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- 2024/03/22
Handmade Effects Competition / Session Master
デジマートとギター・マガジンがタッグを組んで開催する読者参加型の自作エフェクター・コンテスト“Handmade Effects Competition”。数ある応募作品の中からついにグランプリが決定! 初代チャンピオンと準グランプリのエフェクターが「デジマートセレクトショップ」にて販売開始となった。さらにさらに。その優秀作品のサウンドを紹介すべく、気鋭の音楽集団THE NOVEMBERSの小林祐介とケンゴマツモトがスペシャル・ナンバー「Ghost of the well」を書き下ろした!!! レコーディング風景のドキュメンタリーとともに、気鋭の音楽家にインスピレーションを与えたオリジナル・エフェクターの魅力に迫っていこう。
最優秀グランプリ 歪み部門
by 石井伸之介
真空管+オーバードライブ! 即戦力で使える至高の歪み
本物の真空管“12AX7”を使用したプリアンプと、OPアンプ・ベースのドライブ回路から成る、本格的な2チャンネル仕様のドライブ・ペダル。プリアンプ部分は、フェンダー・アンプを思わせる伝統的なトーン・スタック回路を採用し、ドライブ・チャンネル使用時にもプリアンプ部分は常に有効である。まさしくプリアンプとして、かけっ放しにしたくなる優れた音質だ。そして、あえて歪み部分は真空管で作らず、OPアンプ・ベースのクリッピング回路を採用した点がこのペダルのセンスの良さだろう。1台で上質なクリーン・トーン、ドライブ・サウンドの双方を作り出すことが可能である。搭載された真空管は金属板によって他の基盤から隔離されており、ノイズ耐性にも気を使って作られていることが見て取れる。また、筐体には複数箇所の穴が空けられており、放熱対策にも抜け目がない。全体的な造り、そしてパーツのチョイスも理にかなっており、まさにグランプリ作品にふさわしい優れたペダルだ。
[Specifications]
●コントロール:【プリ部】トレブル、ミドル、ベース、プリ・ボリューム、マスター・ボリューム、ミッド・スイッチ、ブライト・スイッチ【ドライブ部】ドライブ、トーン、ボリューム、モード・スイッチ、クリップ・スイッチ●真空管:12AX7●入出力端子:インプット、アウトプット●外形寸法:115(W)×183(D)×59(H)mm(スイッチ含む)●重量:740g●電源:15Vアダプター
この度、グランプリを受賞させていただき、審査員の方々と製作に協力していただいた友人たちに感謝申し上げます。本作のアイディアは特に都市部のブルースやトラディショナル・ロックを愛するギタリストがライブやセッションのたびに真空管アンプを持ち歩けないといった、よくある悩みに対しての答えでした。目新しい回路を載せたわけではないのですが、長い間、人々に愛されてきた音を、丁寧で見た目も美しいブティック・アンプの中身とオールド・アンプの貫禄を意識して作っています。安易なコストダウンによるクオリティの低下などないように、これからも良いものを作り続けるように頑張っていきます。
優秀賞 アイディア部門
by 佐々木篤
スプリング・リバーブを搭載した異端のディレイ・ペダル
コンパクト・エフェクターながら、内部に本物のスプリング・リバーブ、さらにはディレイまで詰め込んだ、異端的空間系ペダル。コントロール類はディレイ・タイム、フィードバック、ミックスの3種と、ディレイを強制的に発振させるフット・スイッチ、そして発振時の音色を変えるミニ・スイッチをひとつ装備している。リバーブ部分のパラメーターは固定で、出力されるディレイには常に一定の量のリバーブがかかる仕様だが、そのリバーブのバランスが非常に楽器的な特徴を成し得ている。深く、仄暗い洞窟から聴こえてくるかのような、なんとも不穏な残響音を作り出す、ほかにあるようでない個性だ。強制発振スイッチで作られる発振音のバランスも良く、総じて実用的かつ、効果的なペダルと言える。また、ほかのスプリング・リバーブと同様、本体に物理的衝撃を加えることでスプリングを揺らし、“ガシャーン!!”というお馴染みのノイズを作ることも可能である。
[Specifications]
●コントロール:ディレイ・タイム、フィードバック、ミックス、発振スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●外形寸法:177(W)×116(D)×65(H)mm(スイッチ含む)●重量:660g●電源:9Vアダプター
ディレイのフィードバックにフィルターがかけられるような回路は、ずっとアイディアとしてあって、同時に物理的な動作(振る、叩くなど)が音に影響するエフェクターを作りたいと思っていました。今回のエフェクターは、ディレイのフィードバックにデッドストックの本物のスプリング・リバーブを搭載することでその両方を実現しました。想像以上のクレイジーなサウンドに合わせて、ノイズ対策と性能向上のためのプリント基板をゼロから設計しています。幽霊のようなフィードバックと、筐体を揺らした時のスプリングのノイズ、そしてフット・スイッチ一発で爆音の発振音を出すことができる唯一無二のスペシャルなエフェクターになっていると思います。
最優秀グランプリに輝いた“Session Master”と優秀賞を獲得した“Ghost in the Echo”を使用したレコーディングの模様は記事冒頭の映像をご覧いただきたい。ふたつのエフェクターがクリエイトする個性的なサウンドに導かれるように生まれた「Ghost of the well」は、仄暗いアンビエントな世界感と、狂気的な轟音に彩られたオルタナティブな楽曲に仕上がったようだ。ここでは、ギター・マガジン2015年12月号に掲載されているインタビューから抜粋してお届けしよう。
