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CEOとアメリカン・プロフェッショナル開発責任者が語るFenderの現在

Fender / AMERICAN PROFESSIONAL Series

このたびリリースされたフェンダーのアメリカン・プロフェッショナル・シリーズは、同社の歴史や思想、そしてこれまで重ねてきたプレイヤー目線に立った楽器作りの精神がくっきりと表われた渾身の楽器と言える。そんな傑作の秘密を探るべく、ギター・マガジン編集部が、2015年にハリウッドに設立されたフェンダーの新たなオフィスに潜入。米フェンダー社CEOアンディ・ムーニー(写真左)と、アメリカン・プロフェッショナル開発責任者ジャスティン・ノーベル(写真右)のふたりにインタビューを敢行した。深い伝統を踏襲しながらも、着実に変革、革新を推し進める同社の現在に迫る。

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レオ・フェンダーが行なったことを
今でも実践しているのです。──アンディ

代表取締役のアンディ・ムーニー。2015年、フェンダー・ミュージカル・インストゥルメンツ・コーポレーションCEOに就任。ナイキやディズニーに務めたキャリアを持つ。リッチー・ブラックモアの大ファン。

──近年のフェンダーは、広告ビジュアルを中心にスタイリッシュな印象をアピールしているかと思います。その点について戦略や意図していることがあるのでしょうか?
アンディ(以下A) 広告が洗練されているというお褒めの言葉、ありがとうございます。私たちフェンダーはこの業界で70年もビジネスを続けていますが、常に念頭に置いているのは次の世代のギター・プレイヤーたちのことです。未来を担うプレイヤーたちは、より美しく洗練されたものを求めている世代なのです。

──そういった着眼点はあなたの今までの経歴に関係していますか?
A 私はこれまでナイキやディズニーで働いてきましたが、共通して大切にしていることは消費者に求められていることを提供するということです。今回立ち上げたアメリカン・プロフェッショナル・シリーズも、一緒に仕事をしてきたミュージシャンたちが求める声を大切にして完成にいたったものなのです。これははるか昔のフェンダーが行なっていたことと同じで、ミュージシャンたちの声を聞いてそれに応えることから始まっています。かつてレオ・フェンダーが行なってきたことを今でも実践しているのです。

──広告だけでなく、アメリカン・プロフェッショナル・シリーズの製品の中にも洗練された新しいものを感じることができますが、楽器製作にも新しい要素を導入していますか?
A イノベーションにチャレンジするという点では今も昔も変わりません。フェンダー創設当初に発表されたすべてのギターは、当時のどのギターとも違う新しいものでした。レオ・フェンダーはエスクワイヤーに始まりテレキャスター、ストラトキャスターと次々に新製品を発表し、それは今日でも続いています。進化はもっと違う次元に進み、現在ではシェイプはもちろんのこと、ギターの内部にまで及んでいます。ペイントや電気回路の本当に細かな部分まで進化を遂げていて、革新的な段階に進んできていると思います。アメリカン・エリートやアメリカン・プロフェッショナルに対して、何かが従来と変わったはずだろうと誰もが気づくはずです。それぞれのシリーズのストラトキャスターを例にとっても、そのとおりですべてが変わりました。ネックのカーブ、フレットの高さ、電気回路、操作方法、すべてが変わったのです。その中でも重要視したポイントはカラーで、トラディショナルなブラックやサンバーストばかりではユーザーに新しくなったことを伝えるのは難しかったことでしょう。そのためアメリカン・エリートやオフセット・シリーズでは、かなりのエネルギーを費やしてカラー・パターンを用意しました。カプリ・オレンジなどは最も人気のあるカラーのひとつです。狙いどおり多くの人が手に取り、実際にプレイすることで従来との違いを感じてくれています。今ではこの業界の多くの人がカプリ・オレンジで作れば売れると考えているようです(笑)。
ジャスティン(以下J) フェンダーは数年ごとに製品をアップデートしていますが、それは新しい製品を出すこと自体が目的となっているわけではありません。楽器として使いやすいものとなっていることが第一なのです。楽器の構造をイチから見直し、どの要素にも改善の余地があることを見出し、オープンな姿勢でより良い楽器を作ろうとするのです。どうしたら少しでも良いサウンド、そして優れた楽器を作れるのかということを常に考えています。
A 私は66年製のジャズマスターを持っていますが、プレイアビリティの面ではアメリカン・プロフェッショナルのジャズマスターに軍配が上がるでしょう。こうなれたのは会社設立当時と同様に多くのプロフェッショナルなミュージシャンの声を聞いてきたからであり、ジョニー・マーのようにギターを愛して止まない人たちの声に耳を傾けたからなのです。ジョニーのシグネチャー・モデルを私たちが作ることができたのも、彼が求めていることにしっかりと耳を傾けたからであり、それをさらに多くのギタリストに提供するにはどうしたら良いかを考えて製品に反映させているのです。

