楽器探しのアシスト・メディア デジマート・マガジン

  • 特集
  • 『THE EFFECTOR book』連動!

モダン・オーバードライブ 〜脱クラシック系オーバードライブという選択肢

オーバードライブ

エフェクター・ファンのバイブルとして高い人気を誇る『THE EFFECTOR book』(シンコーミュージック刊)。その最新刊であるVol.32では、“モダン・オーバードライブ”がフィーチャーされている。圧倒的な王道としてあらゆる世代から支持を集めるクラシック系オーバードライブに対して、その世界観にのみ縛られることをよしとせず、デザイナーが自由な発想で研究開発を続け、その結果として生み出された新世代型歪み系ペダルたち。“ペダルボー道”を邁進するギタリストにとっては必読のコンテンツが収録されているので、ぜひ手にとってみてほしい。ここでは同企画と連動し、現在の市場で注目を集めている現行のモダン・オーバードライブを計11機種、紹介していこう。

このエントリーをはてなブックマークに追加

BOSS OD-1X OverDrive

オリジネイターの系譜を受け継ぎつつ究極進化も実現

●価格:オープン

デジマートでこの商品を探す

 ボスのオーバードライブと言えば、第1号機であるOD-1以来、数々の名機を輩出し、現在に至るまで多くのプレイヤーを魅了し続けている。その系譜に連なる本機は、伝統のボス・サウンドに加えて、ブティック・アンプの歪みを思わせる上質な質感も備えているといった印象。ドライブ・サウンドは非常に滑らかで、実にシルキー。エフェクターらしい広がりのある倍音というより、原音に絡み付くような繊細な倍音とアンプライクなキャラクターを持つ。音作りのポイントは2つのトーン・コントローラーだろう。効きが非常に幅広いため、ここは慎重に調整したい。たとえばLOWは、アンプ側で設定した低域に対して微調整を施す感覚で扱うのが良いだろう。一般的なエフェクターのように大胆に上下するのはNG。細かく調整して初めて、思わずニヤリとする玄人好みの絶妙なチューニングが施されていることを発見できる。同様にHIGHも、ピッキングの出方を調整する感覚でシビアにアジャストしたいところ。そうすれば、本機が何を目的としてデザインされたかが自ずと理解できるはずだ。フュージョン系の深く滑らかなドライブ・サウンドからモダン・ブルースに最適な張りのあるクランチまで、実に幅広いジャンルの歪みをカバーする非常に実戦向きなモデルと言える。

室長のプレイヤーズ・コメント

アンプを1ランク上げたような倍音のノリと分離の良さ!

 かつてボスの「OD-1」「SD-1」にはさんざんお世話になったクチですので、今回の「OD-1X」の試奏はドキドキしながら臨みました。ボスの最新のオーバードライブの実力やいかに?
 まず、ツマミをすべてフラットにしてストラトで弾き始めたのですが、最初っから音が良い!! 巻き弦の音や空ピックの音にキラキラとした倍音が絡み、アンプを1ランク上げたような歪み方をします。動画冒頭のようなジャキジャキとしたカッティングって、ダメなペダルだとダマになりやすいんですよ。塊になってしまうというか……。ところが、この「OD-1X」は分離が良いので、それぞれの弦の音程やブラッシングの質感がしっかりと聴き取れる、それどころか旨みが増していることまでわかります。素晴らしい! ドライブを上げてシングル・トーンで弾いた場合でも、“歪み量は増えるがニュアンスは損なわず、旨味を増している”ことがわかるかと思います。試しにハムバッカーを搭載したES-335でも弾きましたが、印象は同じですね。
 もう一つ素晴らしい点は、“似た音のペダルが思い浮かばないこと”です。非常にテイスティなサウンドなのに、ビンテージ臭はせず、モダンな香りがします。これは新しいなぁ。ボス・ファンはもちろん、より高価格帯のペダルを好む人にも、ぜひ試してみてもらいたいと思いました。

[Specifications]●コントロール:Level、Low、High、Drive●スイッチ:ON/OFF●端子:Input、Output●サイズ:73(W)×129(D)×59(H)mm●電源:006P(9V電池)/9V DC

【オフィシャルHP】
【古川昌義&cinema staff × OD-1X特集はこちら】

One Control Strawberry Red Over Drive

BJF設計にハズレなし! さすがのクオリティを実現

●価格:17,500円(税別)

