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古川昌義 meets BOSS AD-2 Acoustic Preamp

BOSS/AD-2 Acoustic Preamp

  • 取材&文:山本彦太郎 写真撮影:西槇太一 動画撮影&編集:森田良紀

エレキ・アコースティック・ギターを活用するギタリストの中には、アコギ本来の鳴りとは異なるピエゾ・ピックアップによる独特のサウンドが苦手、という方も多いのではないだろうか? BOSSのAD-2は、そういった悩みを一発で解決してくれるコンパクト・プリアンプだ。高品位なサウンド・エンジンを搭載し、複雑な共振特性を持つアコースティック・サウンドを再現。本機を通すことでピエゾ・サウンドの違和感を解消し、自然な鳴りと響きを取り戻すことができる。今回は、ベテラン・ギタリスト古川昌義を試奏者に迎え、本機の実力を徹底チェックした。

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古川昌義がBOSS AD-2を徹底チェック!

About AD-2 Acoustic Preamp
製品解説

 コンパクト・シリーズで登場したアコギ用プリアンプ。操作は非常にシンプルで、ボディ鳴りを調整するACOUSTIC RESONANCEとAMBIENCE(リバーブ)のみ。エレアコ特有の硬質さや人工感を、手を加えて調整していくのではなく、その楽器が持っている本来の響きを取り戻すというコンセプトが注目の1台だ。他にも、ハウリングを解消するNOTCH(ノッチ・フィルター)や、BB-1Xなどでも好評だった専用チューニングが施された“使える”LINE OUT(TRS端子対応)、楽器の持ち替えなどにも便利なミュート機能など、ライブの場でアコギを楽しむための機能が充実している。

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The Strong Point of AD-2
ギタリストを唸らすAD-2の特徴

その1 エレアコ・ユーザー待望のコンパクト・プリアンプ

 アコースティック・ギターをラインやアンプで鳴らす際に、今や一般的な方法となっているピエゾ・ピックアップの利用。ひと頃に比べてピエゾ・ピックアップ自体も進化し、音が硬い/空気感がない/味気ないといった弱点も随分と緩和されてはいるが、やはりアコギに慣れ親しんでいればいるほど、生音との差異や違和感に悩まされるものだ。これまでADシリーズなどでエレアコのサウンドメイクをサポートしてきたBOSSが新たに打ち出したのは、なんとコンパクト・シリーズのAD-2。シンプルながら、これまでとは異なるアプローチを持ったアコースティック・ギター用プリアンプだ。

その2 本来の鳴りを取り戻すACOUSTIC RESONANCE

 AD-2の基本コンセプトは、ピエゾ・ピックアップのみではアコースティック・ギターならではの生々しいトーンの再現が不可能だった、ボディの複雑な振動から生まれる鳴りや響きを実現し、アコギ本来のサウンドを生み出すことにある。その要となるのが、ACOUSTIC RESONANCE。トップ板やブリッジ、ネック、ヘッドの共鳴を取り戻すことができる機能だ。もちろん、この共鳴はストロークやアルペジオといった奏法によって異なってくる。また、一般的なプリアンプと異なり、複数のEQで“音を作り上げていく”のではなく、シンプル・オペレートで本来の響きを簡単に得ることができるのも、大きなポイントだ。

その3 演奏環境も調整できる高品位リバーブ

 AD-2には、エレアコでは重宝するリバーブも搭載している。AMBIENCEは、アコギ用にチューニングされた高品位リバーブで、アコギならではの複雑な振動と倍音が生み出す豊かな響きをスポイルせずに、響きの残り方や奥行きを加えることが可能。ピエゾ・ピックアップの硬質さを和らげるためにリバーブを使用していた人も多いと思うが、AD-2ならば、演奏環境の設定や立体感など、リバーブを本来の役目通りに活用できるわけだ。

その4 ノッチ・フィルターでハウリングも解消

 ライブ環境でのアコギの悩みの種と言えばハウリング。AD-2には、専用のノッチ・フィルターも内蔵されており、音色は変えずにハウリングを起こす周波数帯のみをピンポイントでカットすることが可能だ。また、原理的にはEQのため、「ハウリングしていない時でも音作りに活用するのもおもしろそう」とは古川の弁だ。

その5 ラインでも自然な鳴りを実現

 通常のアウトプットのほかに、TRSジャックの使用によりDI機能としても使えるライン・アウトも装備。ライン・アウトは専用のチューニングが施されており、芯と鳴りを両立させた音を出力可能だ。

Furukawa's Impression
古川昌義が語る、“AD-2が必要な理由”

あるものはそのままで、そこに弾いている人の心を足す、“気持ちのツマミ”ですね

 アコースティック・ギターっていうのは、ボディから出て、空気が動いて耳に届いた音を聴いて練習するわけだし、それが気持ち良かったりするんです。指も、練習を積むことでその感触を覚えるわけで、音を聴いた時にすぐに調節をし始めるんですよ。それが、ピエゾ・ピックアップだとその感触が変わってしまうし、本来は気にしなくていいタッチ・ノイズなども気になってしまう。それはストレスだし、どこかで我慢していることなんですね。特に最近はイヤモニを使って演奏することも多いですけど、そうなると音がダイレクトに耳に戻ってきて、手にもすごく影響があるんです。だからこれまでは、“どうやって自分にとって演奏しやすいところで妥協するか?”ということで、リバーブを使ってみたり、可能ならば自分用のモニターのためにマイクを立ててもらったりということをしてきました。自分が知っている音がちゃんと聴こえるっていうのは、演奏するうえですごく大事なことなんです。

