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スライド・バーの素材/形状/重さでギターの音はどう変わるのか?

スライド実験

  • 文:井戸沼 尚也(室長)
  • 機材提供:UMA

全国8,500万人(願望)のスライド・ギター・ファンの皆様、ならびに4月に来日する現代のスライド・マスター、デレク・トラックスさん、こんにちは(ギター・マガジン3月号/2月13日発売でも表紙巻頭大特集を予定!)。今回は、皆さんのための実験ですよ。いつもどおり、ヘッドフォンを装着の上お楽しみください!

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実験1「素材編」を読む


実験2「なんでもスライド・バー編」を読む


実験3「自作スライド・バー編」を読む

【実験テーマ】スライド・バーの素材/形状/重さでギターの音はどう変わるのか?

■スライド・バーに関する噂
「市販品のガラス製スライドにはなんの値打ちもないね。酒屋に行ってボトルを買い込まなきゃダメだよ」

 これはスライド・ギター界の生き神様、ライ・クーダーさんのお言葉でございます。ボトルを買って、切って、自分で作れというわけです。ボトルというものは割れて高価な酒がこぼれてはいかんので分厚いガラスでできており、それがいい音の秘訣なんだと、ま、そういうわけなんですな。ライ・クーダーさんは見た目は大人しそうな方ですが、平気で毒も吐くタイプの方のようで「スライド弾くのにピック使う奴は●●●」だの、「スライドをレギュラー・チューニングで弾く奴は▲▲▲」だの、言いたい放題です。

 でもさぁ、そんなの好きずきでいいんじゃないの?とO型の私は思うわけですよ。どうせライ・クーダーは地下実験室を絶対に見ないし、ここは一丁、私が自分の好きなもので弦を擦りまくってやろうということになりました。「でもそれじゃ、何の実験にもなりませんよ」というデジマガ編集長W氏の言葉で我に返り、素材、重さで音がどう変わるかを検証するPart1、私が自宅にあるものでいろいろと擦って遊ぶPart2、そしてすみません、やっぱりライ様は正しかったとなった場合に「自作ってどうやるのか?」にトライするPart3に分けてみることにしました。

【実験環境】

使用機材
ギブソンUSA SG ‘61Reissue(※2000年製/Derek Trucks風改造品)
DR Pure Blues(11、14、17、26、36、46……Derek Trucks使用弦)
フェンダー 68 Custom Deluxe Reverb(アンプ)
ヴェムラム・ジャンレイ(オーバードライブ)
ヴァンデンハル(ケーブル)
スライド・バー各種

※セッティングなどについて
■アンプ/エフェクターのセッティングはすべて同じにしています。ギターはオープンEチューニングで、ピックアップはフロントにセットしています。
■今回はルーパーが使えないので、手弾きです。極力同じように弾いていますが、誤差が出てしまうことをご了承ください。
■実験で使用したスライド・バーは、現行市販品にこだわらず素材別にバラエティが富むことを優先し、個人所有物などが含まれています。
■今回、約30種以上のスライド・バーが登場します。一気に見ても、何が何だかわからないかもしれません。止めながら見る、先に原稿をひと通り読んでから興味のあるところを拾って見る、などが個人的にオススメです。
■本企画では、動画再生の際、モニター用ヘッドフォンの着用を推奨しています。

実験1 素材編

 ちょっとでもスライドをやったことがある人なら、ガラス製とスティール製では音が違うということはご存知だと思います。そうした素材の違い、それから重さの違いが音にどう影響するのか実験していきます……とその前に、このギターを見てください! デレク・トラックスの愛器に似せた改造が施され、ボディにサインが入っているところまでそっくり! し・か・も! ここに入っているサインは、ビリー・ギボンズ(ZZトップ)やレス・デューデック、ウォーレン・ヘインズ、それにデレク・トラックス本人などのレジェンド・クラスばかり! ひえー! こんな貴重なギターを貸してくださり、そしてこのあとに出てくる貴重なスライド・バーまで貸してくださったUMA氏に感謝しつつ、実験を始めます。

機材提供:UMA

01. スティール(小) 50g

 まずはスティール製の軽いものです。最初の1本なので、まだ音についてはなんとも言えませんが、とりあえず音色とサステインの具合がわかるようなフレーズを弾いてみました。