──日本でもカラーリングについては話題になっています。こういった新色はどのようなところから生まれたのでしょうか? これもプレイヤーたちの要望によって実現されたのでしょうか?
J アンディが先ほど話したとおり、真新しさをアピールするためのものであったことは事実です。カラーリングについて計画する際に、私たちはいつもフェンダーのオリジナル・カラーに立ち返りますが、特に今回のシリーズについては、従来には存在しなかったものを作り出すことにしたのです。インスピレーションを得るために見るものすべてに目を向け、ファッションや車といったカルチャーを含めてなんでもチェックしていきました。また、同時にビンテージ市場にも注目しました。色褪せて灰色っぽくなったソニック・ブルーも取り入れましたし、これはモダンで先進的なカラーだけでなく私たちの作ってきた過去にも目を向けている証なのです。
A 価格も影響していますが、オフセット・タイプ(ジャズマスター/ジャガーなど)のギターは若いプレイヤーや女性たちに人気で、彼らは新しいカラーに対してオープンなのです。みんなと同じものを求めながらも、少し何かが違うものを探しています。その結果がアメリカン・エリートやアメリカン・プロフェッショナルに反映されているのです。

──従来にない新しいカラーリングを採用するのは勇気が必要な決断かと思います。どのようにしてカラーの決定を行なうのでしょうか?
J 複雑な作業に時間を要することになります。私たちはカラーについては実験を常に重ねていますし、さまざまな会社とやり取りをすることもあれば、アーティストたちからもインスピレーションを受けています。そうやって作り出した膨大なカラーを20種くらいに絞り込み、“どのカラーが最も好まれるのか?”といった議論をしていきます。時には大きく意見が割れるようなカラーが成功することもありますし、大胆なカラーだとそれ自体がある種の意志表明のように感じられて好まれることもあります。少しの勇気と確信が必要になりますし、カラーについては我々内部でも常に議題になっているのです。フェンダーは独特なカラーでも知られた存在ですからね。
A 会社の創成期における印象深いいくつかのカラーは自動車産業で用いられた色をそのまま使っていて、塗料メーカーのデュポン社が車の塗装用に提供していたものをギターに使用していました。当時のアメリカの自動車の設計技術は世界をリードしていたものなのです。現在でも自動車産業は私たちのインスピレーションの源のひとつですし、そこにほかの分野も加わってきています。

ピックアップのワイヤーや巻き数は
マジックだと答えておきましょう(笑)。──ジャスティン

フェンダー社シニア・ヴァイス・プレジデントのジャスティン・ノーベル。今回発足したアメリカン・プロフェッショナル・シリーズのプロジェクト責任者を務める。

──アメリカン・プロフェッショナル・シリーズの最大の改良ポイントはピックアップにあると思います。どんなトーンを狙いましたか?
J 最もバランスが取れて、最もピュアなトーンが得られるものを目指しました。フェンダーはサウンドの透明さで知られていて、そのためプレイヤー自身のサウンドやパーソナリティーをしっかりと表現できます。今回開発したピックアップは特定のポジションのピックアップにアルニコ2、3、5といった異なるマグネットを組み合わせて用い、サウンドを最適化してピックアップのイコライジングを行なっているのです。
A ボディ・シェイプごとに実験を重ねてピックアップを作っていきました。
J 10個に及ぶピックアップを作製しましたし、すべての弦に対してパーフェクトなサウンドが得られるように緻密な調整をくり返したのです。

──シングルコイルを例にとると、構造上これまでとどういった点で異なっていますか?
J 構造上は同様に製作していて、ファイバー製のボビンとアルニコ・マグネットを使っています。使っているワイヤーの種類や巻数、ピックアップ・ポジションに応じたマグネットに違いがあるのです。かつてはアルミ製のボビンといった根本的に構造が異なるものもありましたが、今回のピックアップについてはビンテージの製法を踏襲したものとなっています。

