアンプ……しかもベース用だけを弾き比べたのは初めての経験である。しかも、リサーチ段階では、最初はラック・タイプ、デスクトップ・タイプ、さらにはD.I.機能の無いものや、単体のD.I.なども当て所無くいじり倒していたので、合計で70機種以上は触っていた事になる。いやはや、実のところ、ナメていた。ベース関連のプリアンプ系製品でこれほどの数のデバイスが出回っていようとは、夢にも思わなかったのである。おかげで、普段あまりベースは積極的に弾かないにもかかわらず、すっかり右手の指の皮が剥けるほど竿に勤しむ事になってしまった次第である。記事にする段階でやむを得ずこの数まで絞り込んだが、せっかく集めたデータなので、残りのオンボード系プリをペダルにしただけのもの(D.I.無し)や、ベース向きD.I.単体機についてもどこかで記事にしてみたいものである。

 もうディスコンになってしまったが、何年か前まではSeymour Duncanの“SFX-06”という機種でベースの宅録をやっていた事なんかを思い出しながらの作業だった。……そういえば、やりながらふと感じたのだが、ベース用のキャビネット・シミュレーターの単体機をあまり見ないのは何故かな、と気になったりもした。ついこの前も当コンテンツで記事にしたように、ギター用のキャビシミュやアンプ・シミュレーターはあれほど発達しているのに、ベース用が無いのはおかしくないだろうか? しかも、ベースの方が、圧倒的にライン録りする機会も多いだろうに。確かに“POD”だとかを見るとベース用のキャビシミュなんかも搭載されていたりもするが、単体機はやはりあまり聞いた事が無い。今回もわずかな数だがそれらしき機能を持った機種も扱ったが、もっとベース業界にも広がって良さそうなものだが。確かに、ベースはギターほどキャビネットの性質に影響されはしないが、それでも歪みの質や箱鳴り感にはちゃんと差が出てくる。これは、もしかして、今回紹介したプリアンプの後なんかに繋げるバランス・イン/バランス・アウトのベース用キャビシミュなんかを作ったら意外に需要があるかも……なんて考えたりもしていた。まあ、そんな事、本気でやる人もいないだろうが、もし、これを見て遊び半分でベース用キャビシミュを作ってみた人がいたら、1台送って欲しいものだ。記事にするから(笑)。

 それでは、次回12/9(水)の『Dr.Dの機材ラビリンス』もお楽しみに。

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ベース用プリアンプ

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ベース用DI/ダイレクトボックス

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プロフィール

今井 靖(いまい・やすし)
フリーライター。数々のスタジオや楽器店での勤務を経て、フロリダへ単身レコーディング・エンジニア修行を敢行。帰国後、ギター・システムの製作請負やスタジオ・プランナーとして従事する一方、自ら立ち上げた海外向けインディーズ・レーベルの代表に就任。上京後は、現場で培った楽器、機材全般の知識を生かして、プロ音楽ライターとして独立。徹底した現場主義、実践主義に基づいて書かれる文章の説得力は高い評価を受けている。

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