デジマートでこの商品を探す

 ミニ・サイズでありながら、良質なサウンドと機能性に優れた設計により、一躍スタンダードとして認知されるようになったワン・コントロールのエフェクター・ラインナップ。回路デザイナーを務めるビヨン・ユールが、その経験を結集して設計した本機は、単なるオーバードライブではない。本当にクリーンでシンプルなブースト、良質なクランチ・ドライブ、往年のチューブ・アンプを思わせるダイナミックでナチュラルなハード・クランチまでをカバーする。DRIVEを上下することで得られる歪みのバリエーションは驚くほど幅広いが、ギター側のボリュームにもシビアに追従。つまり本機はアンプの感触に近いのだ。実際に試してみると、おそらくかなりゲイン幅の広いギター・アンプを操っているような感覚を抱くだろう。お気に入りのチューブ・アンプにつなげたならば、本機はそのアンプのゲインをプッシュし、さらなるロング・トーンや深いドライブ・サウンドを提供してくれるはず。練習スタジオによく置いてあるトランジスター・アンプと組み合わせる場合には、基本の音色を本機である程度まで作り込み、前段に軽いクランチが得られるオーバードライブやブースターを置くセッティングがおすすめ。こんなに使えて、非常にコンパクト。手元に置いて損はないペダルだ。

室長のプレイヤーズ・コメント

ギター本来の音を損なわない、まるでチューブ・アンプのような歪み!

 昨今のミニ・ペダル人気を牽引しているブランドの一つ、ワン・コントロール。人気の秘密は、ミニ・ペダル=お手軽という式に決して当てはまらない、驚きの音の良さにあるのでしょう。
 この「ストロベリー・レッド・オーバードライブ」も、非常に良質なサウンドのペダルです。DRIVEノブをどの位置に設定してもギター本来の特徴を失うことなく、極薄クランチからゲイン高めのオーバードライブまでスムーズに音が変化します。まるで上質なチューブ・アンプのように心地良いコンプレッション感があって、タッチに対する反応も良く、ギタリストにとって弾きやすい音が苦もなく出てきます。この音質は、筐体の大きさのみならず、価格から考えても驚異的。TREBLEコントロールは、異常に効きが良いと言うよりは、現実的に使う範囲の音をシビアに調整するためのノブという印象。使えない音の範囲までコントロールできても意味がないので、私にはこちらのほうが使いやすいです。
 シングルコイルをつなげばシングルコイルらしい倍音の乗り方が強調され、ハムバッカーをつなげばパワフルで音圧もありますが、決して潰れたり引っ込んだりせずハムらしさをアウトプットしてくれます。ちょっと優等生すぎるので気になるところも指摘してやりたいのですが、見つかりません……。これは、売れるのも当たり前ですね。納得の良質ペダル、お値段以上です。

[Specifications]●コントロール:Treble、Vol、Drive、Low(側面トリム)●スイッチ:ON/OFF●端子:Input、Output●サイズ:47(W)×100(D)×48(H)mm●電源:006P(9V電池)/9~18V DC

【オフィシャルHP】
【[Alexandros] × Strawberry Red Over Drive特集はこちら】

JHS Pedals SuperBolt V2

この音さえあれば「天国への階段」も昇れるハズ!?

●価格:オープン

デジマートでこの商品を探す

 マニアックな製品作りで好評のJHSペダルズ。その中でも特に人気のモデルが、バージョン2にアップデートされた。前身モデル「スーパーボルト」は、60年代のスプロ・アンプをモチーフにして設計されたもので、スプロと言えばジミー・ペイジがレッド・ツェッペリンのレコーディングで愛用したことが知られている。オリジナル・スプロが持つクラシックな音色は独特のクランチ感を宿していたが、そのエアー感とコンボっぽい箱鳴りを見事に捉えていた。本機の特徴は、VOLUMEおよびTONEコントロールに改良を加え、音色と操作性にさらなる磨きをかけた点。特にVOLUMEは、パワー・アンプによる歪みが加わっていくかのごとく、音量だけでなく音色にも大きな影響を与える。それは“コンプ感の変化”と言い換えることも可能で、このチューニングはマニアックにして、非常に実用的だ。TONEは、前身モデルと比べてスウィート・スポットの幅をさらに拡張。暗め/明るめの調整が行ないやすくなった印象を持つ。ゲインも2段階で切り替えられるので、音に変化が付けやすい。本機は70年代ロックに目がない向きには欠かせないペダルと言えるだろう。特に、いわゆるダーティ・クランチを求める人は最高の1台と感じるはず。

室長のプレイヤーズ・コメント

小型ビンテージ・アンプのコンボ感までリアルに再現!