 その点このAD-2は、ピエゾ・ピックアップならではの弦の振動だけが鳴っている感じではなく、胴の振動や空気を揺らすイメージがしっかりあって、結果的に生で弾いているのと同じような印象があります。例えば、ロックなどの大音量のバンドで演奏する時は、まず右手にすごく負担がかかるんです。それが、そういう時でもこのAD-2をオンにすれば、大音量の中でもストレスなく演奏できてモニタリングもしやすいセッティングのまま、自分のギターのボディ鳴りの感じを生かしてくれる。右手を楽にしてくれるし、サウンドも良くなると思います。

 ACOUSTIC RESONANCEのセッティングについて、好みは9時ぐらいの設定ですが、実はゼロにしても僕にとっては違うんです。これは聴いている人にはわからないと思いますけど、プレイする側としては音を出した時に理想の音と違ったら、指が必死にギターの鳴らし方を調節するわけですね。その調節が、ゼロのままでもギュッと減った感じがある。オンになっているだけで、途端に右手が楽になるんですよ。自分が気持ち良くなれば出てくる音もリラックスするし、聴いている人もハッピーにしてくれると思います。このツマミは、音を作る、変更するのではなくて、あるものはそのままで、そこに弾いている人の心を足すという感じ。“そうそう、こうやって弾いているんだよ”という感覚を調節してくれる、“気持ちのツマミ”ですね。それから、ボディの鳴り自体はACOUSTIC RESONANCEで充分出るんですけど、AMBIENCEを少し足すことによって、それを弾いている部屋の空気の動きも感じ取っている気持ちになれる。すごく自然で、良い部屋に引っ越したような感じがしますよ(笑)。この二つのツマミで、どんな時でもいつもの自分の音を出せると思いますし、それって理想ですよね。

◎録音環境について
 今回はAD-2の実力を検証するため、コンデンサー・マイク/コンタクト・ピックアップの類は一切使わず、内蔵のピエゾ・ピックアップのみを使用して録音しています。なお、使用機材は以下の通り。
YAMAHA/CPX-15W Ⅱ
MATON/EBG808C "MICHAEL FIX"

関連記事:AD-2との相性抜群な「CP-1X Compressor」の記事はコチラ!

boss_cp1x

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製品情報

BOSS / AD-2 Acoustic Preamp

価格:オープン

【スペック】
●規定入力レベル:-20dBu ●入力インピーダンス:10MΩ ●規定出力レベル:OUTPUT端子=-20dBu, LINE OUT端子=-20dBu ●出力インピーダンス:OUTPUT端子=1kΩ, LINE OUT端子=600Ω ●推奨負荷インピーダンス:OUTPUT端子=10kΩ以上, LINE OUT端子=600Ω以上 ●バイパス:バッファード・バイパス●コントロール:ペダル・スイッチ, ACOUSTIC RESONANCEつまみ, AMBIENCEつまみ, NOTCHつまみ ●インジケーター:CHECKインジケーター(バッテリー・チェック兼用) ●接続端子:INPUT端子=標準タイプ, OUTPUT端子=標準タイプ, LINE OUT端子=TRS標準タイプ, DC IN端子 ●電源アルカリ:電池(9V形)またはマンガン電池(9V形), ACアダプター(別売) ●消費電流:55mA●連続使用時の電池の寿命(使用状態によって異なる):アルカリ電池=約6時間 ●外形寸法:73(幅)×129(奥⾏)×59(高さ)mm ●質量(乾電池含む):450g ●付属品:保証書, 取扱説明書, チラシ(安全上のご注意、使用上のご注意、サービスの窓口), アルカリ電池(9V形 ※本体に接続済み)
【問い合わせ】
ローランドお客様相談センター TEL:050-3101-2555 https://www.boss.info
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プロフィール

古川昌義(ふるかわ まさよし)
1964年3月10日生まれ。7歳頃からクラシック・ギターのレッスンを受け始め、1981年に大阪で始めたスタジオ・ワークに目覚め、ポピュラー・ミュージックにのめり込む。その後、平松愛理とアマチュア最後のバンド“ワンダーラスト”を結成し活動を始める。1987年に上京、今田 勝NOW WINに参加。近年は高橋真梨子、CHEMISTRY、Crystal Kay、鈴木雅之、岩崎宏美、辛島美登里、ASKA、CHAGE&ASKA、元ちとせ、中島みゆき、椎名林檎、JUJU、徳永英明、絢香、平原綾香、福山雅治、swing out sister、SMAP、嵐、My Little Lover、Bank Bandなど、さまざまなアーティストのツアーやレコーディングに参加。CM・TV音楽、アーティスト・プロデュース、また自身のソロ・アルバムも5枚発表している。また、2012年4月よりプロフェッショナルを養成するためのスクール「古川昌義ギタリスト養成塾」を開いている。

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