──ハムバッキング・モデルであるショウバッカーについて教えてください。
J 完全にビンテージ・サウンドを狙ったものとなっています。P.A.F.スタイルのハムバッカーを意図しており、オリジナルの製法にのっとりつつもフェンダーらしいサウンドやスペックに仕上げています。より良いトーンを求めるプレイヤーに強くお薦めできるピックアップです。

──差し支えなければマグネットやワイヤー、その巻数について具体的に教えてもらえますか?
J それについては少しばかり秘密にしておきたいところもありますので、マジックだと答えておきましょう(笑)。

──ティム・ショウはどんな方でしょうか?
J 彼はキャリアのすべてをギターに捧げてきた人で、多くの会社を渡り歩いてきました。現在でも刺激を受け続け、高いモチベーションを保ち続けています。フェンダーに来てもう20年は経ったと思います。多くのピックアップ・エンジニアは独学で学び失敗を経験するものですが、ティムは物理学をしっかりと学んでおり、設計図の段階でどんなサウンドになるのかを思い描くことが可能です。良き耳を持ったプレイヤーでもありますが、知識を持ったエンジニアとしてのバランスも保っているのです。彼と仕事をすることはとても光栄なことです。
A 彼の素晴らしいところはギターのサウンドをピックアップだけでとらえていないところにもあります。ギター全体、つまりギターの木材、ネック、シェイプとのコンビネーションでサウンドが生み出されていることを理解しています。

アーティストやユーザーの声を
細かく拾い上げた結果なんです。──ジャスティン

会議室にはそれぞれ“ジョン・フルシアンテ”などフェンダー・ギタリストの名前が付けられており、本インタビューを行なった部屋は“リッチー・ブラックモア”。

──テレキャスターのサドルに関して、アメリカン・スタンダードでは6ウェイだったものがアメリカン・プロフェッショナルでは伝統的な3ウェイに変更されていますね。
J テレキャスターのサドルについては妥協の結果であると言わざるを得ないでしょう。多くの人たちが求める最高のテレキャスター・トーンはブラス製の3ウェイ・サドルなのです。6ウェイ・サドルはイントネーションのために、そういったプレイヤーが求めるトーンを犠牲にしているとも言えます。従来のブリッジはグレイトなものでしたが、ビンテージ・タイプではありませんでした。スティールとブラスで比較した結果ブラスのほうが素晴らしいサウンドが得られると判断し、3ウェイながらもイントネーションを改善したものを作り出したんです。クラシックなルックスながらも、ハイ・エンドを少し抑えてミッド・レンジを押し出すよう設計されています。ブリッジ・プレートの側面を低めにして、プレイアビリティも向上させました。

──ジャガーとジャズマスターもレギュラー・ラインとしてシリーズに加わりましたが、これもニーズに応えてのことなのでしょうか?
J この5年ほどでジャズマスターを目にする機会が増え、クラブ・サイズの会場から始まり大きなフェスティバルでも目にするようになりました。多くのバンドがジャガーやジャズマスターをプレイしてくれています。これらのギターは登場から60年近く経過している独自のユニークさを持ったモデルですし、ストラトキャスターやテレキャスター、ジャズ・ベースやプレシジョン・ベースと並ぶ代表的な製品にしたいと考えていたんです。
A ジャガーやジャズマスターの人気が高まっている要因のひとつには、日本にいるコレクターたちの影響もあると思います(笑)。25年ほど前に多くのテレキャスターとストラトキャスターが日本のコレクターの手に渡っていきました。ビンテージのストラトキャスターとテレキャスターを購入できないプレイヤーたちは、カート・コバーンやJ・マスシスの存在もあり、代わりにジャガーやジャズマスターに手を伸ばしたのです。それ以来これらのギターの認知度は高まり、プレイヤーたちは各自が弾きやすいようにどんどん改造していきました。彼らのサウンドや声に耳を傾け、アーティストたちの声も集めてコンテンポラリーなモデルを作ることにしたのです。

──プリセットが取りはずされているのはプレイアビリティの向上を狙ってのことでしょうか?
J 楽器をシンプルにする目的もありましたが、アーティストやユーザーの声を細かく拾い上げた結果でもあります。プリセット部分にガムテープを貼ったプレイヤーは非常に多く、回路を丸ごと取りはずす改造をする人たちもいます。それに、この機能があることで多くのプレイヤーが困惑することがあるようです。こういった問題を完全に取り除いてクリーンで扱いやすい楽器としたのです。