02. スティール(大) 113g

 いきなり、倍以上の重さです。これは1弦の音が強く、01に比べてくっきりしていますね。ちょっと重さに差があり過ぎて、操作性は、むむむ……です。

03. ブラス(小) 100g

 続いてブラス製です。私にはブラスの方がウォームというか、ダークというか、そんな感じに聞こえますが、いかがですか? え? わからない? では01に戻ってみてください。01がとても明るい音だったことがわかるかと思います。

04. ブラス(大) 120g

 これは、アタックがはっきりしているのですが、その後のサステインはまろやかですね。いずれにしろ、わずかな差なのですが……。

05. ソケットレンチ(小) 82g

 あ! これ好きです。アタックとサステインの音色の差が少なく、ブラスの“ガサガサする感じ”がありません(それが合う音楽やプレイもあると思います)。細身なのに重量があってサステインも十分、そして細いから「フレットの真上に持ってくるのが楽」(ピッチをとりやすい)と感じました。

06. ソケットレンチ(大) 137g

 基本はソケットレンチ(小)と同じ傾向ですが、よりクッキリした音に感じます。ここまででわかったのは、“重くなると音がクッキリする”という傾向です。

07. ガラス(Jim Dunlop210) 25g

 次は市販品、ジム・ダンロップのガラス製です。かなり軽い製品なのですが、この順番で手にすると本当に軽い! 音も軽いですね。そしてサステインが弱いです。1弦はどのバーでもよく伸びるのですが(アンプのセッティングかなぁ?)、最後の4弦12フレットの音でチェックすると、そのバーのサステインがよくわかると思います。
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08. ガラス(Jim Dunlop215) 50g

 こちらもダンロップ製です。ガラスも50gになると、しっかりしたサウンドになりますね。最後の音のサステインもソケットレンチよりは少し短いですが、及第点だと思います。で、このバーは01とまったく同じ重さですね。スティールの方がシャープで、ガラスの方が太い音がします。これは音色、サステイン、操作性などのバランスが良く、これから初めて市販品のバーを買ってみようという人にはオススメですョ!
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09. ボトルネック(小) 52g

 これは、08/ダンロップ215より短いバーですが、重量は少しだけ重いですね。動画ではわかりにくいかもしれませんが、08の表面はツルツルなのに対し、これは少しだけザラついています。そのせいなのか、08は「弦の表面をなでるだけ」でちゃんとした音が出ましたが、これは弦に押し付けるというか「沈める感じ」で弾かないと、ちゃんと鳴りません。ちゃんと鳴らすと、味わい深い音がします。イメージとしては、ダンロップは精度の高い国産ギター、こっちは作りは少し粗いがなぜか良い音がする米国産ギターという感じでしょうか。

10. ボトルネック(中) 72g

 過去に市販されていたボトルネック。傾向は09と同じですが、使いやすさと音のバランスがいいですよ! 私はコレ、好きです。

11. ボトルネック(大) 86g

 先ほど“重いバーのほうが、音がクッキリする”と書きましたが、これもクッキリしていますね! 金属製のものほど重量の差は大きくないんですが、ガラス製のボトルネックの方が影響は大きく出るのでしょうか? クッキリ感が強くなった気がします。

12. ボトルネック(内田勘太郎氏自作使用品/カルピス瓶) 75g

 キター!!! 内田勘太郎氏自作使用品/カルピス瓶です! 内田勘太郎さんは「バーはカルピスの瓶が最高!」と仰っていて、当時すでにレアだった瓶タイプのカルピスをわざわざ探してバーを自作していた話は有名ですが、これはその実物で、アコースティック・ギター・マガジン編集部に寄贈されたものです。テンション上がるわ〜、これが最も良い音でしょう、きっと。で、弾こうとしたら……入りません……指が。がーん。一応、指の先っちょを挿入して弾いてみましたが、いかがでしょうか? 重さ、ガラスの厚み、表面のツルツル具合がほど良く、サウンドも良いと思います。ただ、瓶の表面のカーブが独特で、慣れないと弾きづらいです。逆に言うと、慣れたならこれ以外では弾けないかもしれませんよ。

