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  • 黄金期の戦前仕様を復刻したファン垂涎のハイエンド・シリーズ

斎藤誠が弾く!マーティン・マーキス・コレクション〜HD-28V、D-28 1941、D-18GE、000-28EC

Martin HD-28V、D-28 Authentic 1941、D-18GE、000-28EC

  • 取材・文:坂本信 写真撮影:植田山月 動画撮影:森田良紀 動画編集:熊谷和樹 録音:大屋努

マーティンそのものと言っても過言ではない永遠の定番、スタイル28、18。現在でもスタンダード・シリーズを中心に同社の主力ギターとして君臨するモデルだが、黄金期とも称される戦前に制作された28、18に対する人気・評価は衰えを見せない。そんな“オールド・マーティン”を忠実に再現・復刻したシリーズが、オーセンティック、ゴールデン・エラ、マーキス、ビンテージを統合した“マーキス・コレクション”だ。良質な材を用い、黄金期の仕様を伝統的な製法で再現した各モデルのトーンを、斎藤誠氏の多彩なプレイと対談動画でじっくりと味わってほしい。

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斎藤誠が弾く!マーティン・マーキス・コレクション
HD-28V / D-28 Authentic 1941 / D-18GE / 000-28EC

斎藤誠が語る! オールド・マーティンを忠実に復刻した
マーティン・マーキス・コレクションの魅力

マーティンによる“オールド・マーティン”の忠実な復刻
MARQUIS Collection/マーキス・コレクションを紐解く

 1833年創業のマーティン社が、現在に至るまでアコースティック・ギターの代名詞的ブランドとしての地位を保ち得ている大きな理由のひとつは、各時代の最先端を行く音楽を演奏するのにふさわしい、ハイ・クオリティな楽器を提供し続けてきたという点にある。その伝統は、最新のフィッシュマン社製Auraピックアップ・システムを搭載した、パフォーミング・アーティスト・シリーズのエレアコに受け継がれている。その一方で、古き良き時代に作られたオールド・マーティンの伝説も根強く生きており、当時のギターに対する人気は衰えを見せない。しかしながら、使用可能な状態で現存するオールド・マーティンは希少で、あっても“それなり”の値札が付けられているのが一般的だ。

 そうした状況に応えるべく、マーティン社ではオーセンティックを筆頭に、ゴールデン・エラ、マーキス、ビンテージいった様々なシリーズで、オールド・マーティンの復刻モデルを送り出してきた。これらのシリーズを統合したのが、今回ご紹介するマーキス・コレクションである。

 マーキス・コレクションの最上位モデルはオーセンティック・シリーズで、ギターの仕様はもちろん、接着剤にニカワを使用するなど、製法に至るまでオールド・マーティンを徹底的に再現しており、スタイル45、28、18の各モデルが揃っている。ゴールデン・エラはその名の通り、1930年代から1940年代にかけてのいわゆる黄金時代の仕様を再現したシリーズで、マホガニー・ボディのスタイル18が用意されている。マーキス・シリーズではスタイル28のモデルがラインナップされており、黄金時代の仕様を再現しながら、ボディ材には比較的入手しやすいインディアン・ローズウッドを使用している。これらのシリーズのトップ材には、オールド・マーティンと同じアディロンダック・スプルースが使用されている。トップ材にシトカ・スプルースを使用したビンテージ・シリーズのモデルは、オールド・マーティンの仕様を採用し、経年変化したラッカー塗装を再現した雰囲気のある仕上げが施され、スタイル45、28、18のモデルが揃っている。人気のロングセラー、エリック・クラプトンのシグネチャー000-28ECもビンテージ・モデルのひとつである。

Martin MARQUIS Collection
HD-28V

HD-28V


HD-28V(Back)