 「アングリー・チャーリー」が大評判のJHSペダルズ。私も気になっていました。この「スーパーボルトV2」は、スプロ・アンプのサウンドを狙っているとか。……またもう、マニアックだなぁ。
 まずはGAINスイッチを“低め”のほうに倒して、試奏スタート。その場合、筐体右下のLEDが青く輝きます。“高め”だと赤なので、動画を見るときは気をつけて見てください。で、DRIVEノブも低めに設定したときの、ごく軽いクランチが絶妙ですね! この感じをアンプで出して録音してみると“汚くなり過ぎている”ことが往々にしてあるので、この“ほど良いクランチ感”は非常に好印象です! そのポイントからDRIVEを上げていくと、低音弦がジュワーっとしてくるのがわかるでしょうか? この、強いコンプ感を伴う飽和した感じ、ビンテージの小さな真空管コンボ・アンプのボリュームを上げた感じが、実にうまく再現されています! ちなみに私、このペダルをスタック・アンプで試してみたことがあるのですが、そのときも見事にコンボ感が出ていました。一体、どうなっているんだろう?
 その後、DRIVEを上げたり、GAINスイッチを“高め”にしたり、ES-335で弾いたりしてみましたが、歪みが深くなろうが浅くなろうが、ハムだろうがシングルだろうが、一貫して60~70'sのグッド・サウンドがしました。当時の音が好きな人は、必携のペダルです!

[Specifications]●コントロール:Volume、Tone、Drive●スイッチ:ON/OFF、Gain●端子:Input、Output、Remote Gain●サイズ:75(W)×124(D)×57(H)mm●電源:9V DC

【オフィシャルHP】

TDC-YOU by Studio You 007 Creamy Drive

録音スタジオ生まれの実戦即応型オーバードライブ

●価格:38,000円(税別)

デジマートでこの商品を探す

 大阪でスタジオを運営する会社が製作するハンドメイド・ペダル。“クリーミー”と命名された本機は、その名の通り、原音を活かしたシルキーでとろけるような歪みが持ち味だ。音色の傾向は、“JRC4558(艶あり)”オペアンプとゲルマニウム・トランジスターが宿したキャラクターによる部分が大きいのだと思われる。歪み感は少なく、どちらかと言えば倍音の響きや音抜けに重きを置いた設定が施されているとの印象を持った。ハムバッカー/シングルコイルともに相性は良い。コントローラーは、常時細かく調整したいLEVELとGAINが大型ノブ、一度決めたらあまり触らないであろうセミ・パラメトリックの3バンドEQは小型ノブを採用。EQ類は、フラット位置でマイルドな歪みを生む。音作りの要となるのが、中域を司る2つのノブだ。たとえば、シングルコイルではM FREQ=10時くらい、MF=1時くらいの位置で、GAINを高めに設定すれば、80年代のTSサウンドに近い響き。M FREQ=3~4時、MF=2時の位置で、GAINを低く設定すれば、良質なプリアンプ・ブースターとして機能する。低域を操るLFは、12時位置を基本として、アンプからの出音に合わせて微調整する使い方がいいだろう。積極的にサウンドメイクに役立てても面白いし、踏みっ放しでも使える良質なペダルだ。

室長のプレイヤーズ・コメント

“当たりのTS”をベースに、さらに好みに調整できるドライブ・ペダル!

 実は今回、初めてTDC-YOUの製品を触らせていただきました。大阪でこだわりのペダルを作っており、プロのユーザーも多いとか。音を出して、納得いたしました。
 第一印象は、“クリーミー・ドライブとはよく付けたなぁ”というものです。粒がキメ細かく、マイルドな歪みは、まさにクリーミー! そして、この感じは聴き覚えがありますよ……そう、TS系ですね。ただし多くのTS系は、アンプがクリーンの状態で単体で弾くと“何だか弱々しい”、“抜けてこない”、“弾きにくい”などと感じる場合があるのですが、この「007クリーミー・ドライブ」は歪みの量こそ抑え目ではあるものの、美味しい帯域がしっかりとプッシュされ、適度なコンプ感も心地良く、弾きにくさはまったく感じません。むしろ、実に良い音なので、いつまでも弾いていたい気になります。何だか“当たりのTS”を弾いているような感じです。ただ、どんなに良いTSでも、普通はハムバッカーとの相性の悪さは如何ともし難いのですが、本機はハムともバッチリ合いますね!
 本機の特徴は、細やかな設定ができるEQセクション、特にミドルの調整をシビアにできる点でしょう。“TSは、あのミドルの不自然さが好きになれない”というアナタ! この「007クリーミー・ドライブ」なら、必ず美味しいポイントを見つけられます。その際は、引き算のイメージでポイントを探すと良さそうです。
 TSに苦手意識を持つ人、TS大好きでストラトがメインだけどたまにハム搭載機も弾きたい人、そしてTSは関係なく、マイルドで上質なオーバードライブが欲しい人にオススメです!