13. コリシディン(薬瓶)タイプ 28g

 これも、超有名ですね、デュアン・オールマン愛用のコリシディンという風邪薬の瓶と同じタイプのものです。実は初めて手にしたのですが、短い! 軽い! 指が蒸れる! 軽くてかなり扱いやすいのですが、正直サステインは弱く、音色も私の好きなタイプではありません。デュアンは天才だからOKなのか、それとも本物のコリシディンの瓶はまたひと味違うのか、凡才にはわかりかねるのでありました……。ただ、操作性は本当に良いです。サウンドはギターとアンプに委ね、バーには操作性を求めたのでしょうか、果たして。

14. Jim Dunlop デレク・トラックス・シグネチャー 44g

 続いてはこの企画の本丸、デレク・トラックス・シグネチャー! デレク仕様のギターで、このバーですよ! それでこんなぬるいフレーズ弾いてスミマセン!のひと言です。ところで、このバー、いいです! 音もいいし、扱いやすいし、サステインもあるし。なんだ? 何がコリシディンとそんなに違うんだ? ガラス自体がそれほど厚いわけではないのですが、瓶の底の部分が厚くなっていることがトーンに関係しているのでしょうか。これは素晴らしいですよ、指さえ蒸れなければ……。
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15. ガラス(凹凸あり) 40g

 これは国内のスライド・バー製作家(そんな人いるんですね)による作品だそうです。変わっていますね。動画でわかるでしょうか、花瓶みたいな、ランプの笠みたいな、凹凸が付いています。当てる場所によってトーンが変わったりするみたいです。なんか倍音の出方が独特なバーで、上級者向けの変化球といった感じです。

16. 陶器 61g

 これは、実際の重量より軽く感じます。アンプを通した動画ではわかりにくいかもしれませんが、生音で弾いた感じも軽快なサウンドです。意外と夏にいいかも!

17. ローズウッド 17g

 出た、木! 超独特! なにこれー? サステインがほとんどなく、ガサガサした音が目立ちます。極軽で、表面もザラザラだからでしょうか? コントロールしきれず、意図していない弦も鳴ってしまいましたね。


 さて、いろいろな素材/重量をチェックしてきましたが、ここまでで好きなバーは、05のソケットレンチ(小)、08のガラス(Jim Dunlop215)、10のボトルネック(中)72g、14のデレク・トラックス・シグネチャー(Jim Dunlop)です。ソケットレンチ以外はガラス製で、重さも軽過ぎないもの、ということで自分の好みが見えてきました。金属製は、プレーン弦はいいんですけど、巻き弦(今回あまり弾いていませんが)を弾いた感触が苦手なんですよね……。でも、そこがいいという人も当然いるはず。あなたの好みに近いバーは、あったでしょうか?

実験2 なんでもスライド・バー編

 ここからは身近なもので擦ってみようというコーナーです。ライ・クーダーが見たら激怒間違いなしですが、その心配が全くないのが悲しい……。では、気を取り直していってみましょう!

01. スマホ(iPhone6 Plus)

 実を言うとこれを撮る前に、一応iPhone5Sと弾き比べたんですよ。結果、6Plusの方が音は良かったんですが……やっぱり重さですかね? どうでもいい? ですよね!

02. ライター

 昔、何かの雑誌で山本恭司さんが「スライドを録りたかったんだけどバーがなかったから、そこらのライターでやっちゃった」というようなことを仰っていて、なんてカッコいいんだと思ったのですが……きっと“そこらのライター”は100円のヤツではなかったのでしょう。

03. 単2電池

 単2電池です。単3よりは音がいいんですが……重さでしょうか? どうでもいい? ですよね!

04. 10円

 10円玉です。音以前に、持ち方がわかりませんでした。

05. マグカップ

 こ、これは……これは、サウンドもサステインも今回の実験で一番良いのでは? みんな、デレク・シグネチャーよりマグカップだ!!!!!

06. スプーン

 スプーンを口にくわえてスライドする人、いますよね。でも、あの曲線のせいでうまく弦に当たらず……私は、手でもできませんでしたが。

07. 調味料入れ

 これは、もしやコリシディンより……。飲食店を経営している方、盗難にはご注意ください! これ、いいです!