オールド・マーティンの“顔”とも言えるヘリンボーン・バインディング。

小さいながらも古き良き時代の香りを伝えるポジション・マーク。

サウンドホールのすぐ近くに配置されたフォワード・シフテッド・ブレイシング。

 マーティン社の歴代モデルの中で最も人気の高い、戦前のD-28を復刻したビンテージ・シリーズの1本。ブレイシングはトップの鳴りを増すためにサウンドホールに近づけたフォワード・シフテッドで、スキャロップ加工も施されている。ネックは1939年に変更されたナット幅が狭い(42.9㎜)Vシェイプに基づいたグリップで、ブロック・コードが弾きやすい。その他、型番の“H”が示すヘリンボーンのバインディング、ダイアモンド&スクエアのポジション・マーク、ロング・サドル、バタービーン・ボタンのオープン・ペグ、ラッカーの経年変化を再現したエージング・トナーの仕上げなど、“ディー・ニッパチ”のファンが求める仕様が網羅されている。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト・フォワード・シフテッド ●定価:560,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 このモデルは桑田佳祐さんも使っているし、たまに桑田さんから借りることもあって、どんな音がするかよく知っているんです。ネックも僕のメインのOMに近いVシェイプですしね。だから、音のバリエーションをいろいろ聴いてもらおうと思って、コード進行は同じでも全然違う曲に聴こえるように、ピック弾きと指弾きでテイストを変えてみました。テンション感はD-18GEほどではないにしろ、わりと強めの印象で、強く弾くと1音だけ跳び抜けたりしてバランスが悪くなる可能性があったので、指弾きの曲は全体的にソフトに弾いています。でも、レコーディングの時みたいにソフトに弾くと、本来持っている細かい部分の良さが出てきますよね。

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Martin MARQUIS Collection
D-28 Authentic 1941

D-28 Authentic 1941


D-28 Authentic 1941(Back)


トップ材のアディロンダック・スプルースは、シトカに比べて木目の幅が広いのが特徴。

特性も外観もブラジリアンに最も近いと言われる、マダガスカル・ローズウッドの美しい木目。

リアワード・シフテッドXブレイシング。HD-28Vのブレイシングと比較されたし。

 マーティンD-28の最上位モデルで、本社ミュージアム収蔵の1941年製の実器をスミソニアン博物館で精密計測したデータを基に、ニカワでの接着など、当時の製法まで含めた完全復刻による渾身の1本。トップはアディロンダック・スプルースで、長年弾き込んだ楽器のサウンドが得られるビンテージ・トーン・システム(VTS)加工を施した材を使用。ボディ材には、当時使用されていたブラジリアン・ローズウッドに最も近いと言われるマダガスカル・ローズウッドを採用している。ブレイシングは、当時使われ始めたヘヴィ・ゲージのテンションに耐えるように、ブリッジ近くに移動させたリアワード・シフテッドのスキャロップト・タイプになっている。
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【Specification】
●トップ:アディロンダック・スプルース VTS ●サイド&バック:マダガスカル・ローズウッド ●ネック:マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 11/16インチ(42.9mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト・リアワード・シフテッド ●定価:1,100,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 ネックのグリップはHD-28Vよりすっきりした感じで、テンション感もあまり強くないですね。動画のデモはもともとHD-28Vのために用意した曲ですが、実器を触ったらこちらの方が合うと思ったので急遽入れ替えました。ピック弾きと指弾きで全然違う曲をやったのは、適度に抑制が効いていて、何でも安心して弾けると思ったからです。指弾きの曲では強めにピッキングしていますが、暴れる楽器だとやりにくいんですよ。ピック弾きの曲は60年代のサイケな雰囲気で、スティーヴン・スティルス的な展開も取り入れました。彼がいつ頃の楽器を使っていたのかはわかりませんが、このギターには何か古いものをやってみたくなるような雰囲気があるんでしょうね。

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Martin MARQUIS Collection
D-18GE

D-18GE


D-18GE(Back)