[Specifications]●コントロール:Level、Gain、LF、M Freq、MF、HF●スイッチ:ON/OFF●端子:Input、Output●サイズ:92(W)×120(D)×54(H)mm●電源:006P(9V電池)/9V DC

【オフィシャルHP】

Wampler Pedals Euphoria

クラシックを研究し尽くしてモダン・スタイルに再構築

●価格:35,000円(税別)

デジマートでこの商品を探す

 本機は、もともと「エクスタシー・ドライブ」というモデル名でラインナップされていたもので、名称のみ変更したバージョン。同社のスタンダード・ドライバーの一つである。アメリカンでキレの良いクランチ・サウンドは、実に使いやすい印象。クリーンから軽いクランチ設定は心地良いヌケを生み出し、ドライブを深くしていくと、ややダーティな歪みが生まれる。歪みの個性はVOICINGスイッチにより、オーバードライブ/ディストーションライクな歪み/クリーン・ブースト的な歪みの3種類から選択可能だ。TONEはパッシブで、伝統的なオーバードライブを連想させるもの。かなりオープンな(明るい)響きが得られるので、大型アンプとの相性が良い。TONEとは別に独立したBASSにより低域を調整することも可能で、これが本機のポイント。通常、アンプの音量を上げれば自ずと低音は出てくるが、これはいわゆる箱鳴りとも違った響きで、スピーカーが大きく揺れることで発生するもの。その症状が出た場合、高域を保持しながら低域をスッキリさせる上で有効となる。逆に自宅で演奏する際、小音量だと少し物足りない低域を付け足す目的でも使用可能だろう。これにより音色そのものだけでなく、フィーリングやニュアンスを調整することができる。

[Specifications]●コントロール:Tone、Bass、Volume、Gain●スイッチ:ON/OFF、Voicing(Smooth/Open/Crunch)●端子:Input、Output●サイズ:78(W)×125(D)×57(H)mm●電源:006P(9V電池)/9V DC

【オフィシャルHP】
【参考動画】

J. Rockett Audio Designs The Dude

伝説のアメリカン・ブティック・アンプを想起させる強い個性

●価格:オープン

デジマートでこの商品を探す

 昨今話題のJ・ロケット・オーディオ・デザインズが手掛けたオーバードライブ。いわゆるダンブル・アンプをイメージしてデザインされている。オリジナルのダンブルを鳴らしたことがある人はあまりいないだろうし、そもそもダンブルはオーナーからのオファーを受けてカスタム・ビルドされるアンプだけに、年代やモデルによって音色が微妙に異なる。本機はどちらかと言えば、ドライブ感のある80年代以降の個体をモチーフにしている模様だ。ダンブル・アンプの個性としては、驚くほどのレスポンスと圧倒的パワーが挙げられ、同じ100W出力でも他の100Wアンプと比べると、ダンブルの響きはその音圧が半端ない。本機は、そうしたパワー管由来の音の芯の太さなど、ダンブルが持つ揺るぎない個性を確かに再現。強い押し出し感やロー・ミッド~ミッド・ハイに個性を持たせたチューニングは、丹念に作り込まれたアンプそのものの歪みを連想させる。ブルース系と言うよりはロック系に向いたサウンドで、オープンで明るい音色が印象的だ。ハムバッカーもしくはパワーのあるシングルコイルを搭載したギターとは、特に良いマッチングが得られるだろう。ダンブル云々は抜きにして、自分が愛用するギターの音色が気に入っている人には最高の相棒になってくれるはずだ。

[Specifications]●コントロール:Level、Ratio、Treble、Deep●スイッチ:ON/OFF●端子:Input、Output●サイズ:59(W)×104(D)×47(H)mm●電源:006P(9V電池)/9V DC(センター・マイナス)

