楽器探しのアシスト・メディア デジマート・マガジン

  • 連載
  • デジマート地下実験室〜地下31階

弦の巻き数・巻き方でギターの音はどう変わるのか?

〜ギター弦巻き方実験〜

  • 文:井戸沼尚也(室長)
  • 協力:水島亮二(ESPギタークラフト・アカデミー講師)

ギターと付き合っていく上で欠かせない、弦交換。なんとなーく、漫然と、心の赴くままに張り替えてはいませんか。でも、もしそれによって音が変わるとしたら……まぁ、まずは確かめてみましょう。

このエントリーをはてなブックマークに追加

【実験テーマ】弦の巻き数・巻き方でギターの音はどう変わるのか?

 ベーシストの、アンソニー・ジャクソンさんって方がいますよね? 彼は、弦を2時間で交換するそうです。それから日本の某ギタリストは年間2,000セットの弦を消費するとか。そんなに交換して、面倒だなとは思わないんでしょうか? 私は思います。弦交換ってすげえ面倒。でも張り替えるとやっぱり気持ちいい。だから、というわけではありませんが、私は弦はズボラ巻きです。ギブソン・タイプで言えば、ペグ穴に弦を通したらフックせずにそのまま巻いてしまうやり方です。チューニングの安定性云々が問題とされる部分をすっ飛ばしているわけですが、私は経験上、それで困ったこという覚えは一度もないんですよね。本当にそこ、チューニングの安定性に関係あるんですかね?

 などと思っていたある日、以前、地下25階のナット交換実験にご登場いただいた水島亮二さん(ESPギタークラフト・アカデミー講師)から、“やってみないとわかりませんが”という前置き付きで、「弦の巻き数によって、音が変わる可能性があります」とのサジェスチョンをいただきました。「巻き数の増加でペグ〜ナット間の角度が変われば、物理的にはナット部分にかかる力の方向が変わりますので“楽器の鳴り”に影響がないわけはありません。ただ、それが聴感上どのくらいのレベルで表われるかは、不明です」(水島氏談)

 な、なるほどー。水島先生ほどの人(なにしろ、ナットを15年もオイルに漬けちゃうようなヘンタ……いや偉人ですよ!)でも、プロ中のプロでさえわからないとなると、それは試してみる価値がありそうです。やってみましょう! それでは弦交換実験、始めるよー!

【実験環境】

■使用機材
フェンダー・ストラトキャスター(ギター)
ギブソン ES-335(ギター)
フェンダー・デラックス・リバーブ68リイシュー(アンプ)
アーニーボール・スーパー・スリンキー(.009〜.042)/フェンダー・ストラトキャスター(弦)
アーニーボール・レギュラー・スリンキー(.010〜.046)/ギブソンES-335(弦)
ヴァンデンハル(ケーブル)
フェンダー・ティアドロップ・ミディアム(ピック)
ストリングス・ワインダー

※セッティングについて
■ストラトキャスターとES-335では、搭載されているペグの形状、構造が異なります。ストラトキャスターはペグ・ポストの縦穴に弦を差し込み、巻いていくタイプ(弦をフックする必要がない)。一方、ES-335はペグ・ポストの横に穴が開いており、弦をその穴に通して巻いていきます。こうした特性の違いから、実験の方向性を次のふたつに分けました。
①ストラトキャスター/弦の巻き数による違いを見る
②ES-335/弦の巻き方(フックするか、しないかなど)による違いを見る
■弦の巻き方以外のセッティングは一切変えていません。
■極力同じようなピッキングを心がけましたが、僅かな差異が生じてしまうことをご了承ください。
■本企画では動画再生の際、ヘッドフォンでの視聴を推奨しております。
■動画の最後に、聴き比べ用シーンをご用意しています。

実験1_1 ストラトキャスター/デフォルト(縦穴ペグ2.5個分)

ストラトキャスター/デフォルト(縦穴ペグ2.5個分)

 弦の巻き方については皆さんお好みがあるかと思いますが、とりあえず地下実験室では任意のペグの「ペグ2.5個分」先の長さで弦をカットして巻く、というのをデフォルトとさせていただきます。