木ネジにもマイナス・タイプを使用するなど、ビンテージ仕様にこだわったオープン・ペグ。

シンプルなドット・デザインながら、味わい深い色彩のアバロンを使用したポジション・マーク。

ボディ材には上質のジェニュイン・マホガニーを使用。

 マーティン黄金期の真っただ中の1934年に作られたD-18を再現した、ゴールデン・エラ・シリーズのモデル。ボディ材にマホガニーを使用したスタイル18は、スタイル28の下位に位置付けられるモデルだが、この頃(1946年以前)のD-18は指板とブリッジに28と同じくエボニーを使用しており、ローズウッドを使用したモデルよりも重厚なサウンドが得られるのが特徴である(現行のスタンダード・シリーズのD-18もエボニーを採用)。この時期のナット幅は41年の1 11/16インチよりもやや広い1 3/4インチで、Vシェイプを基本にしたグリップに仕上げられている。また、ヘッド・プレートにブラジリアン・ローズウッドを使用しているのもゴールデン・エラの特徴だ。
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【Specification】
●トップ:アディロンダック・スプルース ●サイド&バック:マホガニー ●ネック:セレクト・ハードウッド ●ヘッドプレート:ブラジリアン・ローズウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト・フォワード・シフテッド ●定価:590,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 これは野太い音がするだろうなと思っていましたし、今回弾いた中でいちばんテンション感が強い印象だったので、デモにはちょっとブギーっぽい曲を選びました。ロックンロールのリフが出て来たりしてちょっとワイルドな曲なんですが、このギターは強めにピッキングできるし、ぴったりでしたね。ネックも太くてガッツリ弾ける感じです。いつも思うことだけれども、マホガニーのボディは単音のフレーズを弾いた時にイナタさを思いっきり出してくれるので、そのフレーズが際立って印象に残るんですよね。今回のデモ曲も、Bメロの部分で出てくる単音のフレーズをかなり強く弾いたんですが、気持ち良く“イナタく”響いてくれましたね。

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Martin MARQUIS Collection
000-28EC

000-28EC


000-28EC(Back)


バインディングはもちろん、ロゼッタにもヘリンボーンのデザインを採用している。

シグネチャー・モデルの証となる、エリック・クラプトンのサインをかたどったインレイ。

トップは美しいビンテージ・トナー仕上げ。エボニー・ブリッジと共に重厚感を演出。

 マーキス・コレクションにおいてはHD-28Vと人気を二分する、000-28エリック・クラプトン・シグネチャー。1992年にMTVの『アンプラグド』でクラプトンが使用し、アコースティック・ギター・ブーム再燃のきっかけとなった楽器を基にデザインされたギターで、1996年の発売以来ロングセラーを記録しているモデルでもある。型番に“V”は入っていないが、ヘリンボーン・バインディング、Vシェイプを基にしたネック・グリップ、スキャロップト・ブレイシング、経年変化したラッカーの色合いを再現したビンテージ・トナー仕上げなど、ビンテージ・シリーズに相当する仕様になっている。
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【Specification】
●トップ:シトカ・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:マホガニー ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:24.9インチ(632.5mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト ●定価:580,000円(税抜き)

Makoto’s Impression

 これはもう、良く出来たギターですよね。今回、いちばん音の動きの多いデモ曲は弾きやすいギターでやらなきゃと思っていたんですが、持った瞬間にこれでやることにしました。ちょっとハネた感じの曲で、自分の弾き方に上手く反応してくれないギターだと、全然ハネた感じが出なくてヘタクソに聴こえちゃうこともあるんですよ。だから、こういう弾きやすいギターが必要なんです。ナット幅がやや広くて押弦がちょっと大変ですが、ショート・スケールでテンションが柔らかくて、ダイナミクスの表現が気持ち良くできるのが魅力ですね。標準器と呼ばれるのにふさわしい多様性を持ったギターだと思います。

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Martin MARQUIS Collection
D-28 Marquis

D-28 Marquis


D-28 Marquis(Back)