08. 鶏の骨

 昔から、豚の大腿骨などがスライド・バーとして使われてきたそうな。ですのでモジョ的な、スペシャルな何かを期待したのですが……ただただ、悲しいです。

09. レンチ

 硬けりゃいいってもんじゃ……、長けりゃいいってもんじゃ……、ないとわかりました!

10. ホッチキス

 思ったより悪くなかったですが、基準が低くなり過ぎているとも言えます。

11. 指示棒

 長けりゃいいってもんじゃ……以下略。

12. スティック(YAMAHA Cozy Powell Model)

 へぇ、コージー・パウエルのスティックって、こんなに太かったんですか!

13. メガネ

 動画でメガネをかけた時の自分の顔を見て、「あ、ほっとしている」と思いました。

14. ギター・マガジン

 うん、まぁ、悪くないんですけど、やっぱり表紙●●●●●●●(規制がかかりました)。

15. 青果

 きゅうり、サステインないな。


 以上、なんだか子どもの日記以下のコメントになりましたが、いかがでしたでしょうか? なんでも擦ればいいってもんじゃない──やはりライ様は正しかったんでしょうか? それではライ様の言う通り、自作にもトライしてみましょう。

実験3 自作スライド・バー編

01. ステンレス・パイプをグラインダーでカット!

 ステンレス製のパイプをグラインダー(3,000円くらいで買えるんですよ)でカットして、自作のバーを作りましょう! 
 まずは万力でパイプを固定してって、コレ、絶対に自宅ではできませんよね? 騒音や火花も凄いし。スタジオ、じゃなかった地下実験室でも心配なくらいでした。できたバーは30g。これだけ苦労して作ったバーも、バナナよりちょっとマシな程度で、実践しておいてなんですが、これはオススメできません……。

02. ボトルネックを作るための正しい方法

 これは超簡単! 好きな酒を飲んだら、勢い一発、手刀で「ハッ!」ってやればOK。ただし、その前に空手の修行を30年くらいやってください。もう少し早く作りたいというわがままBOYは、以下の方法でどーぞ。

① ボトルの首の長い酒を買う(焼酎系よりワインの方が適したものが多いよ! それから20歳未満のキッズは、おとーさんに買ってもらおう)
② ボトルを空にしたら……(20歳未満のキッズは、おとーさんに飲んでもらおう)
③ 適当な位置に印を付け、棒ヤスリを使って、ボトルの周囲にぐるりと“できるだけ深く”罫書き線(傷)を付けます(ガラスの粉の飛散に注意だ)。
④ 傷に沿ってタコ糸を巻きつけ、ライター用のオイルを垂らして糸に染み込ませます。
⑤ チャッカマンで、糸を燃やします(火の気に注意!)。
⑥ 十分熱したら、冷水を張った洗面器にドボンと付けます!

 運が良ければ、ここでパキンと切断されます。が、大抵は“ジュッ”というだけ! その場合は④〜⑥を繰り返します。今回、私は実験に先立ちボトルを切ったのですが、④〜⑥を3回やっても割れませんでした。イラついて、チャッカマンで直接ボトルを炙っていたら、水に付けなくても勝手にパキンと音を立て綺麗に割れましたよ! ここで、工程③で“深くキズをつけていた”ことが役立ったのです。はぁ、よかった!

結論:スライドやるならマグカップで!

 えー、真面目な話、バーも1本1本すべて音が違いますから、まずは素材編をもう一度よく見て好みの素材を見つけ、とにかく1本買ってみるといいと思います。私もバンドでスライドをやる機会はまったくないんですが、たまに家で弾くととても気分がいいんですよ。ぜひ皆さんも、これを機会にご機嫌なスライド・ライフを満喫してください!

 それでは次回、地下25階でお会いしましょう!

【注意】
グラインダーの使用、また、ボトルネックの製作方法を実践する際は、個人の責任の範囲内で細心の注意をはらって行なってください。万が一発生した事故につきまして、デジマート地下実験室では責任を負いかねますのでご了承ください。

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プロフィール

井戸沼 尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。

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