【オフィシャルHP】
【参考動画】

Crews Maniac Sound Quadrive

ブランドのポリシーを体現する、突き詰めた設計思想

●価格:34,000円(税別)

デジマートでこの商品を探す

 マニアックという言葉をブランド名に置いた以上、一筋縄なサウンドは作れないというクルーズ・マニアック・サウンドのオーバードライブ。かなりのロー・ゲインから、ツイード・アンプで作るドライブ程度のハード・クランチまでをカバーする。響きの傾向は、いわゆるBEANOサウンド(ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトンのアルバムで聴ける、ドライで倍音がリッチな歪み)を思い浮かべると想像しやすいだろう。操作系もマニアックで、GAIN、OUTPUT、3バンドEQ、音色全体の質感をコントロールするCONTOURに加えて、次段に接続したペダルやアンプに作用するIMP-ADJUSTを装備。これは、受け側となるアンプやペダルに対して音色の微調整を行なうもので、大音量でなければあまり効果も実感できず、一見意味がないように思うかもしれない。しかし、レコーディングの場面などでは、音を練り上げる最後の調整として違いを生むはずだ。よって他のペダルとの相性も良く、前後に手持ちのペダルを加えて拡張性を持たせた使い方もおすすめ。60~80年代ハードロックのドライブ・サウンドが好きな方は、ぜひチェックしてみてほしい。ちなみにモデル名は、オペアンプを4つ使用していることに由来している。

[Specifications]●コントロール:Gain、Contour、Imp-Adjust、Output、Bass、Middle、Treble、Boost Level●スイッチ:Drive、Boost●端子:Input、Output●サイズ:140(W)×130(D)×62(H)mm●電源:9~15V DC(15Vアダプター付属)

【オフィシャルHP】
【参考動画】

Chellee Guitars & Effects Odie

高級ブティック・ペダルに挑戦状を叩き付けた野心作

●価格:16,000円(税別)

デジマートでこの商品を探す

 本機は、いわゆるブティック・ペダル(高級機)と同様のサウンド・クオリティをロー・コストで実現することにより、昨今のペダル市場と高騰する価格帯に向けてのカウンター的な存在となっているモデル。“トランスペアレント系オーバードライブ”との謳い文句通り、ギター・サウンドに透明なサウンド・レイヤーを加えることで、音色自体をクリアかつ艶やかにするチューニングが施されている。ペダル自体で強い歪みを生み出すというよりは、アンプやギターとの兼ね合いでサウンドに少しのキラメキやプッシュ感を与えることを目的としているわけだ。サウンドが明瞭で強い押し出し感を備えた個性は、確かに高級機に通じるものがある。コントロール系は、DRIVE、TONE、VOLUMEに加えて、現代的なオーバードライブにおいては鉄板の仕様とも言える“ダイオード/ MOSFET/クリッピングなし”という3段階の切り替えスイッチ(TEXTURE)を装備。さらにVOICINGスイッチによって、全体のサウンド傾向を3種類から選べるのもポイント。このスイッチによってアジャストできる味付けが非常に優秀で、似たような音色だけどファット系かシャープ系どちらのオーバードライブを買うか悩む……という場合、本機を選べばそのどちらの音色も手に入れることができる。

[Specifications]●コントロール:Drive、Tone、Volume●スイッチ:ON/OFF、Texture、Voicing●端子:Input、Output●サイズ:66(W)×111(D)×54(H)mm●電源:006P(9V電池)/9~18V DC

【オフィシャルHP】
【参考動画】

Walrus Audio Mayflower

あらゆるスタイルに対応してくれる懐の深い1台

●価格:25,000円(税別)

デジマートでこの商品を探す

 ここ数年で頭角を現してきた話題のブランド、ウォルラス・オーディオの歪み系。本機はシンプルなオーバードライブで、鉄板とも言える往年のクランチ・サウンドを連想させる、ウォームでジューシーなミッド・レンジが特徴的なモデルだ。エアリーでギターの芯の音がドライブ・サウンドに見え隠れする響きが印象的。TREBLEの設定によってキャラクターが変化し、下げ目だとセミアコとのコンビが良さそうだし、上げ気味にするとハムバッカーによるエッジを効かせたドライブ・サウンドにも対応する。とは言え、やはりもっとも相性が良いと感じたのがシングルコイル。全体の歪み具合もそれほど深くないので、扱いやすい音色が得られる。音作りに当たっては、まずBASSをセンター位置(または少し下げ目)に固定した状態から始め、TREBLEとGAINを操作することでサウンドを作り込み、最後にBASSで微調整するという方法が良いだろう。アンプは、フェンダー系クリーン~ライト・クランチ程度のフラットなキャラクターを持ったモデルとの相性が良さそう。歪ませても低域が存在感を発揮するので、多弦ギターを愛用していてアンプ側はそれほどドライブさせない、というようなソリスト用のリード・ドライブとしてもおすすめしたい。

