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  • デジマート地下実験室〜地下30階〜祝! アコースティック・マートOPEN記念!

ブリッジピンを交換するとアコギの音はどう変わるのか?

〜ブリッジピン実験〜

  • 文:井戸沼尚也(室長)

ビールが美味しい季節になってきました。夏はやっぱり、生ですね! というわけで、アコースティック・マート(スマホ版はこちら)のオープンを記念しまして、地下実験室初のアコースティック・ギターに関する実験をやってみますよ。地味ながら結構興味深い内容ですので、お見逃しなく。

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【実験テーマ】アコースティック・ギターの音は、ブリッジピンを交換することでどのくらい変わるのか?

 他の方はどう思うかはわかりませんが、私はアコギ弾きの方々に羨望と嫉妬が入り混じった感情を持っております。私のようなエレキ弾きなんぞは、ライブ会場でもスタジオでも他人様の電気をコンセントから拝借しなければ演奏すらできません。電気をお借りし(返せませんが……)、調子に乗ってのけぞりながらギュイーンなんて弾いてみても、万が一電源が落ちたら“発作で苦しんでるおっさん”にしか見えないのでして。

 それに比べてアコギの方々は、いつでも、どこでも弾けちゃう! その上、自分ひとりで音楽として完結できる! 羨ましい! ファンク・バンドのエレキなんて、単なるパーツですよパーツ。主役はやっぱりドラムとベースですから、ギターなんてカレーの福神漬けくらいの存在です。で、アコギ村の皆様があんまり羨ましいので、自分もアコギを1本買ったわけです。すると、それを聞きつけた赤鬼(デジマート・マガジン編集長)から連絡がありました。

赤鬼 「聞きましたよ、室長! アコギを買ったそうで。折しもデジマートではアコースティック楽器のキュレーション・サイト“アコースティック・マート(スマホ版はこちらをオープンさせるところですし、今回の実験は、室長のアコギでネック・ベンド実験か塗装剥ぎ実験、もしくは多少妥協して、ブリッジピン交換実験あたりでどうでしょう?」
私  「ブリッジピンで! お願いします」

 16分音符1個分、クッて即答しました! あぶねー。というわけでブリッジピン交換実験、始まるよー!

【実験環境】

■使用機材
ギブソンJ-50(ギター)
L.R.Baggs LYRIC(コンタクト・ピックアップ)
L.R.Baggs Para Acoustic DI(ダイレクトボックス)
ヴァンデンハル(ケーブル)
D’Addario PHOSPHOR BRONZE EJ16 012-053(弦)
Fender ミディアム おにぎり(ピック)
PICKBOY BP-150RW(ブリッジピン/ローズウッド)
PICKBOY BP-150W(ブリッジピン/エボニー)
PICKBOY BP-150BN(ブリッジピン/牛骨)
PICKBOY BP-150HN(ブリッジピン/水牛)
Graph Tech TUSQ(ブリッジピン/TUSQ)
PICKBOY BP-150(ブリッジピン/真鍮)
カイザー・カポ(カポタスト/ピン交換時の弦止め用)
PolyTune Clip(チューナー)

※セッティングについて
■今回の実験は、すべてL.R.バッグス・リリック(コンタクト・ピックアップ)を通した音で音質の比較をしています。マイクを立てて音を拾うと、僅かな距離や角度の差、つまり近接効果によって音質に違いが出てきてしまうためです。
■D.I.はプリアンプ内蔵型ですが、EQ等のツマミはすべてフラットにしています。
■今回の実験は手弾きが必須であり、ルーパーの使用ができませんでした。極力同じようなピッキングを心がけましたが、僅かな差異が生じてしまうことをご了承ください。
■ブリッジピンは、楽器店やデジマートで入手しやすいものを選びました。デフォルトのピンから始め、比較的軽い素材から重い素材へと交換していきます。
■本企画では動画再生の際、ヘッドフォンでの視聴を推奨しております。

実験1 デフォルト(樹脂)

 まずはデフォルトのピンの音です。樹脂だということはわかるのですが、細かいことはよくわかりません。ギターが1964年製なので、このピンも52年も頑張ってくれたわけですね。抜いてみて驚いたのですが、もう「お年寄りの抜けた歯」みたいになっています。曲がっていてボロボロ。これでは多分、穴の中で周囲に密着して振動を伝える(あるいは吸収する?)なんてことは、できないだろうなぁ。

 音についてはまぁ、自分にとってはいつもの音です。これを基準にして、他のピンの音を比べていきましょう。

実験2 PICKBOY BP-150RW(ローズウッド)

 まずはローズウッドのピンに交換してみます。ギター弾きにとっては馴染みのある木材で、アコギではボディ・サイド&バックに使われたり、エレキでは指板材として使われていますね。ピンとしてはどうなんでしょうか。

 おっ? なんだか音が「整っている」感じがします。それにちょっと明るく、ハイが出ていますね。それとすみません、指弾きの1発目の音は、明らかにタッチが強かったですね。そこは申し訳ないですが差し引いていただいて、それ以外の部分の音を聴いてください。その上で1のデフォルトに戻ると、なんだか弱々しくないですか? 張りのある音が、バランス良く前に出てくる──ローズウッドはそんな印象です。では、次にいってみます。

実験3 PICKBOY BP-150W(エボニー)

 次はエボニーですね。エレキ弾きの自分としては、指板なんかに使われる堅い材という印象です。最近は真っ黒なものは随分と貴重らしいですが、こうして小さいピンなら採れるんでしょうか? きっと端材でしょうね。