 サウンドについてはお聴きの通り、そのまんまストラトキャスターというか、それ以外の何物でもない音です。1弦、2弦の音が弱い気がしますが、ポールピースがそうなっていますので、これは仕方がないかもしれません。これを基準に、他の音をチェックしていきましょう。

実験1_2 ストラトキャスター/短い(縦穴ペグ1.5個分)

ストラトキャスター/短い(縦穴ペグ1.5個分)

 次は弦を短くカットして、巻き数を減らします。長さはペグ1.5個先分。早速いつものように弦を張っていくと……あれ? 1弦の音が合わない……。チューニングしている側から音が下がっていきます。たま〜に、質の悪い弦でボールエンドのところが伸びてしまい、巻いても巻いてもピッチが下がってしまうことってありますよね。それと同じ現象が起きました。念のため、1弦のみ別の弦と交換して同じように1.5個分でカットして巻いてみましたが、まったく同じ現象が起きました。弦の先がしっかりペグの穴に入ったことは、確認したのですが。

 結局、1弦をきちんとチューニングすることはできず仕舞いでした。地下実験室では、よってストラトのペグ1.5個分の巻き方は推奨しません。

実験1_3 ストラトキャスター/やや長い(縦穴ペグ3.5個分)

ストラトキャスター/やや長い(縦穴ペグ3.5個分)

 続いて、巻きを多めにしていきます。ペグ3.5個分先のところです。と言ってもデフォルトとそれほど大きな差があるわけではありません。さて、サウンドの違いがわかるでしょうか?

 うーん、わかりづらいですが、動画では開放弦を鳴らしているところよりも、フレーズを弾いているシーンのほうがわかりやすいかもしれません。こっちの方が張りがあって、少しだけパワフルな感じがしませんか? テンションがきつく弾きにくいということもありませんでしたので、この巻き数は結構いいかもしれません!

実験1_4 ストラトキャスター/長い(縦穴ペグ5個分)

ストラトキャスター/長い(縦穴ペグ5個分)

 巻き数実験、最後は弦長がペグ5個分先までとなり、巻き数も最多となります。実はストラトの場合、1弦のブリッジ〜ペグ間が長いため、実質的にはこの長さが試すことができる最長になります。さすがにここまでくると、6弦のペグ〜ナット間の角度はかなり急勾配になります(1〜2弦に関しては、ストリング・リテイナーがあるため角度は変わりません)。さて、サウンドの方はどうでしょう?

 これもわかりにくいですが、低音弦に関しては2.5個分巻きに比べて輪郭がはっきりしていますね。“腰がある”という言い方でも良いかもしれません。ただ、3弦あたりが弾いていて少し固く感じました。弾きやすさ、音のバランスで、3.5個分巻きが最も良いかなと思いましたが、皆さんはいかがでしょう?

実験2_1 ES-335/フックしてロックする巻き方

ES-335/フックしてロックする巻き方

 ここからはギブソンES-335を使って弦の巻き方に焦点を当てていきます。巻き数はすべて、ペグ2個分で統一しています。まずはギブソンが推奨している巻き方から試してみましょう。弦を一度下から上にフックして、そこで弦を固定してしまう方法です。ギブソンが推奨しているほか、都内のプロ御用達、老舗のリペアショップに調整に出すと、ズボラ巻きがこの巻き方になって戻ってくることがよくあります。

 サウンドの方は、とりあえずギブソンらしい太くてコシのあるサウンドですね。まずはこの公式の巻き方の音を基準に、次のズボラ巻きと聴き比べてみましょう。

実験2_2 ES-335/フックなしのズボラな下巻き

ES-335/フックなしのズボラな下巻き

 次は冒頭で紹介したズボラ巻きですね。これは弦を張るのも楽なんですが、外すのも楽です。ライブの曲中で弦が切れた時など、1秒でも早く弦を張り替えたい時なんかには助かるんですよ(代わりのギターをすっと手渡してくれるスタッフがいるような立派なバンドなら問題ないんでしょうがね……)。でも、サウンドが異なるとなれば、話は別です。一体、違いがあるのかどうか、確かめてみましょう。

 サウンドは……あ! これは思ったよりも変わっていますね! こっちの方が音が軽く、芯のない感じがします。ギブソン推奨の前者に戻って聴き直すと、そちらは太く、しっかりした音という印象です。比べると、このズボラ巻きは音が軽い! あー、結構違うんだなぁ。知らなかったなぁ。くくくぅ、ギブソン推奨、恐るべし!

