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  • ひと味違う個性派マーティン! 15/16/17シリーズを掘り下げる

斎藤誠が弾く!マーティン“個性派”モデル〜D-15M、000-16GT、00L-17、000-17

Martin D-15M、000-16GT、00L-17、000-17

  • 取材・文:坂本信 写真撮影:八島崇 動画撮影&編集:熊谷和樹 録音:大屋努

マーティンと言えば、の問答無用の超定番モデル、スタイル18、28、35を取り上げた第3回「スタンダード・シリーズ超定番モデル」。アコースティック・ギターそのものとも言える普遍的なトーンを再確認したわけだが、一転、今回はマーティン・ギターの中でもキャラの立ったモデルを15、16、17シリーズからピックアップしてみた。斎藤誠氏は“個性派”マーティンをどのように感じ、評価したのか? ぜひ確認してほしい。

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斎藤誠が弾く!マーティン15/16/17シリーズ 個性派モデル
D-15M/000-16GT/00L-17/000-17

斎藤誠が語る!
マーティン15/16/17シリーズ 個性派モデルの魅力

マーティン“個性派モデル”の魅力

 マーティンと言われてすぐに連想するのは、日本では“ニッパチ”の愛称を持つ最高人気のスタイル28や、マホガニー・ボディの独特なサウンドが根強く支持されているスタイル18、誰もが憧れる最上級機種のスタイル45といったモデルだろう。しかしながら、これらのモデルは最初から定番だったわけではなく、あくまでもマーティン社がプレイヤーの需要や音楽スタイルの変化に応えるべくギターを開発してきた中で、いくつかのモデルが長期にわたって人気を集めた結果、定番の地位を得たのである。今回ご紹介するのはどれも、同じマーティンでありながら定番モデルとはやや性格を異にする“個性派”だが、プレイヤーの需要や音楽スタイルの変化に応えるという意味で、正真正銘のマーティン・ギターである。

 オール・マホガニー・ボディのスタイル15は、1940年に0-15として最初に登場した。バインディングも省略した廉価モデルとして企画されたが、スプルース・トップのギターでは出せない、甘くて温かみのある独特なサウンドは捨てがたく、現在ではラインナップに復活して一定の人気を保っている。スタイル16は1961年の0-16NYが最初のモデルで、スプルース・トップとマホガニー・ボディを持つ。同じ材を使用するスタイル18よりも低廉なモデルとして企画されたが、1980年代後半以降、様々なスペシャル・モデルが作られ、現在ではシックなビンテージ風の仕上がりとなっている。スタイル17が登場したのは1850年代のことだが、1917年からずっと廃番になっていた。現在のスタイル17は、21世紀に入って流行しはじめた、アメリカーナと呼ばれるスタイルを中心とする音楽に向けて新たに企画されたモデルである。また、マーティンでは少数ながらナイロン弦のモデルも作っている。これらは、通常のクラシック・ギターとは異なり、ピック弾きやスティール弦ギターやエレキとの併用を考慮したデザインになっている。

Martin D-15M

Martin / D-15M


D-15M(Back)


オープン・ギア・タイプのペグは、簡素なデザインにぴったりだ。

バインディングを省略した簡素なボディ。ヒールキャップもバックに合わせた木目のマホガニー。

ローズウッドのブリッジやべっ甲柄のピックガードが、ビンテージ感を醸し出す。

 サイドとバックはもちろん、トップにもマホガニーを使ったスタイル15は、大国アメリカと言えども物資が不足した第二次大戦中の1940年に、バインディングさえも省略した簡素な廉価モデルとして登場した。1961年にはいったんカタログから姿を消したが、オール・マホガニーのボディから生まれる甘くて枯れたサウンドは、スプルース・トップの楽器には出せない個性的なものとして根強い人気があり、ラインナップの復活につながった。ドレッドノートのD-15Mは1997年に発売されている。スタイル15は、超定番モデルのオーナーが本命とは個性の違う1本ということで購入する例も多いという。
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【Specification】
●トップ:マホガニー ●サイド&バック:マホガニー ●ネック:マホガニー ●指板:イースト・インディアン・ローズウッド ●ブリッジ:イースト・インディアン・ローズウッド ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:モディファィド・ハイブリッドX ●定価:230,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 今回唯一のドレッドノートということで、サラッとした、Gコードでも2弦3フレットのDを鳴らすような、西海岸の爽やか風の曲を選びました。とはいえ、ミッドが少なめで低音がゴーンと出て、高音がサラサラ~じゃなくてガリッとくる部分が残るという、僕らが“イナタい”と呼ぶ部分が(笑)間違いなく鳴ってくれるので、その部分の混じり具合いが普通のドレッドノートと違って面白いと思います。爽やかさに新しいキャラが出て来て面白いですね。あと、オール・マホはカワイイということで、女の子で持っている人も多いんですよ。モノトーンのルックスが良いんでしょうか。ロングスカートをはいて立って弾いたらカッコイイと思いますよ。