 サウンドについて当日弾いた直後の印象は「音に芯があってくっきりする。これ、好き」という感じでしたが、今改めて比較すると結構ドンシャリ気味ですね。ハイも明るく出ていますが、ローも太くなりました。パッと聴きは、いい音ですね。指で弾いた音は、今聴くとローズウッドの方が好きかなぁ……、いや、エボニーも悪くないぞ……。むむむ。

実験4 PICKBOY BP-150BN(牛骨)

 続いて、牛骨です。ナットでお馴染みですよね。

 音の印象ですが、自分としては、デフォルトの音に近いけれど、デフォルトよりは全体に少し解像度が上がっているような印象です。極端にローが出るとか、あまり大きな変化は感じません。ナット実験の時には、ESPギタークラフト・アカデミーの水島亮二先生のご協力をいただき、同じ牛骨でもレモン・オイルに漬ける、オリーブ・オイルに漬ける、タバスコに漬けるなど、いろいろとやってみました。漬け好きの人は、ピンでも試してみてはいかがでしょう?

実験5 PICKBOY BP-150HN(水牛角)

 続いては水牛角です。牛骨とはウシ仲間ではあるのですが、こちらは水牛のツノです。あっちはホネですね。

 音については、私はこちらの方が分離が良いと感じます。試奏直後に感じたことをメモしておいたんですけど、なになに、“弦を交換したような感じで、ブライトかつパワフル。バランスも良い”だって。なるほど。世の中には新しい弦の音が好きという人と、嫌いという人がいますので、この水牛角ピンも良い・悪いと断言することはできませんが、違いというか傾向というか、そんなのは出ているのではないでしょうか? では、次!

実験6 Graph Tech TUSQ(TUSQ)

 TUSQ……人工象牙と言われている素材ですね。このピンを付けたら、サウンドが明るく、軽やかになった印象があります。うんうん、これも悪くないですね。ちなみに実験当日の試奏直後の私の感想メモは「よくわかりません」だって。バカじゃないの、この人(私)。

 改めて聴くと、牛骨あたりと比べて明らかに解像度が上がっています。牛骨がデフォルトより解像度が少し高い感じでしたので、これはさらに一歩上ということになります。好みの問題もありますので、どちらが良いとは断言しづらいところです。

実験7 PICKBOY BP-150(真鍮/ブラス)

 今回唯一の金属製ピンです。持った感じもこれだけはズシリと重いので、少なからぬ影響が出るでしょうね。

 さて、そのサウンドは……うわー、ローがメチャクチャ出るなぁ。ハイも出ますし、ドン強めのドンシャリという感じです。パワーもあるので、フィンガーピッキングのタッチが弱い上に爪を伸ばしていない私でも、しっかりした音が出て、弾いていて楽でした。しかし、この“金歯感”というか、“キヨハラ感”というか、“ザギンにツーベンで通う感”というか……もういいですか、とにかくこの見た目と飴色のボディ・トップとの相性の悪さはいかんともし難いです。ただし音の違いについては、これが最もわかりやすかったのではないでしょうか?

実験8 各種混合(1弦ブラス、2弦水牛、3&4弦エボニー、5弦牛骨、6弦ブラス)

 これだけのブリッジピンを一度に試す機会はそうそうないので、良さげなものをチョイス&ブレンドしてみました。全体的に、“パワフルなんだけどバランスもいい”ところを目指していまして、1&6弦には強烈なドンシャリ感が印象に残ったブラスを使い、3&4弦には試奏当日に“芯がある”と感じたエボニーを入れ、2弦の水牛角と5弦の牛骨はなんで入れたんだっけかな? 当日のメモを見ると……「動物同士で支え合い、俺を盛り上げてくれ」だって、はい、疲れていたんだと思います。

 そのサウンドは……おおっ、だいたい狙った方向にいってませんか!? パワフルかつバランスも良い(自画自賛)! 5弦の牛骨を水牛にしたら、もっと良かったかも。見た目を気にしないという強者、もしくはレコーディング時などに皆さんもぜひお試しくださいね。

実験結果

結論:ブリッジピンを交換するとアコギの音は大ーきく変わる!

 今回は地味でしたが、音の変化がわかりやすかったのではないでしょうか? デフォルトのピンの音があまりにも弱々しく(それをビンテージ感ととらえるかどうかは難しいところですが)、試奏当日はどれに変えてもデフォルトよりはいいなと思ったこと、特にエボニーが良いなと思ったことを覚えています。

 今、冷静に聴いてみると、水牛角は好きですね。明らかにブライトなんですが、ナチュラルさも残しているというか……。あと、やはりエボニーも好きです! 当日は「最悪だ、すぐに換えよう」と思ったデフォルトも、弱々しいんですが意外と味わい深いというか、そんなに嫌じゃないかも。でもこれの良さは録音なら出るけど、ライブではやっぱりもう少しパワフルなピンがいいかな。ローズウッドも意外と悪くないですよ。

 結局、みんな違ってみんないいというか(元も子もなし)、とりあえず現時点で個人的にこれには換えないだろうなぁと思ったのは牛骨(あまり面白みのある音ではない気がしました)とブラス(見た目もですけど、音もやり過ぎ感が……)くらいです。あくまでも私見ですので、皆さんはお好みでどうぞ!

 それと蛇足ですが、このJ-50にはL.R.バッグスのリリックをあと付けしたんですけど、実に優秀ですね! このピックアップ、オススメです! D.I.につなぐだけでこのくらいの音が出るなら、ライブだったら全然文句ないです、私は。ちなみにアコギのピックアップのチョイスに迷った時は、リットーミュージック・ムック『ピックアップ&プリアンプ・ブック』がオススメです。私もこれを読んで・聴いて、リリックを選びました。それでは次回、地下31階でお会いしましょう!

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製品情報

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プロフィール

井戸沼尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。

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