楽器探しのアシスト・メディア デジマート・マガジン

  • 連載
  • 週刊ギブソン Weekly Gibson〜第83回

週刊ギブソン・アワード2015、発表!

Weekly Gibson AWARD 2015

  • 選:編集部・井戸沼尚也

この1年で、約50回お届けしてきた週刊ギブソン。その中には、忘れられない凄いギターがたくさんありました。年内最後の週刊ギブソンでは、本連載で取り上げたモデルを対象に“2015年の記憶に残るギブソン・ギター”をデジマート編集部とレビュアーにてピックアップ! 「週刊ギブソン・アワード」と題し、“勝手に”表彰しちゃいます。

このエントリーをはてなブックマークに追加
デジマートでこの商品を探す

① “あのレコードの音がする”で賞
Gibson Custom Shop True Historic 1959 Les Paul

 2015年は、レス・ポール・ファンにとっては忘れられない年になるでしょう。これまでレス・ポール・リイシューの最高峰とされていたHistoric Collectionシリーズから、さらなる高みを目指したTrue Historicシリーズへと進化を遂げた年だからです。これまで以上に優美なボディ・トップ、さらに完成度を高めたパーツ類などのルックス面はもちろん、ボディ・トップとバックの接着にもハイド・グルーを使うなど、音質に関わる部分もアップグレードされました。True Historicシリーズの中でも人気の1959 Les Paulは、初年度生産がわずかに800本。将来的に、True Historicの初年度モノとして評価される可能性もありますので、可能であればモノがあるうちに入手しておくことをオススメします。

 週刊ギブソンにTrue Historic 1959 Les Paulが初登場したのは第55回です。ゲストに飯室博さんをお招きして試奏していただきました。取材現場で生のサウンドを聴いていましたが、ビリー・ギボンズを彷彿とさせるスーパー・サウンドとジョー・ペリー的な素晴らしいプレイを鮮明に覚えています。飯室博さんも「レコードで聴いた音と同じだ」と仰っていましたが、まったくその通りだと思いました。True Historicの初年度59レス・ポールは、まさしく記憶に残る1本です。

デジマートでこの商品を探す

② 最も有名な59を彷彿とさせたで賞
Gibson Custom Shop Historic Select 1959 Les Paul Reissue Murphy Aged PS

 True Historicの仕様をベースに、正規ディーラーからのオーダーに対応するHistoric Select。True Historicと同等の実力を備えつつ、杢目やフィニッシュの面で選択の幅が広いHistoric Selectは、もうひとつの現代最高峰レス・ポールと言って良いでしょう。Historic Selectも何度か本連載で紹介していますが、その中でも特に印象深いのは第76回に登場したHistoric Select 1959 Les Paul Reissue Murphy Aged PSLです。

 超有名ギタリストの間を渡り歩き、数々の名演を残した有名な個体をリスペクトした仕様のこのギターは、フロント・ピックアップのポールピースが通常の仕様と逆であることから、レス・ポール・ファンにはどのギターをイメージしたのかすぐにわかるはずです。本器が放つのは、太く粘りがありつつ、音の解像度が高いという、これぞバースト・サウンド。そして、超ロング・サステインも特徴です。さらに、ピックアップ・セレクターをセンターにセットした時の、フェイズアウト・サウンドも本器ならではの個性です。鼻をつまんだような独特のサウンドは使い所を選ぶかもしれませんが、うまく使えば“英国の薔薇”の音が出せます! この色合い、この杢目、そしてこのサウンド。すべてが強く印象に残る、特別なギターでした。

デジマートでこの商品を探す

③ 名手・田中義人氏が魅せたで賞
Gibson Memphis 1963 ES-335TD H3

 近年のギブソン・メンフィスの箱物ギターの素晴らしさはギブソン・ファンならご存知のはず。2015年に生産されたギターも、いずれも本当に素晴らしいものでした。本器は1963年製のES-335を再現したリイシュー・モデルです。カッタウェイの形状やワイヤーなしのABRブリッジなど細部に渡ってリアルに再現しており、ピックアップはP.A.F.を新たに分析してアンバランスなコイルの巻き数まで再現したMHSハムバッカーを搭載。チューブレス・トラスロッドの採用や、重量測定をして選び抜かれたセンターブロックなど、見えない部分もぬかりはありません。

 本器は第45回のゲスト、名手・田中義人氏によって演奏され、大きな反響を呼びました。1962年製のビンテージ335のオーナーでもある田中氏が「新品らしからぬオーラを持っている」「ビンテージに近い味や個性がありながら、新品のようにレスポンスが速い」と絶賛した1本。そのサウンドの素晴らしさを、動画で改めてチェックしてみてください。

デジマートでこの商品を探す

④ 多彩なサウンドと機能に驚いたで賞
Gibson USA Les Paul Standard 2015

 レス・ポール・スタンダードと言えば、その名の通り“レス・ポールの基準”であり、バリエーション豊かなレス・ポール・モデルの中でも核となる1本。ギブソンUSAはその標準器でさえも、“エレクトリック・ギターの標準”であり続けるために毎年ブラッシュアップを続けています。そうした中でも、2015年は、かなり大幅な見直しがなされた年として、後々まで語り継がれそうです。そのポイントは、オート・チューニング・システムG-Forceの搭載、ブラス製のゼロ・フレット・ナットの搭載、コントロールのプッシュ/プル操作で多彩な音色を作り出すサーキットなど、多岐に渡ります。ひと言で言えば、多彩な音色と機能を持つ、現代的なレス・ポールです。

