小倉博和 meets Relish Guitars

About Relish Guitars
斬新な三層構造を提案するスイス発の新ブランド

　レリッシュ・ギターズは、ピルミン・ギーガーとシルヴァン・クングというふたりの若いビルダーによって設立されたスイスのブランドだ。主力モデルはJANEとMARYという、女性の名前を思わせるネーミングの2機種。まず今まで見たことがないボディのフォルムに目を奪われるが、レリッシュの斬新さは形状だけでなく、その構造にある。JANEは、立体的なアーチを持つウッド・トップ&バックの間にアルミ削りだしフレームを挟む三層構造のホロー・ボディであり、空洞ならではの豊かな鳴りとソリッドの扱いやすさを実現している。また、JANEのラインナップには、ボディ木部の素材違いのモデル（ウォルナット、アッシュ、チェリー、フレイムド・メイプル等）が用意されている。一方MARYは、同じくセンターフレームを挟む三層構造であるが、JANEと異なりセンターフレームとトップ&バックの間にスペースを設け、非常に豊かなサステインを実現したソリッド・ギター・モデルである。そして、どちらもボディ・バックの一部が磁石で留められ、ドライバーを使うことなくワンタッチで簡単に開閉できる（！）という驚きの構造を持っているのだ。また、どちらも650mmという独特のスケールを採用していることも、レリッシュらしい張りのあるサウンドに貢献している。

BORDEAUX JANE　〜レリッシュを象徴する革新的モデル

Relish Guitars / BORDEAUX JANE　オープン・プライス（市場実勢価格¥630,000）

　見事なメイプル・トップを、ボルドー産赤ワインを思わせるフィニッシュで仕上げたフラッグシップ・モデル。三層構造の中央部分はアルミ・フレームだ。ピックアップにはオリジナルのレリッシュ・バッカー15を搭載しているが、裏蓋を開ければハンダ付けせずに簡単にピックアップを交換できる。ピックアップのセレクターはタッチセンサー式になっており、慣れると暗闇でもワンタッチで切り替えが可能だ。

JANEを真横から見た写真。中央のアルミ・フレームをサンドするようにトップとバックが貼られている。

ピック1枚でボディ・バックのプレートが取り外せる構造になっている。弦交換もこの状態で行なう。

SPECIFICATIONS
●ボディ：フレイム・メイプル（トップ&バック）、アルミ（フレーム）●ネック：メイプル●指板：バンブー●フレット：24●スケール：650mm●ピックアップ：レリッシュ・バッカー15×2●コントロール：ボリューム、トーン、タッチ式ピックアップ・セレクター●ブリッジ：オリジナル・ハードテイル●ペグ：ゴトー510Z●バリエーション：ボルドー（写真）、スノー、シャディ、マリン、ウォルナット、アシィ、チェリー、フレイムド・メイプル

Ogura’s Impression：
リッチな音＋気持ちいい弾き心地。

　見るからに“新しさ”を感じますね。アルミのフレームを採用していることで、サステインが長くしっかりと出ます。それに加えて、弾いた音のまわりにホロー・ボディならではの“音の層”を感じます。アンプにつながずに生で弾いてもリッチな音ですよね。スケールが650mmという、ちょっと長めのスケールの影響もあると思います。それから、指板は竹ですよね？　この指板の加工が素晴らしくて、弾いていて本当に気持ちがいいです。ステンレスのフレットと相まって、反応の速さも素晴らしい！　レリッシュならではの弾き心地というものが完成されていますね。

SNOW W MARY　〜三層構造のフラット・トップ＆バック

Relish Guitars / SNOW W MARY　オープン・プライス（市場実勢価格¥275,000）

　MARYのラインナップの中で、その名のとおり雪のように白いフィニッシュで仕上げられたモデル。こちらは三層構造の中央部分も木材となっている。ピックアップ・セレクターも3ウェイのトグル・スイッチで、JANEに比べれば一般的なソリッドギターに近いとも言える（？）。とはいえ、バンブー指板の採用、ボディ・バックを取り外し容易にメインテナンスできる点など、レリッシュらしい特異な個性を持つギターであることに変わりはない。

JANEと同様に三層構造を有しているが、こちらはフレームに木材を使用している。

MARYシリーズはボディ・バックをすべて取り外すことができる。

SPECIFICATIONS
●ボディ：HPプライウッド（トップ&バック）、ウッド（フレーム）●ネック：メイプル●指板：バンブー●フレット：24●スケール：650mm●ピックアップ：レリッシュ・バッカー×2●コントロール：ボリューム、トーン、ピックアップ・セレクター●ブリッジ：オリジナル・ハードテイル●ペグ：ゴトー510Z●カラー：ブラッディ、スノー（写真）、シャディ、マリン、ロッキー、ファイアリー、クラッシィ

Ogura’s Impression：
ちょっと暴れる、ロック的個性を持つギター。

　このモデルは、よりロック的なテイストが強いギターですね。木の持つ“揺らぎ”がJANEよりもあって、ネックがしなる感じがします。強く弾いた時に音が暴れる感覚もあって、そこがロックっぽいんですよ。鋭角的なコンターの入り方や音の暴れ方が、ギブソンに例えるならSGを思わせるところがありますね。感覚的にはJANEがレス・ポールなら、MARYはSGという感じ。価格もJANEよりは低価格ですけど、決して廉価版というわけではなく、これはこれで完成された個性を感じます。ピッチの良さやサステインの長さ、弾き心地の良さはレリッシュならではのものです。

BLOODY A MARY　〜三層構造の中央部分にアルミを採用したモデル

Relish Guitars / BLODDY A MARY　オープン・プライス（価格未定）

SPECIFICATIONS
●ボディ：HPベニヤ（トップ&バック）、アルミ（フレーム）●ネック：メイプル●指板：バンブー●フレット：24●スケール：650mm●ピックアップ：レリッシュ・バッカー×2●コントロール：ボリューム、トーン、ピックアップ・セレクター●ブリッジ：オリジナル・ハードテイル●ペグ：ゴトー510Z●カラー：ブラッディ（写真）、スノー、シャディ、マリン

Total Impression
レリッシュの発想や構造には“新しい定義”を感じます。

　レリッシュ・ギターには、ワン&オンリーというか、今までのギターとは違う新しい発想や独特なスタイルを感じます。例えば、1970年代にオベーションが新しい構造を持って登場した時にアコースティック・ギターの世界に“新しい定義”を持ち込んだ時の新鮮な感覚に近いものを、いまレリッシュに感じています。

　実際に弾いてみると、デッド・ポイントがないこと、サステインが長いこと、チューニングが非常に安定していることに驚きました。6弦を下げたドロップDで弾いてもピッチやテンション感がすごく安定していますね。あとは、レンジが広いこと、エフェクターの乗りが良いこともレリッシュ・ギターの特徴だと思います。こうしたことには、650mmという長めのスケールや、独自の三層構造が強く影響していると思います。

　とにかく、見た目以上にオリジナリティ溢れるアイディアが詰め込まれている楽器なので、弾いていて楽しいですよね。この発想や構造は、ギター界のちょっとした革命だと思います。

本記事はギター・マガジン 2016年12月号にも掲載されています

　本記事はリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2016年12月号』の特集記事「小倉博和 meets Relish Guitars」を転載しています。

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