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ギターにとって“最高の保管方法”を考える in寺田倉庫(Studio GVIDO)

The best storage method for Guitar in Warehouse TE

  • 取材・文:熊谷和樹 写真:八島崇

数ある楽器の中でも繊細な部類に入るアコースティック・ギター。特に気候の変動が激しいここ日本では正しい保管処置を施さないと思わぬ故障を招くことがあるので注意が必要だ。ここでは、これまで貴重なギターを数多く取り扱ってきた東京・小川町の名店“Blue-G”の島居正明氏(メイン写真左)と、老舗倉庫会社“寺田倉庫”の楽器担当・飯嶋高志氏(メイン写真右)にアコースティック・ギター保管の注意事項について語らっていただいた。寺田倉庫が運営し、その万全な保管体制で話題を呼んでいる楽器倉庫“Studio GVIDO”の詳細も紹介しているので併せて参考にしてほしい。

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保管上のさまざまな危険

──島居さんはこれまで多くのアコースティック・ギターを扱ってきましたが、保管する際に特に注意することはなんですか?

島居 当たり前のことですけど、一番怖いのは乾燥ですね。特に最近の手工ギターは鳴らすためにギリギリの強度で作ることもありますから、ひどく乾燥させてしまうと割れてしまいます。あるお客様で実際にいたんですけど、最近の手工ギターと昔の国産ギターを同じ環境で保管していたら、前者だけ傷めてしまったということがあったんです。それくらい最近のギターには繊細なものが増えてきていますから、湿度にはよく注意しています。

飯嶋 寺田倉庫でも温度と湿度管理は厳重に行なっています。当社はワインや映像のマスター・テープなども扱っていますが、いずれも温湿度には非常に繊細なもので、ちょっとした変動で状態が変わってしまうんです。ですから24時間体制で調整できるシステムを導入しています。

──どれくらいの湿度が理想なんですか?

島居 50%あたりが理想的です。40%を切ってくると危ないですね。最近は意識も高くなってきて、きちんとケースにしまう方も増えてきましたけど、そうなると今度は塗装荒れの問題が出てくるんですよね。特にシェラック塗装のギターはケースの内ボアと強く密着させていると跡がついてしまうんです。音には影響ないんですが、見た目は損なわれます。

──他にはチェッキングもアコースティック・ギターの事故でよく聞く話ですが。

島居 かなり多いですね。特に北海道など寒い地域にお住まいの方からよくお問い合わせをいただきます。寒い場所から急に温かい場所へ移動すると結露してしまうわけなんですけど、これは実は夏場も注意が必要です。冷房の効いた空間からいきなり外へ出てしまうと同じことが起こるからです。こういう時はケース内の温度をその場所の温度に馴染ませてからギターを取り出すようにして下さい。

災害対策

──可能な限りリスクなく楽器を保管するのであれば、やはり楽器店のように温度、湿度調整をした部屋でスタンドに立てたり、ハンガーに吊るしたりするのが一番でしょうか?

島居 そうですね。しかし大きな地震がきた時はこれも危ないです。実際、東日本大震災の時は多くの楽器店で被害が出ていましたから。

──Blue-Gは大丈夫だったんですか?

島居 私は阪神・淡路大震災を経験していましたから、普段からスタンドはもう床に打ち付けてしまって、ハンガーには別途固定具を付けていました。幸いあの時は被害を出さずに済みました。

──寺田倉庫ではこうした災害対策でどんなことを講じられているんですか?

飯嶋 まず地震に関してですが、倉庫自体が強い耐震構造になってるので、品物に合わせてしっかりと対策をすれば被害を抑えることができます。火災対策では、全館禁煙にするなどして火のもとを絶ち、予防に努めています。また万が一火災が発生した際は、水損などを防ぐために、スプリンクラーや粉末消火器をできる限り使わず、ガスで空気中の酸素濃度を下げて消火する方法をとっています。

島居 それは素晴らしいですね。楽器店でもさすがにそこまではできません(笑)。

重宝されるサービス

飯嶋 ちなみに先ほど島居さんがおっしゃったギター・スタンドを床に打ち付けたり、ハンガーを使ったりということは、単なる倉庫ではできないと思いますが、寺田倉庫の楽器倉庫では室内を自由にカスタマイズできるようになっています。

島居 なるほど。お客様の中には稀に賃貸をして楽器保管をされている方もいらっしゃいますが、賃貸でもそれは難しいですからね。

──賃貸とはすごいですね(笑)。

島居 ご家族に内緒でギターをコレクションされている方がけっこういらっしゃるんですよ。ご家族に本数を制限されているけれど、どうしても入手したいギターがある。そういう時に別に部屋を借りてしまって、趣味部屋のようにして楽しまれるわけです。

飯嶋 そのあたりはワインでも美術品でも、どの趣味の世界にも共通していますね。当社でもそうしたご事情を念頭において、“ダイレクト・メールは送らないでほしい”“自宅の固定電話にはかけないでほしい”といったご要望を事前にお伺いして、安心してご利用いただけるよう心がけています。

島居 そういうことは意外と重宝されるサービスだと思います。あと最近はネット通販が増えてきていて、ギターを発送する機会が増えているんですが、ご家族に内密なので“営業所止めにしてほしい”という要望を受けることが多いんです。ただ、運送会社の営業所にはそうした保管環境がありませんから、こちらとしては気が気でないという状態で……。倉庫止めじゃないですけど、寺田倉庫ではそういうこともやられているんですか?