 第34回で紹介した2015モデル。そのポイントの多くは、2016モデルへと受け継がれていますが、実は2015モデルにはこれにしかない強烈な個性があり、そこに惹かれる人は探してでも2015モデルを手に入れるしかありません。その個性とは、ネック周りの感覚です。恐らくギブソン史上でも類を見ないほどワイドかつ薄いグリップは2015モデルならではです。特に指をきちんと立てて弾くテクニカル・プレイヤーは、このプレイアビリティに驚くのではないでしょうか。多彩な機能とサウンド、そして個性的なネック周りのフィールが、忘れがたい1本です。

デジマートでこの商品を探す

⑤ コスパの高さが光ったで賞
Gibson USA Firebird Non-Reverse Japan Limited 2015

 第70回に登場した、Firebird Non-Reverse Japan Limited 2015。ノンリバースの個性的なフォルムに、ミニ・ハムバッカーを載せた正真正銘のギブソン・ファイヤーバードが、日本限定モデルとして比較的低価格で提供されたのですから、これも2015年のトピックとして忘れることはできません。カラーは激シブのサンバースト、エボニー、ポップなフェラーリ・レッド、フェイデッド・ペルハム・ブルーの4色。どれもいい味が出ていて、目移りしそうです。今ならまだ選ぶことができますが、早晩市場から姿を消すことは確実ですので、気になる人は早めの決断が必要です。

 とにかくルックス最高なギターですが、楽器としての完成度も高く、しっかりと使えるギターだという点も強調しておきたいところです。マホガニー・ボディにミニ・ハムバッカーを搭載し、“粘りがあるのに、キレもある”独特のサウンドを持っており、特にスライドとの相性は最高! また個人的には、かつて所有していた70年代のファイヤーバードが超極太ネックで弾きにくかった印象が強いのですが、本器はとても扱いやすいギターだったことも付け加えておきます。

デジマートでこの商品を探す

⑥ とにかく明るいレス・ポールで賞
Gibson USA Les Paul Deluxe 2015

 ミニ・ハムバッカーが生み出すブライトなトーンが魅力のLes Paul Deluxe 2015。マホガニー・ボディのファイヤーバードとは異なり、メイプル・トップ/マホガニー・バックというボディ材の構成から、よりブライトでプリッとしたサウンドが魅力のギターです。先頃発表されたギブソンUSA 2016モデルのラインアップにレス・ポール・デラックスは入っていませんので、デラックスが欲しい人にとっては、この2015モデルが実にありがたい存在です。

 第35回で紹介したLes Paul Deluxe 2015は、多彩な機能を持っている点でも印象に残っています。オート・チューニング・システムG-Force、コイルタップなどの機能を搭載していますが、特に素晴らしかったのがミニ・スイッチによるブースト機能。これをオンにしたサウンドは、まあ最高でした! もともとブライトな特性のサウンドにむっちりとしたミドルと心地良い倍音が加わり、“プリッ”としたブライト・トーンが“プリップリ”になる感じです。とても弾きやすくなりますし、もちろん聴いていても心地良く、自然なブースト具合が好印象でした。

 多機能なギターですが、外観上はシンプルな仕上がりです。フィニッシュも、デラックスでは定番のチェリー・サンバースト、ゴールド・トップ以外に、ワイン・レッド、ペルハム・ブルーも加わって、どれもステージ映えすること間違いなしですので、ぜひライブで使って欲しいギターです。

デジマートでこの商品を探す

⑦ 新技術が次代のギブソンを担うで賞
Gibson Hummingbird Vintage

 2015年、ギブソン・アコースティックは驚くべき技術を開発しました。サーマリー・エイジド加工──もうご存知の方も多いと思いますが、木材に特殊な熱加工を施すことで、木の細胞レベルで状態を変化させ、経年変化した状態を再現するという技術です。この技術をトップ材に施したGibson Hummingbird Vintageも2015年の忘れられないモデルで、第75回に紹介しています。

 ケースから出してチューニングし、すぐに弾いたものが動画になっていますが、最初からガラガラと鳴ること、低域から高域までのバランスが整っていること、反応が良いことなどに驚いた覚えがあります。また、これをもうしばらく弾いたら、どうなっちゃうんだろう?と思ったことも覚えています。熱処理によってローストされた木材やピックガードの色味も良く、非常に雰囲気のあるギターでした。ちなみに、週刊ギブソン第66回ではギブソン・モンタナのジェレミー・モートン氏が弾くJ-45 Vintageのサウンドもチェックできます。こちらもトップ材にサーマリー・エイジド処理が施されており、ジェレミー氏の弾くそれは素晴らしく良い音で、心から感動しました。サーマリー・エイジド処理を施したアコースティック・ギターの登場は、2015年、そしてこれからのギブソンを語る上で、忘れられないトピックとなるはずです。

 “勝手にアワード”させていただいた上記7本はどれも本当に印象深いモデルで、これらがすべてたった1年の間に発売されているという事実に驚きますし、ギブソンの技術力、開発力の高さにも改めて気づかされました。そんなギブソンが、「2016年は、ギブソン史上でも最高の年になる」と言っていることはご存知でしょうか。各年代で数々の名器を世に送り出し、ギターの歴史を切り開いてきたギブソンが、自ら最高の年と宣言する2016年──ますます期待が高まりますね! 週刊ギブソンでは、2016年もギブソン製品の情報を追いかけていきますので、引き続きご期待ください。それでは皆様、良いお年を!


※次回の週刊ギブソン〜Weekly Gibsonは2016年1月8日(金)を予定。来年もよろしくお願いいたします。

このエントリーをはてなブックマークに追加

製品レビューREVIEW

製品ニュースPROUCTS