[Specifications]●コントロール:Level、Drive、Bass、Treble●スイッチ:ON/OFF●端子:Input、Output●サイズ:74(W)×120(D)×58(H)mm●電源:9V DC

【オフィシャルHP】
【参考動画】

SviSound OverZoid oz02

個性的なデザインに頑固で屈強な歪みを注入

●価格:オープン

デジマートでこの商品を探す

 ユニークなルックスで彩られた筐体の内部に昇圧パーツを備え、24V動作を実現したサウンドが個性的なオーバードライブ。その操作系は、GAIN、TONE、VOLUMEに加えて、クリッピング(歪みの質感)を変更する3段階のミニ・スイッチを装備した王道タイプだが、音色の傾向は一般的なオーバードライブとは少し異なる。アンプに例えると、その歪みはプリアンプというよりもパワーアンプでのドライブ感に近い印象を持った。スッキリと抜けてくるのではなく、太く変化する感覚で、誤解を恐れずに言うならば、誰が使っても良い音がするという素直さはない。70年代ロックのいなたいフィーリングやストーナー・ロックで聴ける拳骨のような歪みに近く、非常に頑固な個性を持つ。サン・アンプのボリュームをある程度まで上げたような音色と表現すれば、わかるだろうか。“コード1発”“無敵のリフ・ワーク”“ヘヴィで塊のようなギター・サウンド”… …こういったロッキンなキーワードが実にハマるのだ。ロー・ゲイン設定で他のペダルの前後に配置すれば、頼りないと感じていた出音がマッチョに変身するだろう。よって、ギター・サウンドに屈強な個性を求めるプレイヤーにこそ弾いてもらいたい。本機が備えた迫力ある質感を100%生かせるはずだ。

[Specifications]●コントロール:Volume、Tone、Gain●スイッチ:ON/OFF、3-Mode SW●端子:Input、Output●サイズ:112(W)×67(D)×54(H)mm●電源:9V DC

【オフィシャルHP】
【参考動画】

Roger Mayer 4644 Drive

ビンテージ機器のような立体感ある歪みを生成

●価格:45,000円(税別)

デジマートでこの商品を探す

 あのロジャー・メイヤーが初のオーバードライブを発売したということで話題となったモデル。一般的なオーバードライブで用いられるオペアンプを廃し、完全ディスクリート回路でデザインされた本機は、言うなれば真空管プリアンプのようにピュアなトーン・キャラクターを持つ。厳密に選定されたトランジスターの組み合わせによる、オペアンプに依存しない自然なクランチ・ドライブを身上とし、明らかに他のペダルとは異なる“枯れ感”とでも形容すべき響きを感じた。まるでビンテージ機材のような立体的な歪みが素晴らしく、サウンドもギターによって変化する。ギター側ボリュームへ見事に追従し、クリーン~クランチにかけて本当に上質な響きを提供してくれるのだ。音色の傾向は、英国製ならではのブリティッシュ・アンプのフィールを備えたもので、ミッド・レンジの存在感は格別。音楽的で他の楽器を邪魔しない倍音チューニングが施されていて、弾き手のプレイ・ニュアンスの再現力もピカイチだ。それだけに、プレイの粗は確実に目立つようになるが、演奏家の心情は明確に音に変換されるはずだし、使い続ければプレイ・レベルも格段にアップするだろう。新興メーカーには真似のできない存在感あるチューニングに、ベテランのプライドを感じた。

[Specifications]●コントロール:Gain、Tone、Output●スイッチ:ON/OFF●端子:Input、HW Out 1、BF Out 2、BF Out 3●サイズ:135(W)×95(D)×55(H)mm●電源:006P(9V電池)/9V DC