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Martin 000-16GT

Martin / 000-16GT


000-16GT(Back)


ペグはモダンな密閉型のロトマチック・タイプ。

当初のスタイル16では省略されたバックのバインディングが復活。ヒールキャップはローズウッド。

高級感を演出する、ヘリンボーンのロゼッタとべっ甲柄のピックガード。

 スタイル16はマーティンの歴史では比較的新しく、1961年に登場した。型番が示すように、当初はスタイル18をさらに簡素な仕様にしたモデルとして企画されたが、その後は用材や装飾などを変更した、様々なスペシャル・モデルも作られている。現行のモデルは、グロス仕上げのトップやべっ甲柄のピックガード、バックのバインディング、ヘリンボーンのロゼッタなど、ワンランク上の装飾が施されており、廉価版というよりもむしろお買い得感の高い仕様になっている。また、本器は000だがスケールは25.4インチなので、実質的にはOM-18とも呼べそうな、ユニークなギターである。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:リッチライト ●ブリッジ:リッチライト ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:ハイブリッドX・スキャロップト ●定価:235,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 僕も000-16GTEというエレアコを長年使っていますが、僕のはプリアンプをサイドからいったん外して、そこを木で埋めて別のプリアンプと入れ替えてあるんです。そんな改造をしていることもあって、生音も小さくてレコーディングには適さず、ライブ専用みたいになっているんです。その点、このギターは純粋なアコースティックということもあって、バランス良く響くし、今回試奏した中ではいちばんマーティンらしい、爽やかな感じのサウンドも出ているので、改めて良いギターなんだなあと思いましたね。細身のネックは弾きやすいし、エレキから持ち替えても違和感が少なくて済むという良さもあります。

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00L-17 WHISKEY SUNSET

Martin / 00L-17 WHISKEY SUNSET


00L-17 WHISKEY SUNSET(Back)


ビンテージ感たっぷりのボディ。アイボロイドのバインディングが全体を引き締める。

古式ゆかしいスクエア・ブリッジ。鉄弦のテンションを考慮して、ブリッジ・ピンはサドルと並行に配置。

べっ甲柄のピックガードとマッチする、ウィスキー・サンセット仕上げの美しいグラデーション。

 1850年代に登場したスタイル17は、マーティン最古のモデルのひとつである。19世紀末に廃番となり、1905年に初のマホガニー・ボディ・モデルとして復活したが、1917年にスタイル18がマホガニー・ボディに変更されたのを受けて、ふたたび廃番となった。現在の17は、21世紀に入ってアメリカで流行し始めた、アメリカーナと呼ばれる1920~30年代の音楽の復興運動に呼応したもので、本器はスロープ・ショルダーやスクエア・ブリッジ、トップのカラー仕上げなど、当時の楽器をほうふつとさせるデザインになっている。その一方で、ネックにはパフォーミング・アーティストのシェイプを採用するなど、モダンな演奏性を実現している。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:ローズウッド ●ブリッジ:ローズウッド ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●定価:330,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 このダブル・オーには少し古っぽい、ブギーみたいな曲を選びました。とくに指で弾いた時にギターの美味しさがいちばん出る曲で、それにこのギターを選んだというのは、やはりこのキャラが合っていたんだと思います。あと、ベース音がどんどん動いていくような曲なんですが、ピック弾きはもちろん、指弾きでも4、5、6の巻弦の音が全部聴こえてくれるのが良いですね。聴こえるというのは音量だけの問題じゃなく、キャラがはっきりしてるからベース音も胸に残るんじゃないかなという思いで、このギターを選びました。今回のギターで言えば、これと000-17はなるべく手荒な感じで(笑)弾いた方が、面白い演奏になるでしょうね。

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Martin 000-17 BLACK SMOKE

Martin / 000-17 BLACK SMOKE


000-17 BLACK SMOKE(Back)