操作性の良いモディファイドVシェイプのネック。

ビンテージ感を高める、バタービーン・スタイルのペグと六角形のブッシュ。

バックのセンター・ストリップもスタイル28の特徴のひとつ。

 “マーキス”の名を冠した最初のモデルで、現在のマーキス・コレクションにおけるD-28のラインナップでは、オーセンティックとビンテージ(HD-28V)の中間に位置する。フォワード・シフテッド・スキャロップト・ブレイシングや1 3/4インチ幅のナットなど、基本仕様はゴールデン・エラに準拠しており、サウンドの要になるトップ材とブレイシング材には、上位機種と同じくアディロンダック・スプルースを採用。ボディ材はインディアン・ローズウッドだが、良材を選んで使用している。ある意味お買い得の1本と言えるだろう。
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【Specification】
●トップ:アディロンダック・スプルース ●サイド&バック:イースト・インディアン・ローズウッド ●ネック:セレクト・ハードウッド ●指板:エボニー ●ブリッジ:エボニー ●スケール:25.4インチ(645.2mm)●ナット幅:1 3/4インチ(44.5mm)●トップ・ブレイシング・パターン:スタンダードX・スキャロップト・フォワード・シフテッド ●定価:720,000円(税抜き)

Makoto’s Impression〜マーキス・コレクションの試奏を終えて

 HD-28Vは僕にとっても馴染みのあるモデルですし、Vネックというのはやはり僕にとって弾きやすいシェイプなんだということがわかりました。テンション感はD-18GEの次に強い印象でした。オーセンティック1941はとても弾きやすいギターで、指弾きのデモ曲では後半にボサ・ノヴァっぽい爪弾きのリズムを作ったんですが、本来ならガットギターに向いているようなことでも安心して弾けるのはさすがだと思いましたね。アディロンダック・スプルースの効果もあるんでしょうか。それに対して、D-18GEは今回弾いた中でいちばんテンションが強くて音も暴れる感じで、プレイヤーのキャラをガーンと伝えるようなフレーズを強調したい時には、威力を発揮してくれますね。マホガニーというのは楽器が大型でも小型でもキャラが立っていて、その意味ではローズウッドに優ると言えるかもしれませんね。あと、個人的にマーティンのギターは、他のメーカーの楽器に比べてそれほど強いクセがないおかげで、弾き手の音が出てくれるんだと思っているんですが、000-28ECのような定番モデルはその最たる例なんじゃないでしょうか。どんな弾き方をしても自分の表現が生かせますよね。テンションが弱くて、強くピッキングすると弦が少しビビってブルージーな感じが出るんですが、そのビビり具合が上品なので、ビビるのが苦手な人でも取り入れてみたくなると思います。

斎藤誠が弾く! マーティン特集バック・ナンバー

マーティン“個性派”モデル〜D-15M、000-16GT、00L-17、000-17
マーティン・スタンダード・シリーズ超定番モデル〜D-18,D-28,D-35,000-18,000-28
マーティン・スタンダード・シリーズ40番台〜D-41, D-42, D-45, 000-42, OM-42
マーティン・スタンダード・シリーズ〜DC-28E/OMC-18E/GPC-35E

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製品情報

プロフィール

斎藤誠(さいとう・まこと)
1958年東京生まれ。青山学院大学在学中の1980年、西慎嗣にシングル曲「Don’t Worry Mama」を提供したのをきっかけに音楽界デビューを果たす。1983年にアルバム『LA-LA-LU』を発表し、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。ソロ・アーティストとしての活動はもちろん、サザンオールスターズのサポートギターをはじめ、数多くのトップ・アーティストの作品への楽曲提供やプロデュース活動、レコーディングも精力的に行なっている。2013年12枚目のオリジナル・フルアルバム『PARADISE SOUL』、2015年にはアルバム「Put Your Hands Together!斎藤誠の嬉し恥ずかしセルフカバー集」と「Put Your Hands Together!斎藤誠の幸せを呼ぶ洋楽カバー集」の2タイトル同時リリース。また、本人名義のライブ活動の他、マーティン・ギターの良質なアコースティック・サウンドを聴かせることを目的として開催されている“Rebirth Tour”のホスト役を長年に渡って務め、日本を代表するマーティン・ギタリストとしてもあまりにも有名。そのマーティン・サウンド、卓越したギター・プレイを堪能できる最新ライブ情報はこちらから!

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