飯嶋 ええ。おっしゃるとおり、営業所は保管する場所ではありませんから、楽器やワインなどを置いておくと状態が変わってしまいます。そうしたものは弊社へお送りいただいて、きっちりと保管し、お客様がいらっしゃった時にお渡しするようにしています。

寺田倉庫の強み

──今日は島居さんに寺田倉庫の楽器倉庫(Studio GVIDO)を見ていただきましたが、印象はどうでしたか?

島居 温湿度、空調の管理もしっかりされていますし、素晴らしいです。こういう万全の設備は個人で整えることはなかなかできませんから、そういう意味でも貴重なサービスだと思います。先ほど可能な限りリスクのないよう楽器を保管するには、という話が出ましたが、それはまさにここに預けてしまうことだと思いました(笑)。あと倉庫内に関して良いと思ったのは、この空間を自分の部屋のように自由にレイアウトできることです。天井が高いので、棚を作ったりすればかなりの収納能力がありますね。貴重な楽器は破損すると取り返しがつかない。もちろん直すことはできますけど、もとの価値に戻すことはできません。そういう意味で、歴史的、文化的価値のある楽器や本当に大切にしているギターをお持ちの方はぜひ検討してみてほしいですね。

──また、この倉庫にはリペア・ルームや録音設備がある音楽スタジオが併設されていて、保管以外のメリットがあるというのもポイントですよね。

島居 便利ですし、面白いですよね。音楽スタジオはアコースティック・ギターのライブをやるにはちょうど良い規模感です。雰囲気もあって良いですね。ギター・ファンは横のつながりも強いですから、ギター仲間を招いて演奏を楽しんだりできるというのは素晴らしいと思います。

飯嶋 安全に品物をお預かりするというのはもちろんですが、寺田倉庫は文化的価値の高い商品を多くお預かりしてきた経緯もあって、そこに付随する楽しみもサポートできるようなサービスにも力を入れています。例えば、ギター仲間とスタジオで演奏されるのであれば、お料理やお酒を用意したり、またバンドを招いてくることも可能なんですよ。

──そうなんですね。

飯嶋 当社としては、単なる倉庫ではなくて、今以上に楽器が輝くスペース、楽しめるスペースを提供したいと思っています。これからも楽器を大切にされているオーナー様にとって最高の空間にしていきたいと思っていますので、ご興味のある方はぜひご利用いただきたく思います。

倉庫の内観。写真はMサイズ(3坪/月額120,000円)で、この他Sサイズ(2坪/月額80,000円)、Lサイズ(4坪/月額160,000円)が用意されている。

寺田倉庫が運営する楽器倉庫“Studio GVIDO”の廊下。天井部分には加/除湿機と空調が設置されており、フロア全体を温度20℃、湿度50%前後をターゲットに管理されている。

島居氏にご持参いただいた1941年製のマーティンD-18。貴重なギターだが、ビンテージは時間が経過している分、新しい楽器より安定しているものも多い。

楽器倉庫に併設されている音楽スタジオ。レコーディング設備もひととおりそろっているので、デモ音源などはこの場で作ることも可能。この他、寺田倉庫の楽器倉庫には1〜2人用の練習スタジオも併設されている。


アコースティック・ギター・マガジン 2016年6月号 Vol.68でも展開中!

アコースティック・ギター・マガジン2016年6月号 Vol.68 本記事はリットーミュージック刊『アコースティック・ギター・マガジン 2016年6月号 Vol.68』でも「ギターにとって“最高の保管方法”を考える in寺田倉庫(Studio GVIDO)」のタイトルで特集されている。表紙・巻頭では、福山雅治主演の月9ドラマ「ラヴソング」のヒロインに役者として抜擢され、現在最も注目を集める期待のシンガー/ソングライター、藤原さくらにクローズアップ。さらに、「GIBSON ACOUSTIC 2016 ~ギブソン・アコースティック2016徹底ガイド」はデジマート・マガジンと連動して展開している! Studio GVIDOと併せて、アコギストは要チェックだ。

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製品情報

楽器倉庫/Studio GVIDO

【問い合わせ】
スタジオ グイド TEL:0120-93-4203 http://studio-gvido.terrada.co.jp/ja/
所在地:東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫本社ビル3F
営業時間:10:00-22:00(倉庫利用のみの場合は18:00まで、電話受付は9:00~17:30)
定休日:土曜日、日曜日を除く祝祭日、年末年始
アクセス:東京モノレール羽田空港線 天王洲アイル駅「中央口」より徒歩約5分 りんかい線 天王洲アイル駅「B出口」より徒歩約4分 専用駐車場あり

寺田倉庫(本社)

【問い合わせ】
寺田倉庫 TEL:03-5479-1611 http://www.terrada.co.jp/ja/
住所:東京都品川区東品川2-6-10
営業時間:9:30~18:00(電話受付は9:00~17:30)
定休日:土曜日、日曜日を除く祝祭日、年末年始

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