レリック風に仕上げたオープン・ギア・タイプのペグ。ネジがマイナスというのも心憎い。

ブラック仕上げと抜群の相性を見せる、アイボロイドのピックガードとバインディング。

目止めをしないオープン・ポア仕上げは、ビザールな雰囲気と俊敏なレスポンスに貢献している。

 00L-17と同様、アメリカーナの流行に呼応して三度登場した17シリーズのモデルで、こちらはボディがひと回り大きな000タイプ。1920~30年代の音楽で多く使われていたギターは、マーティン社では作っていなかったような安物で、ブレイシングもスティール弦用としては強度の劣るラダー・タイプだったために、使用に堪える状態で残っている個体は非常に少ないというのが現状だ。その点マーティンの17は、ルックスやサウンドは当時の雰囲気を再現しながら、楽器としては安心して使えるクオリティで、古き良きスタイルに新しい要素を加えるための、モダンなテクニックに対応した演奏性とレスポンスを備えているのが大きな特徴だ。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:ローズウッド ●ブリッジ:ローズウッド ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●定価:330,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 今回はシャッフルの曲もやろうと思って用意してきたんですが、そういうロックっぽいリフにはこのギターがいちばん向いていましたね。それで、指弾きも同じアレンジのままシャッフルをやろうと思ったんですが、実際に弾いてみると意外に繊細な部分も出ることがわかったので、指弾きでは家で考えてきたのとは違う、普通の8ビートで優しく弾きたくなりました。00L-17もそうですが、意外なほど用途は限られないぞという印象で、優しい感じのスリー・フィンガーをやってもいいなと思いましたね。結果的に、このギターで弾いた曲だけは、ピック弾きと指弾きでだいぶ違う世界を作ってみましたから、比較してみると面白いかもしれません。

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Martin 000C Nylon

Martin / 000C Nylon


000C Nylon(Back)


ナイロン弦仕様のため、ヘッドはクラシック・ギターと同様のスロッテッド・タイプを採用。

ピックアップ・システムはフィッシュマン社製F1アナログを内蔵。

クラシック・ギターと同様のタイブリッジ。指板とブリッジは環境に優しいリッチライトを採用。

 1833年創業のマーティン社がスティール弦用のギターを作り始めたのは20世紀に入ってからのことで、特別モデルとして通常のクラシック・ギターに近いデザインのガット・ギターは1930年代後半から作られ始めた。1962~67年にかけては、12フレット・ジョイントの000ボディを使用した000-28Cが作られたが、本器はその流れを受け継ぐカッタウェイ付きのエレガットである。スケールはスティール弦のフルスケールよりも長い26.44インチで、ナット幅1 7/8インチという、ナイロン弦としては細身のネックと相まって、ピック弾きでも良好なテンション感と弾き心地が得られるのが特徴だ。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:サペリ ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:リッチライト ●ブリッジ:リッチライト ●スケール:26.44インチ(671.5mm)●ナット幅:1 7/8インチ(47.6mm)●トップ・ブレイシング・パターン:A-フレーム X ●定価:280,000円(税抜き)

Makoto’s Impression〜個性派モデルの試奏を終えて

 僕は000-16GTEというエレアコを弾き語りじゃないライブで10年以上使っているので、今回いちばん馴染みのあるモデルは000-16GTということになります。キャラの点では、他のモデルに比べて大人しい感じですね。このギターには、今回用意した曲の中でもいちばん優しい感じの、メロディのくっきりしたマイナー調のものを選んだのも、繊細で、指弾きでもバランスの良い音が出てくれると思ったからでした。D-15Mはドレッドノートらしい低音の厚みと高音の爽やかさがあるんですが、オール・マホガニーということでスプルース・トップの高音よりも少し下の、“ギャリッ”という部分が出るところが個性的ですね。00L-17と000-17は、実を言うと今年のマーティンのラインナップでいちばん目を引いたギターだったんですよ。春に八戸でマーティン・ライブをやった時、昼間にやっていたマーティン・ギター・ショウにブラック・スモーク仕上げのモデルが展示されていたんですが、夜のライブではこれを使おうと、音も聴かずに決めてしまうぐらいのインパクトがありました。その時に共演したおおはた雄一も黒い17を選んでいて、オープニングにふたりでジミー・リードの曲をやったらもう、バッチリでしたね。使い込んで塗装が剥げてきた感じも良いでしょう。結局、楽器というのはグレードじゃなくて適材適所なんですよ。

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製品情報

プロフィール

斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!

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