実験2_3 ES-335 /だんご状の失敗巻き

 最後はおまけ、だんご状になったクソ巻き(お下品でごめんあそばせ)です。弦の張り替えにも慣れが必要なので、「初めて張り替える」、「まだあまり慣れていない」という人は、こんな風になってしまうこともあるでしょう。1弦のみペグの逆方向に巻きつけるという荒技も繰り出した状態です。これだとチューニングする際にペグの巻き方も逆になるので若干パニクりました。このような巻き方は、サウンド以前にチューニングがちょっと心配ですね。では、弾いてみましょう。

ES-335 /だんご状の失敗巻き

ES-335 /だんご状の失敗巻き(上から)

 あー、これは最も音が軽いですね。芯がない。良く言えば“ソリッドではなく、セミアコらしさが強調されている”という感じでしょうか(笑)。期待の(?)チューニングは、思ったほど極端に悪くなく、なんだかがっかりです。

実験結果

結論:弦の巻き数・巻き方でサウンドは変わる

 いかがでしたでしょうか? 私はES-335による巻き方の違いが想像より大きくて驚きました。もうズボラ巻き、やめます。弦をフックする張り方は、弦ががっちりホールドされる分、振動が効率良く伝わっていくということなんでしょうか? 理屈はよくわかりませんが違いはわかりましたので、今後は張り方を改めたいと思います。ストラトの方は、違いは思ったより小さいように感じましたが、それでも個人的には「3.5個分」が良かったです。皆さんはどう感じましたか?

 今回の実験はかなり地味ではありましたが、全ギタリストに関係する重要な話でもあります。皆さんがお好みの巻き方を見つけて自らのギターライフにお役立ていただければ、こんなに嬉しいことはありません。それでは次回、地下32階でお会いしましょう!

ESPギタークラフト・アカデミー東京校で「ギター弦巻き方実験」を体験しよう!!

※本イベントは終了いたしました。

東京校 ESP【体験実習】デジマート連動イベント「ギター弦巻き方実験」 今回、実験ご協力いただいたESPギタークラフト・アカデミー東京校にて、2016年10月23日(日)、本企画と完全連動したセミナー・イベント「東京校 ESP【体験実習】・ギター弦巻き方実験(デジマート連動体験)」が催されます! 実験室を見て“実験室に出ていた巻き方を実感してみたい! 自分の楽器に最適な巻き方を習いたい!”と思った方はぜひこの機会に体験ください。講義への参加費は無料! 参加ご希望の方は以下の専用サイト・フォームからお申し込みください。

■日時:2016年10月23日(日) 10:00〜12:30(※終了時間は予定)
■場所:ESPお茶の水ビル4階
■参加費:無料
■参加資格:無し、ご自分のギターをお持ちください
■定員:無し
■問い合わせ:http://www.esp-gca.com/bfunc/event.php?e=160527
※実習の円滑な進行のため、開始時間10分前にはお越し頂きますようお願いいたします。また、楽器をお持ちでない方も講義のみ参加していただくことが可能です。

このエントリーをはてなブックマークに追加

製品情報

エレキギター弦各種

デジマートでこの商品を探す

プロフィール

井戸沼尚也(いどぬま・なおや)
大学在学中から環境音楽系のスタジオ・ワークを中心に、プロとしてのキャリアをスタート。CM音楽制作等に携わりつつ、自己のバンド“Il Berlione”のギタリストとして海外で評価を得る。第2回ギター・マガジン・チャンピオンシップ・準グランプリ受賞。現在はZubola funk Laboratoryでの演奏をメインに、ギター・プレイヤーとライター/エディターの2本立てで活動中。

人気記事RANKING

製品レビューREVIEW

製品ニュースPROUCTS