【オフィシャルHP】
【参考動画】


THE EFFECTOR book編集者が語る「モダン・オーバードライブ特集」後記

The EFFECTOR BOOK vol.32編集後記 エフェクター・マニアが罹患しやすい病として「ペダル置き場が緑色に染まる」というものが挙げられます。これは“TS風邪”とか“オーバードライブ熱”と呼ばれている熱病の一種で、ある種の歪みに取り憑かれた結果、古い緑色のモデルをひたすら買い漁ってしまうという恐ろしい病気。発症初期は「レイヴォーン」とか「中域」といった単語に過敏な反応を示すだけですが、処置を怠ると症状がどんどん悪化。終いには「JRC4558」とか「1s1588」といった記号に偏愛を示すようになります。さらにこじらせた場合、オペアンプ表面のツヤを愛おしむ、という奇行に及ぶこともあるとか。
 たいていの場合、そこまで病状が進んだ患者のペダルボードは一面のグリーン。見るからに危篤状態と言えます。僕も罹りました。2000年代初頭あたりでしょうか。ヤバかったですね。「テキサス・インストゥルメンツ」「レイセオン」「マレーシアンチップ」といった単語が頭の中で繰り返しこだまし、中域のことしか考えられない日々。ひたすらeBayの画面を凝視するという生活がしばらく続きました。
 そんな僕を救ってくれたのが、特効薬の登場。“トランスペアレント系”とか“アンプライク系”などと呼ばれている治療薬です。中でも一番効いたのがスウェーデンのBJFEが開発した「Honey Bee OD」という感冒薬。有効成分“Nature”が中域に溜まった熱を優しく分解、服用した瞬間、スッと気持ちが楽になったのを憶えています。その後、「Honey Bee OD」はジェネリック化が進み、「Sweet Honey Overdrive」〜「New Sweet Honey Overdrive」〜「New Sweet Honey Overdrive Deluxe」として世界中で多くの患者を救うようになったのはご存知の通り。今や家庭用常備薬と化しています。
 それ以外にも特攻薬は次々と生み出されていて、「Timmy」、「Zendrive」、「COT50」といった米国産の製品がよく知られている他、我が国でも独自に研究/開発が進みました。VEMURAMの「Jan Ray」は、トランスペアレント系とアンプライク系の有効成分を独自の配合で組み合わせた結果、従来品の約2倍の効力を備えた、とも言われています。いまのところ、症状が深刻な場合にはこれがベストかもしれません。
 また、最新の治療楽はよりバリエーションに富み、様々な症状に作用するよう進化してきました。例えば、BOSSの「OD-1X OverDrive」は総合感冒薬、“TS風邪”に伴うどんな症状もたちどころに抑えてくれます。One Controlの「Strawberry Red Over Drive」は真空管依存型オーバードライブ熱を回復する上で最適の治療薬。JHS Pedals「SuperBolt V2」はロックンロール欠乏症に覿面の効果を示し、TDC-YOUの「TDC-007 Creamy Drive」なら中域依存をピンポイントで治癒してくれるようです。実際、僕も試してみましたが、どれも非常によく効きます。常備しておきたくなりました。もしかつての僕のように、“TS風邪”に罹ってしまった方は試してみてはいかがでしょうか。但し、服用にあたっては医師の指示の下、用法・用量を守ってください。複数のお薬をまとめて服用した結果、オーバードーズに陥ってしまっても当方は一切の責任をとりませんので。


THE EFFECTOR book VOL.32 SPRING 2016 ISSUEで詳細をチェック!


 本記事はシンコーミュージック刊『THE EFFECTOR book VOL.32 SPRING 2016 ISSUE』での特集企画「モダン・オーバードライブ 〜脱クラシック系オーバードライブという選択肢」の中でより詳しく紹介している。ここで紹介した各機種を、内部写真とともにより詳細に解説。プロによる歪み作りの方法論や、トーンの使いこなし術、ハンドメイド・エフェクター・ブランド”ヴェムラム”開発者によるJan Ray解説など、マニアックな記事も収載。開発者の創意工夫により、常に進化し続ける新世代型歪み系ペダルの魅力を、余すところなく伝える内容となっている。本記事と併せてぜひご一読いただきたい。

項数:116P
定価:1,620円(税込)
問い合わせ:シンコーミュージック


・「THE EFFECTOR book vol.32」のページ・サンプル

このエントリーをはてなブックマークに追加

製品情報

オーバードライブ

デジマートでこの商品を探す

製品レビューREVIEW

製品ニュースPROUCTS