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  • ヘヴィ・サウンドとクリーン・サウンドを高次元で両立したマーク・ホルコム・シグネチャーSE

Paul Reed Smith / SE Mark Holcomb

Paul Reed Smith / SE Mark Holcomb

  • 試奏・解説・文:村田善行 写真・動画撮影・編集:伊藤大輔
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 Paul Reed Smith(以下PRS)SEシリーズは、ハイエンド・ギターの代名詞となったPRSギターのクオリティとコンセプトを維持しながら、若い世代のミュージシャンに向けたデザイン/スタイルを提示する「スチューデント・エディション」として高い評価を得ている。韓国工場にて生産されるギターは本国から派遣されたスタッフ(ポール・リード・スミス氏本人も積極的に参加)の指導によりグングンと品質レベルが向上。スチューデント・モデルの名に適した価格帯でありながらも、トップ・プロがサブ・ギター(時にはメイン・ギター)で使用しても遜色無い品質とトーンを持たせている。登場時から現在までブラッシュアップを重ね、様々なアーティストとのコラボ(シグネチャー・モデル)も発表している。

 このSE Mark Holcombは、ペリフェリーのギタリストであるマーク・ホルコムのSE版シグネチャー・モデル。レギュラー・ラインで発表されたMark Holcomb Limited Editionの特徴を押さえながら、SEラインで再構築されている。ポイントは大きく分けて4つ。それぞれチェックしてみよう。

 ひとつはスケール・レングス。一般的なセットネック/ボルトオン・ギターよりも長い25.5インチを採用。これは弦のテンションを得るために採用されている。チューニングを下げるとどうしても弦のテンション感も失われる。ロー(低音)の存在感にこだわる場合、弦のゲージを太くする事でテンション感+存在感が得られる。だが、どちらかと言えばベース・ギターのサウンドに近づいていく傾向になってしまう。一方で弦のゲージを変えずにテンションを得るためにスケールを伸ばせば、弦は大きく揺れる。大きく揺れれば倍音は増える。そして強烈なディストーション・サウンドと合わせる事で太い弦を張った時よりもヘヴィなサウンドを生み出せる。しかし、一般的な弦を.010〜.046ゲージでダウン・チューニング(全弦1音下げ+6弦ドロップC)すると、各弦のテンションはデロデロになってしまい、特に6弦の出音は期待できない。そしてかなり右手のコントロールがシビアになるだろう。この問題をスケールを伸ばす事で対応した、まさにシグネチャー・モデルならではのこだわりだ。

Paul Reed Smith / SE Mark Holcomb

 ふたつ目はネック・シェイプ。幅広に感じられるネック・シェイプだが、実際には幅と言うよりもシェイプ自体にこだわりがある様だ。1、6弦側/両サイドに肉付きの良いネックはかなりゴツい印象。シェイクハンド・スタイルで弾く場合、通常のPRSと比べると違和感があるだろう。しかし、指を立てる様なスタイルであれば、ネック裏に置いた親指のガイドとして良好なシェイプだと言える。またファットなネックは音色も「ファット」で、音像にコシが感じられる。サテン・フィニッシュの質感も心地良い。

 3つ目はピックアップ。セイモア・ダンカン・カスタムのOMEGAとALPHAというシグネチャー・モデルが搭載されている。これはレギュラー・ラインと同じピックアップだ。非常にクリアでスピード感があるブリッジ側のALPHAと、メロウでありながら歪ませても音色が引っ込む事のないOMEGAのコンビネーションは秀逸。

 最後に裏通しのハードテイル・ブリッジ。一見スルーしてしまいそうだが、実はPRSにこの仕様は少ない。ラウドなギター・サウンドをタイトに出力したい場合、このブリッジは非常に有効となる。デザインもPRSオリジナルを採用している点に注目したい。ドッシリとしたボトムの迫力、プレーン弦のヌケ感等バランスも良好で、地味ではあるが他には無いオリジナリティを感じる。

 全体的に価格帯のイメージを上回るクオリティがあり、実際に弾いて録音された音色を聴くと、さらに良い意味で裏切られた感じもある。このギターは録音にも即使えるレベルで、なおかつただのハイゲイン向けギターではない。マーク・ホルコムのセンスの良さとPRSのアーティスト・リレーションが高いレベルで融合して生まれたギター。マーク・ファンはもちろん、ヘヴィなギター・サウンドと対照的なクリーン・サウンドを両立したいギタリストにぜひ、手に入れて欲しい1本だ。

「Mark Holcomb」と記されたトラスロッド・カバーを備えるヘッドストック。

ネック・シェイプはワイド・シン・タイプ。サテン・フィニッシュにより演奏性も良好だ。

ジョイントはセットネック。


ピックアップはマーク・ホルコム・リミテッド・エディションと同じく、セイモア・ダンカンのアルファ(フロント)、オメガ(リア)をマウント。

サウンド・キャラクターの隠れたポイントとなる、オリジナルのハードテイル・ブリッジ。

ボリューム、コイルタップ兼用のトーン、3ウェイ・ピックアップ・セレクターはPRSの定番。トップのキルト・メイプルも美しい。

※使用アンプ:Fender '68 Custom Deluxe Reverb

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製品情報

Paul Reed Smith / SE Mark Holcomb

価格:¥154,000 (税別)

【スペック】
●ボディ:メイプル with キルト・メイプル(トップ)、マホガニー(バック) ●ネック:3ピース・メイプル(ワイド・シン・シェイプ) ●指板:エボニー ●フレット数:24 ●スケール:25.5インチ ●ピックアップ:セイモア・ダンカン・アルファ(フロント)、オメガ(リア) ●コントロール:ボリューム、トーン(プル=コイルタップ)、3ウェイ・ピックアップ・セレクター ●ペグ:PRSチューナー ●ブリッジ:PRSプレート・スタイル ●出荷時弦ゲージ:.010〜.046 ●出荷時チューニング:C、G、C、F、A、D(6 → 1弦)
【問い合わせ】
コルグお客様相談窓口 TEL:0570-666-569 http://www.prsguitars.jp/
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プロフィール

村田善行(むらた・よしゆき)
ある時は楽器店に勤務し、またある時は楽器メーカーに勤務している。その傍らデジマートや専門誌にてライター業や製品デモンストレーションを行なう職業不明のファズマニア。国産〜海外製、ビンテージ〜ニュー・モデルを問わず、ギター、エフェクト、アンプに関する圧倒的な知識と経験に基づいた楽器・機材レビューの的確さは当代随一との評価が高い。覆面ネームにて機材の試奏レポ/製品レビュー多数。

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