大切なのは楽器とプレイヤーのつながりを
どうやって維持していくかということ。──アンディ

──かなりの数のギターを所有されているようですが、お気に入りのギターはありますか?
A 私のコレクションに加わった最初のギターは86年製のアメリカン・スタンダードでして、CBSから会社の所有権を買い戻したばかりの頃に製造されたものだと思います。何の改造も施していませんが、オールラウンドに使うことができる素晴らしいギターです。私はヘヴィなロックも好きなので、最近はアメリカン・エリートにショウバッカーを搭載したモデルを頻繁にプレイしています。

──あなたにとって理想のギターはありますか?
A あまりにも多いですね(笑)。86年あたりからコレクションが始まり、ベーコンとデイによる「The Fender Electric Guitar Book」(トニー・ベーコン/ポール・デイ著)という本に掲載されているギターを多く集めてきました。絶対に入手不可能だとわかっていますが、非常に興味があるのはデヴィッド・ギルモアが所有する“シリアルナンバー001”のストラトキャスターです。実際には世界で最初に作られた1本というわけではないですが、シリアルナンバーとして最初のものとなります。現在デヴィッドとは交渉を行なっていて、忠実に再現したものを製作できないかと考えています。ロリー・ギャラガーの所有していたギターと同じようにカスタムショップで製作を行ない、私がその最初の購入者になりたいと思っています。

──世界を代表するフェンダーから見た現在の楽器市場の印象を教えてください。
J 多くの人が飽和状態にあると考えているようですが、私はそれとはまったく異なった見方をしています。どの年もプレイヤー人口の45%はギターを初めて購入する人たちであり、さらにそのうち9割は90日から1年以内に楽器をやめてしまうと推定しています。そういったすぐに楽器をやめてしまうビギナーを対象に販売戦略を立てる会社もありますが、私たちはまったく違います。生涯をかけて楽器に打ち込む人たちをターゲットにしていて、手に取ってからの数年間プレイし続けられるようなしっかりしたギターを提供し、エモーショナルなレベルで楽器を愛してずっと弾き続けたいと思えるようなものを送り出したいと考えています。もし1年以内に楽器をやめてしまう人を現在よりも1割減らせるのなら、この産業全体を2倍の規模に持っていくことが可能と考えます。

──以前のインタビューでフェンダーのライバルはアップル社であると話していました。現在のライバルはどういった会社と考えますか?
A 以前のその回答の背景には、ギターではなくiPhoneにお金を費やす人たちが多かったことにあります。今のところ私たちは若い人たちが購入する最初のギターを製造することに成功していて、大切なのはその楽器とプレイヤーの強いつながりをどうしたら維持できるかという点にあります。この業界で大切なのはアーティストにもアピールできる製品を作ることであり、エレクトリック・ギターとアンプに関しては幸運なことに非常に多くのギタリストがフェンダーの製品を使ってくれています。アコースティック・ギターに関しては同様の成功を掴んではいませんが、クオリティとプレイアビリティを向上させて、プロフェショナルなミュージシャンにもアピールしていきたいですね。

Fender American Professional特集も公開中!

加藤隆志 meets Fender American Professional STRATOCASTER

徳武弘文 meets Fender American Professional TELECASTER

田渕ひさ子 meets Fender American Professional JAGUAR & JAZZMASTER

ギター・マガジン 2017年5月号発売中!

guitarmagazine_1705.jpg 本記事はリットーミュージック刊『ギター・マガジン 2017年5月号』の特集記事「鳴らせ、フェンダー新時代。」内のコンテンツ「伝統と進化の邂逅 AMERICAN PROFESSIONAL SERIES」を転載しています。同特集では長岡亮介(ペトロールズ)、田渕ひさ子(toddle, etc)、Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)、加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)によるFender愛に満ちたインタビュー、ハリウッドに設立されたニュー・オフィスや工場の潜入レポート、1986年“以降”の同社の歴史を追うテキストなどを収録。そのほかにも偉大なるギタリスト=ムッシュかまやつの業績を振り返る追悼特集、ピクシーズの機材レポートやサーストン・ムーアのインタビューなどを収めた、注目の1冊となっています。ぜひチェックしてみてください!

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製品情報

Fender / AMERICAN PROFESSIONAL Series

【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-63 http://www.fender.jp
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