──まずは音を出した時の第一印象から聞かせて下さい。
ケンゴ Session Masterは、JCのセンド/リターンにつないで鳴らしてみたんですけど、まさにアンプ!って感じがするエフェクターでしたね。ゲインを上げていくと真空管のおいしいポイントがちゃんと出てくるし、アンプのようにある程度大音量にしないと得られないドライブ感も、ほどよい音量で出せるのはすごく便利だと思いました。トランジスタ・アンプなのにすごく気持ちいいサステインが出ていたのには驚きましたね。自分のマーシャルにつないで試してみたいとも思いました。
小林 一緒に入っているTS系ドライブ・サウンドも、僕が知っているTSよりも汎用性が高い気がして。スイッチングでモードが切り替えられるから、シンプルな操作で音のキャラクターをポンポン変えていけて、音作りはしやすかったです。個人的に目盛りだとちょっとおっくうに感じるところもあって(笑)。あとゲインをフル・ドライブさせた時も、音がつぶれると言うよりは良い感じにハウリングしながら歪んでいて、弾いていて気持ちが良かったです。オーバードライブのキャラを持ったまま、うまいことエグさを出せるというか……TSの機能を持ったプリアンプだからこそ出せた音なのかなって感じましたね。あとSession Masterに音作りを委ねたことで、サウンドメイク時のストレスはありませんでしたね。自分のアンプを持っていない人が音作りをする際に、軸になる機材という意味でとても心強いモデルになると思います。コイツをひとつ持っているだけで、抱えていた悩みがいろいろ解決するんじゃないですかね。
ケンゴ 僕らはちょっとサイケな使い方をしましたけど、世のブルース親父からしたらこれ1台だけで、どのアンプでもSRV(スティーヴィー・レイ・ヴォーン)気分でギターを弾きまくることができるんじゃないかな(笑)。
──アイディア部門のGhost in the Echoはいかがですか?
ケンゴ 内部に生のスプリングが入っているということで、まずは蹴ったり落としたりした時に鳴る“ガシャーン!”って音を使って遊んでみたんですけど、楽しかったです(笑)。すごく不思議なエフェクターで……原音にはエフェクトがかからないのに、おもしろい残響音がディレイとしてうしろから追いかけてくるので、一人二役みたいな気持ちになれました。ディレイ・タイムを長めに設定して、E-Bowを使ってみてもおもしろいんじゃないかな。
小林 スプリング・リバーブ特有の個性として、物理的な衝撃がそのままノイズになるんですけど、ひとりヴェルヴェット・アンダーグラウンドというか、ミニマルでメロウなノイズ・ミュージックというアイディアが湧いてきて。そういう風に音色に刺激されて曲が作れるエフェクターだなと感じました。ロマンがあるなと感じたのは、踏みつけたり、蹴りつけたりした時に音が爆発するペダルってあまりないじゃないですか。ダンエレクトロのリバーブくらいかな? 必殺技を出しているようなワクワク感がありましたね。今はイーブンタイドのピッチファクターをかましたあと、複数台のアンプにパラで出して、爆発音を出しまくりたいって衝動に駆られています(笑)。さっきケンゴくんは一人二役って言っていましたけど、僕はずっと亡霊が追いかけてくるというか(笑)、見た目も相まって仄暗い怪しい雰囲気を感じたので、そこに引っ張られるように今日のセッションも暗い曲にしようと思ったんです。僕は常々、自分の中のクリエイティビティが引き出されたり、感化されたりするっていうことをエフェクターに限らず、どんな機材にも求めているので、“いろんなことを試してみたい!”って発想がどんどん浮かぶという時点で2モデルとも素晴らしいと思いました。(『ギター・マガジン2015年12月号』より抜粋)
自作エフェクター・コンテストへのご応募、誠にありがとうございました! コンテスト審査員であるSUGIZO氏、M.A.S.F.氏、細川雄一郎氏による"Session Master"、"Ghost in the Echo"、ならびに特別賞の受賞作品に対するコメントは、リットーミュージック刊『ギター・マガジン2015年12月号』に掲載している。SUGIZO氏が語る"エフェクター”の存在とは?
そして、肝心の「Ghost of the well」の全貌は、付録CDに収録! どんなエフェクト・サウンドで、どんな楽曲に仕上がっているのか、是非その耳で確認してみてほしい。本コンテストはもとより、内容盛りだくさんで贈るギター・マガジン創刊35周年&通巻450号記念特大号をお見逃しなく。
価格:¥86,000 (税別)
価格:¥49,800 (税別)
小林祐介/ケンゴマツモト
こばやしゆうすけ/ケンゴマツモト:ポストパンク、シューゲイズ、ガレージといった多彩な要素を呑み込み、荒々しく凶暴なロック・サウンドから静謐で美しい音像までクリエイトする気鋭の音楽集団、THE NOVEMBERSのギタリストとして活躍。近年は、Charaやドレスコーズといったアーティストのバックを務めるなど、多方面で精力的に活動している。フロントマンの小林は、浅井健一と結成したROMEO’s bloodや、Die(DIR EN GREY)とのDECAYS、yukihiro(L'Arc~en~Ciel)のソロ・プロジェクトacid androidにギタリストとして参加するなど、さまざまなフィールドで音楽を奏でている。最新作は、2015年10月に発売された土屋昌巳プロデュースによる『Elegance』(MERZ-0044)。